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インビジブルデザイアー  作者: 明日乃ミライ
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第2話:ログアウト

 後日、進はいつものように学校での一日を終了し帰宅した。


 自室でベッドに倒れ込み招待状を見つめる。


「くくく、いやぁ何回みても頬が緩むなぁー。ADAMの新作……どんなジャンルだー?アクションか?RPGか?それともアドベンチャーかなー?楽しみー!」


 考察にふけっていると枕元のスマートフォンが鳴った。


「あ、まさか!来たか!」


 急いで確認すると、通知の欄に一本のメールが来ていた。


『神代進様。この度、株式会社ADAM新作VRゲームのテストプレイ実施日と開催地決定のお知らせをさせて頂きます。開催日は一週間後の正午より、株式会社ADAMの東京本社三階のプレイルームにて行います。社員一同心よりお待ちしております』


「一週間後か、ちょうど暇だし問題ない。にしてもADAMの本社かー!あのバカでっかいビルの中に入れるなんて・・・・・・親父の職場でもあったとこだし、楽しみだ」


 進にとってADAM本社に入ることは、まさに父親の職場体験をするようなものだ。


 亡き父が生前世に出してきた名作のゲーム達が作られた場所。息子としても一人のゲーマーとしても、今回のテストプレイはとても良い機会と言えた。


 そしてあっという間に一週間が過ぎ、ついにその日を迎えた。


「それじゃ母さん、行ってきます!何時になるかは分からないけどちゃんと帰ってくるから。美味い飯作って待っててくれ」

「ええ、行ってらっしゃい。気おつけて」


 進は玄関を出るとダッシュで駅へ向かった。進の乗る予定の電車は一時間後に来る予定だったのだが、進は流行る気持ちを抑えずにはいられなかった。


 ホームで待つこと一時間、東京行きの新幹線が来た。


 全国大会に出場した時にも東京に行くのに新幹線を使っていたため、乗り過ごす事無く無事東京へ到着することが出来た。


 スマートフォンのナビを使ってADAM本社を目指す。


 駅から三十分ほど歩いてADAM本社に到着した。


「ここかぁ・・・・・・!でっけぇなぁ・・・・・・!」


 進は思わず感涙の声を上げた。


 目の前にそびえ立つその巨大なビルは圧倒的存在感を出しており、周りにあるビルが本当に小さく見えてしまうほどだ。


 六十階建ての超高層ビルで、世界的にも有名なデザイナーの手掛けたその造形は周りに比べ異彩を放っていた。


 進はその大きさと存在感でしばらくその場から動けなかった。


 自分の町では見ることの出来ない巨大な建物。改めて東京の凄さ、そして恐ろしさを進は肌で感じていた。


 進は意を決してADAM本社の正面玄関へと向かった。

 巨大な自動ドアが開き、メインロビーが視界に入る。


 白や銀などの明るい色を基調とした内装はとても神秘的で床は光を反射するほど綺麗になっており、進の姿を鏡にして写していた。


 玄関の端には左右にとてつもなく大きな剣闘士の銅像が二体飾られており、ロビー中央にある巨大なディスプレイには現在発売しているADAM制作の人気タイトルの宣伝CMがでかでかと流れていた。


「な、なんじゃあ・・・・・・ここ」

「はは、確かに驚いてしまう気持ちもわかるよ」


 ふと後ろの方から声が聞こえ振り返ると、進を招待してきた黒スーツの男二人組の姿があった。


「久しぶりだね、神代進くん」

「お久しぶりです。にしてもすごすぎないですか?ここの会社。ロビーだけでこの広さと真新しさはおかしいですよ」

「まぁね、伊達に一流企業を名乗っちゃいないさ。それを象徴するにふさわしすぎるほど、素晴らしい建物だよ」

「すっげぇなー!ここで親父も働いてたのか・・・・・・羨ましい〜!」

「・・・・・・」


 進が父のことを口にすると、男たちの表情が一瞬寂しげになったように見えた。


 二人は誤魔化すようにして話題を本題に切り替えた。


「それじゃあ、早速だけどテストプレイを実施する三階へ行こうか」

「はい!よろしくお願いします!」


 進は男たち二人とエレベーターに乗り、三階へ着く。


 エレベーターを下りると目の前に『プレイルーム』と書かれた札が壁に貼っており、それを見て進はついにその時が来たと胸を踊らせた。


 中に入るとそこは景色が黒で統一された部屋で妙な寒気を帯びており、中央部分にのみライトが照らされその下には椅子があり、その上には一台の見たこともない形をしたVRゴーグルがおいてある。


 その様子と感覚に、進はさっきの楽しみとは打って変わって少しばかり恐怖を抱いた。


「なんだか、暗くて怖いっすね・・・・・・」

「ははは、すまないね。ゲームを起動するのにまずは部屋の明かりを最小限まで抑える必要があるんだ。まあ気にせずそこの椅子に腰掛けて、そのVRゴーグルをかけてくれ」

「は、はい・・・・・・」


 男たちに促されるまま、椅子に腰掛けゴーグルを付ける。


「今から君にやってもらうゲームの名は『デザイアクロニクル』。人間の脳波をデータに変換し、意識そのものをゲーム内に適応させ仮想現実内に送り込むことで、プレイしている本人の意思のままに行動することができる最新技術を搭載したゲームだ。ゲーム内にアクセスできたら、その中にいるナビゲートキャラが細かい設定やルールを説明してくれるから、あとは好きなようにプレイするといい」

「はい・・・・・・」


「それじゃあ今から電源を入れるから、体の力を抜いて、目を瞑ってじっとしてくれ」


 進は言われたとおり体の力を抜き、目を瞑った。


「では()()()()()。ゲームスタートだ」


 男がゴーグルの電源を入れるとゴーグルが、キィーン、と音を立て中のエンジンが回転し始めた。


 脱力しているせいか、その音は倍になった感覚で耳の中に流れ込んでくる。


『こういう不安な時に聴く電子音ってなんか安心するよな・・・・・・耳の中にすんなり入ってきて妙に心地いいや・・・・・・』


 だが突如、脳内に強烈な衝撃が走る。


「ぁがっっ!」


 あまりの衝撃に苦しみの声を上げ、徐々に意識が薄れていく。


 進は薄れゆく意識の中で、男達の声を聞いた。


「すまないな・・・・・・だが今は豪さんの息子の君に賭けるしかない。この世界を、守ってくれ・・・・・・!」


 声が途切れた瞬間、進の意識は、現実世界から完全にログアウトした。









次回から本格的に物語本編突入です!壮大な世界で繰り広げられる進の勇姿を見届けて下さい!

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