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73:お出でませ牢屋へ

「マグロですが先ほどの件はどうなりました?」


「これはマグロ殿お戻りになられましたか、現在尋問中で少し立ち会ったのですが、魔族は人類の敵だろなど言い張り、奴隷へと落とした際の理由ですが金銭的なのか犯罪的なのか一切話しません、ご指摘の通り無理に攫い奴隷へと落としたとの経緯が濃厚です」


「それじゃ、同じ商会の職員を確保する為に動いてますか?」


「警戒任務へと戻りましたのでそこまでは把握しておりません、ご案内しましょう、此方です」


 以前サイラスを拘束していた地下牢へと案内され衛兵は持ち場へと帰って行った。


「カサンドラさんお久しぶり、でも無いか、また厄介ごとを持ち込んですまないな」


「いえいえ、聖王国への護衛の件ではお世話になりました、お礼も伝えられず申し訳ありません。

 今回はストレイルの膿を出すきっかけを頂き大変感謝しております」


 これは商業ギルドにも手が入るよなぁ、折角マグロが競りに掛けられるのに買えなかったじゃティアが可哀そうだ、ちょっとお願いしてみよう。


「それで一つお願いがあるのですが、介入するのはオークションが完了し次第って事でお願いできませんかね?」


「マグロさんは何か競る予定の品が御有りなのですね」


「そうなんです、ティアの希望で出品されているマグロを競るんですよ、これを逃すと何時になるか分かりませんからぜひお願いします」


「流石マグロさんですね、奥様の事をきちんと考えておられる。

 今現在ですがこの者が所属する商会を割り出しております、ナノタルに行かずともストレイル内の商会ならばさほど時間はかかりません、其方の身柄を確保した後ナノタル商業ギルドの調査へと切り替わります、捕らえた者達からの証言や差し押さえた証拠物の精査を挟み時間を調整しましょう」


「それは助かります、それでジュリアーノを奴隷から解放して住んでた土地へ送って頂けますか?」


「ストレイルのオークションに出品された事から近郊でしょう、其方は責任をもってお送りします。

 それで、この者が受け取た購入代金です、お返しします」


 購入代金を全額受け取った。


「それで緊急に向かわれたようですが帝国で何かあったのですか?」


「機密では無いのでお話しして大丈夫でしょうからお話ししますね」


 と一昨日と今回の件を伝えた。


「そう言う事で今日もう一度調査するか、明日中に調査するかですね」


「帝国にもマグロさんの力を切望してる方がいらっしゃるのですね」


 本来なら他国に居るんで参加義務は無いんだけどねぇ、ま、砂漠に毒の沼地が出来ましたじゃ洒落にならんから行ってきたけども。


「ツガットのボケが突然呼び出すからこっちの件と重なって最悪ですよ。

 それでは此方の対策で時間が無いでしょうから失礼しますね。

 そうそう、これお土産です、では失礼しますね」


 例の果物を二個手渡して屋敷を後にし、商業ギルドの皆と合流した、とはいかなかった。

 商業ギルドに入ると例の商人達と最後に会っていたのが俺達との事で探し回っていたようであっさりと拘束された、振りほどくのは簡単だが暴力を振るわれたなど言われてはカサンドラさんに迷惑を掛けかねないので大人しく捕まる事にした。

 アルヴァールさんは捕まっていない様だ、セレスが呼びに行った事で商業ギルドの職員に把握されていなかったのだろう。

 商業ギルドには牢屋が無いのでナノタル冒険者ギルドへと連行され牢屋へと入れられたのだった。


「何で俺達牢屋に入ってるのよ?」


「例の三名を連れ去った盗賊か何かと思われてるのだと思いますがどうされますか?」


「逃げたら逃げたで問題だし、捕まってたら彼方から解放に来るでしょ、とりあえず寛いどきますかね」


 セレスの常時持ち歩いているマジックバッグは咄嗟に俺が回収し、牢に入れられた時点でセレスに返した。

 毛布一枚すら無いただの部屋、何もないのでソファーを出しテーブルを出しチュリーロッサを取り出して切り分け食べたカスは通路にぽいぽい、ついでだ仮眠でもするかとセレスを抱き寄せ眠るのだった。

