君らしくない君。
引き続きありがとうございます。
「マジでどこに行ってたんだよ!!」
「は?私がどこに行こうが好きにすればいいじゃん。」
「いや、まあ、そうなんだけど‥‥‥。」
俺がこんなことを言う理由を知りたいのならば、クラスメイトの顔を見ればいい。きっと俺と同じように足が子鹿のように震えることだろう。
「いや、まあ、‥‥‥ごめんな。」
「‥‥‥健?」
「なんか、デリケート?がない発言をしてしまったと言いますか‥‥‥。」
何が悪かったかはさっぱりだが一応謝っておかなきゃな‥‥‥。
周りの視線が痛いし‥‥‥。
それに、やっぱり気を悪くさせたなら愛華にそんな気分にさせた俺が悪い。
「健が、謝った‥‥‥?」
「いや、そんな不思議な顔すんなよ!!なんだよ!!おい!!こんなにもずっと一緒にいるのに俺が謝ったことがないとでも抜かそうっ言うのか!?」
言ったらマジで泣くぞ!!
「‥‥‥。」
無言ですか!!さいですか!!号泣もんだよ!!畜生!!
「桃が‥‥‥、桃が言ったの?」
「え?涼風?」
「桃が健に謝れって言ったの?」
「違うけど‥‥‥?」
涼風?あんまり今回の騒動に関係ないのに何で名前が出てきたんだ?
「‥‥‥そっか。分かった。ねえ、健。耳を貸して。そしたらさっきの失礼な発言を許してあげる。」
「うん?」
まあ、詫びをしろと言われたならするのが義理というものだろう。
愛華のために膝を曲げて耳を貸す。
そうすると愛華は俺の耳にその紅い唇を引き寄せ、囁いた。
___甘い声で。
「ねえ、健。私達、永遠に結ばれるんだよ。」
「っ!?」
ただ単純に事実を告げるかような言葉とその声に思わず耳を愛華から遠ざけ、一歩、一歩、愛華から離れる。
なんだ‥‥‥?今の‥‥‥。ゾワってきたのだが‥‥‥。お、悪寒が‥‥‥。
愛華?なんでお前‥‥‥、そんな顔‥‥‥、何言って‥‥‥。駄目だ。思考がまとまらない。
「健‥‥‥、ひどい。なんでわたしからはなれちゃうの?」
幼なじいその声と、甘く溶かされたようなその表情に、おかしいところはない。おかしいところはない、よな?
大丈夫だ。いつもどおりだ。何も変わっていない。
天乃に続き、愛華まで変わってしまったら‥‥‥、俺は‥‥‥。
「い、いや!ちょっと吐息がくすぐったくてだな。」
「そうだよね。健。健がわたしからはなれるなんてこと‥‥‥、ない、もんね?」
「あ、ああ。お前は幼馴染だからな!」
笑顔で語る俺たちには異変がなかったはずなのに‥‥‥。
「え‥‥‥?」
なんでお前は笑うことを止めるんだ?
「ふふ?いつまで私のこと、そう思えるかな?」
なんでお前は意味のわからないことをそんな泣きそうな顔で言うんだ?
「いつまでも見ていれば、佐久間、てめええええええええええ!!!!!!!!!白雪さんから離れろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」
「うええ!?」
いきなり雄叫び声が聞こえて、姿勢がえびぞりになってしまう。
今まで俺の顔があった場所に拳があって思わず青ざめる。
その声と拳の持ち主は、
「お前は愛華のガチファン!!」
またの名は俺のクラスメイト!!
コイツは何度も愛華の幼馴染だからって俺にウザく絡んでいたからそんな覚え方になってしまった奴だ。
「白雪さんは俺たちの希望の星なんだ!!!その彼女とイチャイチャしやがって!!幼馴染!?ふざけんな!!!お前の皮を剥いで今日から俺が白雪さんの幼馴染だ!!」
「ふっ。」
「何がおかしい!?佐久間 健一郎っ!?」
「いや、失礼。」
いや、ね?
「恐怖で呼吸がままらなくて。」
「‥‥‥。」
「‥‥‥かっこわる。」
呆れたような愛華の声を皮切りにダッシュして教室を出た。
逃げるが勝ち!!あのままいたらどうなることやら分かったもんじゃない!最悪殺されそう‥‥‥。
にしても!!面白いほど騙されたな!!アイツ!!恐怖で呼吸がままらない訳ないじゃないか!!プラフだよばーか!!うん。そうだ!決して恐れて過呼吸になっているわけない、わけが‥‥‥。はあ、はあ‥‥‥。
恐怖からくる過呼吸に俺は罹ってないと信じながら走った。
******
キーンコーンカーンコーン
「俺はまた授業に出られないのかよ!!」
‥‥‥休み時間いっぱい、鬼さんこと愛華のガチ勢なクラスメイトとリアル鬼ごっこをしていたら授業の開始のチャイムがなってしまったのだが。
しかもずるいことに増え鬼だったらしく、どんどん途中から他の生徒も加わり、呼吸がマシになったのを見計らって逃げながら数えた結果、三十人ぐらいになっていた。
一人から三十人に増えるってずるくないか!?
