82:魔族の加入
俺のこの小さい状態で違和感があり過ぎるので、マグロとファサラの子供という扱いになった、対外的な場面ではだが。
そして翌日、リスタルに全員で転移、セレスにもう一方の引率を頼みマグロ(魔物)を調理してくれる店を探し夕食の料理を頼むようにお願いする。
俺とティア、引き継ぐアンジェ、バルド、エリーナで商業ギルドへと向かった。
俺の睡眠の時間もあり若干遅い時間だがこれで良い、交易の手続きでごった返す中に並ばなくて済む、待つ事十分程度で俺達の番となりティアが相対する。
「以前此方で不動光の灯台のコアを頼んだ者だがにゃ、【真摯の断罪者】の者が来たと言えば分かるかにゃ?」
「マグロ様率いるクランの方でしたか、帰還が遅いと身を案じておりました、よくぞお戻りに」
「戻ったのは結構早かったのだがにゃ、予定が詰まって来れなかったのにゃ。
それで調査の件だがにゃ、一緒に来ているアンジェが案内人となるにゃ」
「紹介にあったアンジェリカですわ、調査の方々の迎え入れなどを頼まれておりますの、先方にお伝えした場合どの程度でお返事頂けますでしょう?」
「他の調査を放り出してでも是非お連れ頂きたいと仰っていましたので本日中にはお返事いただけると思いますが、皆様のご都合は如何でしょうか?」
「本日此方で夕食後に群島へ戻りますわ、その後の時間は開いておりますの、其方の都合に合させる事が出来ますわよ」
「それでは夕食後此方にお出で頂けないでしょうか、その際に灯台のコアも此方に運び込んでおきますが如何でしょう?」
〈それで良いよ、それと住む場所は提供できるが寝具は必要な事、調理器具も食料も持参するように、魔物が居るから護衛が必要と言う事も伝えて。
食料なら定期的にこちらへ転移で送る事が可能だからそれほど心配しなくて良い事もね〉
「それでお願いしますわね、群島には私達の拠点がありますの、ですから住む場所は提供しますわよ、その他身の回りの品はお持ち下さいな、食料は調査期間中も転移すれば買い付けは何時でもできますと同じく伝えて頂ければ幸いですわね。
魔物が生息してますから護衛を雇う事も重ねて伝えて下さいますか?」
「注意点として伝えますのでご安心を、最低十名程度の規模になると思いますが大丈夫でしょうか?」
「十人でも二十人でも構いませんわよ、空き部屋が多数在りますから気にせずどうぞとお伝えください」
用事も済んだ事だしと久しぶりの漁港なので掘り出し物が無いかと見て回っている。
行き先々で、いや歩くたびか? めちゃ俺達って見られてる気がする、猫に狐にドラゴンに人間二人だもんなぁ、流石に声をかけて来る奴までは居ないかと思われた時ナンパされた、「興味ないにゃ」の一言で終わったが。
そんな感じに観光も終わりセレス達と合流し夕食をとなったがティアは残念そうだ、はっきり言って全身赤身のマグロらしい、身が締まって脂肪分が少ない為トロの部分が無い、よってドラゴンの肉の方がおいしいという結果に落ち着いた。
これまたマグロのお肉は死蔵する事になりそうだが、マグロは火をがっつり通すとパサパサするんだよなぁ、煮込んだり焼いたりの調理法だったのがまずかったのかもしれない、生で食べられないのかねぇ。
食事も済ませ商業ギルドに入ると彼方から声を掛けて来た。
「【真摯の断罪者】の皆様、お待ちしておりました」
「お待たせしたようで申し訳ないにゃ」
「込み合う時間ですので勝手にお待ちしていたので謝罪は不要です」
「それで先方はどうなったのにゃ?」
「調査を行う方の名はニコライズ=リオライル、そして彼の弟子二名です、現在護衛依頼を冒険者ギルドへ依頼しておりまして、張り出されますのが明日の早朝の為に早くて二日後の早朝となりますが宜しかったでしょうか?」
「予定はそれで構いませんわよ、時間ですが朝食後に都市の入り口を通り此方にお伺いしますわ、少し時間が掛かりますが宜しかったかしら?」
「彼方も食料の収納などに時間が掛かりますので丁度よろしいでしょう」
「それは結構ですわね、それで調査期間の予定はどうなっておりますの?」
「調査範囲がかなり広い事を考え一月ほどを目途に考えられておられますな」
「群島全てを回られるのですわよね?」
「いえいえ、環境的には全て同一であると考えておられるようでして、皆様に準備して頂きました宿泊地の島を集中的に回ると聞いております」
「なるほどにゃ、全て回るには一月じゃ短いと思ったのにゃ。
それで灯台のコアはどこにあるにゃ?」
倉庫に案内され大魔石を四つはめ込み実際に起動してみた、これでも明るさが足りない場合はと言う事で周囲4面の内残り三面にも魔石を付けて下さいとの説明を受け収納した。
その場で転移し我が家へ戻ると俺は即就寝した、朝が遅くなるのはなるべく避けたいが為だ。
翌朝、身支度を済ませて七名を除き帝都へ転移、入場手続きが俺達の番となるとツガットから伝言が入っていた、ストレイルのカサンドラと言う人物から連絡があり此方へ来てほしいと。
なぜ帝都に来たのか、それはカラドラスに最も近い町、リズラルへ行く為にテレポーターを利用しようと考えていたからだ、これが功を奏したとも言えるのか。
