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インビジブルデザイアー  作者: 明日乃ミライ
8/11

第6話:ユウカ

 ゲートを抜けるとそこは草原のフィールドだった。


 見渡す限りに緑の芝が生い茂り、広大な平地が目の前に広がる。


 初見のプレイヤー達は、今までいた近未来の世界とのその世界の変わりようにざわついている。


「すげぇ……」「なんだこれ……まるで違う場所に来たぜ……」

「……おめでたい奴らだ。お前ら気にするな、行くぞ」


 そんな彼らを気にも止めず、数人の純白に赤のラインが入ったコートを着ている者達は草原のフィールドを歩き始めた。


 sinは彼らの正体がなんなのか、すでに気付いていた。


「アイツらが噂のブライトって組織か。周りのヤツらと違って目付きとオーラが違う。こりゃ早くしねぇと獲物が無くなるな」


 sinはブライトの面々たちとは反対の方向に走り出す。


「最初はなるべく低レアモンスター来いよ……いきなり上級とか最近のラノベでありがちな展開だけはやめてくれ……」


 sinがしばらく直進していると、その時は突然来た。


 茂みの中で何かが動いたのを察知し、sinは剣に手をかける。


 じっと茂みを見つめると中から緑色のプルプルとした見た目のモンスターが出てきた。


「スライムキターーーー!!!」


 丸々とした姿に大きく見開かれた目でsinをじっと見つめている。その目からは愛くるしさすら感じられる。


 ゲーム内でしか見た事のなかった生きたスライムを目の前に感動にsinは歓喜の声を挙げ、すぐに剣を鞘から抜き戦闘の構えを取る。


「初戦闘モンスターのスライム!俺を伝説の幕開けに相応しい相手だ!覚悟!!!」


 そうしてsinが剣を振り下ろそうとすると、スライムはその様子に驚き、怯えた様子でその場でブルブルと震えだした。


 そのスライムの様子に思わずsinは剣を振り下ろすのを止める。


「うっ……!や、やめろ……そんな顔するな……!倒しずらいだろ……!」


 そうして攻撃をためらい躊躇しているsinにスライムはいきなり頭突きをかました。


「痛っ!スライム野郎!いきなり何しやがる!」


 スライムに文句を言うsinの目の前にブレインシステムが作動し、スライムの解説を表示した。


『スライムは非常にレベルが低い初級モンスターであり、愛くるしい見た目が特徴のモンスターである。その愛くるしい見た目を利用しプレイヤーを躊躇させ、その隙に攻撃する習性がある。見た目に反して非常に苛立ちを煽るタイプのモンスターである』


「なるほど、そういう事ね……そういうタイプのやつか……てめぇ絶対ぶっ倒ーす!!覚悟しやがれぇ!!!」


 今度は躊躇すること無く、sinは容赦なく剣でスライムを細切れに切り刻んだ。


 縦、横、斜め、正確に一振一振をスライムに叩き込む。


 太刀筋は大雑把だが、家で小学校の修学旅行で買った木刀をよく振り回していたこともあってか、sinの身体には並大抵の剣技は身につけられていた。


 細切れになったスライムの破片はしばらくするとポリゴン化し消えていった。


『スライム一体を撃破、経験値を獲得しました。レベル上昇。レベル1〜レベル2。ステータスを更新します。』


 sinの目の前にステータス画面が表示され、ステータスが変動した。


 パワー:5→7

 ディフェンス:4→6

 スピード:4→7

 ブレイン:6→9

 ラッキー:5→5


「はぁ……はぁ……レベルが上がったか。序盤のレベリングはこんなもんだよな。それよりも、もう容赦しねぇ、舐めやがってクソスライムが……」


 一呼吸置いてから、sinはそれ以外の他の茂みを漁り、スライムが居ないかを探し始める。


「きゃあぁ!助けて下さい〜!」


 sinが作業をしていると、遠方から一人の女プレイヤーがスライム数体に追いかけ回されながらこちらへ逃げて来た。


 手に杖らしき武器を所持しているが使う気配がない。


「おぉ!なんかよくわからんがスライム乱獲チャーンス!今行くぜぇ!」


 sinは逃げてくる女プレイヤーの方に駆け出した。


「助けて〜!」

「はぁぁぁあー!!」


 気合と同時にsinは数体のスライムを次々に両断していく。


 ステータスが上がったため、攻撃速度、威力、正確さに多少の変化が及ぼされたため、先程の一体目よりもスムーズに倒すことが出来た。


『ステータスを更新します。レベル2〜レベル4』


「うっし!経験値いただき!おい、大丈夫かあんた。怪我してねぇか?」


 ステータスの上昇を確認し、sinは逃げていた女プレイヤーに駆け寄る。


「は、はい……大丈夫です。守っていただいてありがとうございます」

「いやいや、これくらいどうってことない……ってあれ君……」


 sinは目を細めて女プレイヤーを凝視する。


「あーあんた!俺がつけてた青髪の美人ねーちゃん!」

「え?どうしたんですか?」

「あーいや、こっちの話だ忘れてくれ。それより、君はなんであんなスライムに追っかけ回されてたんだ?」

「えっと、最初に茂みから出てきた一体を見つけて、見た目が可愛くて思わず眺めてたら、いきなり何体も茂みから出てきて追いかけられて……どうしたらいいのかわかんなくてパニックになってしまって……」