‥‥‥どうか全員が全員愛華のファンじゃありませんように。
幼馴染であるだけのリア充志望の俺がそんな人数の悪感情を流しきれる自信がない。
「はあ‥‥‥。」
ため息を付いていると、ドンドン!!と激しい音がしてビクリと体を震わせた。
え‥‥‥、マジで?見つかったのか?鬼さんから逃げるためにわざわざ校庭の倉庫に隠れているのに?
おわた‥‥‥。逃げ場がない。巻いたと思ったのだが‥‥‥、くっ!!ここまでか!!
そう思っているうちにもドンドンと激しくドアが叩かれる。
俺は別に扉を締めただけで鍵や仕掛けを施していたりしていない。ただ単純に開かないからこうやってドンドンしているのだろうな‥‥‥。脳筋だな、鬼さん。
こうやって猶予があればあるほど苦しいだけなのに。
ああ、お母さん。先に逝く不肖の息子をお許しくださいませ。
そうお天道様にお祈り申し上げていると、ついに、開いてしまった。
外の光がいきなり入ってきて眩しい。
__ああ。もう俺の命日もここまでか。
「っ!!佐久間っち!!いた!!」
と思っていたが違うようだ。
「え‥‥‥?き、黄瀬さん!?どうしてこんなところに!?」
ってか今、授業中だよ!?人のことは言えないけど!!
「ここに隠れているってことは、やっぱりあの人が‥‥‥。」
「あ、あの人?」
「ごめん、色々聞きたいだろうけど、言っちゃったら‥‥‥。佐久間っちまで巻き込んじゃう‥‥‥。」
「ええ‥‥‥。」
マジでどういうことなんですか?
しかも黄瀬さんのいつものギャルみたいな、『ヒャッホーイ☆』みたいな口調じゃないから余計調子狂う‥‥‥。
「でも、ここまで巻き込んだなら、言わなきゃ不義理ってやつだよね。うん。」
「えっ‥‥‥。」
何に巻き込もうとしてんの!?黄瀬さん!?そして自分を勝手に納得しているし!!巻き込みたかったらまず俺の許可を取ってくれ!!
でもなんかここまで言われたらちょっと気になるかも‥‥‥。
そう想い、黙っていることにした。
「屋上で会ったでしょ?あっし達。」
「へっ?ああ、うん。」
「そのときに聞かれちゃ不味いものを聞かれちゃったから、あなたのことを脅迫しようとしているんだと思う‥‥‥。」
「は?え、『あの人』とやらに脅迫されんの?俺?」
「うん。」
俺は少し考えてから言った。
これは、とても重要なことだったからだ。
「あの人って?そんなあやふやな言い方したら普通に分かりづらいからちゃんと言ってほしい。」
「‥‥‥佐久間っちって皆にKYなとこがあるよねって言われているの知ってる?」
「え。」
******
黄瀬さんは結局教えてくれなかった。ダメ出しもされたし悲しい。
「黄瀬さんが何考えているかは知らないけど、俺、『あの人』とやらと黄瀬さんが何話していたのかは聞いてないよ?」
「え‥‥‥?」
「あっちも俺のことわかんなかったと思う。そのために匿ってくれたんでしょ?黄瀬さん。」
「あ。」
黄瀬さんは自分が俺のことを『あの人』から隠したことを思い出したらしい。‥‥‥え、今頃?
「ちなみに俺がこうやって追いかけられているのは黄瀬さんの別件だよ。絶対。だって愛華のファンに追いかけられてただけだから。」
「‥‥‥やっちゃった〜!!」
深くため息を吐きながらしゃがむ黄瀬さんは疲れたようにこちらを見た。
「あっしの悪いとこ、出た〜!!うう〜!!」
思いっきり叫んで涙目でへこたれている黄瀬さんに流石に優しい言葉をかけずにはいられなかった。
「えっと、黄瀬さん?大丈夫?」
「あー、うん。大丈夫だよ〜?佐久間っち。あ〜、なんであっしは佐久間っちのことこんなに一生懸命探したんだろ‥‥‥。」
「俺のこと探してたの?」
「‥‥‥取り返しのつかないことの前にって、思ったけど。」
「大丈夫、そう?」
「うん。騒がしちゃったね。‥‥‥。」
「‥‥‥黄瀬さん?」
苦笑をしていた彼女がいきなり黙った。それだけではなく唇をきゅっと噛み、眉を寄せる姿に心配になる。彼女の身には何が起こっているのだろうかと。
「ねえ、優しい佐久間っち。」
「え、黄瀬さ、んんんんん!?!?」
「助けて。」
彼女が発した言葉はそれだけなのに‥‥‥、その気持ちが強く伝わってきた。
何故って?彼女が土下座しているから。
何故!?!?
最期までお読みいただいてありがとうございます。
今回は余裕があるので近いうちに更新ができそうです。(とかいってできなかったらどしよ。)
今話は黄瀬さんとの会話を2パターンを作りました。もう一パターンはやけに黄瀬さんがゴネましたね‥‥‥。どうしたの黄瀬さんって言いたくなりました。
むこうみず太郎的にはもう一パターン目の黄瀬さんがやけにゴネて助けを求めようとしないほうが好きだったのですが、ひたすら長いしゴネると話しの辻褄が合わなくなるような気がしたので‥‥‥。
機会があれば公開したいですね。
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