プロローグ
「拝啓 父さん、母さん、俺はこの異世界の地——ブラミスの街にて冒険者登録をしました。
今はまだ一人だけですが、早く仲間を作りたいものです。」
そう手紙に思いを認めるのは、高校二年生であった倉崎和也だ。
何故、和也がいるこの地を異世界と呼んでいるかと言うと、和也が異世界転移をしたからである。
事の発端は一日前に戻る———
「和也、今日も学校に行かないで部屋に引き篭っているつもりかい?」
そう聞いてくるのは、和也の母だ。
和也が住む街は人口が少ない為に、クラスメイトが和也を含め男子が三人、女子が二人の計五人しかいない。
そんな中で、和也は二人の男子から揶揄われている所を女子はただ見てるだけ。
幼馴染の筈の女子も、ただ何も言えずに見つめているだけだった。
苦痛に耐えきれなくなった和也はそれ以降、学校に行くのを辞めて家に篭りゲームをして一日を過ごす様になっていた。
ある日の事、和也は普段と変わらない生活を送っていた。
「今日も普段と変わらない生活をしたなー。漫画やアニメの様に異世界で生活をしてみたいな。まぁ、そんな事は実際には起こらないもんな〜」
そんな呑気な事を呟いていたら、どこからか声が聞こえてきた。
———其方、異世界に行きたいのか。ならばその望み叶えてやろう。
「うわ…何だこの光は…眩しい…」
その声と共に謎の光が和也を飲み込んだ。
「うっ…ここはどこだ。何もないが…」
和也が目覚めるとそこは真っ白な空間にいた。
和也を中心としたら四辺が途方もなく続いていて、先が見えない。そう、ゲームで言うところの読み込まれてない感じに。
付近を一通り見渡した後、取り敢えず考える事を辞めて目を瞑った。
きっと夢に違いない。目が覚めれば、自分の部屋に戻っていると…
その時、また先程この場所に連れて来られた時と同じ声が聞こえてきた。
———よく来たな。私はこの空間を支配する女神だ。とりあえず、夢ではなく現実だから目を開けてくれないか?
女神と名乗る者に、目を開ける様に言われた和也は恐る恐る目を開ける。
和也が目を開けると、目の前には髪色が金髪でオレンジのワンピースを着ている女の人がいた。
「えっと…。初めまして、倉崎和也といいます。ほんとにさっきまでいた場所とは違う所にいるみたいなんですが、ここが異世界になるのですか?」
「先程も申した通り、ここは私が支配している空間なので異世界という訳ではありません。それにしても、いきなり連れて来られたのに落ち着いてますね?」
「なるほど。落ち着いている事に関しては、何となく憧れていた異世界に行けるから、いきなり連れて来られてもテンパる事はないですね」
疑問に思っていた女神に対して、簡潔にまとめて答えた和也。
実際、和也は元の世界で異世界の話を見たり、読んだりしていたので焦りなどはなかった。
寧ろ、心躍る生活を出来る事にワクワクしている所もあったりする。
「和也さんは面白い方ですね。では、和也さんを異世界に連れていく真の目的をお教え致しますね」
「真の目的?」
女神が真剣な眼差しで、和也に語り始めたが、とある言葉に反応してしまい思わずオウム返しをしてしまった。
それに対して女神は、首肯してから話の続きを始めた。
「元々、私は異世界に転移させる人間を選んでいました。だけど、数年探しても適正に合う人間は見つかりませんでした。そこに、〝異世界で生活したい〟という強い思いを感じ取りここに呼ばれたのが和也さん、貴方になります」
「まさか、軽い気持ちで言ったつもりが女神様には強い思いに感じ取られていたとは」
和也にとって異世界で生活したいは、あくまで現実的には起きない事の中での発言だった。
なので、強い思いがあるって言われた時、和也は内心かなり驚いた。
和也の様子を伺いながら、女神はまた話の続きを始める。
いよいよ話の根幹が語られるので、和也も女神の話を一言も漏らさないように一生懸命耳を傾けた。
「和也さんにやってもらいたい事、それは…」
「それは…」
「私と同じ女神を封印から解放して頂きたいのです」
「女神の封印?」
女神の封印と聞いて、ピンとこない和也はまたオウム返しをして聞き返していた。
「はい。和也さんに行ってもらう世界は私ともう一人の女神で作った世界になります。今から五十年前にもう一人の女神が視察で地上に降り立つ事がありました。その時に人間族と魔人族の二つの種族と話し合いがあったのですが、その時に各種族の一人が裏切って封印の儀式をしました。その二人は後に処刑されたのですが、封印は成功されてしまいた」
「その女神を助けて欲しいという訳なのですね。でも、封印を解いたとしてもその女神は貴方の元へ戻る事はできるのですか?」
「はい。私にはない特別な能力があるので大丈夫です」
その言葉を聞いて、和也は少し安堵する。
