第2話 ある旅路の終わり
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便宜上魔族領と呼ばれていた、マクブライン王国が開拓に乗り出さなかった未開の地。
どちらが勇者でどちらが魔王かはさておき、力ある者どもによる災害級の魔法の応酬によって、一部は地形すら変わり、ある意味で未踏の地ではなくなったわけだ。
しかし、だからといって特に大きな変わりなどない。
これを好機と捉えて、魔族領の奥地を開拓しようとする者はいない。少なくとも、マクブライン王国やルーサム伯爵家はそれを是としない。
真っ当なヒトを寄せ付けない未開の地というのは、そうなる理由があってのことだと彼らは重々承知している。
事実として、魔物の方がヒト族よりも生物としては圧倒的に強い。辺境の奥地という過酷な環境に適応した魔物たちならなおさらのこと。
ヒト族……魔族をはじめとした亜人種を含めても、強力で異常な個体が数体いた程度では、辺境の奥地で種族として繁栄を勝ち取るにはまるで足りない。
つまり、騒動が収まった以上、さっさと引き上げるという選択肢しかアルたちは持ち合わせていない。
なんなら、ザガーロの側近やクレアの眷属といった〝物語〟に挑んだ者たちの中でも、未だに自我と存在を維持したままという運と力のある個体もいるにはいる。だが、そういう連中とて、単独で辺境の奥地に留まり続けられるはずもない。
理由はそれぞれだが皆が去っていく。
不躾な侵入者が去った後、魔族領の奥地は時の大河の中でこの度の傷をゆっくりと癒すのみ。
結局のところ、誰もが〝あるべき場所〟〝あるべき姿〟へと帰っていくだけのこと。
「ま、まぁ、なんだかんだとありましたが、とにかく無事で良かったです。反属性の融合とやらも収まったみたいですし!」
アルが敢えて明るい口調でそう語る。確かになんだかんだはあったが、事態はとりあえずのところ収束した。
アダム王子が王家の秘儀を行使したことにより、セシリーの内にて今か今かと発動を待っていた反属性の融合とやらは鎮静した。
変質してしまった髪や瞳の色は元に戻らなかったが、超兵器セシリーはただのセシリーへと戻った。一先ずは。
しかしながら、誰もアルの言葉に賛同しない。食い付かない。従者たるヴェーラですら無言を貫く。むしろイラっとしている。
「うー……ん。ぼんやりとして実感がないままなのだが……色々と迷惑を掛けて申し訳なかった……この通りだ……」
当のセシリーが反省の意を口にするが、頭を下げたり謝罪の礼を取ったりはしない。物理的にできない。
なにしろ、今は白き焔を纏うマナの鎖での簀巻き状態となり、地面を引きずられている最中なのだ。
クレアを捕らえた際と同じ。『縛鎖』と『聖炎』の合わせ技再びというところ。
そして、アダム王子は完全に意識を失った状態で、ダーグに荷物のように担がれている。
傍目には、とても一行が〝無事〟なようには見えない。
「……ダーグ殿。アダム殿下は大丈夫なのですか?」
アルやセシリーを完全に無視する形でダリルが口を開く。
「ふッ。命に別状はなイ。恐らク、この馬鹿な若造が一人で秘儀を行使するにハ、どうにも神子殿の力が大き過ぎたのだろウ。かつて我と契約を交わした者モ、ここまでではないにしロ、一時的に秘儀の揺り返しを受けて動けなくなったものダ」
王国領土を陣とした特級呪術とでも言うべき王家の秘儀により、アダムはどうにかセシリーの力に制約を課した。が、いかに反則的な王家の秘儀を以てしても、彼一人と神子セシリーではどうにも釣り合いが取れなかった模様。秘儀を行使した側が昏倒してしまう羽目に。
冥府の王の瘴気を封じる形で反属性の融合を防げたが、元々セシリーが持ち合わせていた白きマナの暴威は健在なままという有様。
「まったく! どうしてお前は未だに力を垂れ流してるんだ!?」
