落とし物。
よろしくお願いします。
「で?どうするのよ?怯えられてるなか、話しかけれないでしょ?」
「だからこうして眺めているんじゃないか!!」
「威張って言うな!!」
愛華‥‥‥、ナイスツッコミ!!じゃなくて!!
「でもしょうがなくないか?『俺が健だ』って話しかけようにも避けられているんだから。」
「まあ、それはそうね‥‥‥。」
「あっちから話しかけてくれれば全てが解決なのにな‥‥‥。」
「そんなに上手く行くはずがないでしょ?ちょっとは考えて口に出しなさいよ!」
「あのな、言わせておけば!!」
「あの?すみません。筆箱、落としてましたよ。」
天乃のことだけあって、少し熱くなった俺は親切に話しかけてくれた女子生徒の方を向かず
「ああ、ありがとうございます。そこ置いておいてください。」
とだけ言った。
我ながらこの対応はひどかった‥‥‥、と後に思い返したときに後悔と共に思うこととなる。
「えっ?‥‥‥あ、はい。わかりました。」
その冷淡な仕打ちに女子生徒はちょっと戸惑ったようだが気にしない!!
なんてことは小心者な俺には思えず、改めてお礼を言おうと声のした方を見ると、後ろ姿しか見えなかった。
が、なんかそれが天乃に似てる‥‥‥。
確かめようと愛華に尋ねる。
「なあ、今の子、天乃に似てなかったか?」
その返答は、
「あんた、馬鹿じゃないの?」
と辛辣すぎるものだった。
「はっ?どういう?」
「今の完全に姫川さんじゃん!何でチャンスを自分から全力投球で無駄にしていくの!?ありえない!!付き合ってられないわ!!」
と言って俺のもとから去ろうとする愛華を必死で止めた。
******
「それで愛華。」
「何?策をねって今みたいに無駄なことするの?生産性がないこと、私嫌いなの。」
「待て待て待て!!ホントに天乃のこと気が付かなかったんだってば!」
「信じられないわ!まったく‥‥‥。で?」
「状況を整理すると俺はさっき天乃に筆箱を拾ってもらった。でも俺は気が付かず、『そこら辺に置いておいて』と最低なことを言った。」
「普通は素直に受け取るはずよね。何が『そこら辺においておいて』よ。あんたこそそこら辺に置いてやるわ!!」
「怒り過ぎじゃないか?いくらなんでも。」
こいつ、俺にいつも怒っているか嫌味を言うかだから、そういうの慣れたけどなんか今までの中でトップテンにランクインするほどの怒り方だ‥‥‥。
ほっぺたを膨らませているし‥‥‥。子供かよ。
「なあ、何で怒っているんだ?そんなに。普段のお前なら嫌味程度だろ?こんぐらい。」
「‥‥‥。悔しいから。」
「は?どういうことだよ。愛華。」
「べっつにー。」
「何なんだよ、コイツ。」
まあ、いい。『べっつにー』なら。
「はぁ‥‥‥。聞き返さないの?『悔しい』って言葉。」
「愛華が『べっつにー』って言った時はだいたい聞いてほしくないときの言葉だ。聞いてほしくないんだろ?」
「‥‥‥よく分かってるじゃない。」
「ま、俺がめんどくさいっていうのもある。」
「最後の最後で台無しにしていくわね‥‥‥。」
「ところで話は戻るが愛華。」
「何?」
「俺、いいこと思いついたんだ!」
「いいこと?」
「ああ!!」
これで天乃と再会して、俺は『約束』に勝つ!!
最期までお読みいただきありがとうございます!
この時点では、ヒロイン独占状態な気が‥‥‥。