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お目汚し、失礼いたします。
ある晴れた春の日、大勢の少年少女が真新しい制服に身を包み緊張した様子で座っている中で一人壇上に立ち、新入生を代表して挨拶している少年はこの国の第三王子のシリウス・アンタレスである。大勢の中からその様子を笑顔で見守っているのはその婚約者である侯爵令嬢スピカ・ミアプラである。
いや、よく見ると二人の手は不自然ではない程度に動いておりハンドサインを出し合っている。
『本当に王子様って感じね。』
『本当も何も王子なんだけど。』少年の顔がすこし厳しくなったようだ。
『褒めてるのよ。また後で話しましょう。』少女は笑いをこらえているようだ。
学園は成績でクラスが分かれるのだが、幸い二人は一番成績のよいクラスであった。
「スピカ様、殿下はまことに素敵でしたわね。あんなに素敵な方が婚約者で本当に羨ましいですわ。」
このように褒めているのはアトリア・アルギエバ。スピカの昔からの友人で伯爵令嬢である。
「でも途中で落ち着きがないように見えましたし、表情が強張っていましたわ。殿下ほどの方でも緊張いたしますのね。」
まさか自分のせいとは言えないスピカは曖昧にうなずくのであった。
ある、どんよりと今にも雨か雪が降りそうな冬の日。外は寒さが肌に痛いほどであるが、部屋の中は暖炉の熱で暖かい。チョコレートケーキを食べながら青年と令嬢がお茶をしている。
青年は座っていても鍛えられていることが伺える、均整のとれた体格。対する令嬢は細くたおやかであるが出ているところは出ている。
この国の第三王子のシリウス・アンタレスとその婚約者である侯爵令嬢スピカ・ミアプラである。
王子が紅茶を飲みながら話す。
「なんだかんだ無事に卒業できそうだね。」
「来年は最終学年だし、あっという間だったわね。でも最後まで油断してはだめよ。転入してくることもあるのだから。」
「私の剣の腕も、君の魔法の腕もなかなかのものだし、私たちに勝てる者はそうそういないけどね。」
「この数年間本当に頑張ったもの。学業の合間を縫って新しい連絡手段を考えたり、魔法を鍛えたり。」
「みんなが憧れている侯爵令嬢がまさか自分で狩りをして獲物を捌けるなんて知ったら卒倒するやつがいそうだ。」
王子が愉快そうに話すが、令嬢は恨めしげである。
「それをいったらシリウスだって同じでしょ。まさか第三王子が市井に降りて冒険者登録してるなんてね。」
「君ほどじゃないけどね、私も追放されて市井に降りても生き抜ける自信がついたよ。無事に卒業できれば君と結婚するわけだから必要ないけどね。侯爵に領地経営について教わらないと。」
令嬢はおずおずとした様子で話しだす。
「そのことなのだけれど…」
「おっと雪が降ってきてみたいだ。積もらないうちに帰るよ。って何か話かけていなかった?」
「ううん、何でもないの。また学園で話しましょう。」
青年を見送りながら令嬢がつぶやく。
「シリウスは私でいいのかしら…」
ある晴れた春の日、とある教室で生徒たちが興味津々の様子で座っている中で一人前に立ち、挨拶している女性はエリス・ディスコルディア。薄桃色の髪に赤い瞳の男爵令嬢である。
この国の第三王子のシリウス・アンタレスとその婚約者である侯爵令嬢スピカ・ミアプラも例外ではなくその女生徒に興味があるようだ。
いや、よく見ると二人の手は不自然ではない程度に動いておりハンドサインを出し合っている。
『来たわ。とうとう来たわ。』
『スピカ、少し落ち着いてくれ。たしか幼いころに誘拐されて市井で育てられていたが、男爵が探し出して最近引き取られたのだったな。…怪しいな。』
『すこし興奮してしまったわ。だって、魔法感知の魔道具が反応してるの。魅了魔法ね。』
『そうだな。高位貴族の子息や先生には魅了防止の魔道具を渡してあるし、魅了される心配はないだろう。しかしあの魅了魔法が故意か無自覚かは調べる必要があるな。』
王子は少し悩んだ様子で続ける。
『父にはすぐ話をするが、調査のために近づく必要があるかもしれない。スピカには不愉快な思いもさせてしまうかもしれない。』
『何のために私たちが今まで頑張ってきたと思うの。今このときの為でしょう。私のことは気にしないで。』
『ありがとう。』
その夜、二人はいつものように伝達魔法で話をした。
『やはり調査する必要があるようだ。城でも男爵家と令嬢について調べるが、私も魅了魔法にかかったふりをして令嬢を調べろと言われた。』
『想定内よ。私の家族には説明してもいいのかしら?』
『…本当はスピカにも話すなと言われたんだ。でもスピカはもうあの令嬢が怪しいって知ってるし、王命で言えないって言っても意味ないだろうから話したんだ。他には話さないでほしい。』
『分かったわ。故意だった場合、どこと繋がっているかまだ分からないものね。私は何も知らないふりをするわ。』
『すまない。しばらく迷惑をかける。』
『手伝えることがあれば言ってちょうだいね。』
お菓子食べたいな。




