序章
人の欲望に際限はない。
ひとたび何かに興味を持ったが最後、自らの欲望に飲み込まれるように人は求め、追求し、極めんとする。
今のこの現代に至るまで我々人類を進化へと導いてきたのは、偉大なる先人たちの欲望だ。
あるものは天下を求め、またあるものは大陸制覇を求め、己の思いついたその欲望を現実のものにせんと周りを巻き込み従わせ実現させてきた。
だが、その偉大なる大義を成し遂げるために多くの命が失われてきたこともまた事実である。何か大きなことを成すためには犠牲は付きものだ。
そんな犠牲の上に成り立っているもの、それが今の我々の生きるこの現代であり日常。犠牲があったという真実を考えもせず、気付こうともせずにまた新たな欲望が地球上に住む人間の数だけ増えていく。
だからもし、人間の本質が欲望であるのなら、その本質によって犠牲が伴われることが容認されているのなら。
自らの欲望を実現させつつ、大きな何かを成し遂げそれが人類のさらなる進化に繋がるのなら。
その大義をなすための犠牲が生まれても世間は、世界は私を許してくれるのではないだろうか。たとえ咎められようとも、時が経つにつれ時効という扱いによって後の世で広く称賛されるのではないだろうか。
ならば実行しよう。先人たちの偉大な功績にも劣らない最高の大義のためにわが人生を捧げよう。
そう。すべては人類の進化と、我が果てなき欲望の実現のために。