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88:国王の失策

 到着した先は帝国、先日スタンピートの被害にあい、俺が奇麗に消し飛ばした街の跡、ここなら人は誰もおらず暴れ放題だ、そこまで実力があるとは思えないがな。

 ギャラリーは少ないな、ま、見世物じゃないからどうでも良いが、ジワジワ痛ぶるか?

 抱っこされたままでは戦闘出来ないので【フライ】で飛びたち相対する、相手の武器は俺が帝国の騎士団長から取ったミスリル製の片手剣を放り投げて渡しておいた、本来何を使うのか知らないが適当で良いだろ、どうせ死ぬし。


「それじゃマグロ対国王の弟の対戦を始めるにゃ、ルールは簡単にゃ、戦争の延長線上と考え死ぬまでのデスマッチ、武器使用制限無し、魔法使用制限無し、アイテム使用制限無しの全てにおいて制限無しにゃ、相違があっても関係ないにゃ、決闘では無い事を念頭に入れて戦うにゃ、それじゃ開始にゃ!」


 距離を詰める為走り込んで来るがまともに相手にする気はない、ギリギリ剣で当たるかな? 程度の高度を取るべく二、一mほどの高さを維持、接近して攻撃を誘発、攻撃してきたら距離を取ると言う挑発行為を延々繰り返し、十分もすると完全に息が上がり肩で呼吸をし始めた。

 片手剣と言う武器のカテゴリーから大抵の攻撃は上段から切り込み剣の重さを利用して叩き切るか、遠心力を利用して速度を乗せて切るかだが、位置が頭より若干上に居る為上段からの切り込みが出来ない上、無理に攻撃しようとすれば速度も重さも乗せられず威力は言わずもがなだ。

 振りかぶって勢いを付けなければ速度も乗らず、そうすれば大振りになり剣筋が丸見え、回避してくださいと宣伝してるようなもの、当然実力差もあり当たるはずがないのだ。

 そうなると突きしか選択肢は無いのだが突き専用の武器という訳でもなく、頭上に対し攻撃をする為、余計に疲弊する訳だ。


『貴様! 決闘をする気があるのか! 正々堂々とかかって来い!』


〈なぁに、今からが本番だ、【ワンダーキャット実体化】〉


 全高三,五mほど、真っ白な体、レベルが上がりワイルドキャットから種族が上位へと成長を遂げた俺が一番可愛がっているシラタマだ。


〈シラタマちゃん、狩りの時間だぞ相手は剣を持っている奴だ、時間を掛けていたぶってくれ、止めは俺がするよ〉


『反則だ! 貴様の負けだ!』


「今回は戦争の延長線上と説明したにゃ、決闘ではないにゃ、それににゃ、魔法の使用は制限無しにゃ、これもマグロの召喚魔法にゃ、問題ないから続けるにゃ」


 俺はシラタマの背に乗り摑まってモフモフを堪能するだけだ。

 シラタマはダオルグの攻撃圏内に張り付き後ろに後ろにと回り込みながら猫パンチ! はせず爪を立てて体中を致命傷にならないように引っ搔き回すだけ、剣が当たりそうな軌道の場合だけ爪で弾き飛ばす。

 俺が体力を奪うように仕向けていたから本気で振る剣もどうって事のない速度、きっと倒れて休息したい頃だろう、そんな事をしたら即死だが。

 全身血みどろになった事でシラタマの行動が変わった、バランスを崩すように軽ーく押すだけだ、倒れない様に姿勢を立て直し踏ん張る必要がある為全身に力を籠める、この行為がさらなる出血を促す。

 後は失血死するだけだがそんな死に方はさせない、意識がもうろうとして倒れた時点で俺がシラタマから飛び降りて武器を回収、【ストファボール】を発動して溶岩漬けにして完了した。


