91:各ギルドへ協力要請
帝都商業ギルドで空の樽を20樽ばかり購入して城に戻る。
夕食を済ませて昨夜の分も寝なきゃなと言う事でさっさと寝ようとシラタマに抱き着くがまったく眠くならない。
仕方が無いので外へ転移、以前帝都の南街道でゲットした酒樽満載の荷馬車を取り出して酒を収納、荷馬車はそのまま放棄して部屋へ戻り酒壺を1つ取り出してがぶ飲みした、あれだ、蓋を開けて頭を突っ込み浴びるように飲む。
うーん、美味しくない! 何度も蒸溜して酒精のみ上げた感じが・・・アルコール度数が高いだけじゃんか! 以前ツガットが飲んでいたのをひったくって飲んだ酒の方が好みだが仕方が無い、もう飲めないしな、ということで 改めて蓋をして収納、シラタマに抱き着くも匂いが嫌だったのか振り切られて逃げられてしまう。
仕方が無いので1人? 一匹? でベッドへ行き寝るのだった。
翌朝朝食後、ぼちぼちと城に人が集まって来る、例のマスター達が来たのだ、猫を立ち会わせるのは宜しくないって事でシラタマ以外は水晶化して収納、シラタマには俺の脚になってもらう、今現在はセレスに抱っこされシラタマの背の上だが。
マスター達が全員集まった所で例の3階にある大会議室に集合、4つの陣営に分かれて四角くなるよう配置された椅子にそれぞれ座る、俺だけシラタマの上だがね。
最初入室直後はかなり驚愕していた、それでも大人しいシラタマを無害だと判断したのか素直に椅子へ座ったのだ。
「集まってもらったのは他でもない、面通しも必要だと思ったのでな。
我は後数日で退位する事をこの場で宣言し、後釜にはダイアン=ストレング=カラドラスが就く事になる」
「・・・・・」
流石に喜ぶべき所だろうが、それが不敬と取られれば処刑される恐れがあるか、これまでの対応を考えると、下手に喜んだりして感情を表す事は憚れると。
警戒されて当然だな。
税収に関する意見を言った者達は悉く処刑され命を落として来た、この場でやっとお前が退位するのか、喜ばしい事だなと態度なり言葉で言おうものなら即処刑されると思うのも当然。
無表情で、尚且つ賛同する言葉を出す訳にはいかない、之まで処刑されていた者達の後を追う訳にはいかないのだから。
それで感情は何も出さず沈黙を貫くと、中々慣れているようだな。
「聞いての通りです、私が後を継ぎ現在の税制を見直し一気に下げます、冒険者と外国との交易税には手を付けませんが全ての業種で一律30%へ落とします」
「あ、あの、よろしいでしょうか?」
「質問は何でも受け付けます、どうぞ」
「税を一律下げて頂く事は理解しました、それで賄えず元の水準に戻す事が懸念されます、その辺りはどうなのでしょうか」
「皆様方のお立場でしたらすでに把握済みかと思いますが、リル・ファルツ、及び昨日の戦闘でかなりの騎士が命を落としています、少なく見積もっても20万人近く、改めて人数の確認が急務ですが、以前の様な規模に戻すつもりはありません。
そうですね、25万人から30万人程度に調整する予定です、それでしたら今言った税率で十分賄えるでしょう」
「周囲の国から警戒されておりますれば、その様な人数の低下は攻め込まれる口実を与えませんかな?」
「早急に不可侵条約を締結する予定です、周囲の国々は此方の兵力に対しての警戒が強い為、同程度に下げる事を条件にすれば結んでいただけると信じております。
もう一つの懸念ですが、民を救う為との理由で攻められる恐れがありますが、今回、大幅に税を下げる事で民を救う事に繋がります、周囲の国々から攻め込まれる口実は潰えます」
「もし、それでも不足する事態におちいった場合、少しの上乗せはするのですかな?」
「いいえ、しません、マグロさんより意見を頂き対処策が御座います。
一つは商人の方々の護衛に就かせ金銭を稼ぐ案が有りましたが、それでは冒険者の皆様の仕事を奪う事になりますのでこの案は実行しません。
