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人生のやり直しをする権利をいただきました

作者: 葉瑠
掲載日:2022/11/20

−あぁ、私ここで死んじゃうんだ…−

思い返せばなんの変哲もない、平凡な人生だったなぁ…

人に誇れることもなく、結婚して、子供生んで、ただ生きているだけの人生…

色々思うところもあるけれど、満足できる人生だったと思う…

…欲を言うなら孫の顔、見たかったかなぁ…

まあ、まだ子どもたちも学生だし、結婚したからって必ず子どもができるわけでもなく、そもそも結婚するかどうかすら怪しいし…


−死ぬ間際って、結構色々考える事ができるんだな…−


走馬灯っていうやつなのだろうか、今までのことを色々と思い出す。

子供のときのこと、結婚式、出産、引っ越し……

最後の記憶はボールを追いかけて車の前に飛び出した子どもを助けた時のもの…


公園から飛び出してきた見ず知らずの子ども助けて死んじゃうとか、どんだけお人好しなんだ私、とも思うけど、目の前で子どもが車にはねられるとか、見たくないしね…

てか、母親!ちゃんと見とけよ!!


ドライバーさんもあの子も無事だといいなぁ…

あと、ドライバーさんのトラウマにならないといい…てか、ドライバーさん、悪くないのに悪人扱いされるのかな…


…ていうか車にはねられたのに痛くないし回想長くない?


なんて思ってたら…


「ぱんぱかぱ〜ん!おめでとうございまぁ〜す!」


なんて、場違いな声が…

え?何?どっきり??

車にはねられたのにおめでとうございます?意味がわからない…


身体は…動かない…けど目なら開けれそう?


そっと目を開けてみて驚いた…!


一面真っ白!!


白銀の世界!


ではなくて、本当に真っ白。

病院かと思ったけど、そういう白さじゃなくて、全体的に白く輝いてるっていうかほのかに光っているという感じ。


「あっ!気がついたね〜!痛いところとかないよね?大丈夫だよね〜?」

神秘的な場所にそぐわない明るい、というか脳天気な声。

身体…は相変わらず動かないので、目だけ声のする方に向けて…

……

…………


びっくりした…


いや、二度見したよ、ほんとに。


だって、そこにいたのはこれまた真っ白なドレス?を着ためちゃくちゃきれいな女の人。

え?この人がさっきの声の主?ってなったよ…

見た目と声のギャップがあり過ぎる…

どっから声出してんだよ…


「うんうん、元気そうで何より。今の状況、わかる?」


「……」

…声を出そうとしたけど、喋れない…口、動かない…ので女の人をじっと見つめてみる。


「そう、ここは現世と来世の狭間、あの世の一歩手前でぇ〜す」

いや、私何も言ってないし…なんか勝手に話進めてるし…

ていうか何その間延びした話し方…見た目とのギャップ凄すぎるんですけど…


色々言いたいけどいかんせん口が動かない。黙って話を聞くことにしよう…


「そうそう、申し遅れました、私、死と再生を司る女神様よ〜。女神ちゃんって呼んでね」

語尾にハートついてそうだな…てか女神ちゃんって……

うん、まあそれ以前に喋れませんけどね?


「えぇっとぉ〜それでですね?アナタにはなんと!異世界転生チャンスが手に入りました〜!おめでとうございまぁす!!!はい拍手〜!ぱちぱちぱち!」

……ってなんかひとりで盛り上がってらっしゃいます…

「それでですねぇ、何がいいですか?乙女ゲーのヒロイン?悪役令嬢?」

なんだその究極の2択は…

てか、転生とかしなくていいんだけど……

「女神ちゃん的にはぁ〜、健気美少女ヒロインになって素敵な王子様とラブラブ溺愛ストーリーなんてのがオススメなんだけどぉ〜」

自分で自分の事女神ちゃんて…

てか段々喋り方がヤバくなってない?

大丈夫かな…このヒト…いや、この自称女神様…

「悪役令嬢転生で性悪ヒロインざまぁルートもアリよねぇ〜」

…女神様、ラノベ読み過ぎじゃないですか? 

「で?どっちがいい?」

いやどっちって!!いつの間にそんな2択になったのよ!!

…って最初からだったか…

キラキラした目でそんなこと言われましても…

どっちもイヤだしそもそも喋れないし…


なんとか声が出せないかもごもごしてる私を首を傾げて不思議そうに見つめてる女神様が、唐突にぽんと手をたたき、

「やだ、ごっめーん!喋れるようにするの忘れてたっ!」

「テヘペロじゃねーよ!!」

って声出た!

しかしこの台詞は言うべきではなかった!!

あぁほら女神様、きょとんとした顔してる…

やばい、怒られる…?

「え〜!うそっ私何もしてないのに喋れるようになった!貴女天才??これはもうチート盛り盛りの悪役令嬢1択ね!」

「いや意味がわからないから!」

あ、しまった、仮にも相手は女神様、敬語で話すべきだったか…

「え〜?なんで?チート満載の悪役令嬢が能力を駆使して性悪ヒロインざまぁするとか最高じゃなぁい」

女神様、全く気にする様子も無く普通に返してくる。

怒られなくてよかった…

じゃなくて!

「突然転生だとかヒロインと悪役令嬢の2択とか何なんですか?最初からわかるように説明してください」

……冷静に話をしよう、冷静に……

「え〜?しょうがないなぁ、あのね、貴女事故にあったでしょ?あれ、所謂不測の事態だったのよね〜。

 本来なら子供に気づいたドライバーがハンドルを切って壁に激突、子供は無傷、ドライバーは軽症の筈だったんだけど…」

そこで言葉を切り、ちらりとこちらを見る女神様。

何その残念な子を見るような目は…

「まさか貴女があそこで動くとは予想外だったのよね〜…」

そんな薄情な人間に見えますか…?目の前で子供が轢かれそうになってるの見て助けないとかなくない?