「勝者マグロとシラタマにゃ、それじゃ戻るにゃ【ゲート】にゃ」


 遺体はそのまま放置だ、回収も不可能だし冷えたら鉄に覆われるからな、そして決闘前の席へと各自座り先ほどの続きとなった。

 俺だけ座らずしゃがみこんだシラタマに乗ってるが。

 水分補給もかねてチュリーロッサを取り出しぽいぽいとメンバーに渡す、後は勝手に食べるだろう。

 シラタマにもご褒美を上げないとな、とシラタマの前に皿を取り出しその上に自動解体で果肉のみにしたチュリーロッサを10個分出して食べさせた。

 食べ終わり、グルルルッうにゃーんと鳴き俺をべろべろと舐め回す為俺はドロドロに、【クリーン】で身綺麗になりまた定位置のシラタマの背に戻った。


「マグロさん、一つ頂けませんか?」


 良いよ、とダイアンに一個投げて寄越すとベアトリーゼに渡し其方で切り分けて食べてと元の席へと戻った。


『色々と問題があったが我は国王の地位を辞する、だが、先ほど命令した件に終止符を打つまで留まる事を了承して頂きたい』


「それは駄目じゃな、刑の執行は此方で行うのじゃ、捕らえた者達全て此方へ引き渡すのじゃよ」


『それで構わん、全ての身柄を確保した後ダイアンがあたらな国王として起ち、これまで民を苦しめた者達を処刑すればよかろう、そうしなければ民は納得せず、軍部は手付かづで残っている為ダイアンを引きづり降ろそうとする者が現れるだろう、そうなれば帝国と同じ惨状になりかねん。

 家族共々処刑するか否か、全てダイアンに委ねる事としよう』


〈それじゃついでだ、税率を決めるぞ、と言いたいが絶対に遂行する事を言っておく。

 俺の嫁が村を回っているが見るに堪えない惨状だそうだ、炊き出しをしているが一時しのぎにしかならずそれもごく一部、これじゃ全然足らん、俺の所有してる魔物の肉、合計三万三千体ほどをを無償提供する、商業ギルドに卸し冒険者ギルドに発注して各村々に回らせ炊き出しをさせる、同時に人口を把握させる。

 その一次産業の者達に金をばら撒く、これも冒険者に発注する、二次産業以降の者達は税金さえ回収しなければ早急に立ち直るだろうから其方は無しだ。

 そうすると食料を買い付ける者達で溢れかえり物価が上昇するだろう、その対策として俺達が帝国のダンジョンで魔物を狩り肉をその都度供給する〉


「マグロさん、食料はそれで足りると思いますが調味料はどうされますか、この国は海に面していません、殊の外塩が高価です、此方で供給しなければ枯渇しかねません」


〈あー、そうだな、海水を煮詰めて作るか、俺達の火力ならさほど手間でも無いだろ〉


「マグロ、例の手法でなら確保できるのじゃないかにゃ?」


 壁系魔法か・・・・水と金属だけで食料関連に関しては試したことが無いんだよな、固体だから試す価値はあるな。


〈どうだろうな、試した事無いし、ま、駄目なら煮詰める方向にしようか。

 で、次は税金を回収しない期間の設定だな、今年と来年一杯、税金を取るな、冒険者ギルドと国外からの交易は別だぞ、短期集中して立て直す、資金はあるから心配するな〉


「マグロ様、この国は疲弊しきっています、とてもではありませんが返済の目途が立ちません、お金を配布する事もですが、考え直された方が」


〈前にも言っただろ、すでにその代金は頂いているから請求はしない〉


「マグロちゃん、それでは納得できないんじゃありませんの、マグロちゃんにお願いした方をお教えした方が納得できますわよ」


〈却下だよアンジェ、俺は権力を笠に着て威張り散らすやり方は嫌なんだ、敵対した奴に力は使うけどな〉


「仕方ありませんわね」


〈それじゃ次は税率だな、ダイアン、どの程度にするつもりだ?〉


「先ほどマグロさんの言われた騎士の運用法を活用すれば相当に抑える事が出来るでしょう、それを加味して一律30%と考えています」


〈妥当かな、振るいにかける時間が問題だったから貴族を全員殺す必要があると思っていたが害悪だけ排除するそうだし激減程度で済むだろ、其方への出費も大幅に減るからかなり抑えられるだろ〉


「後はダイアンの家臣団を制定する必要があるけどにゃ、大枠は決まったにゃ」


『それに関しては先ほどいた者達を推薦しよう、権力を使い私腹を肥やすなどしない信用に足る者達だ』


〈ちょっと待て、何か連絡でもあるのか此方に向かってきている〉


「確かに来ておるの、この速度から走っておるのだろう」


 二分もするとその走っている者が到着し、その者から報告を受けた、でっかい猫がいた為驚愕はしていたが。

 帰還した者とはアリストフ=サンビエルに帰還命令を伝えに行ったフラウスであった。


『報告致します、アリストフ=サンビエル様は既にリル・ファルツに到達、掌握すべく命令を出した後でありました、陛下よりの命令をお伝えした所、これを不服とし独断で動くとの事。

 理由をお聞きした所、カラント=フラサレフ様のご家族が、その、【真摯の断罪者】の方々に身動きが取れないよう拘束され、町の者達に撲殺されていた為であります』


〈恨まれているから当然の報いだな、俺も搾取されている側なら確実に殺すからな。

 さてと、ちょっくら行って来るわ、【ゲート】〉


『お待ち下さい! 

