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「おい、るう太、そろそろ着くぞ!」


 二人並んで自転車を漕いでいると、僅かに先を先行している将司がテンションマックスで話しかけてくる。


「分かってるよ、もう少しだな」


 俺もそれに合わせるようにして答えを返した。


 俺たちは現在最寄りの本屋に向かってチャリを漕いでいる。まぁ最寄りとはいっても隣町だから距離的には軽く五十キロ近くはあるだろうけどな。田舎暮らしというのは辛い。

 因みに将司は俺の親友で、小学校の頃からの腐れ縁だ。少し変なところはあるが、根は割としっかりしているナイスなやつだ。俺の数少ない友達だな。


 今現在高校一年の冬休みに突入していて、暇なので本屋で立ち読みでもしようという計画でここまで来ていた。


「やっしゃ! じゃあ後ちょっとだしラストスパートかけてこうぜ!」


 将司はのりにのってきているのかそんなことを提案してくる。


「えー、疲れちゃわないか?」


「別にかまわないっだろ、本屋に着いたらいくらでも休憩できるんだからよ!」


 それだけ言うと「よっしゃいくぜー」とか言って勝手に一人でぶっ飛ばしだした。

 本気かよ、まぁここで俺がのらないといのもちょっと空気読めないみたいになるし、仕方ない、少し付き合うか。


 そう思い本当に仕方なく俺もペダルのケイデンスを高める。

 う、あいつ意外と早いな。一本道なのでより分かりやすいが、少しずつ距離を話されてる気がする。俺も割とちゃんと漕いでいるのに。


「くっそー!」


 ここで負けて入られない。

 なんか知らないうちに力の差を見せつけられたみたいで癪だ、友人としても同年代の男としても負けるわけにはいかねぇ!



「おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃああ!」



 俺は立ちこぎモードでガチる。

 俺の全身全霊を掛けたスパート。


 その甲斐もあってか将司との距離が徐々に縮まっていく。


 そして俺の速度が最高点にまで達した時、ついに将司を颯爽と抜き去った。


「ははっ、見たか将司! 俺の本気を!」


「あぶないくるま!」


「え?」


 気づけば俺は赤信号の交差点に突っ込んでいて、横から来ていた車から思いっきり衝突されてしまった。


「しかれたあああー!」


 将司の声が遠く響く。

 ああ、こんな最後ってあるか……

 まさか本屋までのラストスパートのはずが、人生のラストスパートになっちまうとはな……むねん。


 俺は痛みを感じることもなく、意識を手放していった。













「うぅ……あれ?」


 俺は何気なく目を覚ます。

 周囲を見回してみると真っ白い空間になっており、なんとも不思議な感じだった。

 なんだ、これは夢?


「起きたかの」


 すると突如声を掛けられた。

 気づけば目の前に人がいて、俺を優しいまなざしで見つめてきていた。


「えっと、あなたは……」


「ワシは神じゃよ。そしてここは天界。おぬしは地球で死亡したのじゃ」


 俺が……死亡?

 何を言っているのか。俺はこうやって生きているじゃないか。


「冗談でも縁起のないことは言わないでください、僕は普通に暮らしていたはずです」


「冗談でも嘘でもないぞ。覚えておらんか、自転車に乗っておったところ車に思いっきり撥ねられておったぞ」


「自転車……? あれ、あ……ああ!」


 あ、あああああ!


 そう言われ思い出す。そうだ、俺は自転車を漕いでいて、つい調子に乗ってしまったところ道路に飛び出してしまったんだ! ……ああ、あれ夢じゃなかったのか。そうだよな、あんなリアルな夢ないよな。


「思い出しました……やっぱり僕は死んでしまったんですね」


「そうじゃ、ワシがぼけておるわけではないぞ、まだまだ現役じゃ」


 それで神様のご登場というわけか、天界って言ってたけど、要するに天国みたいなものなのかな。神様って本当にいたんだな。


「まぁじゃがそんなに悲しむことはないぞ。今回お主にはチャンスを与えようと思うておるからな」


「チャンス……ですか?」


「うむ、聞いて驚くかもしれんが、お主は天界におけるとある取り組みに引っかかっての。最近はまだ若くして命を落とす若者があとを立たん。そんな若者を少しでも救済しようという動きが天界でも広がっておるんじゃ。そしてその一環として『異世界攻略チャレンジ』という取り組みを行っておるのじゃが、それにお主は選ばれたのじゃ」


「異世界攻略チャレンジ……?」


「まぁ分からんかもしれんが、簡単にいうと元いた世界ではなく異世界ではびこっている問題を解決してもらおうというものじゃ。実は地球以外にも無数の世界がこの世の中には存在しておっての、当然その世界ごとで様々な異常やら問題やらが発生しておる。地球でも常に何かしらの問題が発生しておるじゃろう?」


「まぁ確かに……」


「そのうちの一つを若者に解決してもらおうというわけじゃ。これじゃと若者を救うこともできるし、様々な世界の問題も解決することができる。一石二鳥の取り組みというわけじゃ」


「なるほど……え、ということは、僕は他の世界で生き返れるということですか?」


「その通りじゃ。今回お主にはララク・ファルデラという異世界に転生してもらい攻略を頼みたいと考えておる。その世界は剣と魔法の世界なんじゃがの、現在魔王という凶悪な存在が力を増してきておる。それをお主に勇者として討伐してもらいたいのじゃ」


「ええ、勇者って……僕にそんな力ないと思いますけど……」


「それは心配いらん。もちろん普通のお主であれば息を吹きかけられるだけで木端微塵に吹き飛んでしまうところじゃろうが、そこは異世界攻略チャレンジじゃ、その世界には魔法を使うために必要な魔力というものがあるのじゃが、それをお主の体に限界まで付与しといてやる。これでお主はほぼほぼ万能な力を得ることができるじゃろう」


「魔法? 魔力?」


「まぁ、細かいところは転生してから探っていけばよい。大量の魔力が宿ることによりお主の肉体の寿命もかなり伸びるであろうからの、見立てでは1億年は軽く生きるじゃろうな。まぁ逆に退屈になってしまうかもしれんがの」


「はぁ」


 凄くありがたい話というのは分かるのだが、イマイチぴんとこないというか、なんだか現実味が湧いてこないんだよな。でもそのうち分かるようになるのかな。


「とにかくやればなんとかなるじゃろ。まぁ勿論この提案を拒否するということもできる。無理にとは言わん、じゃがその場合お主は普通に死に、二度と意識を持つことはなくなってしまうじゃろうが」


 それは……嫌だな。死因は自業自得かもしれないが、流石にここで死ぬのは早すぎるしな。思えばこんな提案めちゃくちゃラッキーじゃないか? 普通なら終わってたところだ、これを受けないという手はないんじゃないか?


「分かりました。自身はないですが、やれるだけやらしてください」


「その意気じゃ。よし分かった、それじゃあお主をその世界に転生させる手続きでやっておくからの。存分に生きていくとよい」


 そうして俺は異世界に転生することになった。

 急なことでびっくりしたけど、まぁ新たに生き返れるんだったらなんだっていいよな、よーしやれるだけやってみようじゃないか。


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