「う゛ぅ……め、面目ない……どういうわけか上手くマナを制御できないんだ……こう、まるでマナ制御の部分だけ気が昂ったままとでもいうか……異物的なナニかが居座っているような……?」
王家の秘儀などにより、一応は正気を取り戻したセシリーだったが、その白きマナは猛ったまま。脅威的な風の刃を身に纏い、それを自力で制御できないという危険極まりない状態が続いている。
未開の地で、セシリーとアダムのいつとも知れぬ快気を待つわけにもいかず、強行軍的な撤退を敢行しているというのが現状。
「(異物ねぇ……ジレドは最後まで種明かしをしなかったけど、現世に無理矢理召喚された女神様ってのは、実はそのままセシリー殿の中に封じられたんじゃ? いや、流石にそれはベタ過ぎるか?)」
ダリルとセシリーのやり取りを観察しながら、アルはジレドが残したナゾナゾについて考えてみる。
神子であるセシリーの中に女神が封じられたとしたら、ある意味では主と従の入れ替わりのような皮肉な話であり、女神側への罰としてはあり得るが……アルとしては、あまりに捻りがない気もしていた。
「なにが異物だ! そもそもお前の勘違いが騒動を大きくしたんだぞ!? 今さらお前の感覚なんて信用できるかッ!」
「そ、そう言われると返す言葉もないんだが……そもそもはダリルが勝手に出て行ったから……ごにょごにょ」
流石のセシリーも女神の力を振るって大暴れした自覚はある。ダリルが死んだと勘違いしてキレてしまったという羞恥も。
それ故に、そもそもの発端となった幼馴染の身勝手を責めようにも言葉に力が入らない。
「ダ、ダリル殿、セシリー殿も悪気があったわけでもないのですから……」
思わずヴェーラが口を挟むが、それはセシリーを擁護するというより、ダリルへの苦言という意味合いが強い。
「ヴェーラ殿。いかに悪気がなくとも、コイツは災害級の被害をあちこちに撒き散らしたんだ。下手をすればアル殿だって危なかった。悪気がないでは済まされないし、むしろ余計に性質が悪いとも言える」
「い、いえ、ダリル殿、そういう話ではなくて……とにかく今は『聖炎』の制御に集中して欲しいんです……ここでセシリー殿への抑えをしくじれば、それこそ洒落になりません」
ヴェーラはヴェーラで気が気でない。『縛鎖』ごしに、今まさにセシリーの暴威をひしひしと感じているのだ。彼女を責めるダリルにも、気を逸らして歓談しようとするアルにも共感できない。それどころか、元凶であるセシリーよりも二人へのヘイトが高まっている。〝今は危険極まりない魔道士に集中してくれ〟と。
「(……あれ? こんな時、アル様やダリル殿に軽く苦言を呈するヒトが他にいたような……? オーク族?)」
ふと、小柄なオーク族の姿がヴェーラの脳裏に過ぎる。
「(気のせい……?)」
ただ、彼女も違和感を抱いた程度で終わり。砂粒ほどの記憶の欠片はそのまま流れされていく。留まらない。
「おっと……そ、そうだな。すまないヴェーラ殿。今はこの馬鹿を抑える方が大事だった」
至極真っ当な指摘に素直に従うダリル。
「え、えぇ。引き続きお願いします」
今は自分の役割に徹しようとするヴェーラ。
「いや……本当にすまない……」
簀巻き状態で引き摺られながら反省するセシリー。
「(うーん……まぁ色々と気になることはあるけど、後始末はお偉方がなんとかするだろ。こっちとしては、まずは王都に戻ってコリンたちと話をしないとな……)」
今度こそひと段落ついたと、先のことを考えるアル。
それぞれがそれぞれの思いを抱えながら、一行は帰路につく。まず目指すのはルーサム家が管轄する砦。辺境地の前線基地にして、人々の営みがある場所だ。
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「……それが貴方の望みであれば、僕は一介の戦士として応じましょう」
