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狂戦士なモブ、無自覚に本編を破壊する【第1~6巻発売中&コミカライズ配信中】  作者: なるのるな
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???

***【注意】***



『狂戦士なモブ、無自覚に本編を破壊する』の物語は、前話の「エンディング」にて完結しています。


 この話は旧題『狂戦士なモブ、本編に参加するってさ』の初期構想のエンディングであり、あくまでweb版の外伝、別作品の一幕とお考え下さい。



***【注意】***

:-:-:-:-:-:-:-:



 ……

 …………

 ………………



 街道を歩く二人。


 すでに王都は目と鼻の先。街道はきっちりと整備されており、定間隔で休憩所や雨露をしのげる簡易の宿場まである。行き交う人々も多く、巡回の警備兵もいる。街の外ではあるが、特に危険のない道行きだ。


「……さて。この辺りまで来れば問題ないかな? 流石に魔物の襲撃なんかはもうないだろう」


 異国風の見た目をした青年が、そう言いながら足を止める。


「そうね。あとは他の商隊や巡回の兵と一緒に行けば、王都までは安全だと思う」


 青年と軽く手を繋いでいた少女も一緒に歩みを止める。繋いでいた手が解ける。


「……イノセンテ、君は()()の言い付けを守るのかい?」


 少し眠そうな顔をした青年トゥルーが、少女イノセンテに尋ねる。


「さぁ? どうかしら? 母様や姉様には少し悪い気がするけど……実のところ、私にはそこまでの探究心はないかも?」


 この地では少々珍しい、黒髪黒目の異国人的な風貌の青年に向き直りながら、イノセンテは伝える。


 自身が()()を望まれて生み出されたのを知りながらも、そこまでの熱量がないのだと。


「はは。むしろ、それでこそだと思うよ。クレア殿は自らの願いを君に託したけど、だからといって、君の意思や行動を縛るつもりはなかった。世界から切り離された自由なる存在を望んでいたからね。少なくとも、僕が契約を交わした時はそんな風に言っていたよ」


 トゥルーはイノセンテを肯定する。それでいいのだと。


「……ねぇ? ここでお別れだというなら、最後に教えてくれない?」


「ん? あぁ……クレア殿から君への伝言だね?」


「違うわ。というか、母様からの伝言なんて本当はないんでしょ?」


 それが当たり前のようにイノセンテは断じる。トゥルーが彼女に同道した前提を否定する。


「どうしてそんな風に思うんだい?」


 青年トゥルーの、その吸い込まれそうな黒い黒い瞳にわずかに鋭いものが宿る。


「遠い未来の写し身に伝言を残すというのは、それ自体が写し身を縛る行為になる。この世界の理から外れた存在に自由なる探求を望んだ母様が、そんな真似をするとは思えないからよ。あと、普通にあなたは怪しいでしょ? どうしてそんなあなたの言葉を私が信じると思ったの?」


 クレアの〝情報〟を受け継ぐ器。無垢なるイノセンテ。


 彼女は母であるクレアの性質を知っている。誰よりも。だからこそ、トゥルーの言い分に嘘が混入されていると看破していた。


 そもそも存在自体が怪しいことこの上ないのだ。イノセンテからすれば、むしろ素直に言い分を信じてもらえると思っていたのかと、逆にトゥルーに問う。


「ははは。ま、そりゃそうだよね。確かにその通りだよ。レアーナ殿への伝言は嘘じゃないけど、クレア殿から君への伝言なんてのはない。あくまで〝君を守る〟ための方便さ」


 あっさりと認めるトゥルー。彼がイノセンテに近付いたのは、まさに彼女を守るため。それが彼の〝クエスト(使命)〟の一つだから。


「私が聞きたいのはそれよ。結局、あなたは何者なの? 何が目的なの? 私を守ってあなたは何を得るの?」


 イノセンテは気付いていない。


 彼女はクレアのような探求心がないと言ったが、それは間違いだ。誰よりも彼女は動かされている。自身の内から湧き出る探求の心に。


 謎多きトゥルーを探る。それが〝外の理〟に触れ得るモノだと……彼女の魂が本能的に察している。


「悪いけど、君の疑問のすべてを僕から明かすことはできない。これは別に勿体ぶってるわけじゃなく、僕にも分からないのさ。さっきの〝君を守る〟というのも、実のところどういう意味があるのかまでは知らされてない。ただ〝クエスト(使命)〟として〝やれ〟と言われたからやってるだけなんだ。所詮は僕()もまだまだ探求の途上でね。正直なところ、探求の旅の果てに何が待っているのかも分かっていない」


