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92:新たな仲魔

 あの場で決められる事は決め終ったので解散し、俺達は一度家に戻る、部位欠損までしているという二人の治療をするのかしないのか確かめる為だ。

 ただいまーとアンジェに抱き着く。

 そう、シラタマちゃんは護衛としてダイアンの傍に置いて来た、1回分の食事も渡してあるので夕食時に彼方へ戻れば事足りるのだ。


「お帰りですわマグロちゃん、彼方の進展具合はどうですの?」


〈順調だよ、一週間もすればダイアンに権力が移るだろうな、今日から帝都のダンジョンで肉の調達をしようと思ってるんだけどさ、その前に治療をするのかしないのか確認に来たんだよ。

 俺の名前を出してるから俺以外が治療すると変だからな〉


「治療してほしいそうですわよ、料金は応相談と言う事でしたわ。

 調査報告の方はですわね、そもそも其方はお礼にレポートをまとめた物を渡す事は決定事項だと仰っていましたわよ」


〈三十日も調査して対価無しは不味いだろ、此方が一方的に儲けるからな。

 其方は別途相談すれば良いんだけど、金額を治療後で決めるともめないか? 折り合いが付かない場合はとんでもない事になるぞ〉


「調査レポートは対価無しではありませんわよ、サンプルとして数本ずつ持ち帰るらしいですわ。

 治療の方は確かに金額で揉めては目も当てられませんわね、薬での治療なら仙丹かソーマ辺りの秘薬が必要ですわ、そちらの金額を参考にしながら話してみますわね」


〈彼方の用事があるけど金額が纏まりさえすれば明日朝に治療する方向で良いかな、纏まらなかったらまた後日って事で。

 それで最下層付近には食える肉の魔物って何だったっけ?〉


「三十階層はシラタマちゃん達の猫達ですわね、食べられますが食用にしたいとは思わないですわよね。

 それなら二十八階層のグリフォンと二十九階層のワイバーンが良いですわ」


 うーん、具体的に鷹とかライオンとか言っても通じないよなぁ、ちょっと大幅解釈する言い方にして聞いてみるか。


〈ワイバーンは兎も角、グリフォンって、胸辺りから上が鳥で体が動物で翼がある、で良いんだよな?〉


「それで合ってますわよ、グリフォンも手なずけたら飛べるうえにかっこいいですわよね。

 空を飛べる魔物で乗れると限定したらドラゴンやペガサスも居ますが乗るのなら私はグリフォンが良いですわね」


 ふむ、確かにかっこいいな、ペガサスが居る事も驚きだが色次第では此方も良い。

 ドラゴンは俺達がいるから捕らえる必要性すらない訳だし、グリフォンを捕まえられるなら捕まえてみるかね。


〈ふむ、捕まえて餌付けしてみるか、ちょっと試行錯誤してみようかな〉


「それならアンナ達も呼んで良いですわよね?」


〈別に制限してる訳でもないからそこは聞かなくても大丈夫だよ〉


 ちょっと全員い繋いでと。


〈クリニスー、皆もだけどワイバーンを倒すのとグリフォンを召喚獣にしようと思って今から行くんだけどさ、ついて来るか?〉


〈マグロ、それは良いですね、クララもジュリアーノも初級ながら無詠唱を覚えた所です。

 アンナはそうですね、イメージを明確化できれば直ぐにでも無詠唱を覚えるでしょう〉


 ほう、けっこう早かったな、それにしてもアンナが遅いって、やっぱり詠唱に慣れきっているからイメージを明確化する事が難しいからだろうな。

 一回でも成功すれば後はとんとん拍子に全て使えるようになるのだろうけどな。


〈なら、何時も談話してる部屋に集合よろしく、アンジェは二十九階層へ転移出来るか?〉


〈転移門のある安全エリアへでしたら二十八階層へも可能ですわよ〉


〈それじゃ集まったら直接行こうか〉


 集まるまでちょっと聞いておくか。


