side桃 唯一の『私』の味方
引き続き、ありがとうございます!
今回の話はボクっ娘目線です。重いです。ご覚悟を。
side 桃
「ねえ、助平。」
「何だ?桃。俺は違う名なのだが。」
「じゃあ、会長。」
「俺をちゃんと名前で呼ぶ日が来るのか!?」
「そんなこといいじゃん。」
「そんなこと‥‥‥。」
イケメンくんたちの邪魔にならないように来たのは、僕の従兄弟の家の車の中。
そこで僕は聞いた。
__大事なことだから。
「会長。‥‥‥会社の跡、継ぎたい?」
「継ぎたくないが、あの妖怪おじじが言うんだ。継ぐんだろ?」
「‥‥‥そっか。」
涼風 桃。
十六歳。
『女性』。
このことで、僕の、いや私の人生は大きく変わった。
私は‥‥‥、桃風グループ現会長の娘。
つまり、本家は私の家なのだ。
従兄弟の家なんかじゃない。
だが‥‥‥、この性別のせいで、私は継げなくなった。
そして、『男』の従兄弟が継ぐことになった。
両親は言った。
『女の子らしくおしとやかでありなさい。』と。
小さい頃はそのことになんの疑問も抱かなかった。
長い髪に、長いスカートやワンピース。
一人称は私。
会社を継ぐことなんて考えもしない。
だんだん大きくなるにつれ思うようになる。
『女の子らしく』って?
分からない‥‥‥。
なんで私は女の子で、貞淑にあらなければならないのか。
なんで私は男の子のように馬鹿してはいけないのか。
わかんない。
だが、年々親は『女の子』への希望が増えていく。
そして、それに比例していくように私は『女の子』らしくないことをしてみたくなった。
両親と相反することに限界を感じたある時、私はこう思った。
『男の子であれば、私は自由なんじゃないのか』と。
ズボンをはいて、髪を短くして、『僕』と名乗れば。自由に駆け巡っても、足を思いっきり広げても、‥‥‥会社を継ぐこともさえすべてが自分の思い通りにできるんじゃないかって。
そう、従兄弟のように。
そして、私は両親の期待を背負った『私』と女らしい髪を切って『僕』になった。
私は死んだ。
両親は大騒ぎしたが、これでいい。
僕は僕だ。
‥‥‥こんな思いをしたのに、まだ僕は一族に『僕』を認められず、逆に誹りを受けた。嘲笑われた。
なんで?
僕は悪いことをしていないのに。
僕は女の子じゃない。『僕』だ。
なのに、認めてくれるのはおじじ様だけ。
一方、幼馴染のように一緒にいた従兄弟はみんなに認められている。
能力面で大差はないはず。むしろ僕のほうが優秀だ。
そんなことは、おじじ様とした仕事でそれは分かっている。
なんでなんでなんで‥‥‥。
そんなある日、彼は言った。
『跡を継ぎたくない、自由に結婚したい』と。
その言葉に、僕はチャンスだと思った。
こいつさえ、次期当主の座を降りてくれれば。
でも、違った。
その様子を見ていると違うことなんてすぐに分かった。
彼は別に本当に折りたいわけではない。
どこかしらにいる好きな人と結婚したいわけじゃないんだと。
周りの一族が引き止め、懇願する様子に愉悦を覚えていただけなんだ、と。
それに気づいたとき、昔から一緒にいたはずの従兄弟が初めて憎らしく思えた。
悪いことは続くものだ。
『桃夢には‥‥‥、私の跡を継がせよう。』
そう、桃風グループのお得意様に言っていたのをたまたま聞いてしまった。
唯一、僕が会社を継ぎたい意思を尊重してくれたおじじ様も‥‥‥、結局は親戚の奴らと同等に彼を後継者にしようとしていたのだ。
僕には、『お前が会社を継ぐべきだ』とまで言っておきながらも!!僕を!!僕を裏切ったんだ!!
駄目‥‥‥。このままじゃ思うようにいかない‥‥‥!!
悔しい‥‥‥!!!
なんであんなにやる気のなさそうな自堕落なやつに奪われるの!?
何のチャンスもなしに!?
従兄弟は『辞めたい』といっても親戚の連中が辞めさせないのに!?
許さない‥‥‥!!
そんなとき、入った高校で従兄弟が恋をしたということを聞いた。
使える‥‥‥。
うまく行けば従兄弟を引きずり下ろせる。
まずは情報を集めなきゃ‥‥‥。
思わずうっそりと笑ってしまう。
『計画』を進めつつある今日、お昼を買って教室に戻るときにいいものを見つけた。
『佐久間 健一郎』。
彼が話しかけてきたのだ。
二、三年生はきついが一年生なら顔と名前が一致するぐらいの記憶力は持っていたため、名前と顔がすんなりと出てきた。
まあ、そんなことしなくても、彼の顔はイケメンで有名だ。
有名な人物なのでいつか接触しようと思っていた。
ちょうどいいと思い話を聞いていると、更に幸運が舞い降りてくる。
『姫川 天乃』。
従兄弟のお相手様である彼女と彼は知り合いのようだった。
なんていう幸運だろう!!
早速、放課後、再接触をしようと彼の情報を再確認して、接触した。
するとまたしてもお会い願おうと思っていた相手がいた。
『白雪 愛華』。
完璧美少女で知られる彼女とも会えた。
若干、噂との相違はあったが、許容範囲内だ。
仕込まれた手練手管を使い、二人ともに心を許されるぐらいに仲を深められた。
『おじじ様の仕事』と称して、『姫川 天乃』の情報を集めたが思うようにいかない。
しかし、美形かつ性格の良さで有名なこの二人を味方につけたことで、学校の中で権力を握りやすくなった。
これで『計画』も進めやすくる。
そして、僕は屋上へ行き、彼と意外にも『姫川 天乃』と親交のあった彼女を『姫川 天乃』に引き合わせることにした。
彼らと『姫川 天乃』の友好度を知りたかったのもあるが、それよりも、従兄弟サマの当主への覚悟を聞くために。
そして、現在__。
「なあ、桃。」
「何?助平。」
「ああ‥‥‥、その‥‥‥、怒っているのか?天乃と仲良くしていること。婚約者のお前がいるというのに。」
「別に怒ってないよ。政略結婚だしね。気に入っちゃったものはしょうがないよ。」
「‥‥‥そうか。その‥‥‥、破談したかったらいつでも言うんだぞ。」
「まさか。そんな日は来ないよ。」
『計画』に必要なこと、だしね‥‥‥。
まあ、ご苦労のない恋愛脳の従兄弟サマは早く破談してほしいんだろうけどね。
クスクスクスクス‥‥‥。
もう、僕は、誰も信じない。
信じるのは、おじじ様でも、従兄弟でも、私でもない。
‥‥‥僕だ。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました!!
ボクっ娘目線‥‥‥、なんか、重い。
今まで出てきた女の子たちのsideはとりあえず書けてよかった!!
天乃、愛華、桃。
どの娘も一癖も二癖もある娘たちですがこれからもよろしくおねがいします。
最後に筆者・むこうみずが言いたいことがあります。
愛華さん!!早く出番増えて!!
なんか回を重ねるごとに存在感が薄れてきているから!!
ねえ!このままじゃ、負けヒロインに‥‥‥、いや、ここは愛華さんに負けヒロインになってもらって、作者が嫁としてもらうというのも‥‥‥?