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86:一時帰還

 我が家に戻る前のリル・ファルツは無人なのかと言うほど誰も通りを歩いておらず閑散としていたが、十人を連れて転移して戻ってくると少人数だが人々が出歩いていた。

 戦争に巻き込まれれば死にかねない為当然の事だ。

 俺は隣接する都市の動向が気になるので都市を離れ東と南の街道沿いから行ける都市を確認すると徐々にだが騎士がテレポーターを使い、集結している様が窺えた。

 当然だな、連絡が行くようにわざと時間をかけた訳だし。

 その頃、ティアは冒険者ギルドへの説明も終わり拠点へと戻り、次いで俺が拠点へと戻った、そしてセレスとダイアンが戻ったのは夕刻に近い時間帯であった。


〈一番短そうな俺からの報告で良いかな?

 東門と南門から街道沿いに行けばつける町だが徐々に騎士が到着し少しずつ増えているといった感じだな、規模にもよるが早くて明日朝到着と言ったところか、食料供給の面から、其方の町も解放する方が良いかもしれないな。

 そうだ、此処に居ない人も参加させたいんで念話で頼むよ〉


〈了解にゃ、次はティアだにゃ。

 冒険者ギルドに要請したんだがにゃ渋ってるにゃ、下手に情報拡散した場合国を相手にしかねないとの懸念があると言ってたにゃ、トップを先に潰した方が掌握しやすいかもしれないにゃ〉


〈商業ギルドも同じような答えでしたね、税金の収集禁止も拒否されました、これでは周知させる事が容易ではありません〉


〈次は私ですね、アラニス王国へ掛け合いはしましたが、私達は国の艇を成していない為に税率に関する変動を拒否されました。

 食料交易ですが、其方は徐々に増やす事は取り付ける事が出来ました〉


〈長期間安定して支配しないと協力はしないか、二ヵ月の足かせが無ければこの方法が後々の為なんだがなぁ〉


 うーん、見通しが甘かったか、安定させながら信頼できるかどうか振るいにかける方が後々統治しやすいのだが、やっぱり頭を挿げ替えた後、一気に掌握して不要な枝葉を切り捨てる方向へ舵を切るしかなさそうか?

 そうでもしないと二ヵ月の期限などあっさり来てしまうし。


〈マグロ、強攻策で頭のすげ替えを一気にしなければ間に合わないのでは?〉


〈ある程度の地位に居る奴の協力さえあれば一気に解決するんだがなぁ、時間が無ければ強攻策を実施するしかないか、ダイアンはどうする方が良いと思う?〉


〈じっくり腰を据えて推し進める事が出来なければ王を排除するしか手はありません、メリットは分かりきってますがデメリットは何でしょう?〉


〈腐敗した部分がかなり残る事かな、命を狙われる事が予測されるのもデメリットと言えるな〉


〈前半はどちらにせよ残ります、後半はその為にレベル上げを施して頂けたのですよね・・・・短期決戦で挑みましょう〉


〈了解した、それなら騎士達の人死にを極力避けようか、此方に向かって来る部隊に空を掴ませ引き付けている間に首都を落として公開処刑まで持って行くぞ。

 シャロ、クリニス、クララ、アンナは今すぐ此方に来てくれ、屋敷に転移するぞ〉


〈マグロ様、大半を倒さねば傘下に入らず反発するのではないでしょうか?〉


〈将来ダイアンの部下になるからな極力残す方向で処理したいだろ、と言ってもセレスの言う通りになりそうだけどね。

 それはさておき国王を家族ともども人質に取り上層部を軒並み捕まえた上で、大多数の目の前で国王を辞めてもらえばいいさ、拒んだら処刑して強引に奪えば良い、そこまでしたら冒険者ギルドも商業ギルドも首を縦に振るだろ。

 その後の処遇はダイアンに任せる、もし生きていたら処刑するもよし国外追放にするもよし、完全に軟禁すると言う手もあるな〉


〈決まったのなら帰るにゃ、それで彼らはどうするにゃ?〉


〈解散させて良いよ、情報は何も与えないでね。

 カエラさんもそれで良いかな?〉


〈私達はこのまま王国内を見て回りたいと思います〉


〈わかった、肉などの食材はいくらでも使って良いから、現状どの様な感じなのか情報収集もお願いするよ〉


〈昨日も数ヵ所の村に行きましたが、何処も食べるに困っている状態で、大差無さそうです〉


 帝国であの惨状だったからな、更に上乗せで十%も高いんだ、税金回収を止めた所で早々に食事改善は不可能だからな、いっそ帝国の様にばら撒くか? その方が立ち直りやすいだろうし。


〈今所有してる高級な肉をばら撒くのもなぁ、何処かのダンジョンで食える魔物を倒して一定期間無料配布しないと仕事すらまともに出来ないかもな、それに合わせて帝国でしたように、現金をばら撒くか?〉


