67:邸宅切り取り
仮眠し始め1時間ほど経過した頃、セレスにもうすぐ昼食と言う事で起こしてもらい1Fに下りるとなぜか皆が集まっていた。
「マグロ来たにゃ、解放した彼らの事だがにゃ、帝国とストレイルに分かれる事になってたがにゃ、それに関して話があるそうにゃ、聞いてあげるにゃ」
「と言う事はどちらかの国に皆で行くって選択肢になったって事で良いのかな?」
「はいそうです、貴族が激減し屋敷が余っている可能性があるとお聞きしました、そこで皆の資金を集めて購入し共同生活をする事にしました」
「了解した、それなら下手に紹介しない方が良いかもしれないな、俺達の関係者だと思われれば、悪意ある者達から人質として狙われないとも限らないからな」
「マグロさん達は帝国で何かしたのですか? 相当な人脈もある様ですが」
「3代前の皇帝から命を狙われたんで政権そのものを潰したんだよ、それで立て直す方にも協力したから今のお偉いさん方とは顔見知りでな、そんな訳で当然恨んでる奴もいると思う、そういう訳だ」
「なるほど、俺達が捕まればご迷惑をおかけする事になりますね」
「それは逆だって、俺の事情に皆を巻き込みたくないって話なの、良くも悪くも俺達の傍に居ると注目を集めるからな。
それじゃ屋敷の購入にこれを持って行け、残金は返金してもらう」
と言い白金貨10枚をテーブルの上に置いた。
「これ以上の援助は「帝国の、それも首都で貴族の住んでいた屋敷じゃないと20人も住めるような家は確保できないぞ、それに土地付きだからな、値段がどれほどか予想が付かないか?」」
「白金貨2枚も詰めば買えると思いますが」
「はぁ、そんなにつぎ込んだら生活がかつかつになるだろ、確かに魔物を倒せば金にはなるが、コンスタントにどれだけ稼げるか分かってない現状でそこまで使いこんだら後が無いぞ」
「それでは価格の調査を先に行い可能な様なら購入を、無理そうであれば宿屋に数日泊まりどれほど稼げるか精査した後話し合いたいと思います」
「マグロ、それ位で止めるのじゃ、自立心旺盛でよいでは無いか」
「それもそうだな、俺が悪かった、屋敷の値段を調査した後に無理にならない範囲で頑張れば良いな。
丁度良いから紹介するよ、数日前に夜中に墜落してクレーターを作ったアレッサ=サヴァリドール、今日から俺の嫁になる」
「わらわは墜落などしておらぬのじゃ、あれは着地じゃよ、それはどうでもよいの、紹介に預かったアレッサじゃ、よろしく頼むのじゃ」
「あの晩台無しにした・・・・」
「そう、なるな・・・」
「そもそもマグロは受ける気はなかったよにゃ、何で決めたのにゃ?」
「そうだな、先ずは性格か、思った事は自身に不利だろうとなんでも話す裏表のない性格、ちょっと自分の意見を曲げないのが痛いが。
そして体だな、ちょっとカエラさん、アレッサの腹を触ってみ」
服の上から撫でたと思ったら服の中に手を入れなでまくる。
「私は職業柄何人もの女性を見てきましたが、これほど鍛えてる方とお会いしたのは初めてですね」
「俺もだな、体と言ったが正確じゃないんだよな、これだけ鍛えるには本人の精神力が強くないと途中で投げるのが普通だ、持続しないんだよ、それに鍛えるのを途中で止めると徐々に筋肉は落ちるからな、そういう訳でその精神力の高さに惚れた訳だ」
「婿殿が結婚を承諾したのはそう言う事だったのじゃな、そんなに鍛えてる感じでは無かったのじゃがな」
「まぁ何にせよ俺達のクランの一員になるから皆よろしく、さてと、俺って朝ご飯食べ損ねて腹ペコなんだよな、とりあえずさっさと食事にしようか、俺が言うのもなんだけど」
「それでしたら食前にこれはどうですか? 今取って来ました」
と渡されたそれは若干赤みを帯びた大玉スイカサイズで甘い香りを漂わせていた。
「こんな果物見た事無いな、南方に出かけてたけど、取ってきたの?」