対峙する相手を真っ直ぐに見据えながら、アルは伝える。応じる。
ここは大峡谷の奥地……魔族領との曖昧な境目付近にある砦であり、アルたちが目指していた場所。
砦内の片隅にあるちょっとした広場にて、アルをはじめとして数人の人影が見える。
魔族領を強行軍で突っ切り、ルーサム家の管轄領域にようやく辿り着いたアル一行は、ほっとひと息つく間もなく、それぞれの待ち人に対応することに。
まず、王弟ダスティン一行がアダムとダーグを迎えた。
意識のないアダム王子を認識し、護衛たちの間にざらついた気配が漂うも、ダスティンが目配せだけで制する。
彼は簀巻き状態のセシリーと意識不明のアダムを見て、即座に事態を察していた。
アダム王子の容量不足とセシリーの規格外の力を。
王家の秘儀は王国領土を陣とした儀式魔法であり、血統を媒介として発動する類のもの。
言葉が通じて合意形成ができれば、理論上はどんなに無茶な内容であっても制約を課すことができるのだという。
ただ、いかに理論上は神の奇跡に等しき秘術であっても、現世においては当然に制限もある。
単純に術者の限界だ。
王家の秘儀はあくまで契約。相手に一方的に制約を課すことはできない。相手の力の大きさや制約の内容に対して、術者本人の器が足りなければ成立しない。
ようするに、アダム一人の器では神子セシリーの力の一部を抑制するに留まり、完全な契約の履行とまではいかなかったということ。
セシリーが〝異物〟と称したのは、まさに王家の秘儀たる契約の力に他ならず、制御が利かないのは契約が不完全だからという話。今回に限っては、セシリーはそれほど悪くなかった。
結局、未だに力が暴走し続けている神子は契約の仕切り直し……アダムの弟であるカインが追加で秘儀を行使するということになり、そのままダスティン一行に連れられて行く。拘束役となったヴェーラとダリルも。つまり、アル以外の皆がだ。
『ほほ。勇壮なる戦士アルバート殿よ……老いぼれの我儘に付き合ってもらい感謝に堪えぬ。この通りじゃ』
老齢の戦士が頭を下げる。その手には、真っ白な刀身を持つ湾曲した剣が抜き身のままに握られている。
妖刀『殿』。
すでに鞘はなく、抜き身の刀身が収まる先はない。帰る場所はない。
セシリーたちがばたばたと連れて行かれたあと、場に一人残され、手持無沙汰になっていたアルだったが……彼を待っていた者もいた。
遠い昔に魔族領を追われた流浪の民の一員。
流浪の果てに王国に定住を許された名もなき氏族の長たる者。
氏族の者に生きる道を残し、新たな道に馴染めぬの者と共に滅びゆく老戦士。いや、すでに滅びた者。定命の生者として命を全うした者。
「いえ、死してなお〝戦士〟であろうとする方に敬意を払うのは当然のことです」
『わしは卑怯者じゃ。貴殿ならそう言ってくれると期待してのことよ』
ヴィンス。
『殿』の最後の効力により屍兵となった彼は、『殿』の運搬という本来の役割をあっさりと放棄し、アルバート・ファルコナー唯一人を求めた。
「一応、お聞きします。見届け人はエイダ殿に?」
『ふっ。所詮は滅びた氏族。今やわしもただの亡者よ。もはや我らに現世での繋がりなどない。そもそも、アル殿とのやり取りにおいて見届け人など不要……と言うたんじゃがな』
対峙するアルとヴィンス。そんな二人を見守るように三つの人影がある。
一つはエイダ。その瞳には強い意志が宿っている。
「……戦士アルバート殿。本来ならば半端な私に資格などないのだが……それでも、ここで見届けさせて欲しい」
静かに、真摯に頭を下げる。彼女にも分かっている。必要のない役割であり、なおかつ自身が相応しくないことは。
「それは僕が決めることじゃありません。ですが……ヴィンス殿。僕はエイダ殿こそが見届け人であるべきだと思いますけどね」
視界の端で捉えてはいるが、アルはエイダを見ない。目の前のヴィンスから視線を外さない。それは戦士としての礼節であると同時に、危機を前にした本能としてもだ。