〈マグロさんの言う食料供給の面でしたらダンジョン産の魔物の肉の供給は良い手ですね。

 ですが、お金をばら撒くのは短期間で復興させる場合なら効果は高いですが、あまり頻繁に行うとお金がだぶつくのでは?〉


〈うーん、犬の肉は必要ないから全部商業ギルドに渡して配布させるか、追加でツガットにでも良さそうな場所を聞いてダンジョンの階層丸ごと引き付けて倒せば良いだろ。

 お金の配布は今回ばかりは仕方ないだろ、ただ、全体に配るから食料が高騰しそうだよな、その為にも肉の供給はしっかりしないとな〉


〈それならマグロちゃん、帝都のダンジョン、四十八階層にグリフォン、四十九階層にワイバーンがいますわよ、グリフォンは体長三mほど、ワイバーンは体長五mほどありますから一体一体の取れる肉も多いですし、魔物の移動速度も速い方ですから短時間で済みますわよ〉


 ふむ、グリフォンなら高級な鶏肉かね? それなら食べやすいからそれも良いな。

 ワイバーンは飛んでる蜥蜴か、ドラゴン最下級辺りかね、ドラゴンなら味的にも外れないだろうしそれで良いか。

 ストレイルのスタンピートの原因になったダンジョンも候補に入れて良いかと思っていたけど、手近に食べれる肉を取れる場所があるならそれで良いか。


〈流石地元のSランク冒険者、良い事を教えてもらったな、都合をつけてさくっと倒して来るか、てか、俺達って一階層と最下層の五十階層以外って行った事無かったな〉


〈マグロちゃん達みたいにあっさり倒せる実力があるなら下層で戦う方が効率良いですものね、途中を省きたくなるのも分かりますわよ〉


〈それじゃ犬の肉をばら撒く際に人口を把握させてそれに合わせてお金をばら撒こう、国の上層部にお金が集中してたのを庶民に回せばいくらか立ち直るだろ〉


〈あの、マグロ様、本当に宜しいのですか? あまりに高額なりますと、疲弊した現状下ではお返しする能力を超えてしまいご迷惑をお掛けしてしまいますが〉


〈ダイアンは心配しなくて良い、代金はすでに別の人からもらってるからな、銅貨一枚たりとも返却してなんて言わないよ〉


〈何方から報酬を頂いているのでしょうか?〉


〈答えて良いのか分からないからな、間違いなく高貴なお方、とだけ答えておくよ〉


〈それは仕方ありませんね、これ以上聞かない事とします〉


〈それは助かるな。

 其方は兎も角、俺がぶんどって来た宝物庫の中身だが俺が全部買い取る、現金が皆無だったからな、それを使って今年一杯と来年一杯税収無しでやりくりしてもらう、頃合いを見て全部確認してもらおうかな〉


〈現金化するのも手間ですからぜひお願いします〉


 資金的な事はこの位か、二次産業以降なら税金を回収しなければ短期間で収入の改善になるだろう、一次産業は作物次第で収入の時期が違うからな、下手すれ数ヶ月現状維持になりかねない。


 俺は四人と合流し家(皇宮)に転移して応接室に行く、十八人からなる調査員たちも別室に戻って来ているようだ。


〈ただいまー、昼ごはん食べ損ねたから腹ペコだよ〉


「お帰りなさいマグロちゃん、二ヵ月との期間がやっぱりネックでしたわね」


〈それが無ければじっくり取り組む方が後々楽そうなんだけどね、民の事を考えると短期間でと願うのも分かるからそこは仕方ないかな〉


「マグロちゃんの睡眠時間も有りますからこの辺で食事にしますわよ、リスタルで調理済みの魚を買っておきましたの、それで構いませんわよね?」


 魚に合わせ、肉の串焼きも取り出し半焼肉で食事を済ませ、彼方で寝る予定で収納しておいた寝具を元に戻して俺だけ早めに就寝した。


 翌日朝食後、調査員たちが挨拶に来た、二名罪人へと落ちた者を伴って。

 昨日の寝る前まで普通に青いマーカーだったのだがな、何か盗んだのか? 物は寝る部屋とこの応接室、調理場にしか出していない、しかも彼らの部屋はがらんどう、そうなるとガラス代わりの水晶は取れないからその開閉の為に敷き詰めたミスリルでも盗んだのか?


「良い所に来られましたわね、全員ではありませんが同じクランの面々ですわ」


「おお、それはそれは、この度はご協力くださり感謝に堪えませんな、申し遅れました、ニコライズ=リオライル、この度調査団のリーダーを務めさせて頂いております。

 十八名中二名が私の元で勉学をしております直弟子で、残り十五名はAランク冒険者クランの者です」


 瘦せ型長身のおっさんと言うにはちと早いか、180cm程度の上背のある男性だ。

 服装は冒険者と見紛う皮系の鎧を着こみ、剣帯を付け左右にダガーサイズの武器を装着している。


「護衛の任務を受けさせて頂いてます【野獣の牙】リーダーのボリス=ハイダルードです、募集人数より若干多かったのですが快く迎えて頂きまして、全員で来ております。

 しかし何処の宮殿かと見違うほどの建築物ですね」


 此方の男性はがっしり系、ハーフプレートを装備している、胴体部分だけで腕を覆っていないタイプの鎧だ、腕部を軽くすることで腕の動きを阻害せず攻撃を重点にする気なのだろう。