こんなまどろっこしい真似はせず直接通信水晶で連絡すれば良いのにと思うマグロであった。
「如何するのにゃ? これからの予定が詰まってるにゃ」
〈そうだな、とりあえず直接カサンドラさんに何の用事なのか聞いてみるよ〉
「それが早いにゃ」
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〈カサンドラさん、マグロだけど起きてるかな?〉
〈マグロさん? ん? これは何??〉
〈突然すまないな、念話ってスキルだよ、相手を思い浮かべて思考で会話が可能なんだよ〉
〈便利なスキルがあるものですね、至急お伝えしなければならないと思いまして、方々に連絡を取れるようにとお願いしていたのです〉
〈それで、どうしたのですか?〉
〈ジュリアーノ=コルネルさんですが、今回の事で魔族である事が周囲に知れ渡り戻る事がかなわないと言っていまして、良識ある方に身受けして頂きたいと、そこでお助けしたマグロさんが最有力、彼女もその方が良いと言っているのです〉
〈それならカサンドラさんが身受けされては? 実際に動かれて例の商人を捕らえたのですし、信用面ならば彼女も納得するのでは?〉
〈私の周囲には魔族憎しと思っている者が少なくありません、スタンピートの事もあり留まらせた場合私の目を盗み虐げる恐れがあります〉
〈そう言う事ならば仕方ありませんね、今から迎えに上がりますが、何分立て込んでまして、俺の嫁に引き合わせますよ〉
〈またお世話になってしまいますが、よろしくお願いします〉
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〈と言う事で俺とセレスで行って来る、俺一人じゃ無理だからな、それでティアにお願いがあるんだよ〉
「なんだにゃ?」
〈リズラルの郊外まで移動が完了したら我が家のエントランスまで迎えに来てくれないか?〉
「お安い御用にゃ」
〈それじゃ行って来る【ゲート】〉
とセレスに抱かれてカサンドラさんの邸宅前に直接転移した。
「お待ちしておりましたセレス殿、先ずは此方へおいで下さい」
流石カサンドラさん、転移スキルの事を考えて案内人を寄越してくれていたようだ。
案内されカサンドラさんとジュリアーノの待つ部屋へ案内され対面した。
「お待ちしておりましたセレスさん、それでマグロさんは?」
「此方の龍がマグロ様です、現在人化できませんのでご容赦を」
〈そう言う事で、この姿だよ、理由は聞かないでくれると嬉しいな〉
「複雑なご事情が御有りの様ですね」
〈そう、複雑なんだよこれがまた、ジュリアーノ久しいな、こんななりだがあの時商人と会話を交わしてたマグロだよ〉
「身元引受て下さり有難うございますご主人様」
〈ご主人様は止めてほしいが、呼びたいように呼んでもらえれば良いか、ちょっと時間が無くてな、家に帰り嫁達に引き合わせたら俺は直ぐに出かける事になるがすまないな〉
「置いて下さるだけで感謝いたしますご主人様」
「それではマグロさん、彼女の事をお願いします」
〈わかりました、それでは家に帰ろうか【ゲート】〉
家(皇宮)のエントランスに転移すると言葉も無くただ茫然としている、そこへ俺達が戻った事を知る嫁達が此方に合流する。
「其方の方がジュリアーノ=コルネルさんですわね、事情は先ほどの会話程度しか存じませんが我が家に来られた以上虐げなどさせませんわ、と、紹介がまだでしたわね、アンジェリカですわ、アンジェと呼んで頂ければ幸いですわね」
これを皮切りに各自挨拶を済ませている最中にティアが転移して来た、町のテレポーターを利用せず突っ走って移動したようだな。
利用すれば街中を通る必要がある、人通りのある中であまり速度を出しては事故の元、それを避けるならば外を走るしかないと言う事だ。
〈やけに早かったなティア、もしかして爆走したか?〉
「爆走か分からにゃいがにゃ、走った事に違いは無いにゃ」
〈転移前にお願いがあったんだったな、アンジェ、この子の身分証を作るのに俺のクランに入れて来てくれないか、帝都が良いな、それと彼女の身の回りの品と服とかも見繕って来てくれ、えーと食料とは別のマジックバッグは持ってるか?〉
「ええ、有りますわよ」
〈こっちに口を広げて向けてくれ〉
そのマジックバッグの中にザラザラと金貨一万枚入れておいた。
〈資金はアンジェが出しといてくれ、それと、ジュリアーノに絡んで来るような馬鹿が居たら排除よろしく、カードも渡しておくよ。
そう言う事でティア、転移お願い〉
と手渡した。
「改めて行って来るにゃ【ゲート】」
合流を果たしファサラに龍化してもらう、そこから北に向け飛び立った。
第一に発見した町からさほど離れず着陸にも問題無い広さの場所を発見するもオークの団体さんが居た為【ライトニングアロー】で即死かつ感電させ、後は直接戦闘にもって行き処理と同時に収納する、総勢七十匹、大きな個体も居たが耐久力が少々高いだけで無問題。
場所的には町から三km程度離れた山中の中腹だ、そこから歩く事四十分程度、身分証を提示し、はい通過とはならなかった。




