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第8陣:降臨せし黒き刃

レグナスさんがようやくレーナの力を使います。はぁ・・ちょっと長かった(* ´ ▽ ` *)

 流れていく時間。試合は更にヒートアップし最終的には俺の思った通りの対戦相手となった。


「1組VS0組。さぞ熱い戦いが繰り広げられるのでしょうね」


 1組。ナイン教官の指導する選ばれた生徒は試合の場で見届けていたが個々の戦闘力も長けている中、連携プレーも劣らない優勝候補間違い無しの戦闘を会場内の観客席に堂々と見せつけた。

 俺が指導している3人は特殊クラスの関係上2人抜けており数関係では不利に近い。しかし、あいつらなら。


「どう戦局が動くかはあいつらのプレイに掛かるだろう。俺はただ粛々と見守らせてもらう」


 教官が座る席から大分離れた位置で決戦の試合を見守る形で見学する俺にレーナは俺の隣に駆け寄る。

 どうやら、レーナも同じく決勝戦の場を見守るスタイルで行くらしい。


「お手並み拝見ね」


「勝つのは0組だ。1組には敗北してもらう」


 1組から選出されたメンバーは誰もが裕福な家柄で育ったとされる子供で誰もが、羨む才能を持ち実力を常に高めているとされる生徒ばかりだ。

 それに比べて0組は裕福関係無く生徒の資料を眺めてもハルト並びにアイリスの過去に関する素性がはっきりと分からない謎のクラス。

 能力はこちらが上回っている可能性があるが連携面においては劣ってしまう危険性がある。

 だが、それはあくまでも外から見た分析。実際に混じり合えば状況が逆転する可能性はありうる。

 そしてそうこうしている内にお互いの顔を確認してから1組の先頭に立つリーダーらしき人物は涼しげな表情でご自慢の金髪を手で払うと分かりやすい挑発を3人に仕掛ける。


「諸君。君達は私と同年代でありながらも良く分からない謎のクラスとしてアグニカ帝国軍事学校をうろうろしている邪魔者。そんな君達が優勝を果たしてもつまらない余興に成り下がるだけ。ならば私達でこの選ばれし戦いに見事勝利して沸き上がる声援にしてみせよう!その為にも君達には大変恐縮なのだが……潔く倒れてもらう」


「長話は飽きた。さっさと終らせてやる」


「さぁ、参りますわよ。これで泣いても笑っても最後です」


「よし!皆、頑張ろう!!」


 試合開始の音がスピーカーとして流れると会場で見物する1年の生徒とアグニカ帝国軍事学校で先輩として学校に在籍している生徒達は、白熱にヒートアップする祭に絶え間無い程の熱い声援を会場内を響かせると試合は1組が0組を圧していくという悪い方向へと進行していく。