 異国風の青年はそう語る。まだ語れることがそうないのだと。訳も分からずやらされていることが多いのだと。


「ねぇ、だったら私を連れて行ってよ。あなた()()の探求の旅に。()()()()()()()……」


 イノセンテは願う。探求の旅への同道を。この世界から出て行くことを。


「流石だ。やはり気付いていたんだね?」


 こくりと頷く。彼女は青年トゥルーが〝外〟からの来訪者だと気付いていた。クレアから受け継いだ数々の情報が、彼の秘密のあれこれを指摘していた。その正体について、僅かながら手が届いていた。


「ねぇいいでしょう? 私は元よりこの世界から切り離されている。〝外の理〟に触れても問題ないはずだわ。あなたという〝解答〟があるのに、今さらこの世界で探求するなんて、時間と労力の無駄遣いじゃない?」


 それはまさに、彼女の生みの親たるクレアの渇望だ。この世界の理を超える。外の理に触れる。


「はは。やっぱりね。思ってた通りだ。僕らのこの世界での〝クエスト(使命)〟の大本命は君だった。イノセンテ、君は……君こそが、この世界が望んだ〝超越者(プレイヤー)〟だ」


 イノセンテの懇願を受けたトゥルーは、そこになにかしらの気付きを得た模様。


 彼は彼で、その意味も分からないまま、行動の結果がどこに繋がるのかも知らされず、ただ〝上〟から出されるお題を強制的にやらされることも多かった。


 しかし、今、トゥルーは一つの解を得た。膨大な数の謎がある中で、ほんの一つの解答だ。


「? なにを言っているの? 本命が私? 私がこの世界の〝ぷれいやー〟?」


 一方でイノセンテからすれば意味不明。クレアから受け継いだ情報に、今の状況に合致するものはない。トゥルーが得た解に辿り着けない。ヒントが足りなさ過ぎる。


「イノセンテ。悪いけど、僕らの旅に君を連れて行くことはできない。君は……自力で辿り着くんだ。君はこの世界の〝超越者(プレイヤー)〟として、正統な手続きの末に〝漂流者(ドリフター)〟の資格を手に入れるんだ。そして、この世界を飛び出していくその時にこそ……改めてまた逢おう」


「……意味が分からない。〝ぷれいやー〟ってなに? 〝漂流者(ドリフター)〟とは何者なの? どうすればその資格を手に入れられるの? あなたはどこから来てどこへ行こうというの?」


 イノセンテには焦り。なぜなら、目の前にいるトゥルーの姿が徐々に()()なっている。まるで、はじめからそこにいなかったかのように……幻のように消え失せようとしている。


「〝超越者(プレイヤー)〟とはダンジョンに挑む者。〝漂流者(ドリフター)〟は〝外〟にある()()()()()()()を渡り歩く者。そして、僕はダンジョンによって滅びた無数の世界の内の一つであり、その記憶を継ぐ者。ダンジョンの深奥を目指す探索者にして、真理の果てを追及する者さ。イノセンテ、君が〝外〟を目指すなら、まず手始めに魔導学院にあるダンジョンを探索してみるといい」


「待って! もっと教えて! 〝外の理〟を! ダンジョンに挑むってどういう意味なの!?」


「さよならイノセンテ。恐らくこの先、君には世界からの〝クエスト(使命)〟が届くだろうけど……最終的にどんな選択をするかは君次第だ。だけど覚えておいて。君という存在は、この世界が生んだダンジョンに対抗するための希望の光。君の歩む道が、そのままこの世界の歩む道になる」


 意味深な言葉たちを残し、〝漂流者(ドリフター)〟を名乗る、胡散臭い青年トゥルーはついに消失する。退場する。


 場に取り残されたイノセンテは、呆然と一人立ち尽くす。


 怪しい青年が残した言葉は意味不明で思わせ振りなものばかり。いかにクレアが積み重ねて来た情報を以てしても、その真意に、真相というべきものには辿り着けない。決定的に情報が足りていない。


 イノセンテがはっきりと理解できたのは一つだけ。あの怪しいトゥルーという人物と、〝この世界〟で再会することはもうない。それだけが確かだということ。


「……あーあ、行っちゃったか。ふぅ……これから私は、一体どうしたらいいのやら……はぁ……」


 彼女は無垢なる存在であり、世界から切り離された自由なる探求者という立場を与えられた。


 イノセンテは思うのだ。〝自由過ぎると、次に何をしていいのかが分からない〟と。


 真白いキャンバスを目の前に置かれ、さぁ絵を描けと言われたようなもの。


 人物画を描くのか?