「そうです、あの辺り一帯に群生してますね、熟れたのを探して数十個取って来ました」
へぇと言いながらタオルを下に敷きよくわからん果物を乗せダマスカスダガーを取り出して切ろうとしたらもう一言添えられた。
「中心に種が有りますので、それに沿って切り込み、捻れば簡単に半分に切れますよ」
アボカドの様に切る訳ね。
「こうかな」
刃を差し込み種に当てた所から一回転、持ち上げそれぞれ逆に捻ればぱかっと別れた、後は種に突き刺し捻り抜き、メロンの様に切り分けるだけ、人数分には足りないのでもう1個もらい受け切り分けた、全部で36切れだな、鑑定してみた際のこれの名前だがチューリロッサだ。
「それじゃ食べてくれ」
食べてみたが独特の風味がある、スイカと比べるまでも無く糖度は此方の方が高い、20度超えてるかも、好き嫌いがあるかもな、俺は好きだけど。
「これは特産品にうってつけだな、群生してるって、これの本体って形状はどんなの?」
「普通に木ですね、今は相当な高さが有る為に収穫は苦労します」
「と言う事は手の届く所だけ取ったのか」
「そうです」
「うーん、増やして高さを調整するか、芯を止めて3本程度に仕立てて下から支えれば横方向に育てても問題無いだろ、昼ごはん食べたら収穫に行って来るわ」
「マグロはその手の技術を知ってるのかにゃ?」
「親がその手の事もしててな、手伝った事もあるから知識としては知ってるよ」
「なるほどにゃ、それなら増やすにゃ」
俺が寝ている間に嫁達が作ってくれのだろう食事を終え、見に行きたいと言う皆を連れて自然を満喫する為に歩いて向かった。
全体的に木がデカイ、人の手が入っていないので枝も広げ放題だ、熱帯の木なので家屋用には不適当かも。
そして目的の群生地へと到着した。
「これは育ってるなぁ、幹回りはそうでもないけど手入れされてないんで高さが20m以上ありそうな木ばかりなんだな」
「フライを使えませんから肩車でようやく届くのを取ったにすぎません、見ての通り大部分は熟れ過ぎて落ちてますね」
「落下した果実が腐って結構環境が悪いな、アマリア、皆の中に飛べる人っていないの?」
「私が飛べますが、流石にこればかりは食べません、それに日持ちもしませんからほどほどしか取りませんから」
「確かに、100本以上は生えてそうだもんな、今カエラが持ってる様な時間の止まるマジックバッグを持って無きゃ無理な相談か、環境改善の為にも定期的に取らないと駄目だな」
「それなら早くとるにゃ、ティアを肩車するにゃ」
「頼むから熟れてるのを選んでくれよ、それと強く握らない様にな、抑えるとそこから傷んで腐るからな」
「わかったにゃ」
その収穫が面倒この上なかった、ティアの正面に熟れてそうな実が行くように調整し、それを取ったティアが下に落としてキャッチしながら即収納、これ、俺が直接収穫した方が楽なんですけど・・・・ティアが楽しんでる様なので我慢したけども、今度からねだらないようなら一人で収穫しようかな。
本当に木がでかいから完熟してそうなのだけを取っても1本から350-400程度は取れた、それも迎えに行くと言ってた夕方前、16時ごろまで収穫したが飛べる4人で一人12本から14本程度、終わったら3人から全て受け取っておいた、総数24682個、若干大きさに差があるのはご愛敬だ、うち2個はアレッサが食べたいと言ってたので切り分けてあげた。
その後アマリア達を屋敷へと転移させ俺達はファサラを迎えにライネル王城前へと転移、入り口を守る騎士に伝言を頼み、待つ事10分程度経った頃クリニスを伴ったファサラと合流した。
「ファサラ、迎えに来たぞ、クリニスとの話し合いは終わったか?」
「マグロさん、それで一つお願いがあるのですが、宜しいでしょうか?」
「如何したんだ? そんなに改まって、ここで話せない内容なら場所を移すけどどうだ?」