〈クララ、体調はどうだ? 訓練中に眩暈とかきついと感じたりしてないか?〉


〈マグロ様、レベルが上がったからか、まったく疲れを感じません、病気になる以前より快調です〉


〈それは何より。

 ジュリアーノの方はどうだ? 生活に不便は無いか?〉


〈はい、皆様に良くして頂き快適に過ごしております〉


〈それは上々、今回は魔物と戦闘になるが接近される前に仕留めるから遠慮なく魔物に魔法を撃ち込め、漏らした分は俺が頂くよ〉


〈そこは師匠としての実力を見せる場にさせてもらえませんか〉


 それなら少し見学した後グリフォンの方に行くかな、検証が必要な分どの程度時間が掛かるか分からないからな。


〈それなら二手に分かれるか、回収もしなきゃいけないから其方へも嫁さんが行くって事で。

 グリフォンは手懐けなきゃならないからその手の知識がある人が良いな、それに、このちっこいなりじゃ拘束するのが難しいんだよね〉


〈それなら言い出しっぺの私が付き合いますわよ〉


〈戦力が半分になる程度に分かれればいいさ、それじゃ、集まった所で先に二十九階層へ行こうか〉


 本来なら野獣の牙と交渉する必要があるが、部位欠損を負った傷者の二名を除き今現在はニコライズ達三名の護衛中、夕方辺りに帰って来るだおるからそれに合わせて此方も戻れば問題ない。

 と言う事でダンジョン内部に直接転移した。


〈ダンジョンだからと言ってどこも似たような作りだな〉


「環境の違うダンジョンがあるとは聞いた事が有りませんわね」


 床も壁も天井も石材の作りで通路の幅やら高さが違うだけ、見た目変化なしってのも面白みに欠けるダンジョンだなぁ。


〈罠の判別がしやすいからありっちゃありか、それじゃ戦闘準備を、良いならクリニスが魔法を壁に打ち込んで開始してくれ〉


「了解した、では等間隔に開いて待機してくれ、それでは開始だ!」


 羽音をたててと言っても翼で風を切る音だが、通路の奥から数十羽以上重なる音が聞こえてくる。

 今居る部屋に通じる通路は一つのみ、当然だがその先は分岐しているし一本道でも無いが音は一つの方向のみ、それがより合わさりあたかも大量に、尚且つ同時にやって来るような錯覚を受けるだろうな、空間把握で識別できない者にとっては。


〈一気に全部同時には来ないから安心しろ、せいぜい団体さんでも五匹程度だよ、自分の立ち位置から敵ののどの位置に居るのを優先して倒すのか決めておくんだ。

 後は真っ先に狙うのは頭、次点で翼の根元、狙いにくい場合はどてっぱらに連発しとけ、それで大抵は落ちる〉


 二人が【ストームアロー】【ストーンアロー】と短縮して放っているのに対し、アンナのみが詠唱して中級単体用の槍魔法を放っている。

 【槍の形状を持ちて敵を貫き我が敵を討て、ファイアランス】と。

 最接近されればクリニスが首を撥ねて無力化し、ワイバーンの死体はセレスが回収してるし、問題無いだろうと確認できたので二十八階層へ移動する、メンバーは三人、俺、ティア、アンジェだ。


 安全地帯のギリギリ外に猫達用の皿を出しドラゴン肉を細切れにして食べやすくしたのを準備。

 安全地帯と言ったが魔物が入ってこないとは言えないそうだ、単に近寄ってこないだけで、当然魔物を倒し切れずエンカウントしたまま逃げて来ればそのまま入り込んで来るらしい、そして地上へ来る事もあるらしい。

 魔物にとっても一階層への転移門を使い、地上へ一直線に、かつ、最短距離で出てくる場合もあるって訳だ、主に人災で。

 ちょっと一番近いのを釣って来るわと伝えグリフォンの元へ、わざと見つかるように魔力をダダ漏れで近くへ行くと、クルルルゥーと鳴き此方へ飛んで接近、そのまま引き離さない様に引き連れ、肉を盛った皿を跨いで振り返ると、肉には目もくれず此方を攻撃して来る。