「くそっ、こいつら」


 アイリスの突撃を2人がかりで押し通して、残りの2人はレイピアの動きを封じてリーダー格である金髪の少年が魔法を詠唱しているハルトを攻撃する。

 リーダー格の人物が近付いてくる気配に察したハルトはすぐに得意の双剣で受け流す。

 試合はどちらかというと1組がリードしている状況に陥っている。


「見事に息のあった戦術を使って油断も隙も無い程の猛攻劇を仕掛けてきたわね。このままじゃあ、優勝が遠ざかるわね」


「まだ、始まったばかりだ」


 試合開始から約5分、0組のハルトはリーダー格である人物とのつばぜり合いで場内を盛り上げていく。


「そろそろ、私達の為にも優勝を諦めてはくれないだろうか?」


「悪いがお前相手に物怖じする程、雑魚で無い。それにこんな場面で負けを認めたら……俺の目的は夢物語になる」


 ハルトは壁際まで圧されるもぎりぎりの所で振り切り、圧されている最中にも関わらず予め待機させていたと思われる魔法陣を手広く展開。

 対して振り切られたリーダー格の人物は対処する為に小さな炎の球体を幾つかに分けてからハルトにぶつける。

 しかし、ハルトは事前に把握していたのか直前に張っておいた岩の壁で守りを固めて勝ったと油断しているリーダー格の人物に魔方陣から出た鎖で腕と足を封じる。


「そこで敗北を味わえ。俺はお前達のクラスを潰しに行く」


「ぐぉぉ、小癪な!こんな魔法で俺の動きを封じるなんて……ずるいぞ!」


「負けた奴は黙っていろ。この世界は強者が成り立つ世界だからな」


「うぐっ」


 そうだ。この世界は結局の所、腕がある奴だけ勝ち誇る世界になっている。

 だからどれだけ富みと名誉と財産があろうが意味の無い世界。そんな世界で生きているハルトは目的を抱いて、この軍事学校に通っている。

 だが……時々あいつは俺と違った深い闇を奥底にしまっている。


「ハルト、お前は」


 何と戦っているんだ?


「試合はハルトのおかげで0組がリード。この調子だと1組が負けるわね」


「あぁ、やはり0組は人数に劣らない最強の力を誇っている。特にハルトはな」


 その後、アイリスとレイピアに加勢する形で後方支援を手早く実行して劣勢の戦いから優勢の戦いへと戻したハルトは合間に合間に各個撃破する形で見事に排除していくも、最後の最後はアイリスとレイピアに華を持たせる。


「アイリス、レイピア。終わらせろ」


「任せて!」


 アイリスは燃え盛る剣に一撃を放って一人の男をノックダウン。

 そしてレイピアは乱れの無い連続攻撃を実行する槍の突きに圧されていく女性は回避を駆使しながら雷の魔法を放つも、その際に放れた槍の一払いに敢えなく倒れた。


「勝者、0組!!!一回戦から怒濤の強さを見せてくれた圧倒的なる実力に拍手を!!」


「良かったわね」


「そうだな。結局はあいつらの意地が今回の軍事祭を優勝に導いたのかもしれないな」


 盛大なる拍手に包まれ、最後は表彰式に立たされる0組。アイリスは笑顔で場内を振り撒きレイピアは優雅な表情で甘美に浸っている。

 そしてハルトはどこか遠い目で夕日に明け暮れた上空を見上げていると特別鑑賞席に威風堂々と座っている帝国軍のハーマン少将からの賛辞の言葉が場内に響き渡る。

 誰も彼もが帝国軍のお偉いさんの言葉を聞いていた瞬間に、特別鑑賞席で警護していた兵士の数名が兵士を取り押さえてから一人の兵士が席に予め仕掛けていたのか特別鑑賞席の周辺に強固なワイヤーらしき物を出没させてハーマン少将とマッカン少佐を固定する。


「いやぁ、素晴らしい祭りでした。本当はもう少し場内の皆さまに楽しい一時とやらを心行くままに提供したかったのですが。私の計画を中止!!……させるなんて絶対にあり得ないので、申し訳ありませんが勝手ながらに舞台のプログラムを変更させて頂きます」


「貴様ら!いつから、そこに!」


「最初から祭りが開催される前にあなた方の所に何人か兵を送り込んでいました。私はその隙に着たくもない服に変装していただけです。無論顔はばれてしまう可能性もありましたので、適当な顔にしておきました」


 鎧を会場に投げつけて正装に戻した中年の男性は、携帯型端末デヴァイスで誰かと話してから通信を切る事で会場の外から大きな足音が押し寄せると会場から大量の狼型の召還獣が押し寄せ、観客席に座っている生徒を囲む。

