どうなるんだよ‥‥。これ。
「もしかしたら黄瀬さんは今までお前の言うことを聞いていたのかもしれない!!それは黄瀬さんが自発的に従っていたわけじゃない!お前が暴力でもって解決しようとするからそうしなきゃいけなくなっただけだ!だが、そんな状況から今俺は彼女を守ろうとしているんだぞ!?なのに黄瀬さんがお前側につくわけ無いだろ!?」
俺はさっきの光景を思い出す。すごい量の傷や痣を背負っていたって、妹の千陽ちゃんのことを思いやっていた。自分だってしんどいだろうに、千陽ちゃんを守ろうとしていた。
そうだ、黄瀬さんは強いんだ!
「黄瀬さんはな!めちゃくちゃ頑張っている可愛い女の子なんだ!!それをお前がめちゃくちゃにすんな!!」
「だが、それは所詮暴力に簡単に屈する女にあいつが生まれたのが悪いんだろ?つまりあいつが悪いんだ!」
「は?お前頭おかしいだろ。」
俺は薄ら寒さを覚えた。こ、こいつ‥‥、なんで副会長ができていたんだ!?初めてこの人と話したがこのまま話し続けていたら吐き気がしそうだ。
モラハラっていうやつと似ている気がする。トンダ理論を押し付け、自分のせいなのに相手のせいにする。逆に黄瀬さんが長時間一緒にいて呑み込まれなかったのが奇跡だ。
というか、男尊女卑なんて俺ら世代でも考えている奴いるとか正気か!?もう旧世代のものかと思っていたんだが‥‥。逆に珍しいものを見た気がする。
「くっそ。あの女が反抗的だったからいけないんだ。前も学校で俺との関係を断ち切るって宣言するし‥‥、こうやって外部の人間を家に入れるし‥‥。挙げ句の果てには涼風の家に突撃するなんて!!俺の出世街道を邪魔する気か!?女なら女らしく俺に従えっていうんだ!妹としてこの俺が扱ってやっているんだぞ!?感謝こそしても、俺に歯向かうなんて。」
「‥‥。」
さすがの俺も我慢の限界だ。
「おい。てめえ、今妹を貶したな?」
「それがどうした?義妹なんか下僕だろ?所詮はか弱い年下の女。従わせて自分の欲望を簡単に満たさせてくれる‥‥。」
あー、あー。
その言葉に完全に堪忍袋の緒が切れた。切れちゃいましたね。あーあ。
すうっと息を吸い込むと、俺は吐き出した。
「妹を舐めんなよ!!!」
その言葉を。
「は?妹なんて。」
「うっせーんだよ!てめえの言い分は時代遅れ過ぎて吐き気がするんだよ!今何時代ですかー?今は令和ですぅー!間違えないでください。っていうかなんだよ!妹なんて可愛くて可愛くて仕方がないんだろ!?そりゃ兄と比べたら力が弱いところがあるかもしれないけど、それがなんだよ!そこを守ってやるのが兄なんだろ!?違うか!?妹が自分の欲望の捌け口なんて勘違いどころじゃねーよ!キモ男!!」
「お、俺を、キモ男だと、時代遅れだと‥‥?貴様っ!許さんぞ!?」
「おーおー。許さなくて結構結構こけっここー。」
「クソっ!こうなったら、アイツラを呼んでやる!お前には敵わない力のある奴らにな!」
「っ!?」
しまった‥‥。黄瀬さんが言っていた、なんか危なそうな連中のことか!?それは俺も勝てねーぞ!?
ええ‥‥、許してほしいな‥‥。タコ殴りにされたくないな‥‥。
でも、俺はそのドアノブを離すことができなかった。
妹という存在を馬鹿にしたやつに黄瀬さんを渡したくないからだ。
碧音は、本当に生まれたときは小さかった。(今でも小さめ)
だから俺はこれまで碧音を守ってきた。だから妹という存在が守るべき存在だと思っているし、自分はそれを全うしたという自負がある。
だから、どうしても同じ兄として許したくない。こんな最低最悪のバカ野郎が黄瀬さんの兄であることを。
それに、こんな黄瀬さんを悲しませるどクズを許せない。
黄瀬さんと話すのは、いつもすごく緊張していた。でも彼女は俺のどもりながら話す言葉を馬鹿にしなかった。積極的に話しかけてきてくれた。
俺は表現こそできなかったが、高校生活を華やかにしてくれている黄瀬さんには恩義があるのだ。そんな黄瀬さんを今、助けたい。
あの黄瀬さんの部屋にあった天乃に贈ったものとよく似たブレスレットのこととか、天乃と一緒に妹さんへの虐待を防いだこととか、聞きたいことがたくさんある。‥‥二重人格になってしまった天乃が、今、何を思っているのかも気になる。
‥‥それに、俺はまだ、黄瀬さんにずっと言いたかったことを言えてないんだ。
だから、俺は!!
「絶対にここは、開けねええええええええええええ!!!」
「ふんっ、好き勝手に喚いているがいい。そのうち怖い人たちが来るからな。精々足を震わせているがいい。」
くっそムカつくな!副会長!!