 嘴で啄みや足による掴み攻撃、体当たりなどだ。

 壁の様にガツッと受け止めては負傷する恐れがある為受け流す、その間にも観察は怠らないが。

 上半身は鷹で羽は真っ白、眼は鋭く猛禽類に相応しい顔つき、嘴は黄色をすこしくすんだ色合いか、体は明るい茶色、翼は体の近くは同じく明るい茶色だが先に行くほど白く先端は真っ白、尻尾は細くて同じく明るい茶色で先端の形は蠟燭の火に近く白い色合いだ。

 全長は3,5mほどか、全高は此方を攻撃する為に頭を下げているのではっきりと分らないが3m程度はありそうだ。

 アンジェが言うようにかっこいいな、手元に置きたいのも頷ける。

 此方が一切手を出さず無害なのだが一切攻撃の手を緩めようとはしない、その為強引に食べさせる事にした。

 俺が皿の肉を掴み取るのを見させたうえで、グリフォンが啄んで来るのに合わせ肉を押し込んでやる。

 少し咀嚼したかと思うと直ぐにごっくんと飲み込み一歩後ろに下がってじっとこちらを見つめてくれた。

 そこで次の一手だ、肉を盛った皿を食べて良いんだよとばかりに目の前においてあげる。

 此方に攻撃の意思は無いと知ってか、攻撃性も低下したようで肉を啄み食べてくれた。

 後は食べ終わるまで一切手を出さずに待つのみ。

 食事中に手を出されれば怒り狂う動物なんて珍しくもないからだ、そりゃ食事を邪魔されて嬉しいなんて考える者は居ないだろう。

 何時も猫達に与える量だ、正確な重量は計っていないが優に100kgはあるだろう。

 食べ終わり上を向きクルルルゥーと鳴き此方へ近寄り、俺にほおずりしてくれた、これで完全に懐いてくれた様だ。

 同じ目線に【フライ】で飛び上がり魔力を送り込み俺の支配下、召喚獣となった。


〈今日から俺達の仲間な! 最初は実力差があるから本来の力を出せないかもしれないがその内慣れるさ、それでこっちにいるのがアンジェリカ、彼女が今後相方になる、仲良くするんだぞ〉


