困惑の俺、やばい人代表な僕。
引き続きお楽しみください。
「『姫川天乃』。彼女について知っていることをぜんぶ話して。」
天乃……?
「……何でそんなことを聞くんだ?」
自然な疑問。
単純に意図が分からない。
そんな俺に涼風はヘラリと笑った。
「僕、あのお姫様には『なんかあるかな〜』って一目見たときからから思ってたんだ。」
「何かがある?」
「まあ、勘ってやつ?」
「勘、ね‥‥‥。」
女の勘ってやつか?
いや、でも天乃に限って『なにかある』なんてことあるはずが‥‥‥。
「確かにこれはこじつけかな? でも、彼女のせいで滅茶苦茶になってきたからね。この学園も。」
「は?滅茶苦茶?」
そんな要素なんてどこにもないだろ?
「見たよね?1−Eの教室。違和感‥‥‥、あった、だろ?イケメン君。」
「っ!?」
『中を覗いてみると壁がキレイすぎるし、机とか椅子も大きくて新品で、教室自体もでかいし!!』
『なんでこんなに一年の間でも差があるんだよ!?』
『不公平すぎじゃね!?』
‥‥‥確かに。思った‥‥‥。
1−Eだけ、異常に豪華だと。
でも‥‥‥!
「ああ。違和感がバリバリにありやがったよ。でも、それに天乃が関係しているなんて言いがかりじゃないのか?」
天乃がいくら可愛くても、性格天使でも、(不本意ながら)モテたとしても、あくまで天乃は一般生徒。
なんの権力も持たないただの小娘だ。
そんな一年生の天乃がそんなたいそれたことができるはずがない。
その言葉に涼風は薄く笑った。
天乃を信じる俺を嘲笑うかのように。
「言いがかり、じゃないよ。」
「は?」
「イケメン君にいいこと教えてあげよう。僕、優しいからね。‥‥‥『姫川天乃』は五人の恋人を作っているんだよ?その恋人たちはそれぞれ力を持っている。その力を合わせれば、ほら簡単だよ?」
「え、五人、の、『恋人』‥‥‥!?」
う、嘘だろ!?
あくまでも男側が片思いをしているだけかと‥‥‥。
天乃がその想いを受け取っていた恋人にしていたなんて‥‥‥。
「どう?がっかりした?君、お姫様のこと、好きだったのかな?ふふっ、残念。5股の女だよ?ヤバすぎでしょ?ねえ、イケメン君、もしよかったらあなたと、」
「くっっっっそ羨ましいんだけど!?!?!?!?」
なんなんだよ!?
5人の恋人たち!!
俺なんか思いさえも告げられず、想いを受け取ってもらえないんだぜ!?
それに比べて、天乃に甘い言葉を囁いてもらえるなんてなんと羨ましい!!!!!
「い、イケメン君?」
驚愕の表情を浮かべる涼風に宣言する。
「いいか!!涼風!!天乃はな!!天使だぞ!?リピーアフターミー!!『天乃は天使』!!!!!!」
「え、あ、あ、天乃は、てん、し‥‥‥?」
「そうだ!!天野は天使だ!!つまり天乃の愛はみんなのものだ!!そんなもので嫉妬するなど甚だしい!!そんなことを思ったやつは悔やめ!!懺悔しろ!!」
俺は本気で言っている。
独り占めは‥‥‥、したい。
めちゃくちゃ。
でも、その天乃自身が複数の愛を望むなら、俺は自分を折る。
それは世間一般的には間違っているとは思う。
涼風だって、天乃の行動が間違っていると思ったから言ったのだろう。
なんで涼風が俺に向かってこんなことを言ったのかは知らないが。
俺は将来後悔してしまうかもしれない。
天乃を、愛したことを。
だから笑うんだ。
後悔なんてしてないと。
そう思って、ニヤリと涼風に向かって笑った。
その表情を見た涼風は動揺して‥‥‥、諦めたかのように俯いた。
そして、
「ぷっ、あはははは!!!」
大爆笑した。
「‥‥‥?」
「ああ、もう、駄目!!あ〜、やっぱり向いてないわ〜。色仕掛けなんて。」
「は?」
「僕さ、色仕掛けしようとしてたんだけど、やっぱり無理だから普通に協力してもらうね。」
「は??」
い、色仕掛け!?
つまりはあんなことやこんなことを好き放題してもよろしいので!?
じ〜。
あ、あれ??おかしい。
なんか愛華とかいうさっきから黙っていた人が俺を見つめてくる!!
怖い!!