「普通驚いて身体がすくんじゃって動けないもんなんだけどねぇ…」

え…そういうもんなの?

「きっと母親としての想いが身体を動かしたんでしょうねぇ…」

ほぅ、とため息をつき、空?を見上げる女神様。

褒められてる、のかな?

「なので!予定されてなかった死なのであの世に空きがないのとあなたの善行を讃えて別の世界で新しい人生でやり直しの機会を設けてみました!」

予定されてなかった死……つまり無駄死によね……

私が余計な事しなかったら誰も死ななかったしドライバーさんも人を轢き殺したなんていう罪の意識持たなくて済んだんだよね…

それなのに私はのうのうと別世界で生きるなんて…


ていうかぶっちゃけ転生とか面倒臭いんですけど…

もうね、本当に来世はそのへんに生えてる雑草とかで良いんですけど…

むしろ人間になりたくない…

そのことを女神様に伝えてみたら、困った顔されてしまった…

「えぇ〜、女神ちゃん、ショックぅ〜…せっかく転生の権利もぎ取ってきたのにぃ…」

「もぎとって…」

こなくていいですから!

あぁもう口尖らさない!拗ねない!!

…って子どもか女神様!?

やばいツッコミが追いつかない誰か助けて!

「あの…転生云々言う前に良いですか…?」

「ん?なぁにぃ〜?」

「私の事轢き殺してしまったドライバーさん…は…大丈夫でしょうか…このあと転落人生が待ってたりとか…」

恐る恐る気になっていることを尋ねてみる。

例え転生するにしても、人ひとりの人生めちゃめちゃにして平然といられるほど図太い神経してないし…

「あ、それなら大丈夫〜♪貴女の身体ごと持ってきちゃったから」

え?あ、ほんとだ…動けないし魂だけの存在にでもなってるのかと思ってたけどちゃんと身体があった…

うん、どこも怪我とかしてなさそう…

「えっとぉ〜、今まさに事故が起きた直後!のところで時間止まっててぇ〜、貴女の予定が決まったら動き出す予定なの♪」

んん?どゆこと??

「貴女はあの場にいなかった!だから誰も死んでない!!人が飛び出してきてびっくりしたドライバーが慌てて急ブレーキ!ギリ間に合って子供は無傷!ドライバーも無傷!子供の母親が慌てたぐらいでみんなハッピー!」

「いや、どこらへんが?てか私どこいった!?」

「ドライバーが大人の女性が飛び出してきたって主張するけど誰も見てないのよね、飛び出してたのは子どもだし…まあ、おかげでブレーキが間に合ったんだけどぉ…

その頃、遠く離れたどこかの地で、一人の女性の遺体が発見されるのです。」

「は?」

「死因は不明だけど自殺でもなさそうだし他殺の痕跡もない…原因不明だけどそこは女神ちゃんパワーでちょちょいのちょいっと♪」

…ペ○ちゃんみたいな顔で何ほざいてくれてやがりますかね…

ちょっと意味がわからなすぎて殺意が湧いてきたかもしれない…

…冷静になれ、私…

……すーはーすーはー(深呼吸)


…ん?あれ??

その時あるあるひらめきが私の頭を過ぎって…

「あの、女神様!」

「ん〜?なぁにぃ?」

上機嫌で喋り続ける女神様にストップをかける

「えっと、正確には私、まだ死んでないんですよね?」

「ん〜?まぁ、そうなる……のかなぁ〜…??

ん?あれ??そうねぇ、確かにそうかも〜?」

首を傾げて曖昧な返事をする女神様に一筋の希望を見いだす

「じゃあ!そのまま、生きたまま別の場所に転送とかできないんですか?何もわざわざ別世界に転生とかしなくても生きてるのならそのままもとの世界の別の場所に戻してくれたら良いんじゃないですかね!?」

「え〜?それじゃつまんなくなぁい?新しいトコで新しい人生謳歌しましょうよ〜♪」

……もしかして…もしかして…

この女神様…、自分の趣味で別世界に転生させようとしてる!?

「…いや、つまんなくないですよ、私まだ人生やり残した事沢山あるし、子どもたちもまだ面倒みないとですし!」

元に戻れるかもしれない!それならば意地でも戻してもらう!私は元に戻りたい理由をとにかく並べ立て、頼み込む。

「そ、そこまで言うのなら…仕方ないなぁ…

チートヒロイン爆誕、楽しみだったのにぃ……」

私の勢いに飲まれた女神様、しぶしぶと言った調子で元に戻ることに了承してくれた。

「んじゃぁ、公園の中に戻すわね?

…あ〜ぁ、つまんないの〜。せっかく久しぶりの転生案件だったのにぃ…」

最初のハイテンションっぷりはどこへいったのか、だるそうな顔でしっしっとでも言うかのように手を振る女神様。

それを受けて私の意識が朦朧としてくる。

「転生したくなったらいつでも言ってねぇ〜

待ってるワ☆」

…最後に見たのが女神様の投げキッスとは…


その後、無事元に戻った私は目の前であわや事故!?という場面を目撃し、事情聴取を受けたりもしたけれど、概ね平和な日々を過ごしている。

…たまに、脳みそ突き破りそうな甲高い声で『転生まぁだ〜?』という声が聞こえるような気がするけど…

…気のせい気のせい、きっと空耳…

異世界転生しそこねました…

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