山木綾(やまきあや)の正体は!?
夢に出てきた女性の名前は、山木綾だった。だけど今まで、名前も知らなければ、出会った事も無かった。それなのに何故、「君のことを知ってる」なんて綾は言ったのか?
ーー綾は何故俺の夢に出てくるのか?ーー
綾は一体何者なんだ!?
そう思っても、綾が実在するのかも、
どんな人間なのかも分からない。
ただ、一つだけ言えるのは、
夢に出てきた二回とも。凄く笑顔だったと言う事。
「綾の目的は、よく分からない。ただ、また夢を見れば、会える可能性が高いのは確かだ」。
ーー 空太は、同じような毎日の中に、何か新しい物語が始まるような予感がして、何だか少し楽しくなってきたーー
「今日も学校に行って。授業を受けて、勉強して、部活をして……」。
同じような毎日が退屈だった。
「勉強なんてしたく無い。かと言ってしないと、親や先生がうるさく説教をする。通信簿の評価なんて、所詮ただの数字であって、俺自身の評価ではないのに」。
「低い評価を取れば、お前はバカだと言われ、周りには見下される。そんなに「点数」を取る事が大切なのか」。
ーーそうやって、カッコつけて言葉にしてみても、結局は、ただ現実逃避をしたいだけ。
俺の気持ちに関係なく、朝は毎日やってきて、今日も学校へ向かうんだーー
教室に着き「おはよう」と、クラスメイトに挨拶をすると、俺は黙って席に着いた。
大抵、俺はいつも10分前位に教室に行く。そしていつもあいつが、俺の席の近くに来るんだ。
「おはよう!!!空太」。
そう言って、明るいハキハキとした声で、いつも話しかけてくるのは、親友の小高だ。
ーー小高は、同じ陸上部の同級生で、一緒に長距離走をやっている。中学からの付き合いで、高校二年の今でも、親友として仲良くしているーー
「よう!小高!おはよう。お前、今日も寝癖ついてるぞ?笑」
笑って、空太が指摘すると、
「これが俺のマイスタイルだ」と、
寝癖を指で指しながら、小高は明るく笑った。
ーー 普段、空太はあまり話さないが、小高と一緒の時は、割と饒舌になるーー
「なぁ」!そう言って、空太が切り出すと、夜中の夢の事について、小高に話した。
ーー見知らぬ女性が夢に出てきた事ーー
ーー俺の事を知っている事ーー
小高に話し終わると、嬉しそうにニヤニヤしながら、
「そいつ可愛いか?」と、聞いてきた。
いや、そこかよ。と突っ込みを入れたくはなったが、
「あぁ、めちゃくちゃ可愛いよ」と、答えた。
そう言うと小高は頷き、
「お前、すげぇ絵が上手いしさ。その子の絵を描いてくれよ」と、聞いてきた。
「いや、絵は描いてあるんだ今から見るか?」
そう言って、カバンからノートを、取り出して見せたら、
突然、小高の表情が、険しくなった。
「お前それ……」そう小さな声で言うと、
小高は黙ってしまった。
「おい。どうしたんだよ小高」。
少し強めの口調で言うと、一呼吸置いて小高が
「お前、それ俺のばあちゃんの、若い頃の写真にそっくりだぞ?」と、言った。
ーー衝撃的だったーー
何故。実際に今も生きている、小高のおばぁさんが、
若い頃の時と同じ姿で、俺の夢に出てくるのか?
俺には理解ができなかった。