「そこは手ごろなサイズの屋敷が無かったから仕方ないのにゃ、一つ聞きたいのだがにゃ、良いかにゃ?」


「答えられる範囲でしたらお答えしますが、どの様な事でしょう?」


「昨日の時点では犯罪者は混ざっていなかったのにゃ、なぜ今日は二人混ざってるのにゃ?」


 ありゃ、俺が問い詰めようと思ってたのにティアに先を越されたか、この手の対応はティアだとけっこう慎重だからな、このまま任せても良いか。


「御冗談を、確かに此方へ赴く前、ニコライズ殿の要望で検査を済ませた際には罪歴は確認されておりません、何かの間違いでしょう」


「マグロ、ツガットに連絡を入れるにゃ、犯罪鑑定の水晶を準備させるにゃ、確認できるまでこの部屋から出るんじゃないにゃ」


「待ってくれ、その様な時間的な余裕はないはずだ、調査の予定が詰まっているんだ、予定が狂えば余計な出費になり食料も足りなくなる」


 とその犯罪者が弁明した。


「まぁいいにゃ、此方が送り出さないと帰れないからにゃ、その内鑑定させるにゃ」


 判定しない限りバレないだろうとでも思ってたんだろうな、そうそう特殊なスキル持ちなんてザラには居ないのだろうが、俺の嫁さんはその特殊に当てはまるし、場所が場所でそれも重なりすでに逃げ道は無い。


「なんだか妙な具合になりましたな、お世話になっておきながらお手間まで取らせては申し訳ありません、帰還した際に全員を鑑定させると約束しましょう」


「一応忠告しとくにゃ、人質を取り帰還させるように仕向けたら即刻殺すにゃ、そこまでしなければ罰金程度で済むにゃ」


〈駄目だティア、今の内に手を打つぞ、何をしでかすか分からない罪人を連れまわすなんて気の毒だろ〉


〈それもそうだにゃ〉


「そこの二人、拘束させてもらうのじゃ、即刻衛兵に突き出すからの」


 その後は迅速だった、ティアが二人の鳩尾を軽く腹パンして倒れた所をアレッサが掴みあげ【ゲート】で帝都の南門前に転移、門で身分証を確認する衛兵に犯罪鑑定の水晶を使ってもらい無理やり確認、窃盗の罪歴が確認されて二人を引き渡し、家へと転移した。

 その間調査団の面々は誰も口を開けず無言だった、罪歴を確認させたので何も問題は発生せずついて来るだけだ。


「これで解決したにゃ、ニコライズ、護衛が二人減ったけど大丈夫かにゃ?」


「はぁ、人数的には大丈夫ですが、如何したものですか」


「も、申し訳ありません、クランの者が大変な事を!」


 土下座まではいかずとも九十度以上頭を下げられた。


「あの二人が勝手にした事にゃ、気にする事じゃないにゃ、人数が減っても大丈夫なら調査の続きをお願いするにゃ」


「寛大なご処置痛み入ります。

 今後同じことが判明したらその場で殺すからな、これ以上クランの名に泥を塗るなよ!」


 こうして十六名に減りながらも調査へと出かけて行った。


〈俺達が送り出さない限り逃げ道が無いってのに、馬鹿な事する奴って居るもんだな〉


「ミスリルは高価ですから、それが取り放題とも言える量を敷き詰めていますからね」


 あら、やっぱりそれに行きつくわけね。


〈取られた場所を確認しながらまた敷き詰めないと駄目なわけか、面倒だねぇ〉


「それは仕方ありませんわよ、それでそちらの予定が変わりましたわよね、如何なさるのですか?」


〈城の俺が寝た部屋に転移する、四階だからお偉いさんがいっぱい居るだろ、片っ端に移動できない様にしてここに送るから随時拘束してほしい、そして選別した後王都に連れて行きダイアンに引き継ぎをさせる、拒否されたら処刑かね?〉


「それならいっそ此方で拷問して無理やり言わせるにゃ、その方が早くないかにゃ」


〈人死にはその方が少ないか、その案にしよう、彼方に行く人数より此方の人数が必要だからな、俺と後二人程度で良いか、誰が来る?〉


「【ゲート】を使えないと話にならないからにゃ、ティアが行くにゃ」


「マグロ様が行かれるのでしたらお供します」


〈それじゃセレスとティアにお願いするよ、行って来る、送る場所はエントランスにしよう、ある程度広い方が良いだろう、人数が分かって無いからな〉


 こちらの拘束が完了したらリル・ファルツに向かった部隊をこっちに引き付け直さないと彼方で犠牲者が出るかもしれないな、ちょっとだけそちらにも手を回すか。


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