「なるほどなぁ。わかる、あいつら可愛いんだよ。そのくせして性格が汚ぇからめちゃくちゃムカつくんだよな……」

「はい、今ナビゲート見てガッカリしました……はぁ……怖かった」


 女プレイヤーはその場に座り込み、大きくため息をついた。


「そういや名乗ってなかったな、俺の名はsin。この世界の主人公だ!あんたと同じく現実からの参加者だ。よろしく!えっと……君は」


 女プレイヤーは少し慌てて立ち上がり、自己紹介をする。


「私はユウカって言います。よろしくお願いしますね、sinさんっ」


 そう言って笑顔を向けてくる彼女にsinは一瞬ドキリとしてしまう。


 それをそのはず、スラリと伸びた長い足、整った容姿、美しい顔にキラキラと光る明るい青髪が草原になびくその姿はどんなものでも魅了してしまいそうな輝きを放っている。


「君の武器のそれなんだ?杖か?」

「あ、はい。デザイアサンクチュアリを回っていてたまたま寄った武器屋さんに私のスキルと相性が良さそうなのがあったので、買ってみたんです。戦闘向きじゃないので今の所実用性はないです……」

「へぇ……ちなみになんてスキルなんだ?良ければ教えてくれ」

「私のスキルは『ヒール』です。傷を治したりできる能力らしいです」

「へぇ、ヒールか。相当いいスキル選んだみたいだな」

「え?どうしてですか?」

「この世界のルール、『ゲームオーバーは現実での死と同じ』。一度死んだら終わりのこの世界で自前の回復スキルは最も重宝されるスキルと言っても過言じゃない。傷ついても自力で直せるってことは、ゲームオーバーになる確率がグンと減ったってことだ。羨ましいぜ」

「そんな、確かに回復は出来ても、レベル上げのための戦闘が出来ないんじゃ、意味ないです……」

「いや、多分それは無問題だ。試しに、俺の傷治してみてくれよ。さっきので少しだけダメージあるみたいだからさ」

「え?あ、はい。わかりました……ヒール発動!」


 ユウカが杖をsin向けてスキルを発動する。


 杖が光り輝き、黄緑色の優しいオーラがsinを包む。


「おぉ!痛みがほんとに引いてく!なんかすげえ心地いいし、いいなこれ……」


 回復が終わると、ユウカのステータス画面が表示された。


『スキル回復を使用。経験値を獲得しました。ステータスを更新します。レベル1〜レベル2』


「わっ!レベルアップしました!でもどうして……」

「レベルアップや経験値獲得は何も戦闘だけで発生するもんじゃない。スキルを使用したりすることで発生することだってある。君の場合は戦闘を行った回数よりも回復した回数の方がレベルは上がりやすいってことなんじゃないかな?」

「なるほど……そういうことだったんですか。でもどうしてわかったんですか?回復すれば経験値が手に入るって」

「これでも、現実ではプロのゲーマーなんだ。色んなゲームをやり込んでるから、この手のゲームにはこういう仕様がよくあるってのを覚えてただけだよ」

「すごい!ほんとに主人公さんなんですね、sinさんって。ふふっ」

「あっはは……まぁね」


 sinはつい照れ臭くなり、頭を掻き誤魔化した。


「あ!そうだ!ひとつ俺から提案していいか?」

「はい、なんですか?」

「もし良ければしばらく一緒に行動しないか?俺はモンスターを倒せば経験値が手に入るし、俺が戦闘した傷を治してくれれば君にも経験値が入る。お互いにウィンウィンの関係ってやつ。どうかな?」

「いいんですか?私足でまといになるかもですし、邪魔になると思いますけど……」

「大丈夫!君は後ろで後方支援してくれればいいし、何かあった時は、俺が全力で君を守る。約束するよ。一緒にいる間、君を死なせたりしない」


 sinは真剣な眼差しでユウカに提案を持ちかける。


 ユウカもsinの言葉を聞き、意を決したように同じように真剣な眼差しを向けた。


「ぜひ、お願いします。私も、少しは強くなりたいですから。sinさんのお役に立てるよう頑張ります!」

「よし!交渉成立!これからよろしく頼む。えっと、ユウカさん」

「はい!改めてよろしくお願いします!sinさん!」


 こうして、sinとユウカは行動を共にすることになった。




大変!大変お待たせいたしました!こちら最新話となります!ぜひ読んでください!

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