俺の責任のとり方 〜黄瀬さんの妹さんの怒りを添えて〜
引き続きよろしくお願いします。
「んあ‥‥‥、ひーちゃん、先輩‥‥‥?ああ。千陽の傷口見て‥‥‥。えっ。」
「あっ。」
目覚めた黄瀬さんの妹さんは最初、日夏しかいないと思っていたらしいが、俺を見て呆然としていたのは叫ぶまで3秒前のことだった。
******
「落ち着いた?ごめんごめん。黄瀬ちゃん。許して?」
「むう。ひーちゃん先輩のバカぁ!!」
「えへへ?ごめんって〜。」
きちんと事情を話すと一応納得してくれた黄瀬さんの妹さんが絶賛日夏に怒っている。
「もう!!あおちゃん先輩のお兄さんも‥‥‥。」
「え!?俺も!?」
「はい。見たんでしょう?千陽の身体。責任を取ってください!!」
「えええ‥‥‥。責任?」
「お兄さん!こういうところで男気を見せなきゃ!!そしてお兄さん!碧音をひーちゃんにください!!」
「日夏は黙ってろよ!!元はと言えばお前のせいなんだぞ!?」
にしてもどうしよう‥‥‥。俺に責任を求めるなんて‥‥‥。
責任ってあれだよな!?結婚だよな!?え!?俺の将来決まった感じ!?黄瀬さんの妹さんのお婿さんってこと!?
すると黄瀬さんが義理のお義姉さん‥‥‥?ちょい気まずい。
っていうか小動物だと思っていたのにめちゃくちゃ肉食系だなこの子。まあ、全面的に俺、いや日夏が悪いんだけどな‥‥‥。
「え、マジで取るの!?責任!!」
「はい。責任です。」
「これで碧音もお兄さんのものではなくひーちゃんのものに‥‥‥。いひひっ。」
邪悪なことを言っている日夏は無視するとして‥‥‥、この子ガチで言ってね?ヤバい。半分冗談だって思っていた。
「あの‥‥‥、責任って‥‥‥?」
俺が恐る恐る尋ねると一呼吸置いて彼女は言った。
「お姉ちゃんが何を言っていたのか、教えてもらう。これが責任です。」
「ああ‥‥‥、そういうこと。」
「え〜?お兄さんをお嫁さんにもらうんじゃないの〜?お兄さん絶対に女子力高いよ〜?予想だけど。」
俺は思わずホッとした。
日夏の言葉に何いってんだこいつとは思ったがとりあえず責任がそれでよかった。むしろ話すべきだろうし。
「ああ。分かった。話す。」
それから俺は黄瀬さんに話されたこと、そして涼風との一件など全てを話した。
******
「なるほどね〜。先輩はそう言われたからワケワカメでとりあえず黄瀬ちゃんに事実確認しようって?お人好しだね〜?お兄さんも。」
「お人好しっつーか‥‥‥。」
日夏の『お人好し』という言葉に戸惑ってしまう。自分はそんな人間ではないことを一番知っているのは自分だから。
こんなことしているのもただ単なる野次馬精神なのではないのかと思い始めたから、俺は‥‥‥。
「ご心配いただきありがとうございます。お姉ちゃんがなんであおちゃん先輩のお兄さんにそんな嘘をついたのかわかりませんが‥‥‥。そこで一つお願いがあります。」
姿勢を改めた黄瀬さんの妹さんに俺の背も勝手に伸びる。
「お願い?」
「この件から引くこと。それだけです。」
「っ!」
涼風と同じことをいう彼女に戸惑ってしまう。
「‥‥‥流石になんの説明もなしにそんなことをいうのはダメなんじゃない?黄瀬ちゃん?」
「そうですね。千陽の知る限りをお話します。その代わりこれ以上関わらないでほしいです。」
「とりあえず話を聞いてからでもいいか?」
そう俺が尋ねると黄瀬さんの妹さんは一つうなずいてから語りだした。
「はい。それが誠意というものでしょうね。お姉ちゃんがいうように千陽が実の伯母さんは千陽をイジメました。それは事実です。あおちゃん先輩のお兄さんも見たでしょう?あの傷を。」
「ああ。」
「でも、千陽は助けられました。他でもないお姉ちゃんに。そして、お姉ちゃんの連れてきた助っ人さんによって。」
「黄瀬さんに?それに助っ人って‥‥‥。」
__お姫様とは仲良くさせていただいているからちょっと話を聞いたり‥‥‥、
涼風のその言葉を思い出す。
アイツのお姫様っていうのは天乃のことだ。天乃から話を聞いたっていうことは天乃がこの件に関わっていることだろう。
まさかその助っ人っていうのは天乃か‥‥‥?
いや、今は聞かないでおこう。今大事なのは『誰が』じゃなくて『何が起こったか』っていうことだ。
「その二人は証拠を集めて児童相談所に連れて行ってくれました。それから虐待はなくなりました。再び暴力とか振るわれることとかってありますよね?