 一時すると今度は尋問とかで罵声を浴びせられ寝るに寝れない為、鍛冶屋で使った真空の層を鉄格子沿いの施して音の振動を遮断、静かになったので更に寝ると、とうとう中に入って来た。


「貴様ら、何処からこのような品を持ち込んだ!」


「うるせえぞゴリラ、少しは黙っとけ」


「何たる態度、もう我慢ならん!」


 と言い放ち俺の顔を殴るのに合わせて額で受け止めた、俺はダメージ0、右手で殴った本人は親指以外の指四本の骨が砕けた。

 当然うるさいので通路に放り投げご退場だ、そしてまた寝る。


 俺達を尋問するのを諦めたのか呻きながらも出て行き、幾ばくか時が過ぎるとまた手を抑えたまま別の奴を連れてきたようだ、本当に面倒なことこの上ない。


「少しいいかね、この者が其方から暴力を受け指を骨折したと言ってるのだが本当かね?」


 ふぅ、面倒だが対応するほか無いか。


「暴力振るった覚えはないな、そいつが俺を殴って勝手に骨を折っただけだ」


「なんだと貴様! 俺が嘘をついてるとでも言うのか!」


「ついてるな、俺がお前の腕を殴ったらその程度じゃすまないからな、試すか?」


 にやりと笑い片手剣を抜き此方に突き出す。


「ならばこれを殴って折ってみろ、俺なら造作も無く折る事が出来るならな、お前が嘘をついていないのなら折れるだろ」


 薄刃の片手剣を見せつけて来た、高々鉄製の片手剣、その程度じゃ殴っても張り合いが無いからな、もっと頑丈なのを所望する事に、殴ったらそれを持つ腕ごと持って行くような頑丈なのが良い。


「駄目だ、別のを持って来い、両手剣が良いな、在庫は無いか?」


「馬鹿かお前は、ならば持って来てやろう」


 こうして持って来られた両手剣だが材質は鋼鉄、ま、手ごろだな。


「それをどっち向きでも構わんから鉄格子に接触させろ、高さはお前の腹の高さだ、それとそっちのおっさん、そいつとは逆で鉄格子の範囲内から外れてろ」


「へぇ、どっち向きでも構わんのか、そりゃ良いな、なら思う存分殴ってみろ」


 と此方に刃を向けて鉄格子に接触させた。

 いやぁ久しぶりだな、空手を使うのも一インチパンチは無理だが一歩踏み込んでの全体重を乗せる事は出来る、ついでにインパクトの瞬間に捻りを加えるのが通常の正拳突きだ。

 邪魔なテーブルとソファーを収納し前屈立ちからの一歩を調整して構える、当然腰を下げてだ。

 本来なら前足の方にさらに体重をかけ勢いをつける様に後ろ脚を動かすのだが今回は違う、ブロッサスと対峙した際の様に自身に【エアブラスト】を当て強引に威力を上乗せする、一歩で全速に到達させ、更に体重を乗せた上で【エアブラスト】の威力を全て乗せるがコンセプトだな。


 範囲を俺の背中のみに限定し、幅を狭くした分の圧力を上げて容赦なく実行した。

 ズガーーンとギャーと織り交ざった爆音が鳴り響き冒険者ギルドの建物が結構揺れた様だ、ちょっと気合いを入れ過ぎたかも、鉄格子は殴った位置のみぽっかりと穴が開いたが、正面の壁が崩れてボロボロになったよ・・・・さすがに無傷とはいかず俺のこぶしからも血が出ているが骨折はしていない。