 それとも風景画か?

 画材は何を使えばいい?

 どのような手法、様式に則って描く?

 誰かに見せる物か?

 それともただ私が私のためにだけ描くのか?

 依頼者はいるのか?

 その好みは?

 絵ではなく字を書くのは駄目なのか?


 分からない。


 イノセンテには指標となるモノがない。誰もそれを与えてくれない。


「はぁ。どうであれ、いつまでもこうしていられないか。まずは王都に着いてから……」


 この瞬間までは。


『まぁなんダ、とりあえずは祝福しとくゼ、イノセンテ。ようこソ、新米〝プレイヤー〟』


「ッ!?」


 唐突に声が降って来た。イノセンテの知らぬ声が。とあるしがないオークの声が。


 彼女にとって、それは正真正銘の〝託宣〟。導きの声。


 果てなき〝クエスト(使命)〟のはじまり。



:-:-:-:-:-:-:-:



 ……

 …………

 ………………



 薄暗い部屋の一部に灯りが漏れる。その灯りが光源となって部屋を照らしてもいる。 


 灯りの前には人影が二つ。


 その灯りには、遠く離れた地の人々の営みが映し出されている。


 人影たちはそれを眺めているという構図だ。


「これで本当に終わりか。ふぅ……ようやくだな。っていうか、ジレドさんはまたこの世界で〝再利用〟か……色々と苦労の多いヒトだ」


 人影の一つが呟く。男の声だ。その彼の声は、疲れ切った末の溜息のようでもあり、やり切った万感の思いが込められたもののようでもある。


「……イノセンテや〝導き手〟として選ばれたジレドさんはともかくとして、問題はアルバート・ファルコナー。結局のところ、彼もこの地の〝超越者〟だったの? それとも〝鍵なる者〟の役目を与えられていただけ?」


 別の声。こちらは女。落ち着いて淡々とした声の主が、もう一つの人影。


「その辺りは分からないままだね。というか、この地はまだ〝飲み込まれていない〟から、少なくとも〝鍵なる者〟じゃないとは思うけど……まったく、この世界のヒトたちはとんでもない。なんでダンジョンに飲まれつつも普通に暮らせてるんだか……」


 応じる男の声には、明確に〝呆れ〟という成分が多分に含まれている。


 常識外の出来事には慣れている男だったが、この地に住まう人々の異質さは飛び抜けている。それが男たちには分かってしまう。()と比べることができるから。他の事例を知っているから。


「……確かに、この世界のヒトたちは異常。己惚れてたわけじゃないけど、まさか、あそこまで強い戦士がその辺にゴロゴロいるなんて思わなかった。中でもあのブライアン・ファルコナー卿……フル装備、フル強化の上で奇襲を仕掛けたとしても、彼には勝てるビジョンがまったく視えない」


「はは。当初はブライアン様を〝超越者〟だと勘違いしたくらいだしね。〝外〟の記憶はあるようだけど、どうにも僕らとは仕組みが違うみたいだ。まさか彼ほどのヒトが〝単純に強いだけの現地人〟だなんて……相変わらずふざけた仕様だよ。いや、まぁ……この世界については、そもそもダンジョン仕様とは別なんだろうけど……」


 男と女は語る。この世界の異常さを。彼らからすれば、一仕事終えた後の愚痴交じりの感想会のようなもの。


「ねぇ、もうこの世界が異常なのはじゅーーーーーーぶんに堪能したんだしさ、とっとと帰還しない? 流石に今回の〝クエスト〟は疲れちゃった……はぁ、ダイジェストやスキップなしのリアル三十年はキツいよ」


 また一つ、別の女の声がする。薄暗い部屋の隅で、壁を背にして足を投げ出すような形で座り込んでいた。


 彼女はあからさまな不機嫌さを隠そうともしない。


「はいはい。分かったよ。確かに謎が残るのは()()()のことだし、僕らがあれこれ考えても答えなんて出ないだろうさ。〝レーヴェ〟の言う通り、ここはとっとと帰還して、後の謎解きは検証班に任せるとしようか。ただ、元の世界で一体どれくらいの時が流れたのかが分からないな。僕らの知ってる検証班はまだ現役かな?」


