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災いの雨がふる

本文



外に出ると、雨も風も激しく打ち付けるようになっており、走って社用車に乗り込む。




「さて、急ごう」




車は夜の町へと走り出した。




21:00



ー引き続き台風情報をお伝えします。非常に強い台風15号は勢力を保ちながら北上し、今夜遅くに中国地方東部から近畿地方に上陸し、通過する見込みです。



…ー



カーラジオから注意喚起の情報が流されている。




ー 富岡放送局からお伝えします。勝瑞地域、美鹿地域、池沼地域に大雨洪水暴風特別警報が発令されています。



また勝瑞川が河川氾濫の危険水位に達したことから、勝瑞市に避難勧告が発令されました。自治体からの情報に注意し、避難を行ってください。 繰り返します…ー




「あぁ、私です。今栗坂社長との会食を抜けて本社に戻ってる。堅田さん、そちらに変わりはありませんか?」



『あ、本部長、お疲れ様です!今社長がおよびでしたが、取引先からの帰社中ですと伝えたところです』



「なにか変わったことはないか?」   



『勝瑞営業所の津山所長から連絡で、営業所の1階部分はすでにひざ上まで浸水。2階に重要なものを避難させて、現在は営業所2階に所長以下5名が待機中とのことです。他の営業所からも情報が入ってきていますが、今のところ変わったことはありません』



「ありがとう。こちらから津山所長に電話をかけてみるよ。引き続き情報把握に努めてください」



『了解しました』




堅田氏は力強く返事をする。



堅田副部長はもともとは別会社に居たが、5年前に吸収合併でうちにきた連中の1人だ。マジメ一筋の45歳。危機管理に強い男として定評だ。




…



「もしもし、津山か?」



『あー、和一?じゃなかった、長岡本部長?さっき、堅田さんから連絡あったわよ』



津山幸枝はKOA叩き上げの同期だ。気心知れた友人でもある。




「あぁ、外にいてね。今本社に帰ってる。そっちは大変だな。大丈夫か?」



『ええ。家族の避難が必要な社員はもう帰してあとは身軽なメンバーが残ってる。全員無事に避難所に行ったはずよ。1階が水に浸かった以外は、備蓄もあるし、トイレも使える。』




そうか…よかった。ひと安心だ。




『ねえ、相談があるの』




津山から相談されることは今までなかったので、少し驚いたが、何?と返した。




『こちらの全権を委任してくれない?これから一般の避難者の受け入れや、備蓄の提供の必要もでてくると思う。いちいち決裁あおいでる暇ないし』



たしかに。そのとおりだと思った。




「わかった。了解。任せる。あとの責任は俺がとる。無理はするな、きをつけて」



『ありがとう。本部長。さすがワタシの愛する男!』



と言い、電話は切れた。もちろん最後のは冗談に決まっている。




…



…



本社に到着し、まずは社長室に行く。




21:25



社長室には、安曇諭児社長、安曇雅子専務、小野常務、坂本事業部長が集まって応接椅子に腰かけ、テレビの台風情報を不安そうにみつめていた。




「ただいま帰りました」



「おお、和一。大丈夫だったか?」



安曇社長の問いかけに、はい、とだけ答え、俺も坂本部長の横に腰をおろす。




「堅田くんから話は聞いているよ。商談途中で大丈夫だったか?」



小野常務が聞いた。



「はい。なんとか、ご理解はいただきました、それより、状況は」




「知ってのとおり、勝瑞川が氾濫しそうだ。3万人に避難指示が出されている。営業所のことは…知っているな。その他は、塩津工場が高潮で海水が工場内まで浸水して対応に追われている」



小野常務が淡々と言う。



先代から仕える小野常務は、感情に流されず、淡々と現状分析ができる人だ。




「今夜は役員は交代で待機しましょう。専務と常務は帰っていただき、社長と坂本部長、私が残ります」



俺の提案に全員が頷き、役員は解散した。





…



…



本部長、お帰りなさい。と堅田氏に迎えられた。



一課二課三課の課長が揃っている。



「課長と各課1名を残し、解散させました」



うん。と頷き、状況把握と共有のためのミーティングを行った。




「各課、各営業所が担当するお客様の被害については現在、把握できている範囲でリストアップしています。



オフィス機器やシステムに不具合が生じているところについては、明朝を待ち、担当者で訪問する予定です」



「そうだね。リモートで可能なところはフォローしてくれ」



はい。と各課長が頷く。




「問題は…勝瑞だ」



県北端の10万人都市。担当する顧客も多い。



俺は臨機応変な対応を可能にするため、現地での対応を所長の津山幸枝に一任したことを伝えた。




「津山所長に任せておけば安心ですが…今後の被害が心配ですね」



吉田氏は呟いた。




今後密な連絡体制を確認し、解散した。




自室に腰かけ、小休止をとる。机に昼間からおきっぱなしにしていた、冷めたコーヒーに口をつける。




スマホを開くとLINEが3件。




一件目は妻から。災害対応で今夜は帰れない。とメッセージを入れておいた返事だった。



20:23



「お疲れ様。大雨も、風も、心配だね(>_<) 仕事がんばってね!きをつけて!」



と子どもの写真が添付されていた。




おもわず、頬が緩むのを感じた。




…



二件目は、朝原由美からだった。



なぜか胸が高鳴った。



22:03



「今日はご来店、ありがとうございました!!大事なお客様が山科くん(長岡さん?)だったのでビックリでした。大雨は大丈夫ですか?こちらは無事に帰宅いたしました♪がんばり屋の山科くんだから無理してないか心配です(;;)無理しないでね、気をつけてね」




…



三件目は勝瑞営業所の津山幸枝からだ。



22:05



写真が添付されていた。



勝瑞営業所の階段を写した写真だ。




階段中ごろまで水に浸かっている。



「午後22時の様子。勝瑞川決壊。急激な増水。社員5人、避難遅れの地域住民11人。営業所の2階に全員避難。」



とメッセージがあった。







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