でも、俺は負けない!!だが、手がものすごく痛い。手汗だってかいてしまう。
「あ。」
そんなことを言っていたら、手汗のせいでヌルっていってドアノブから手を離してしまった!?
うわあああああ!!!まじで!?そんなことある!?
モチのロン、扉は開いた。
やばいやばいやばい!最悪の場合、俺はコンクリ詰めで海に捨てられるぞ!?
嫌だ!そんな死に方したくない!!
「あ、あの‥‥、えへへ。」
とりあえず笑って誤魔化そうと前を見ると、扉の外でめちゃくちゃ目鼻立ちが整ったイケメンが薄っすら汗をかいていた。
いや、このイケメンがさっきまで口論していた副会長だとは思うが‥‥、何故汗を?
「ねえ、何をしているのかな?黄瀬王雅クン?僕を客室に通したまま放置するなんてひどくないかい?」
「‥‥客室で待っていただけるとありがたいですね。涼風様。」
「‥‥涼風。」
見慣れたショートカットをした女子高生‥‥、涼風が副会長に微笑んでいたらしい。‥‥これって微笑みなの?微笑みにしては怖いんだが‥‥。これが王者の風格ってやつかな。決して高校生が出しちゃいけない威圧感だと普段の俺なら思ったが、この緊急事態だととてもありがたい。
きっと涼風がここまで来たのは俺が足止めをしきれなかったときのために備えていてくれていたのだろう。こんなとこまでアシスタントをしてくれるなんて思っていなかったから感動してしまう。
「僕は何をしているのかって聞いているんだけれども‥‥、答えないの?__おじじ様に報告されたいのかい?」
「そういうわけではないのですが、こちらは女性の方には少々荷の重い話題かと思われますのでどうぞお茶菓子でも‥‥。」
「その言葉もおじじ様に言いつけてあげようか?」
「クッ‥‥。」
‥‥涼風に対して副会長が黙り込んでいる。ざまあ。さっきまでの減らず口はどこかにいってしまったようだな。ざまあ!(2回目)
涼風のおじじ様!愛しているぅ!!!
「ねえ、質問に答えて。何をしていたの?」
「‥‥。」
「まあいいや。このボイスレコーダーをおじじ様に提出するだけだから。」
ええ!?さっきまでのやり取り録音していたの!?まじ有能じゃん!涼風様!!いやあ、持つべきは優秀な友だね!
こんな内容、ネットに流したら即炎上じゃん!後でデータ貰って燃やそうかな!!色々ムカついたし!
「チッ!‥‥まあちょうど良かった。」
「何がだい?」
怪しむように副会長を睨む涼風に、当の本人は哄笑した。
「お前も邪魔だったんだ。女なのにでしゃばりやがって!!前から目障りだったんだよ!!こいつら纏めて消してやる!証拠隠滅だ!!」
「わーお!当てはあるのかい?というかこれからの無計画な予定を一々教えてくれる君の教養の無さに涙が出てくるよ。」
「うるさい!!今、ちょうど来ているんだ!奴らが!ふん。お前ら、見て腰を抜くなよ!?外にはきっと背が高くてゴツくて何人も殺ったあいつらが!!」
副会長の興奮して語彙力が低下している言葉に俺は少しチョビリそうになった。やべえやつが来ているじゃん!!え、どうすんのコレ!?俺は武術なんて体育の時間ぐらいしかしたことないヨ!?
アッ!もしかして涼風さんってば強いの!?有能だもんね!と思い、涙目で涼風を見ると肩をすくめられた。
「生憎僕は守られるばっかりで護身術を嗜んでこなかったんだよ。」
「え!?」
オワタ‥‥。
「はんっ!だろうな!涼風様ア!あんたは所詮箱入り娘なんだよ!涼風様が消えた後はとうむの婚約者はちゃんと俺直々に選んであげますよ!」
「あー大変大変!イケメン君、もし荒事になったら僕が守ってあげるからね!でもいざというときには身代わりにするかも!ごめんね!」
「エ!?」
ひどくない!?なんでこの人は俺を盾にしようとしているの!?身の危険の香りが味方からするのっておかしくない!?
「さーて、来たようだ。涼風様、逃げるんじゃないんですよ?すぐ捕まっちゃいますから。精々可愛らしくお姫様をしていたら、奴らだって多少しか乱暴しませんよ。」
「最初から逃げる気はないから安心して。ちょうど良かった。様子を見にいこうか。」
くすっと笑っていながら玄関に向かう涼風に、逃げようとしていた俺は捕まってしまった。護身術を嗜んでいないという言葉に抗議したくなるぐらいの力強さだった。
どうなるんだよ‥‥。これ。
__死んだ‥‥。
最後までお読みいただきありがとうございます!むこうみず太郎です!
明けましておめでとうございます!(≧▽≦)
これからもどうぞ『初恋の女の子が逆ハーを形成しながら俺に迫ってくるのは何で!?』をよろしくお願い致します!
最近更新が早くないですか!?誰か!誰かむこうみず太郎を褒めて!!(←これが普通なので調子に乗るなという視線を感じます‥‥。あれ、なんでだろう‥‥?)
さて黄瀬さん編も後少しで終わりですね。果たしてどうなることやら。楽しみにお待ち下さい。
それでは!!
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