もう一つ、ローテーションでダンジョンへ送り込み素材などを確保、此方の案を採用します。
ダンジョンの魔物の暴走を食い止める働きも期待できますので、ダンジョンの安定化にも貢献できます」
「その様な命令を下して騎士の方々の反発を招きませんかな?」
「大丈夫でしょう、稼げた資金の一部を恩賞として渡す事により給料とは別に稼げます、きっと喜んで行ってくれることでしょう」
「なるほど、それでした懸念もありませんな」
「同じくダインジョン関連ですが、現在入る為の入場税を徴収しています、この点を撤廃させて頂きます、ぜひ冒険者の皆様にもお入りして頂きたく思います。
それではマグロさん、お願いしてよろしいでしょうか?」
〈悪い、流石に全員を念話で繋ぐのは手間が掛かる、アレッサ、代弁を頼めるかな〉
アレッサに間に入ってもらい俺の言葉を伝える、口調は違うが内容はそのままにってやつだな。
「了解じゃよ婿殿、では、婿殿に代わってわらわが話そうではないか。
先ずは冒険者ギルドじゃ、大幅に安い、明らかに圧力を掛け強引に依頼を受けさせたりした事例は無いかの? 証拠を持参してくれたらその都度そいつを排除するからの」
「確かに私の支部でも数件発生しております、しかし、相手は貴族様、睨まれでもしたらその際受けた冒険者達に被害が及ぶ懸念があります」
「お前はとことん馬鹿じゃの! 何のためのギルドじゃ、その様な圧力から冒険者を守る為に国と対等では無いのか! と言ってもじゃ、今更ではあるがの。
それなら反撃されない様にそいつの家族もろとも殺してやるから証拠と一緒に寄越すのじゃ、そんな腐ったゴミ連中は排除するに越したことはないからの、どうじゃ?」
「・・・相談した上で、改めて個別に対処したいと思います」
「まあ良いか、次は商業ギルドじゃな。
圧力を受け、安い金額を強要されて納品した事は無いかの? 素材の仕入れから加工、納品まで一連した売却証明書を寄越すのじゃ、そいつも此方で排除するからの」
「あ、あの、宜しいでしょうか?」
「遠慮せずに言うのじゃ」
「大半の御領主様、それと軍部の方々で上の地位の方はほとんどが対象となってしまいますが宜しいのでしょうか?」
「国王、予算の配分はどうなっていたのじゃ?」
「相場での金額で計算した上で決済していた、要はそう言う事だ」
ほう、それなら此方としては好都合、じゃんじゃん証拠を持って来い、腐った果実は伝染する前に取り除くに限るからな。
処刑と言う意味でな。
「ならば遠慮は無用じゃな、遠慮無く証拠を持って来るのじゃ、全て此方で対処し処刑するからの」
「此方が把握済みの貴族に関してはすでに捕らえておる、漏れがあるかもしれぬからな、その資料は大いに役に立つ。
腐った者が混ざっておれば他まで腐る恐れがある、この際逃さず出し切るべきだ」
「陛下の御意向でしたら、各個人ごとに纏め、持参致します」
「では次じゃな、税の事も出たからの、税関連をつめるかの。
冒険者ギルドは対象外じゃが、商業ギルドは今年と来年一杯税の回収を禁止するのじゃ、商業ギルドの活動資金も同様じゃ、活動資金に関しては婿殿が支払う。
もちろんその期間だけじゃ、再来年から通常状態に移行してもらうからの。
反対しても無駄じゃぞ、その気になれば婿殿は白金貨100万枚でも出せるからの」
「資金の出所はお聞きしませんが、2つだけお聞かせして頂きたい。
その、マグロ殿はなぜそこまでされるのですか」
「ある方の依頼を受けたからじゃ、婿殿曰、既に報酬は頂いてる、短期間に集中して立ち直らせる為なら手は惜しまないと言ってるのじゃよ。
もう一つは何じゃ?」
「後程提供した資金を回収したりするのでしょうか」
「しないの、完全に提供じゃよ、依頼主から報酬をもらった上で回収しては本末転倒であろう。