 両手剣はどうなたのか、壁にぶち当たった手前使い物にはならないだろうな、それは兎も角として、埃がすさまじい、壁の石材が粉砕され辺りに漂っている。


「ふぅ、流石に全力ですると威力が違うな、セレス大丈夫か?」


「はい、一切怪我は有りませんが埃が酷いですね」


「そうだな、ちょっと風魔法で追い出すかな」


 まぁ全然周りが見えないほど埃が立ち込めているからな、空気穴から強引に空気を吸い込み牢の中へと押し込み換気すると、先ほど剣を持って居た奴の左手が奇麗に引き千切れ気を失っていたので一応止血だけは施しておいた、おっさんの方は血だらけになるも一応立って意識がある様だ。


「おいおっさん大丈夫か?」


「忠告を聞かずに近くにいたら死んでおったな、しかし派手にやったものだ。

 出血は有るが大事ない、それで、儂の知る限りこれほどの実力がある者は一人しか記憶にない、貴殿は怪盗=マグロか?」


「そうだ、そう言うあんたは誰だよ」


「そうであったか、このような形で出会うとは刺激的な出会いだな、儂はこのギルドを任されておると言えば通じるかな?」


 血が出るほどの刺激だからな、ズレてるが違ってないのか?


「なるほど、それでそこに転がってる馬鹿はどうするんだ?」


「犯罪判定水晶を使わせそれに合わせた対応をする必要があるな」


「それじゃそっちの対応は任せるよ、俺の出る幕でもないけどな、それでお願いがあるんだけどいいかな?」


「不始末の分も上乗せして対応するぞ、可能ならばの話だがな」


「鉄格子がこれじゃ牢屋の意味が無いだろ、別の牢屋に入れてくれ」


「それは許可できんな(マスター、マスター大丈夫ですか!)」


 と職員が安否確認にやって来た。


「これはどうしたのですか? それにフラットが・・・」


「フラットは犯罪に手を染めている可能性がある、犯罪判定を施した後その罪状に合わせて刑の施行を行うように」


「それは良いのですが、其方のお二人は先ほど牢に入れられた人では?」


「商業ギルドの者が間違えて捕らえたのであろうな、此方は聖王国へ護衛でご同行されたカサンドラ殿の客人よ」


「それは・・・申し訳ありません」


「それは良いから、別の者にお二人を二階の客間にお通しして昼食を準備して差し上げなさい」


 血だらけのマスターを前にして結構冷静なのな、回復魔法の使い手とか呼ばなくて良いのかね。


「では他の者にご案内させますので一階までお越しください」


 仕方ないので離れる際にクリーンを掛け身ぎれいにした後ハイヒールを掛けた、職員の後について行き二階の部屋へと案内された。


「お食事の準備をしてまいりますのでお寛ぎください」


 ありがとうございますと返事をして待つ事二十分程度して食事が運び込まれた、さっき果物をガッツリ食べたからあんまり入らないんだよな、残すのは失礼なので全部平らげたがかなりきつい。


「ちょと食べ過ぎたな、彼方は商業ギルドに留まってるから無事な様だし、何か聞きたい事でもあるんだろうな、そうじゃ無ければこんな部屋には通さないだろうし」


「そうかもしれませんね、私達を牢屋に入れる際に事情を説明してるでしょうからその点の確認と言った所でしょうか」


「うーん、下手に話せないんだよな、すでにカサンドラさんが動いてるし、商業ギルドの汚点の情報を冒険者ギルドに流す訳にはいかないよねぇ」


 食後を見計らったようにマスターと言う名のおっさんが部屋に入室し事情を聞いてきた。


「聞かれてもなぁ、既にカサンドラさんが動いてるんで下手に横から突かない方が良いぞ、彼方にも予定があってそれが崩れるからな」


「では動かんと約束するから知っておる事を教えてくれんか」


「下手すると商家一つが潰れる案件だぞ、その事をほいほい冒険者ギルドに情報を流す訳無いだろ、知りたければカサンドラさんの所に問い合わせれくれ」


「どうしてもか?」


「諄いぞおっさん、それとも何か? 商業ギルドの弱みでも握って何かやらかすつもりか?」


「・・・・・」


「ついでに言っておくぞ、もう一度詮索したらこの事をカサンドラさんに流すぞ、警戒されても構わんなら聞いてみろ、本当に流すから」


「わはっはっはは! なるほど、カサンドラ殿が信用するわけだな、ほいほい情報を流す輩なら信用できんと思ったがそうではなかった様だ、商業ギルドには無罪の為解放したとすでに伝えてある、オークションに戻るが良かろう」