「あのお姫様への忠誠心あつすぎだし。普通に攻略無理だわ。」
「それで、なんで俺なんかに色仕掛け?そんなに豪華な教室が嫌なのか?」
「違うよ〜。さっき言った通り、『姫川天乃』の調査に協力してほしいの。」
「え?」
調査??
「さっき言った中の『5人の恋人たち』のうちの一人がうちの従兄弟なの。」
「従兄弟?」
「そう。風上 とうむ。一応、うち一族の御曹司?ってやつでうちの学校の生徒会長。」
「いた、な‥‥‥。そんな名前の人。」
ん?御曹司がある一族ってことは、まさか涼風いいところのお嬢さんだったり!?
‥‥‥そんなふうには見えないな。
さっきとは打って変わって少しつまらなそうな顔をした涼風を見ながら思う。
うん。庶民派だ!!涼風は!!
「うちは大きな会社をいくつも持っているからね。こんな学校の教室の改造代ぐらいポンッと出せるし。」
「‥‥‥まじかよ。」
ガチだったらしい。まじかよ。
「だから別に教室の改修ぐらいいいんだけど、引っかかるのはあのお姫様への態度?みたいなもので‥‥‥。下手するとあいつ、会社引き継げなくなるし。」
「え、やばいやつじゃん。なにが問題なんだ?」
「その‥‥‥、学校を改造とかお姫様のために好き勝手しているし、お姫様に依存しちゃっているし、そもそも浮気を堂々としているお姫様を彼女にするのはいささか‥‥‥。みたいな感じに親戚に言われてて。」
「そんなに言われるものなのか?半年も経っていないのに?」
「うん‥‥‥。うちで最高権力を握るおじじ様にまで話が行っちゃって‥‥‥。それでおじじ様がうちの従兄弟の当主への適性を疑われちゃっているから、それを見極めるために一緒に通う僕に監視役と情報収集を、おじじ様直々に命じられたんだ。」
さ、最高権力‥‥‥。と、当主‥‥‥。
遠い‥‥‥。
っていうかさり気なく『おじじ様直々に』って言ってるけど‥‥‥、そんなすごい人と直接喋られる涼風も涼風ですごいな‥‥‥。
まあ、そんなことは置いといて。
「それで、天乃の情報を引き出そうとしていたわけか‥‥‥。」
監視対象の生徒会長サマ(好きな人のために権力を使うやつがそんなたいそれた役職をしていていいのだろうか?)の相手も調べておきたい、ということなのだろう。
「最初は全部きっかりと情報を引き出すためにイケメン君を絆したあと、下僕にしようと思って接触したんだけど‥‥‥、ここまで我が強いと無理だね。っていうわけで諦めた。」
めっちゃあけすけなく言うな‥‥‥。
きっと『言ったって誰にもバラさなそうだし本性だしちゃえ♪』って思っているんだろうな‥‥‥。
だって顔がそんな感じだし!
というか、一つ引っかかるのだが‥‥‥。
「‥‥‥下僕を作るのは何で?」
これが趣味とかならヤバいやつじゃんな。まあ、そんなことあるはずがないしどうせ『おじじ様』がそうやって命じたに決まって、
「趣味。」
そんなことあった!?
ヤバいやつ決定じゃん!!
この子怖い!!
「うそうそ。」
涼風は笑っているけどほんとにやりかねなさそうで怖い!!
「そもそもターゲットが俺なのはなぜ?」
「う〜ん‥‥‥、勘。」
「か、勘?」
またかよ。お前は野生動物か!?
でも、中学の頃の天乃と仲の良かった俺を当てるとは‥‥‥、勘も馬鹿にできたものでもないな‥‥‥。
「ってことで、なんかお姫様の情報ない?」
「俺が知っているのは、同じ中学校にいたことぐらいしか‥‥‥。」
天乃の何を知っている?って聞かれても‥‥‥。
「そっか‥‥‥、下僕にしたら、もっと話聞かせてくれるのかな?」
ひっ!!
怖い怖い!!
顔は笑っていても目が笑っていないんだが!?
俺、いつの間にか洗脳されて下僕になっている日が来るんじゃないのか!?
じゃれる?涼風と俺の尻目で、
「ねえ、別人、なの‥‥‥?『姫川天乃』は。」
唐突にそう言ったのは、さっきまでずっと黙っていた愛華だった。
お読みいただきありがとうございます。
今回は眠い、眠いと想いながら作ったので誤字が多いです。
その誤字を愛してやってください。(深夜テンションのため、おかしな言動をしている人。)
無言の愛華ちゃん‥‥‥、可愛い!!
(眠い‥‥‥。)