『重ね重ねすまぬな、アル殿よ』
そう語るヴィンスの表情は穏やか。傍から見れば、とても亡者とは思えぬほどに柔和だ。
が、彼の望み自体は穏やかならざるもの。
死合い。
彼は現世での最期の相手にアルを求めた。
名もなき氏族の長としてではなく、ただの戦士として、より強い戦士と戦って逝きたいのだと。
アルはその願いに応じた。こちらも一介の戦士として。
彼はヴィンス一族の習わしを詳しくは知らない。少なくともファルコナーには、生涯最後に強い戦士と決闘するなどという風習はない。
だが、古老の戦士が生涯最後の相手として自分を選んだ。より強い戦士と戦いたいというその行動の意味は理解した。
勝敗という結果は明白だが、これは勝ち負けの話じゃない。
亡者となりながらも自我と存在を保ち、ただただ強者との戦いで果てるのを望み、現にこうして死合いの申し出を受けた。それはそのまま、戦士アルバート・ファルコナーへの敬意の表れに他ならない。
やられたらやり返す。
敵意には敵意を。
敬意には敬意を。
それはファルコナーの根源的な流儀だ。
「……見届け人というには烏滸がましいですが、私もお二方に立ち会わせて頂きたいと存じます」
少し距離を置いた一つの人影。ヨエルが静かに言葉を紡ぐ。
《王家の影》という暗部組織に属してた彼とて、ヴィンス老の願いやそれをそのまま受け入れたアルに思うところはある。
「偉大なる老狼ヴィンス殿。研ぎ澄まされた若き刃アルバート・ファルコナー殿。両名の行いが、私闘を禁じるルーサム家の法に反したものではないと……このバライア軍団長補佐役クスティの名に懸けて保証する。誰にも邪魔立てさせないと誓おう」
セシリーたちと行動を共にしていたクスティもまた、両者の行動を是とする。
本来、多種族を召し抱えるルーサム家私兵団では、出自や身分を問わず、法と規律には厳しい。私利私欲や感情任せの私闘など以ての外。厳禁だ。しかしながら、この度、クスティは自身の名において背負う。
そのすべては分からずとも、彼もヴィンス一族の習わしの意味を理解していた。
これから行われるのは、ルーサム家の法に反する私闘ではない。なんなら決闘や死合いですらない。
これは老戦士の葬送の儀式なのだと。
『ほほ。クスティ殿よ。ルーサム家の管轄地において、勝手気ままに振る舞う無礼な老いぼれへの気遣い、まことに感謝いたす』
「誇り高き先達には敬意を。明らかな害意や周囲への被害がないならば、ルーサム家は他家や他氏族の習わしを受け入れ、尊重いたします」
場は整った。
穏やかに、朗らかに、静かに、いざ。
『さて……アル殿よ』
『殿』を地に突き立て、柄頭に両手を置いてどっしりと構えるヴィンス。
「ええ。ヴィンス殿」
だらりとした立ち姿。自然体のままのアル。
一合で決まる。お互いに二の手はない。
ここがヴィンスという翁の、名もなき氏族の古き強き戦士の……現世での旅路の、正真正銘の果ての果て。
彼は望みを叶えた。
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……
…………
………………
静寂に包まれた場で佇む。
目の前には一振りの湾曲した剣。真っ白な刃を持つ刀。すでに妖刀たる力は感じない。もはや剣としての機能も怪しい抜け殻が地面に横たわっている。
「……お見事でした」
呟くのはアル。彼の胸元には真一文字の紅い一筋。真新しい傷。薄く皮膚を切り裂かれた痕が残る。
決着はまさに瞬き一つに満たぬ間でのこと。
手加減などなし。戦士の礼節に忖度など不要。
持てる力のすべてを込めて打った。
激情に駆られるままにレアーナに打ち込んだ時よりも、更に洗練された拳打だった。そんな自負がアルにもあった。
拳打はおろか、踏み込みすら認識できなかったはず。
にもかかわらず、ヴィンスは合わせてきた。