 フラウス、これを持って行け、アリストフ=サンビエルに伝えよ、我は退位する意思を固めていると、そして近衛騎士団長の地位を剥奪、即刻城に帰還せよ、この指令を無視した場合、家族共々処刑するとな』


 何やら玉璽らしき品を手渡した、でっかい判子の様な品だ、正確に言えば印綬、これを持つ者が国王の代理であるとの証明だ。

 テレポーターでは時間が掛かるとゲートを利用させて送り出した。


 だが、これが最悪の手であった、フラウスからその印を取り上げ国王の意思だと主張、国境警備に当たる騎士をリル・ファルツ、並びに自身の領地であるザースバルに終結させた、ことが成就した暁には国王の地位に就く事を宣言するつもりである、結果は考えるまでも無いが。


 俺達は貴族とその家族が捕らえられるのを待つのみ、すべての条件が整い次第日時を決めて王の退位と即位、そして処刑を執り行い速やかに政権を掌握、後は見守りながら細々とした方面を受け持つだけだ。

 時間が二時間程度経過した頃、早い者達は貴族達の身柄を確保し、身柄は地下牢へ、資産は宝物庫へ次々と運び込まれていった。

 そして夕刻、ダクサもカルラも無事に帰還し、全ての対象を確保した頃、何やらリル・ファルツとそれに対を成すザースバルスの都市に騎士が集まってきている事が耳に入る。

 なぜか俺達も城での夕食をご相伴にあずかり堪能し、アンジェ達とクリニス達、合計七名は屋敷に戻し、騎士の動向が気になった俺達はそのまま城で寝る事に。

 猫達を全て実体化させ、ダンジョンで昼食前に水晶化したので食事をさせ、そのまま護衛として各部屋に

五匹ずつ駐留させた。

 更に3時間経過し辺りは漆黒の闇の中、血みどろになりながらも伝令として送り出されたフラウスが帰還して来たのだった。

 そして寝ていた俺も起こされ、全員を早急に招集、王の側近たちも居る中報告を受けた。

 報告させる前に【エキストラヒール】と【クリーン】を掛けたけどな、出血多量で死亡、報告が中補半端では今後に差しつかえるからだ。


「有難うございますマグロ殿、それではご報告を。

 アリストフ=サンビエルに報告後すぐに拘束され印綬を奪われてしまいました、陛下の名代としての力を使い国境警備についている騎士達を招集しております、場所は二ヵ所、リル・ファルツ並びにザースバルスでございます。

 招集理由はリル・ファルツを襲った者達が王都を襲い陛下並びにご家族が囚われた為、罪人を排除しお助けすると言うのが表向きの理由です。

 実際は陛下共々排除し王国を簒奪する腹積もりかと」


「印綬を託したのが裏目に出たのだな。

 奴は家族が囚われの身になっている事を把握しておるのか?」


「承知しております、それを逆手に取り陛下の為であれば家族も命を捧げる事を厭わないと周囲に話しております」


 国の為なら命を捧げる事も厭わず、それを聞いた周囲の人間は何て立派な覚悟なんだと推奨し人心を得る算段なのか、あの時点で俺が動いていればこれほど酷い状態には成らなかったんだがな。

 俺が動いた事による死者より、今回の内紛による死者の方が多そうだ。

 しかし、これだけの情報を持つ奴を解放した辺り、スピーカーとしての役割を与えたのか、王都の騎士達、国境警備にいる騎士達、比べれば数字的な差は明らかだろう、それを知れば戦いもせず王都の騎士は離散し更に戦力の低下、そうすれば簒奪する計画がより現実味を増す、俺達が居なければだがな。


〈ややこしい事態になって来たな、それが本当ならそいつを拘束しても自分も命を捧げるとか言い出して騎士達は止まらず逆に反発する恐れがあるな〉


「婿殿、全軍にこの事が知れ渡る前に手を打つのが定石じゃぞ、時間が経てば信者が増えるであろうからの」


〈それでアリストフの現在位置は何処だ?〉


「カラント=フラサレフの屋敷におりました、ですがマグロ殿の矛先を躱す為場所を特定させているのかもしれません」


〈それなら騎士が大挙してればバレるからな、少数で身を潜めている可能性もある訳か、それならそれで探しようはあるな、セレス、ティア、手伝ってくれ〉


「婿殿、わらわも連れて行くのじゃ、こんな楽しい事仲間外れは嫌じゃぞ」


〈了解、セレスとティアで組んでくれ、それで屋敷の制圧をお願いするよ、俺とアレッサで少数に分かれてる場所を制圧する、ま、盗賊と区別が付かないから厄介だけどな、それじゃ行って来る【ゲート】〉


「それでは行ってまいります【ゲート】」


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