2 いきなりのピンチ
「うぅ、ここは」
俺はひょっこりと目が覚める。気づけば原っぱのような場所に居て、思わず目を丸くしてしまう。
こんな場所来たことないぞ。どこだろここ。
「うん?」
空は晴れ。
自然かいのいたわりを感じているところで、横たわっていた足元に一枚の便箋が落ちていることに気付いた。
早速開封し、中を見てみる。
そこには俺宛の手紙が書かれてあった。
一言『頑張るのじゃ』とだけある。
最後に神よりとあるので、この神という人がしたためたものだということは間違いない。
うん、思い出した。そういや俺神様なる人物と放した記憶あるわ。それもどこか不思議な場所で。あれはやっぱり夢じゃなかったのか……となるとここはやっぱり異世界?
「そうとしか考えられないよな……」
はぁ、だとしたらどうしよ、なんか一気に不安になってきた。なんか魔王を倒さないといけないとかなんだろ俺。そんな勇気も自信も一切ない。本当に大丈夫なのだろうか。そもそも一人でこの世界を渡り歩いていくのも大分難易度高い気がするんですが。
「とはいえやるしかないよな」
そうは言ってもぐずぐず言ってるわけにもいかない。もう転生したのは過ぎたことで、俺は新たな俺としてこの人生を歩んでいくしかないのだから。
「まぁ深く考えても仕方ないか、考えるだけ泥沼だろうし」
なんとか切り替えて、行動に移していく必要がある。
そうだな、気合を入れろ、俺。やればなんとかなる。今までだって本気を出せば大抵なんとかなってきただろ? 己を信じろ。感じるんだ、心の熱いスピリットを。
「よっしゃ、まずは街か村でも探すか」
とりあえず衣食住の確保は必須条件だ。
神様も流石に訳のわからない遠い場所に転生させるわけもないだろう。そうだとしたらブチギレ案件だが、少し周りをキョロキョロすると一筋の道を発見した。ほぼ直線状にまっすぐ伸びている。ああ、ここを辿っていけばいいのか。絶対そうだよな、流石にやばい展開にはならなかったか、ごめんね神様。
「どっちにいこうか」
そうは言ってもこれがどこにつながっているのかなどは一切分からない。
右か左か選ぶ必要がある。
でもまぁこういう時は利き手の右を選ぶと見せかけて、実は左が正解でしたってパターンがあるからな。よし俺は左を選ぶぞ。
そう思ったがやっぱり素直に右を選ぶことにした。辺に逆をついても後悔しそうな気がしたからだ、シンプルに右利きで右ならまだあとから理屈付けが可能だろう。
そして俺は適当に歩き始めた。
そして五分くらい経過したところだろうか。
道端に何かが落ちているのが分かった。
「ん? なんだ?」
遠くてよく分からないが、なにか動くものが集まっているのが分かる。なんだ? なにかの生き物? とにかく引き返すわけにもいかない、近づいてみよう。
すると分かったのだが、一台の馬車があり、その近くの地面の一点に狼のような見た目の生き物が群がっていた。軽く十匹程度はいるだろうか。え、なんだ、何かを食べてる? 捕食中といったところなのか、サイズ的には一般的な大型犬と同じくらいだけど、なんか野性味があるというか、怖い感じなんだよな……あれ、もしかしてこれ以上近づくとまずい? いや、まさか襲ってくるなんてことはないだろ、警戒心も強そうだし逆に人間を恐れ引いていってくれるはずだ。でも近くに馬車があるのはなんでだろ……まさか……
俺が最悪のあらましを想像してしまったところで、狼さんたちが一斉に俺の方を向いた。流石に俺に気付いたらしい。や、やばい、目もギラギラしてるし、やっぱり怖い。これはヤバいやつだ、逃げよう。
俺がそう思い背中を向けるのと、狼たちが一斉に俺に向かってくるのはほぼ同時だった。
「きゃ、きゃあああああああああああ」
俺は女のような女々しい悲鳴を上げながら全力疾走する。
やばい、ほんとに追ってきやがった。
最悪だ、どうすんだよ、俺、こんなの絶対捕まってしまう。
やばいやばい、絶対にやばい。
俺の速度はいいところ三十キロが限界だろ。犬なんて絶対それ以上速いし、いつか捕まってしまう。
そう思い後ろを見てみると、案の定狼たちはすぐ後ろというところまで迫ってきていた。
ああ、死ぬ。これは死ぬ。
なるほど、結局こいつらはあの馬車を襲っていたのか。あの馬車は恐らくもぬけの殻で、恐らく中にいた人たちはこいつらに引きづりだされて餌になってしまったんんだろう。それで外でよってたかっていたに違いない。
ああ、俺も同じ人生を辿るのか。
何のために転生したんだろうな。こんな試練ってないよ。何かのいじめですか? こんなんだったら転生しないほうが良かった……
俺は走る気力もなくし、足を緩めそうになった。
もう無理だ、こんなときに一発逆転できるような技があればまだいいだろうけど、そんなもの武術の一つもならったことのない俺にあるわけ……
そう思った俺だったが、天命のようにピンときた。
待てよ。そもそも俺は魔王を倒しにこの世界にやってきたはずだ。
となるとそれなりの戦闘力があってしかるべきじゃないか?
なんか神様もそんなことを言っていたような気がする。
確か魔力がすごいとかどうとか。
魔法という話もしていたな。
もしかして、俺魔法使えたりするんじゃないか? そんなイメージ全く沸かないけど、そうでないと俺は死んでしまう。いやもう信じるしかない。俺は魔法を使いこなすことができる。俺ならやれる!
そう思い、俺は振り返る。
やはり狼たちはこちらに走ってきていた。
俺はやけくそで手を狼たちにかざし、手から炎が放出されるイメージを抱く。
「いけぇえ!【ファイヤーストーム】!」
適当な名前を叫んでみた。
すると、次の瞬間、俺の手から大量の炎が放出され、一瞬で視界を覆い尽くしていた。