 男は〝レーヴェ〟と呼んだ壁際の女をちらりと見やりながらそう応じる。


「……ふぅ。〝時のすれ違い〟は言わない約束でしょ? あと、そのクソダサいコードネーム呼びも止めてっていつも言ってるでしょ?」


 ただ、親しみの範疇なのだろうが、女の機嫌を気にすることのない男の発言は、彼女の反感を買った模様。


「いや、〝現地〟ではコードネーム呼びが規則だろ? 一応、僕らはまだ帰還してないわけだし……」


「よくもまぁ……そのふざけた規則を作った特務長官は誰なんだって話よ。ま、そっちがその気なら、こっちだって戻ってからも〝トゥルー〟呼びするよ?」


「それとこれとは違うだろ。戻ってからは止めろ、マジで」


「ほら! 自分だって恥ずかしいんじゃん! この〝トゥルー〟ッ!」


 途端にガキの口喧嘩に発展する二人。二人にとってはコードネームは地雷なのだろう。


「……二人とも止めて。今さらそんなくだらない話……」


 わーわーと、どうでもいい口論をする二人(ガキども)に対し、呆れを隠そうともしない先の女。彼らの中ではもう定番のやり取りなのか、口では止めろ言うが、特段に止めようとは思ってもいない様子。


「へ、へぇ~~? くだらない話なんだ? じゃあ、戻ってからも〝ホークテイル〟だからね?」


「……私は別に構わない。コードネームなんてただの記号」


〝ホークテイル〟と呼ばれた女は静かに受け流す。……言葉の上では。


「……さて、〝レーヴェ〟は〝クエスト〟中の事故で帰還不能……っと」


 やはり彼女にとってもコードネームは地雷だった模様。


「ちょッ!? ほ、ほんの冗談だから! ナチュラルに刀を抜こうとしないでよッ!? 事故じゃなくて事件じゃんッ!」


〝ホークテイル〟と呼ばれた女が、いつの間にか腰に()いた刀に手を掛けている。それはごくごく自然で何気ない所作ながらも、抜刀の気配がぷんぷんするという危うさがある。


「……知らないの? 発覚しなければ事件じゃない」


「淡々と言うの止めて! 相変わらず発想も怖いし!」


「はいはい。おふざけはその辺にして、ようやくシステムからの通知が来た。あと、どうやらイノセンテは〝外〟を目指すことにしたらしい。これで本当に僕らは帰還だ」


 軽くぱんぱんと手を叩きながら、怪しい青年〝トゥルー〟が二人を制する。


「……そう。やはり彼女はダンジョンに挑むのね」


「みたいだね。まずは生活の基盤づくりとして、アルバート殿の〝ギルド〟の門戸を叩いたようだ。はは。まったくいい度胸してるよ、あの子」


「でも、手立てとしては順当じゃない? あのアルバートだったら、ある程度の事情を説明しても受け入れてくれそう。復讐相手のレアーナもいなくなったことだし。あと、〝トゥルー〟や〝ホークテイル〟と違って、ファルコナーの人たちって情に篤いしさ」


 トゥルー、ホークテイル、レーヴェ。


 来訪者にして〝漂流者(ドリフター)〟たちは語らう。勝手気ままに。


 それでも、三人は心から祈っている。この世界の先行きが明るいことを。





『おめでとうございます。クエスト【とある魔境の狂戦士】をクリアしました。また、裏クエスト【無垢なる超越者への誘い・Ⅰ】のクリアも確認されています。裏クエストクリアにより、セーブポイントが設定されました。それでは、良いダイブを!』





 アルバート・ファルコナーの〝物語(人生)〟は続く。


 イノセンテの〝クエスト(使命)〟が始まる。


漂流者(ドリフター)〟たちの果て無き旅路はまだ終わらない。




:-:-:-:-:-:-:-:

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― 新着の感想 ―
おお、上手い。 他作品のキャラや設定を、いい感じに差し込みましたね。 最後のちょっとしたネタばらしに差し込んだのは、新規も古参もにっこりな良采配だと思います。 物語の中核に唐突にぶっ込んで、新規を置…
この作品が外伝やったんや、全然気づかなかった とても楽しめました、完結お疲れ様でした!
ラストが、光瀬龍の「百億の昼と千億の夜」風ですね
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