でも伯母さんの場合は一回精神科のお医者さんに見てもらえたんです。伯母さんは精神的な病気だったらしくて、それで家の中で一番弱い千陽に当たっていたらしく‥‥‥。今は療養していて、虐待はされていないのです。
でも、そうすると‥‥‥、おかしくないですか?」
「黄瀬さんが『妹が虐待を受けている』と言ったことか?」
「はい。千陽が思うに‥‥‥、お姉ちゃんはお父さんの跡、つまり涼桃グループの重役に就きたいのではないのでしょうか?」
黄瀬さんってそんなに野心たっぷりなタイプなのか‥‥‥?むしろチャンスをもらってもポイしちゃいそうなのにな。まあ、俺みたいな他人じゃなくて妹にしか見えない姉の像っていうのもあるんだろうな。
「その黄瀬ちゃんのお姉ちゃんがお父さんの跡を継いだらなんかいいことがあるの?」
「それはお姉ちゃんにしかわかりますが、少なくとも義兄は継ぐことがないでしょう。そのことが姉にとってのメリットなのではないのでしょうか?」
「なんで黄瀬さんの義兄が就いたらだめなんだ?」
「お姉ちゃんはきっと直系である自分が継ぐべきだと思っているのです。傍系である義兄よりも。」
「いや、血筋でいったら結構近くない?」
「それはそうなんですけど‥‥‥。自分たち一家が直系だ!みたいなことをパパが言っていたのでもしかしたらそうやって考えているのかもしれません。」
日夏や俺が代わる代わる質問の答えが、『黄瀬さんが涼桃グループの重役の座を狙っている』ということに真実味が出てくる。
そこで黄瀬さんの妹さんが一つ俺たちに尋ねてきた。
「アオちゃん先輩のお兄さん、ひーちゃん先輩、義兄の評判を下げるためにはどうしますか?ちなみに義兄は親戚の中で有望株としてみられています。」
「ええっと‥‥‥、相手が失敗するように仕向けてそれを弱みとして握る?」
「思ったよりも最悪の答えが聞けましたね。お兄さんのク〜ズ。」
「そういうお前はどうなんだよ?」
「相手を拉致監禁して催眠術をかける。」
答えたことに対して日夏がけちをつけてきたからどんな素晴らしい解答をいうのかと思ったら‥‥‥、別の意味で愉快だったわ。
「正解は相手の弱みを握るです。お兄さんの場合、半分は当たっていますがそこまでしなくてもいいと思います。あとの解答は‥‥‥、ちょっと引きます。」
「ほら〜。」
「いやお前の答えのほうが危ないからな!?引かれているのはお前だからな!?」
「ひゅー、ひゅー。」
口笛を吹こうとしているんだろうが下手すぎて吹けていない。ざまみろ。
「気を取り直して、お姉ちゃんは多分私の『虐待されている』というネタで揺さぶるつもりです。少しのスキャンダルでも痛いですからね。千陽は‥‥‥、そのための『証拠』としてしか見られていません。いつかは‥‥‥、見捨てられる。そんな存在なんです。『妹』じゃ、ないんです‥‥‥。」
「‥‥‥。」
だから、あのとき
__お姉ちゃんが!!ついに!!千陽のこと!!いらないって!!
そう、この目の前の小さな少女は言ったんだ。
でも俺には黄瀬さんがそんなふうに妹さんを見ているようには到底見えない。
それが演技かもしれないぞ?と言われたらわからないが‥‥‥。
「多分、涼風さんも同じ考えです。だから関わるなと警告したのでしょう。あくまでもこれは涼桃グループの次期幹部を決める内輪揉めなので。」
「涼風さんと知り合いなの?」
「はい。昔少しだけ遊んだことがあって‥‥‥。まあ、そういうわけなのです。だから関わらないでください。もう虐待も何もないんです。安心して忘れてくださっていいですよ。」
「そう、か‥‥‥。」
まあ、そうだよな。そもそもこんなことに関わろうっていうのは流されてきた結果だ。俺が主体的に『こうしたい!』って言ってやったことではない。
二人ともいうように綺麗サッパリ忘れればいい。なのに‥‥‥、なんでだ?この違和感は‥‥‥。
『佐久間っち』
そう呼ぶ彼女の顔からは何が見えた?俺に抱きついた彼女はどんな様子だった?
義兄を倒してやるという野心?それとも簡単に騙せた俺への嘲笑?
「本当に、そうなのか‥‥‥?」
「お兄さん?」
「俺には、彼女が、」
__怖がっているように見えた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
むこうみず太郎が、一人称「ひーちゃん」の人と別名「アオちゃん先輩のお兄さん」のお方を交互にかいているとややこしくなってきて、一人称「ひーちゃん」さんは無事なのですが、別名「アオちゃん先輩のお兄さん」さんが
健「__あるの?」
「__のこと?」
「__ない?」
と可愛らしい言葉遣いになってしまい、吹き出しそうになりました。ダメだよ‥‥‥、某アオちゃん先輩のお兄さん。そんな面白いことしてあとがきで笑ったら、変な人にみられちゃ、プッ!!あははははははははははは!!!
あー。うん。手遅れでしたね!(キラリ)
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