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72:オークション

 翌朝朝食後全員でストレイルのナノタル東門近くへ転移し、都市への入場を待つ列に並ぶも中々先へは進まず一時間経過してやっと入る事が出来た。

 人多すぎだろ! 完全に出遅れた、これ、間に合うのかね・・・・いっそ適当に中へ転移した方が良かった気がする、これは強引に突破するしかないな。


 一列縦隊で俺が先頭、強引に割り込んで進み到着するも移動時間が約三十分、それから二手へ別れ競る者と見学に分かれ受付するのに約二十分、席に案内された頃にはすでに始まっており奴隷の三人目が競りに掛けられていた、競る予定のジュリアーノ=コルネルは最終なのでこれで安心だ。

 競りに掛けられるのは圧倒的に男性が多く約七割、種族は人族が多く次点で獣族(犬、狼、猫、熊)などなど、って熊って初めて見たけどかなり毛深い、顔はツルツルだが手足はボウボウだな、それに毛が堅そう、そしてエルフと魔族が一名ずつで合計二十八名、そして俺達が競る予定のジュリアーノが競りに掛けられた。


『奴隷最後の品となります、魔族ですが見た目麗しくスタイルも良い、職業がメイドである為主人に尽くしてくれる事でしょう、最適金額金貨百枚からです、それではどうぞ』


「100枚」


『150枚』


「300枚」


『350枚』


「700枚」


『770枚』


「白金貨1枚と金貨500枚」


『・・・・・』


 おやおや、睨まれてるねぇ、またもトラブル発生か? いくらでも買うよ、超高くてもお買い上げになるよ、最終的に踏み倒すけど。


『61番様白金貨1枚と金貨500枚、他にございませんか?』


『・・・・・』


『白金貨1枚と金貨500枚で61番様の落札です』


 スタッフから周りの会話を削がない程度で声を掛けられる。

(此方へお出で下さい、お支払いと契約をお願いいたします)


「セレス、一緒に行こうか。

 ティア、俺達が間に合わない時には競り落として購入頼むな、マグロの受け取りにはカエラと一緒にな、エリクサーはシェルかシャロに頼むよ」


「わかったにゃ」


(それでは61番様、此方にお出で下さい)


 案内されると商人一名に護衛だろうか二名と魔族一名、合計四名が待っていた。


 黒目黒髪、肌は浅黒く背の高さは俺と目線がほぼ一緒の為百七十五cm前後だろう、すらっとしたスタイルからモデルさんみたいだな。


「俺は怪盗=マグロ、連れはセレスティーナだ、ジュリアーノ=コルネルだったな、今後よろしくな」


『これはこれはマグロ様、今回は高値で競って頂き感謝の言葉も無い、早速お支払いと契約を済ませましょう』


「その前に確認だ、この魔族はどんな理由で奴隷になった?」


『お客様もお人が悪い、魔族と言えば人類の敵ですぞ、かような理由など必要ありません』


 こいつ、さらっと攫って来ました宣言していやがる。


「それってどういう意味だ? 借金した訳でもなく犯罪犯した訳でもないって事か?」


『左様です、魔族を捕らえるのに大義名分など不要、人類の敵ですからな』


「おい、ジュリアーノ、こう言っておられるが何か罪でも犯してとっ捕まったんだろ、何をしでかした?」


「・・・・・」


「なぜしゃべらん?」


『話す事の禁止を命令してるからですよ、マグロ様のご質問だ、お答えしろ!』


「水晶の鑑定でお調べして頂ければわかります、私は罪など犯してはおりません」


「と言いつつ、鑑定に出ない程度の罪は犯してるんだろ、セレス、アルヴァールを連れて来い、確認させる」


 魔族は問答無用で捕まえて構わんと法律で決めてるのかね・・・・とりあえずアルヴァールに聞けば法律面がどうなってるか分かるだろ、セレスの事だ、俺の意図をよんで魔族は見つけ次第奴隷化しても良いのか聞いた上で連れて来てくれるだろう。


 五分程度待つとセレスがアルヴァールを連れてやってきた。


「セレスから聞いたと思うがアルヴァールの判断はどうだ、分るか?」


 顔を横に振りながら「わからないわね」と答えてくれた。


「そうか、それでそちらのお二方は大将の護衛ですか?」


「わが商会専属の護衛ですぞ、しかしながらマグロ様がこの二人に目を付けようと譲れませんぞ」


 なるほど、従業員なら同罪だな、単に今回のみ雇われなら見逃すと言う手しかなかったがこれなら遠慮なくとっ捕まえて良いな。


「屈強な方ですから引き抜きたかったのですが仕方ありませんね、時間を取らせて申し訳なかった、それでは支払いを済ませよう」


 白金貨一枚と金貨を入れた巾着を五つ手渡して数え終わるのを待ち、ジュリアーノの所有権が俺に移った。

 ここまで大人しくしていたのは俺に所有権が移るのを待っただけだ、この商人に所有権がある状態で行動しては何を命令するか分かったものじゃないからな、さてさて、行動開始といきますかね。


