side天乃 もうひとりの私
見ていただき、ありがとうございます!!
今回は天乃目線ですが、ややこしかったらごめんなさい。
私は立入禁止の屋上で一人、一冊のノートに目を落とした。
【乙女ゲーム『君に願うスターチス』通称『キミスタ』について。】
『佐久間 健一郎』
中学の時に放課後、帰っていると、高校生の不良に目をつけられ、そこからひどいイジメを受ける。
高校に入っても弱い自分が嫌いで、でもそれを変えられない自分が嫌いだった。
そんなとき、落とし物を拾って仲良くなったヒロインが、そんな彼を勇気づけることにより、イメチェンをすることに決める。
イメチェン前はいかにも根暗みたいな感じが、イメチェンしてみると、神々しいイケメンに!!(ここ大事)
そして、自分を変えてくれたヒロインに感謝する。
イメチェン前警戒するが、イメチェン後は甘々に溺愛するというギャップでメインヒーローを抑え、人気投票一位になる。
『白雪 愛華』
『佐久間 健一郎』のルートで出てくる悪役令嬢で『佐久間 健一郎』の幼馴染。
『佐久間 健一郎』の好感度をある程度上げると嫌がらせをする。
言いがかりをつけてくるのはまだいい方で、ひどいときには『万引きをした』『パパ活してる』などの噂を立ててくる。
しかも証拠が残らないから誰も助けてくれない。
彼女の動機はただ単なる嫉妬。
彼女は『佐久間 健一郎』のことがずっと好きだったため、『佐久間 健一郎』の好意が自分以外の女に移ることが許せなかった。
ただ、最終的には『白雪 愛華』のした悪事は『佐久間 健一郎』にバレて、『白雪 愛華』は嫌われる。
通称『魔女』。
その名で呼ばれるのは、その悪事のせいでヒロインが佐久間 健一郎に嫌われて攻略の難易度を高くしたことから、『キミスタ』のプレイヤーから嫌われているからだ。
【『佐久間 健一郎』の攻略方法】
まずは彼の教室まで行き、そしてデパートへのデートに持ち込む。
その後、__
ところどころについている(こんなのおかしい!!)(なんでゲームのシナリオどおりに話してくれないの!?独り言みたいじゃないの!!)などと赤色で書かれたところもくまなく読む。
それを一生懸命読んでいた私は近づいてきた足音に気づき、顔をあげた。
私を愛しているという人のうちの一人。
この学園の生徒会長サマだった。
「天乃。勉強熱心だな。」
フッ、と笑いながらそう言われて、彼が望むように潤んだ瞳を保ちながら甘やかに微笑む。
「そうでもないですよ。会長はなんでここに?」
会長と私が呼んだ彼は顔をしかめた。
「ああ‥‥‥、ちょっとな。それよりも天乃。会長はやめろって言っただろ。敬語もだ。」
そう言って、私の顎を掴んだ彼に照れたふりをした。
「‥‥‥とうむ、くん。」
「そうだ。それでいい。」
満足げな顔を見上げた。
『そうだ、それでいい』って‥‥‥、苛つくな‥‥‥。
顎も痛いし。
私はモノじゃないのに、彼の思い通りになることだけを求められている。
‥‥‥健とは全然違う。
でもその感情が出ないように、顔を再び微笑みに変えなて彼を見つめながら、私は違うことを考えた。
時間かな‥‥‥。私でいられる時間が終わる。
もうひとりの私がそろそろ出てくる。
ねえ、健。
私は祈るよ。
世界で一番愛おしいあなたに。
私のことはどうか忘れてね。
私に関わらないでね。
どうか‥‥‥、どうか‥‥‥。
そう思いながら、私は姫川 天乃を交代した。
自称ヒロインな彼女もう一つの人格に。
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体が自分の思い通りに動くことにニヤリと笑った。
まったく‥‥‥、もうひとりの私は頑固なんだから。
さっさと私にこの体をくれればいいのに。
まあ、いいわ。この体を占領することはあとで。
それよりも大事なのは現実となったゲームをクリアすること。
「‥‥‥絶対に逆ハーエンドをクリアする。」
意識が一瞬吹き飛んでよろけた私を支えてくれる、私だけの王子様を見ながら微笑んで誓った。
もう攻略するのはあなた佐久間 健一郎だけなのだから。
他の男は生ぬるくて、今、私の目の前にいる桃夢くんを含め、5人はもう攻略済みだし。
あと一人はあと少しだし。
あと攻略すべきなのはあんただけなのよ。
だから、待ってなさいよ。
佐久間 健一郎!!
バグったかなんだか知らないけど、ゲームでの動きをしないあなたを私が直してあげる!!
この絶対的ヒロイン様が!!!
お読みいただきありがとうございます。
天乃目線は結構悩みながらつくりました。
天乃様の天使さ、自称ヒロインのあの電波っぽい感じが難しい‥‥‥。
高評価やブックマークをつけていただくと更新頻度が高くなる!!かもしれません。