「クルルルー」


〈アンジェ、もう触れても大丈夫だ、この子の面倒は任せるぞ〉


「夢にまで見ていた事が現実になったのですわね、ありがとうですわマグロちゃん!」


〈でも収納袋が使えなかったよな、オーガのあの袋はどうしたんだっけ?〉


「私が持ってますわよ」


〈そうだったな、食料持たせるのに渡したのを忘れてたよ、そのマジックバグに纏めて肉を入れておこうか、水なら魔法で出せるし空の樽が在れば良いな、余分に渡しとくよ〉


「良かったにゃアンジェ」


「ありがとですわティアちゃん」


「要領は分かったにゃ、次はティアがするにゃ、そうだにゃ、3体固まってるのが居るからそれを連れて来るにゃ、マグロは肉の準備をしててほしいにゃ」


 こう言い残しさっさと先行、準備が終わった頃に3体を連れて戻り、先ほどと同じように食べさせてティアが契約、そしてその管理をアンジェに押し付けた。


「こうして並んでいる姿を見ていると壮観ですわね」


〈そうだな、四体も並んでいると威圧感が半端じゃないな。

 此方はこれで良いか、仲間になったグリフォンを倒して食用にとは考えたくはないから今後もこの階層での狩りは止めとこうか。

 セレス、其方はどうだい、そろそろ終わりそうだけど上で合流するか?〉


〈それで構いませんがマグロ様、肉以外の素材はどうされますか?〉


〈そうだな、魔石だけ残して後は全部ここのギルドに売ろうか、持ってても使い道が無いからな。

 魔石と代金はそっちのメンバーで分けてくれ、俺は一体も倒してないからな。

 それより腹減ったな、売り終わったら暁の宿にでも飯食いに行くか〉


 俺は俺が召喚獣化した個体に乗りアンジェも同じく、ティアは自身が召喚獣にした個体に。

 そして俺の指示でテレポーターを潜り四体で子連れの合鴨の如く進んで行く、まぁデカすぎる鳥と言えばあながち間違いでもないが。


 そして乗ったまま一階層を通り過ぎそのまま冒険者ギルドの中へ、と言っても閑散としたものだ、冒険者は誰一人としておらず働いている職員のみ。

 昼時ならば一応食事も出すがあまり旨くないんだよね、味より量を重要視しているし、そして毎度の如く例の女が現れた。


「マグロ、何てことしてるのよ、召喚獣を連れたまま冒険者ギルドに侵入しないで頂戴」


 その一言でグリフォンが其方へと向き直り顔を近づけると、流石にビビったのか後ろに後ずさる。


〈カッコいいだろこの子、今さっき仲魔になったんだよ、乗ってみるか?〉


「え? 本当に良いの! ってそんなことは良いのよ! せめて外の厩舎に預けて来なさい!」


〈まぁまぁ、今度バルカント諸島にご招待するからそう目くじら立てるなよ。

 セレス達がもうそろそろこっちに来るからさ、その用事が済むまで良いだろ?〉


「それならまぁ、お詫びにあの時の果物を十個ばかり寄越しなさい、それで手を打ってあげる」


〈現金だにゃぁ、迷惑掛けたのも事実だからにゃ、その程度はプレゼントするにゃ〉


 渡されたチェリーロッサをいそいそとマジックバグに詰め込んでいる。


「まさか朝露の結晶に続いてあなた達も魔物を連れて来るなんてね。

 あなた達は召喚獣にしていて大人しいからまだいい方ではあるけれどね」


〈なんだそれ?〉


「朝露の結晶が無茶をして倒してるってツガットが言ってたでしょ、それでとうとうやらかしたのよ」


「なるほどにゃ、敵を連れたまま逃げ込んで来たんだにゃ」


「そうよ、盾職二人が殿を務めて時間を稼いでる間に救援を求めて来たのよ、死亡したのが二名、重傷者三名中内一名は部位欠損だったわ。

 対処後に救援に向かったら武器と防具に食い散らかされた遺体だけだったわ」


 最大火力の魔法使いが二人も抜けてる上に、瞬間火力では最強とも言える無詠唱持ちのアンジェが抜けているからな、キャパをオーバーして強引に狩ってたんだろう。

 そしてとうとうその堰を越え負傷者が出た、処理が不可能だと判断してさっさと退避。

 居合わせた冒険者を巻き込み処理は完了したが死人も出た、判断力は撤退が早かったことから馬鹿ではなさそうだが、火力を見誤ったか。


「なるほどにゃ、今セレスが率いて二十九階層で同じ事をしてたにゃ、たぶんだがにゃ、あれじゃ歯ごたえが足りないにゃ」


「それは貴方達だと基準が違い過ぎるのよ。

 それにしてもこの子達大人しいのね」


 と体をナデナデ。


〈そりゃ俺達と敵対してるなら容赦なく襲い掛かるだろうけど、楽しく会話してるだけだし、警戒はしても襲わないだろ普通〉


「マグロ様の召喚獣ですから当然ですよキャロルさん」


〈お帰り、皆無事で何よりだ、早速換金して食事に行こうか〉


「言っていただけありカッコいいですね、一体頂きたいほどです」


〈コツは分かったから食後にでももう一度行って捕まえるか?〉


「マグロ様、お願いします」


〈それじゃそうしようか、それが済んだら商業ギルドに寄ってちょっと買い物をさせてくれ〉


「セレスさん、何体討伐されたのですか?」


「四百二十八体ですね、解体してますから何方へ運び込むと良いでしょうか?」


 あれは絶句してるな、まぁSランクで数体ずつ狩るにしても空中への攻撃方法をある程度持って無ければ対処するどころか餌になって終わりになるからな。


「そ、そうですよね、それほど多くはありませんね。

 お願いがあるのですが、食事後にもう一度着て頂けませんか、何分数が少ないので計算が掛かりますから」


〈おいおい、自暴自棄以前にちょっと支離滅裂だぞ、少ないなら短時間で済むだろ〉


「黙ってなさいマグロ!」


〈はいはい、セレス、素材を渡してきて、この子達は一度水晶化して家に戻ってから実体化させよう〉







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