「さて、契約も無事済んだ事だし、此方の用事でも済ませるか」


「そうですね」


 先ずは護衛の脚を素早く刈りとり倒れた所で踏み抜き足の骨をポッキリ、後は雑貨屋で購入していたロープで腕を後ろ手に縛り、ついでに猿轡を強引にかませれば完了だ。

 商人の方はセレスが対処してくれた、其方は骨折していないようだ、ま、非力だしそれで十分だろう。

 呻き散らしてるがどうでも良い、とりあえずカサンドラさんの所にでも突き出すか。


「すまないがアルヴァールはティア達にこの事を伝えてくれ、俺とセレスで事後処理して来るから当分戻らないってね」


「流石のお手並みですね、この事はお伝えしてお待ちしております」


 商業ギルドの職員が来ると話がややこしくなるのでさっさと【ゲート】で邸宅前に移動して衛兵さんと相対する。

 突然近くに転移門が現れゾロゾロと人が出てくれば驚きはするか、だが、俺だと分かった時点で警戒を解き親しげに話しかけてくれた。


「これはマグロ殿、聖王国への護衛で大変お世話になりました、それで、今回は其処に居る三名に関してですか?」


「そうそう、元冒険者ギルドの職員には確認したんですけど、魔族なら問答無用で奴隷にして構わないって法律はストレイルにありませんよね?」


「その様な法律は有りませんが、拘束されてる三名がそちらの方を奴隷にしたのですか?」


 ま、首輪をはめている状態だし、奴隷ですと宣伝してるようなものだからな、一目で分かるか。


「そうです、今現在ナノタルで開催されてるオークションですが、其方に出品されていました、本人がべらべらしゃべってくれましてね、借金も無く罪歴も無く、ただ魔族だから捕らえて奴隷にしたと迂言してましたよ」


「オークションですか、それでは商業ギルドも加担している可能性がありますね」


 この大事な場面で帝都からの通信水晶の呼び鈴が鳴りだした、こっち優先なのでスルーだ、忙しいってのにかぶせて来るなと思うマグロだった。


「可能性としては有りますね、どの様な経緯で奴隷になった者か程度は確認するでしょうし」


「あの、マグロ殿、応対しなくてよろしいのですか?」


「この忙しい時に何で呼び出すかね。

 ジュリアーノ、此方の方に案内してもらいカサンドラさんに事情を説明してくれ、当事者だから繊細に分かるだろ、と言う事でお願いできますか?」


「私では判断が付きませんのでその様に手配いたします、それではジュリアーノさんでしたか? ご協力お願いします」


 三名はこの場にまだ転がっている、とりあえず事情を説明に行ってもらったのだ。

 と屋敷の中に案内されて行ったので、通信水晶に出てみる


「もしもしー、こちらマグロ、何用だ?」


『出るのが遅いぞマグロ! ツガットだ、例のスタンピートは終決して取り残された人達と合流は出来たのだが問題が発生した』


「こっちも犯罪処理で忙しいんだよ、商業ギルドも加担してる可能性があって手が離せないんだ、そっちはそっちで処理しろよ」


『その処理が出来ないほどの規模なんだ、マグロ以外に解決可能な人材が居ないんだ、頼むから手伝ってくれ』


「無茶な事言うなよ、俺が犯罪の現場に居合わせたから証言者でもあるんだ、放り出して行けない事ぐらい分かるだろ」


『そっちは審判をすこーしずらしてもらえば済むだろ、こっちは深刻なんだぞ』


「そっちが深刻だろうとこっちは当事者なんだぞ、放り出して行ける訳が無いだろ」


「あのマグロ様、此方は私が何とか穴埋めしますからそちらに行かれては? このままだと禅問答で時間ばかり経過しますが」


『その声はセレスだな、ぜひそうしてくれ、時間が経過するほど被害の範囲が広がるんだ』


「はぁ、で場所と原因は?」


『場所はドラゴンゾンビが居た所からダンジョン入口までと想定してる、奴の通り道が呪いで腐りその範囲が拡大してる』


「それはそれで厄介だな、それじゃ飲まれた町のさらに奥か」


『そうだ』


「それなら全員その町の跡地まで退避しろ、たぶん流砂が発生するんで俺の【ゲート】で一度帝都まで送る、対策が完了し次第調査に再度来る、この流れでどうだ?」


『どんな対応でも構わんから早く行動してくれ』


「はいはい、其処へ転移は無理だから帝都から飛んで行くわ、五分も掛からんと思うから待っててくれ。

 終わり次第戻って来るからこっちはよろしくなセレス【ゲート】」


 帝都の南門から若干離れた位置に転移して龍化、とも思ったが人を乗せる訳でもないので龍化せずにそこから全力で飛翔し現場に急行、我ながら早いね、五分も掛からず合流できた。