それで面倒だろうとは思うのじゃが、来年一杯までの活動資金を粗方で構わんから出してほしいのじゃよ。
いざ足りませんでは困るからの、一割増にして寄越すのじゃ」
「昨年の使用した金額から割り出しまして、明日にでも、遅くとも明後日までには提出させて頂きます」
「各支部別々に持って来るのじゃ、そうじゃな、白金貨と金貨を半々で良かろう、マジックバッグを2つ持って来るのじゃぞ。
公務に関しての資金は後程案内するからの、そこは後回しじゃ。
次じゃ、二次産業以降の者は税さえ回収しなければ問題あるまいが問題は一次産業の者達じゃ。
食事もままならない状態で回収せずとは申せ、そのままでは1年程度で立ち直らせる事は不可能じゃろう、それで二つ手を打つ事にしたのじゃよ。
婿殿が一時期皇帝の地位にあったのは知ってると思うがの、その際に打った手をこの地でも採用するのじゃ。
1つ、婿殿が所有している魔物の肉と塩と砂糖を無償提供するからの、村一つに肉500kg程度持ち込んで炊き出しをしてほしいのじゃ、人数が多そうな村には別途多めにの。
そこでじゃ、次の手にも係わる事じゃがな、調査してほしいのじゃよ。
簡単に言えばじゃ、資金をばら撒くからの、2つ選ぶ方法を用意しておる。
1つは一家に金貨20枚、もう一つは1人当たり金貨5枚、何方かを選ばせるのじゃ、その合計金額を羊皮紙に書いて、間違いが無いか村長のサインをもらって来るのじゃ。
無論、人数を誤魔化したりピンハネしたりした事が発覚した場合、本来なら罰金程度だと思うのじゃがな、直々に出向いて殺すからの。
肉の卸先はリル・ファルツ、王都、ツヴァイヒルの商業ギルドの食糧倉庫じゃ。
各支部は近い場所に空の樽を持参するのじゃぞ、塩と砂糖を詰めて渡すからの。
商業ギルドはその持ち帰った物資を依頼を受けた冒険者に引き渡しじゃな
冒険者ギルドじゃが、この際の仕事を村の数だけ発注してほしいのじゃよ、距離に応じて金額が変わる事は言うまでも無いがの、距離が遠い場所ほど馬車の準備をお願いするのじゃ、勿論この際の料金は此方持ちじゃ、ついでに言うがの、確実に受けてもらう為に通常料金の3割増しにして発注するのじゃぞ。
長々と話したが理解できたかの?」
「冒険者ギルドは炊き出しからの帰還に合わせ、再度金貨の配分に向かわせる。
商業ギルドは食材と調味料の配分、で宜しいのですね」
「それで良い、ついでにじゃが、肉だけではバランスが良くないからの、主食のパンもある程度購入して向かわせるのじゃぞ。
パン屋は忙しくなるじゃろうが市価の2割増しで構わんから臨時に雇い増産するように配慮も頼むのじゃ、それらの購入資金も当然此方持ちじゃな。
それと現地で収穫可能な野菜があれば買い取って調理するのじゃよ、小売価格の3割増しで構わんからの、別途帰還後に支払えばよいの、此方も村長に一括して合計金額を書かせるのじゃぞ、他に調味料が必要と考えるならば持っていかせるのじゃ、その資金も出すからの」
「肉などの納品は何時ごろ可能ですかな」
「今日でも構わんのじゃがな、空の樽を持って来てもらわねば足りないだろうからの、やはり明日辺りかの。
冒険者ギルドへの依頼の発注費用を渡す事も必要じゃしな、幸い今揃っておるからの、各自に白金貨10枚分ほどの金貨を渡しておこうかの、足りるかの?」
「依頼の分のみでしたら十分ですが、配分する分としては到底足りません、しかし、配分する人数がはっきりしません、各町ごと集計しお知らせいたしましょう」
「ではそうするかの、配分場所は城で良いじゃろ、渡せる者がちょくちょく顔を出す事にするからの。
そうじゃな、今回渡す金額で余った分はすべて合算し冒険者ギルドと商業ギルドで折半にしてよいぞ、今回無理をしてもらう謝礼じゃな」
そしてアレッサが金貨10000枚ずつ渡し終わった