 チッ、食えないおっさんだな、いちいち俺を試すような事するなよめんどくさい。


「なぁおっさん、それは良いんだがお詫びついでに一つ情報をくれよ」


「食事ではお詫びに到底及ばんな、答えられる範囲なら答えよう」


 砂漠のダンジョン、潰せるなら潰した方が良いよな、毎度毎度呼び出されても面倒なだけだし、自分達で完結してくれるならまだしも、こっちに飛び火して来るのが目に見えてるからな。


「ダンジョンはどうやったら潰せる?」


「なんじゃ、そんな事も知らんのか? ダンジョン最奥のボス部屋、そこからもう一つ先の部屋に宝玉が納められておる、それがダンジョンのコアじゃな、それを破壊、もしくはダンジョンより持ち出せば徐々に崩壊し跡形もなくなる、なんじゃ、潰さねばならんほど厄介なのか?」


「場所が場所なんだよ、砂漠にあるんで誰も入らないんだ、それで先日暴走してな、今後の事も有るから不要なら潰した方が後々の為だろ、時間を置けばまた暴走する事が確定してるからな」


「なるほどの、帝国と王国の間にある砂漠地帯のあれか、確かに無い方が良いかもしれん」


「流石物知りで説明する手間が省けて助かる、そういう訳で情報ありがとう、俺達はオークションに戻るよ」


 戻った時にはエリクサーの落札が終り一本購入、そして最終の品としてマグロが競りに掛けられ白金貨十五枚で落札した。

 そして対面したのだがはっきり言ってマグロサイズじゃない、シャチサイズだ、ざっと8mほど、これ、どうやって食べるんだよ・・・

 そして商業ギルドから俺達の退出と入れ替わりでカサンドラさん率いる騎士達が突入した、入って行くのを見届け帝都の暁の宿の側へ転移して宿に入るとツガットが待っていた。


「ようやく来たなマグロと奥さん方、予定はあるが先に食事だな、食べ終わったら早速向かうとしようか」


「すまないがこの宿で一泊して良いかな?」


「それは良いのですが、何かご予定が?」


「いや、例のダンジョンだが俺のブレスを受けてたはずだけど当たった瞬間に欠き消えてるんだよ、それがどうも腑に落ちなくな」


「・・・・調査は少数で行く、だけど対象次第で皆で行く必要があるとお考えなのですね」


「そう言う事、部屋を確保して食事にしよう、それでセレスを入れて三人で行って来る」


 食事を済ませツガットをお姫様抱っこ、は嫌なのでおぶってブレスを放った上空へと転移した。

 砂煙は若干残ってはいるが見通せないほどでもない、さらに上の上空に居る為ここまでは飛んでいない。


「流石に短時間では直ぐに収まったとはいかないか」


「この程度なら支障は有りません、早速ダンジョン入口へ行きましょう」


 そして接近するとダンジョンへの入り口はそのままぱっくりと平坦な状態で口を開けていた、これ、砂が入り放題じゃねえの。


「腐った感じには見えないな、一応は対処完了で良いかね」


「あれだけ砂を巻き上げたが少々被さったとしてもこれだけの時間が経たのなら表面まで浸食されてもおかしくは無い、対処は完了したとみて良いだろ。

 後は中だな、スタンピート直後と考慮すればほとんど空だろうがな」


「ぞれじゃ入るぞ」

 


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