横薙ぎの一閃。無心の業。
ほんの僅かではあるが、古老の戦士の一振りは魔境の狂戦士に届く。確かに届いたのだ。
そして、ヴィンスは胸に風穴を空けられ爆散した。
亡者の最期らしく、マナの循環へと還って逝った。
抜け殻となった妖刀『殿』と、アルの胸に一筋を遺して。
「……真なる戦士、大老たるヴィンス様。その最期の一振り、しかと見届けました」
エイダが口を開く。静かな余韻を、遠慮がちにそっと裂くかのように。
アルとヴィンスの刹那未満のやり取り。この場では、辛うじてクスティがその残照を知覚できたのみ。
実のところ、エイダとヨエルには見えなかった。気付けば終わっていた。
だが、それでもエイダには視えた。
微笑むヴィンスが、満足を胸に抱き、強き戦士に斬撃を見舞う姿が……はっきりと脳裏に刻まれた。
「エイダ殿。僕にはヴィンス一族の習わしが分からない。だから失礼にあたるかも知れないけど……この刀はあなたが持つべきだと思う。もう力は失われているようだけど……」
仲間を逃すために、命を捨て自らを亡者と化す。そんな外法を宿した妖刀『殿』。
その謂れを知らずとも、この刀が亡者となったヴィンスを現世に留めていた楔のようなモノだというのはアルも気付いていた。その楔が、黄泉路を渡ったヴィンスと共に永遠に失われてしまったことも。
「本来、挑んだ戦士の形見は勝者である強き戦士が受け継ぐのだが……ファルコナーや王国にそのような習わしはないようだな。所詮は我らの身勝手な風習だ。今さらではあるが、アルバート殿に我らのやり方の全てを押し付けるのは……ヴィンス様も望まないだろう」
一歩一歩を踏みしめるように歩を進め、エイダはアルの手前で片膝を突いて頭を垂れる。恭しく両の手を掲げるようにして構える。
それは名もなき一族の作法なのだろう。詳しくを知らぬとも、アルもそれらしく振る舞う。
ゆっくりと、丁重に、ぐずった末にようやく寝た赤子を抱くように、敬意と畏れを込め、横たわっていた『殿』を両の手でしっかりと拾い上げる。
そして、そのままエイダの構えた手の平の上にそっと置く。授ける。
「強く気高き戦士アルバート殿。我らが習わしに付き合ってくれたこと……心より感謝を」
目を伏せ、頭を下げたままに感謝を述べる。言葉の通り心の底から。
今のエイダには分かる。
名すら忘れ去られた流浪の民の風習を馬鹿にせず、ごく当たり前に、真摯に応じたアルやヨエル、クスティらの気高さが。誇りを胸に抱く戦士の気風が。
自分たちの狭い輪の中でしか物事を考えられなかった、守られているだけの愚かなガキには分からなかった。
他者から尊重されるためには、なによりもまずは自らが示さなければならなかったのだ。
私欲による力や口先だけの薄っぺらな誇りなどではなく、他者への敬意を。真摯に応じる姿を。自身の足で立つ気概を。
「(ヴィンス様、あなたの目に狂いはなかった。アルバート・ファルコナー……この御仁は、あなたの最期に、我らが一族の終焉に相応しい高潔なる戦士だ。そして彼だけじゃない。ヒト族には、王国の貴族家には、尊敬に値する戦士が当たり前にいる。……かつての私の曇った眼では……こんな〝当たり前〟すら見えていなかったよ)」
折に触れてこれからも度々振り返るだろう。
しかし、もうエイダは立ち止まらない。後悔と恥に塗れた己の罪を抱えて歩いて征く。
主と定めたセシリーの下で、ヒト族の世界で生きていく。滅びし名もなき氏族の末裔として。
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※この章「狂戦士なモブ、後始末をするってさ」は、あくまで旧題:「狂戦士なモブ、本編に参加するってさ」の初期構想に近い【web版】です。
もし書籍化した場合、大筋は変わらずとも所々で違った内容になるかと思います。
その旨をご了承ください。