 遠目に見えたが黒っぽい紫色に変色している、そこが呪われているのだろう。


「待たせたなツガット、それでやけに数が少ないけど、とっくに退避済み?」


「すまんな、厄介過ぎて手に負えないんだ、合流直後から民の避難を開始してるからな、今居るのは偵察兵とでも言えば良いか」


「それは置いといてだな、被害状況はどうなんだ? 横幅と同等に下にも食い込んでると思うか?」


「都合よく横にだけ広がるとはとても思えんな、同程度地下へ浸透してると思って対処してもらえるか?」


「了解したが、俺は浄化なんて無理だぞ、光魔法のスキルは有るが使えるのはライトだけだからな」


「それじゃ来てもらったは良いがマグロでは対応が無理か、他に光魔法の使い手に心当たりは?」


「確かシェルならスキルを覚えてたな、呪い浄化が可能かは知らないけど」


「頼む、呼んできてくれ!」


「嫌だよめんどくさい、奇麗さっぱりさせるからお前たちは退避しろ【ゲート】」


「如何するつもりだ?」


「ブレスで削り取る、ほらさっさと退避しろ、死にたくないならな」


「・・・・俺だけでも対処に立ち会えないか?」


「命の保証は出来ないぞ」


「構わん」


「・・・・はぁ、どうなっても知らんぞ、背中の鱗にしっかりしがみついてろ、なるべく死なない様に配慮するから」


 他の者達は帝都へ転移、俺は龍化してツガットを手の甲側に乗せて背中に移した。

 ゆっくりと飛翔し南西方向へ、あからさまに砂地の色が変わっている地点から若干手前に降り立ち砂を掘って体を埋める。

 どの位魔力を込めるかだよな、全MPで約三百六十万ほど、とりあえず百万つぎ込んで無理だった場合は二百万使い削り飛ばす、それで無理だった場合には半日休息後に再度削るで良いかな。


「グルァアア!」


 いっちょ行きますか、息を吸い込みMPを百万Pのど元に集約して線で吐き出すと超極太レーザーが照射され一直線に削り取る、ちょっとやっちゃった感があるな・・・・地面が球状だらそのうち上空を突き進み消えるだろ。

 通り過ぎた後穴を埋める様に左右の砂壁が崩れ出したので飛翔して回避、砂煙が濛々となる前だがブレスの影響が途中で途切れていた、何かに拡散させられた様だ、後は落ち着くまで待たないと調査すら無理なので人化してツガットを空中でキャッチ、【ゲート】を発動して帝都冒険者ギルドのロビーへと転移した。


「一応は終わったが確認可能な状態になるまで相当な時間が掛かりそうだな」


「やりすぎだぞマグロ!」


「あのな、まともにブレス使ったのって一昨日だけだぞ、それも中途半端に削って残ったら確認の時間で浸食が広がるだろ、一発で削らないと後々が大変なんだからある程度魔力をこめるのは当然だろ?」


「・・・・・」


「ジト目で睨んでも済んだ事だぞ、それよりツガットの目で見てどう思った? 完全に削りきれたと思うか?」


「手前部分は確実に解除できたと判断するが、途中で途切れたな、だからもう一度調査しなければ後が怖い」


「ほぼ同意見だな、奥に行くほど浸食されてる幅が広い事は分かりきってるからな、奥を中心に再度調査が必要って事だ、ま、落ち着くまで当分放置だな」


「風魔法で払いのけるのは無理か?」


「あのな、その場の巻き上げられたのを排除は出来るが、その行為で風が発生するぞ、それでまた巻き上がるんだから二度手間になるだろ、今は時間待ちだ」


「なかなかの知識だなマグロ」


「それは良いから俺はストレイルに戻るぞ、夕食を暁の宿で済ませる方向で動くからその時に再度調査に行く、無理だったら明朝だな、それ良いか?」


「良いも何もマグロの決定に従わないと打つ手が無いからな、其処の調整は任せるが確実に明日中には調査に行く時間を作ってくれよ」


「了解した、あまり根を詰めると倒れるぞ、これでも食って寛いでろ」


 とチューリロッサを二個渡してストレイルへと転移した。

 丁度良い、先ほど会っていた衛兵だった。

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