 しばらくして1人の生徒が対抗しようと立ち上がるも速度が異常に速い狼型の召還獣になすすべも無く血を晒していくという状況に生徒達は表情を強張らせる。


「あはははっ、生徒諸君!君達はそこでしばらく固まっていなさい!私の目的が達成するまではね」


「何が目的だ?お前は!」


「私はドレイク。あなた方の大将であるあの男を亡き者にする為に動く復讐の鬼です」


 特別鑑賞席に堂々とした表情で立つドレイクに対して教官一同は席から離れようとする。

 しかし、そんな事は最初から想定済みだったのかデヴァイスから取り出した魔装銃と呼ばれるアグニカ帝国とは形が異なる不気味な銃をハーマン少将に突きつけ教官一同に脅しの言葉を送る。


「動けば、偉いさんの命は血しぶきとなって散るでしょう。あの男が来るまでは妙な真似は避ける事です。それと」


 俺の姿を捉えたドレイクは魔装銃を突き付ける……と同時に複数の狼型の召還獣が出没した事により、会場は悲鳴で集まる。

 しかし良く観察してみると頭部に機械のようなパーツが取り付けらている。まさか、今帝国軍で脅かしている機械獣か。


「レストランで出会わなければ想定不可能でしたよ。漆黒の死神」


「あの男とは誰だ?目的を聞かせてもらおうか?」 


「答えはこいつを倒してからにしてもらいましょうか。もっとも、私達が手塩を懸けて育てた機械獣に立ち向かえるとは思えませんが」


 試合会場の入り口から大きな音をドシドシと立てて出てきたのは人間よりも遥かに大きなサイズを誇った頭部に角が1本立っている四足歩行の生き物。


「やれ。まずは表彰式の全てを壊してしまえ」


 ちっ、0組までもがターゲットか。そんな事はさせるかよ!


「レーナ」


「任せなさい!」


 俺は会場の席から飛び降りていく同時に一緒のタイミングで飛び降りて手を差し伸ばしたレーナに手を絡めると人間の姿で保っていたレーナは黒い刃である黒き片手剣を周りに見せ付ける。

 レーナと繋がる事で更なる力を得た俺は思う存分に振り払ってから試合会場を脅かす大型の機械獣に立ち向かうとアイリスとレイピアとハルトも加勢する形で後方に回る。


「そういえば、0組の生徒もいらっしゃいましたね。折角ですのであなた方の実力も見ておきましょうか……」


「随分と呑気な奴だな」


 早く俺達を始末しないと異変を察知した帝国軍の援軍が来るぞ。


「いえいえ、私もそれなりに急いでいます。唯一の危険性があるあなた方を抹消しなければ、計画に支障が起きかねませんからね。そういう訳で……」


 ドレイクが取り出したデヴァイスから何らかの信号を送った事により四足歩行の機械獣は更なるオーラを周辺に吐き出して強固な力を見せ付ける。

 それにびくりと身体を震わせるアイリスとレイピアであったが、負けじと前に一歩出る。

 今ここに立ち向かうのは俺と0組一同の生徒。

 他の生徒や動きを制限された教官や校長はただただ黙って見るだけしか無い。


「ハート教官。あなたの本当の実力とやらを俺に見せてください」


「余り期待するなよ。俺はそこまで強くはない」


「冗談は止めた方が良いですよ」

 

 買い被り過ぎだ。俺はレーナの力を借りているだけで本来の実力はそこまで強くはない。

 むしろ今まで強かったのは俺を影ながらも協力してくれたあいつの力があったからだ。


「さて、無表情かつ無愛想なレグナス。久々の共同作業なんだから手を抜いたら許さないわよ」


「剣が喋った!?」


 驚きの余り口をパクパクとさせるアイリス。この事については事態が落ち着いてから、ゆっくりと説明してやろう。


「お喋りタイムはそこまでです。あなた方には私の計画の障害として消えて貰います!」


「行くぞ、無理だと思ったら迷わず逃げろ」


 そこから優雅に見物しているドレイク。すぐにそこの正面に立っている四足歩行の獣を倒してから、今回の騒動の目的とやらを根掘り葉掘り洗いざらいに聞いてやる。


   楽しみに待っていやがれ。

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