もし、封印を解いたとして戻らなかったら可哀想だと考えていた。
同時に、封印場所や能力など聞きたい事ができたが何かを察したのか女神は和也の目を見て話し出した。
「分かっていますよ。女神の封印場所は異次元の場所の奥にあるそうです」
異次元の場所という言葉に少し反応するも、話の途中に邪魔をするのはよくないと思い、言葉を飲み込んだ。
「異次元の場所…行くには五属性の精霊を仲間にすると開かれると伝えられています」
「五属性?それって魔法ですよね?」
「そうです。火・風・水・光・闇の五属性になります。そして、各属性に特化した精霊を仲間にして五属性が揃うと道は開かれます」
「どうゆう原理で道が開かれるのかは分からないけど、やるべき事は理解しました」
「では、異世界に行く為の準備を始めますね」
女神はそう言って、和也に一つ問いかけてきた。
「和也さん、貴方が異世界に行くと元の世界では貴方が行方不明扱いになるのと存在自体を消す事ができる二択が選べます。ここで注意して欲しい事は、存在を消すと二度と戻せないので異世界にで生涯を過ごす事になるので、よく考えてください」
存在を消す=元の世界で倉崎和也が生まれなかった事になる。
その事の重大さは、和也にも分かっていた。
だが、和也は元の世界でいい思い出があまりないので、存在自体消す事には異論はなかった。
ただ一つ気になる事と言えば、幼馴染の存在だけ。
——— 和也の答えは決まった。
「俺の存在自体を消す方で頼む」
「本当に良いのですね?」
「あぁ、覚悟はもう出来ている」
和也の目には迷いはなく、雄弁に物語っている。すなわち、「俺に考える時間はいらない」と。
女神は一つ微笑んで、頷いた。
そして和也に向けて手のひらを翳すと、光が放たれる。
「これにて和也さんに関する記憶は、元の世界からは無くなりました」
「そんなに簡単に終わるんですね」
「はい。女神と言うのはそーゆうものですから」
そんな力あるなら、他にも使い方ありそうだなと思いながら和也はその事を口には出さなかった。
「では、次に和也さんが異世界で生活する上で必要なスキルと武器を授けます」
「ついに…異世界転移の流れが来たー!!俺はこの時を待ってました」
「落ち着いてください。今から説明しますから」
異世界転移などが好きな和也にとってスキルはテンションが上がるもの。
「では、和也さんに授けるスキルは五つです」
女神が授けてくれる五つスキル———
・創造
・複製
・分解
・解析鑑定
・言語理解
一つ目の『創造』はその場に新しく物を創れるスキル。
二つ目の『複製』は物や武器などを複製できるスキルなのだが、レベルが上がれば相手のスキルも複製して自分のスキルの一部として取り込む事ができるとか。
三つ目の『分解』は大体の事は分解できる。例を挙げるとしたら、毒などを解毒薬使わずにその場で治せるなど。
四つ目の『解析鑑定』は相手の事や鉱石など分かる。
最後の『言語理解』は異世界でも話せる。
全ての説明を終え、女神は和也を見る。
和也は落ち着いて女神の話を聞いていて、複製と分解を上手く使えばいけるんじゃね?やいろんな事を頭の中を巡っていた。そして女神の視線に気づき和也も女神を見つめ返した。
「和也さん、スキルについてはこんなもんです。続いては武器です。私から和也さんに授ける武器は『剣魔銃』と言います」
女神は亜空間から、武器を取り出した。
「剣魔銃?」
剣魔銃と言う名前に想像が付かなく、女神に聞き返した。
なので、女神は剣魔銃について話し出した。
『剣魔銃』
魔力を使って変形できる武器。
銃モードは最初の形態。腰にホルスターを付けて持ち運ぶ。
ソードモードの場合、銃口の上にある照準がナイフ型になり持ち手部分が縦になる。
そして説明を終えた女神は、今度は和也に剣魔銃を渡した。
和也は剣魔銃のカッコ良さと唯一無二の武器に目を輝かせていた。
そして、また女神は話し出した。
「後は〝女神の加護〟というものがあるのですが、それは時が来た時に現れるでしょう。これで全ての話が終わりました。和也さん、依頼の件頼みましたよ」
「はい。ありがとうございます!依頼の件頑張ります」
「でも、折角の異世界なので楽しむ事も私は許しますからね?依頼さえ順調に進めてもらえれば」
女神は微笑んで和也に言った。
和也はその言葉を聞いて、「ありがとうございます」と伝える。
「これより、倉崎和也様を異世界へと転移させていただきます」
女神の呟きに和也の下に魔法陣が現れる。
そして、この空間に召喚された時と同じく光が現れて和也を飲み込んだ———
「和也さん…どうか頼みましたよ」
女神は一人そう呟き、その場から姿を消した。
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