「場所は此方で大丈夫です、クリニスをマグロさんのクランに加入させては頂けないでしょうか?」
「理由は?」
「それは俺が話します、ライネルでは訓練のみで実際の対人戦は全く起きなく、今回の様に他国に派遣された場合程度で俺も数回程度しか経験がありません、それで今日の様に大多数の命の掛かる選択肢を選ぶような場面にも遭遇した事が有りませんでした。
はっきり言います、俺の決断で大多数の命が散ると考えるとそれが怖くなりどちらの決断も出来ませんでした」
「今日の選択肢は戦争へと舵を切る以外の選択肢が無かった事は理解してるのか?」
「はい、枢機卿を逃がせば罪のない者達が巻き込まれ死ぬ、その可能性がかなり高いと思っていました」
「奴を逃がせば親しい友人が死ぬかもしれないのじゃぞ、躊躇う必要などあるまいて」
「その点は分かっていると思うぞ、誰が巻き込まれるかはその時にならないと分からないからな、当然身内も安全じゃない。
これが最後の質問だ、俺達と行動を共にする事で克服可能だと思ってるのか?」
「はい、皆さんは国を相手に多数の騎士と相対して来ました、その方達の傍でその行動理念を学びたく思います、そして自身を見つめ直したいとも」
「行動理念と言ったらあれだろ、俺達のクラン名その物だからな、下手に俺達と行動を共にすると逆につらいかもしれないぞ。
理由は簡単だ、俺は身内に激甘、敵には激辛ってのが信条でもある、敵は容赦なく潰すからな、それを間近に見る事になる、それでも良ければ、それと嫁さんが許可するなら俺は反対しない」
「それなら許可した方が良いじゃろ、根性を鍛えなおさないと見ていられないのじゃ」
「私は良いと思いますよマグロさん」
「また楽しくなりそうだにゃ」
「マグロ様が良いのでしたら反対する理由はありませんよ」
「良かったな、それじゃこれからよろしくなクリニス、と言っても俺の事情は知ってるよな? 俺の方が年下なんだし敬称は不要だよ、マグロで良い」
「よろしくお願いします、マグロ」
「さてどうするかな、これで余計に家が狭くなったわけだが、どっか宿取って二手に分かれて住むか?」
「それですがマグロさん、以前の屋敷を報酬として頂きました、それに我が家が現在無人ですから利用されて構いませんよ」
「うーん、そうなると二人の実家だからな、流石に切り取って持って行くのは俺が躊躇するから却下な、そうすると、王城横の屋敷を切り取って持って行くか?」
「あの大きさだからにゃ、少し木を取り払わないと収まらないのにゃ」
「突然消えてはセル殿が困惑されるのでは?」
「・・・・決めたぞ、切り取って持って行く、部屋数が足りないからって悩む必要が無くなるからな、設置してるテレポーター部分は切り取ってお返しすれば良いだろ」
こうして隣に隣接する元我が家の敷地内に入り正面から見据える。
「これは見事な邸宅じゃの、以前はこの屋敷に住んでおったのか」
「そんなに長くは無かったけどね、それに帝国とストレイルに出向く事が多かったから1ヶ月も住んでないんだよな。
それじゃ切り取って来る」
玄関前まで近づき手を地面に、魔力を流し込み切る場所を選定し【ホール】を発動、そして丸ごと収納。
同じく厩舎と馬車停留所とメイド用に作られた家も同じく切り取り収納した。
「よし、それじゃクリニスは帝都に入った事が無いだろ、仮証明を発行しなきゃならないんで南門から入るぞ、そこからが冒険者ギルドに近いからな」
「それは良いのじゃが、こうなるとこの場所も寂しく感じるのぉ」
「建物何処か地面も収納してボッコリ穴が開きましたからね」
「仕方ないだろ地下室があるからその下から切り取らないと屋敷をぶった切る事になるんだからさ、それよりツガットに連絡入れてるから待ってるかもしれないんでさっさと行くぞ」
有言実行しさっさと転移、クリニスの仮身分証も問題無く発行され冒険者ギルドへと向かった。




