62:アマリアの正体
衛兵に守られて宿へ戻ったのは良いが、まだ昼にもなって無い、暇だな、明日も暇だ、宿屋に缶詰なんて嫌だ、って事で【ゲート】で遊びに行く事にした、俺の独断だが、行先はどうするかねぇ。
「おし、全員暇だろ、暇だよな、暇に決まってるよな、どっか行くぞ! どうせ今夜も夜襲だろ、そんなの肩透かし食らわせてやれ。
当日には龍化して飛んで乗り込めば良いだろ」
「良い案だにゃマグロ、今の内にマグロの情報収集をするにゃ」
「それも良いですがマグロ様、カエラさん達に経過報告をしませんか? 心配されてると思いますが」
「それは無理だ、ライネルの者達を会わせる訳にはいかないだろ、彼らは警戒してるからな、必要なら俺だけ行って来る、クリニス殿、貴方たちはどうだ? 帝都、ライネル、カスタル、リスタルなら送るぞ」
「いや、我々は結構だ、急遽予定変更が無いとは言えない、行くのならマグロ殿達のみで行くと良い」
「今晩、襲撃されたとしても大丈夫か?」
なら、ある情報を与えたうえで【真摯の断罪者】のみで出かけようか。
「以前の様な無様な真似はしない、安心して行かれよ」
「それなら安心だな、俺達だけで、経過報告もかねて出かけて来るよ、明日の夕刻辺りに帰って来る、留守は宜しく、まぁ元々の予定が俺たち抜きなんだ、昨夜の様に200名で攻められても頑張って撃退してくれ、それ「待ってくれ、いや、待って下さいマグロ殿、如何か我々も連れて行ってほしい!」
人の話してる最中に被せて来やがった、この手の奴って嫌いなんだよな、スルーするに限る。
「それじゃティア、どっちから行くかね? 彼らも行きたいとなったら一緒に出掛ければ良いし、先に島に行くか?」
「マグロ殿、如何か邪険にしないで頂きたい、我々も連れて行っ「それでどうするティア」
俺が被せてやるよ。
「そうだにゃ、島に行くにゃ、リスタルに行きたいと言ったら連れて行くにゃ」
「それじゃそうしよう【ゲート】」
容赦無く置いて行き、さっさと転移門を消した。
丁度カエラさんが居た様だ。
「マグロさんに皆さんもお帰りなさい、首尾はどうでしたか?」
「明後日の朝に枢機卿との会見の予定が入ったにゃ、それで明日の夕方に戻る予定だがにゃ、それまで暇なのにゃ、中間報告がてら戻って来てリスタルに行く予定なのにゃ」
「少しお待ち下さいマグロ様、彼らをおいて来て宜しかったのでしょうか?」
「俺が最初に確認した際に残ると言ってたじゃないか、それを最優先に考えてあげた、それだけだよ、仮に死人が出た場合は容赦なく叩き潰す口実が作れるかなと。
ま、あくまでも襲われたらだけどね」
「如何か私だけでもかの地にお送りください」
「なぁファサラ、クリニスってあの手の考えを深読み出来ないタイプか? 俺達が襲われた事を伝えた際に襲って来た人数すら確認しようとしない。
国境警備隊に突き出したんだ、80人でも倒せないと相手は知ってる、当然それ以上の規模だろうと予測するのが当たり前、上限人数すら不明な段階で大丈夫ですなどと安に答えるなんてな。
一度痛い目に遭った方が良いんじゃないか? あいつだけなら余裕で逃げれるだろ」
「私の教育が悪かったのでしょうか。
痛い目に一度遭う、確かにそうですが、マグロさんがご一緒なのをライネルやストレイルはご存知です、その様な状況で全滅させては問題になりませんか?」
「あー、確かにそれはあまり宜しくないな、ティアとシェルのスラちゃん出て来てくれ、今日のミスリルを食べてもらった後かの地に送る、陰ながら彼らを助けてやってくれ、死なない程度でな、少々窮地に陥った位で助ける方向で頼めるかな?」
「おまかせください!」
ミスリル50kgを食べさせて宿に送り込む、ミスリルスライムなので【ゲート】を小さめに発動し、俺の寝ていた部屋に送り込んでおいた。
「これで大丈夫だな、少々痛い目に遭ってもらおう、もう少し深読み出来ないとこの先司令官なぞ出来ないからな、やっぱり実体験するのが一番効果的だろ」
「ご配慮感謝しますマグロさん」
「ファサラに注意されてなかったら俺も墓穴を掘る所だったよ、ありがとう。
それじゃ彼らに確認を取って出かけるとするか」
「マグロ様、アマリアさんは如何なさいますか?」
また嫁にしろとでも言うつもりかね、いい加減うんざりして来るんだが。
「どうもしないさ、クランにも入れないし嫁にもしないぞ」
「私たちの側に居れば危険がつき纏います、少しはレベルを上げた方がよろしいのでは?」
「そう思うなら側に置かず放逐しろって提案をしないのか?」
「無下には出来ないから側にと仰っておられましたので」
「そう言えば言ったな、それでも目的がレベル上げに利用しようと考えてるのを側に置きたいなど思えないだろ。
セレスとの会話で決めたぞ、アマリアが望もうと放逐する」
「それは余りにも無体では」
「そうだな、その指摘ももっともだ、だから注文したミスリル製の弓はそのまま譲ろうか、他の者と比べても段違いの扱いだ、これなら納得するだろ。
ただ、待つ期間を考えたら製作が間に合わない、不便を掛けるがセレスの弓を譲ってやってくれないか?」
「わかりました、その頃なら聖王国も決着済みでしょうしお渡しします、そちらの説明も含めて私がして来ます」
こうして30分ほど色々と揉めたりもしたがアマリアは冒険者へと転向する事が決まった。
全員一致でリスタルへ観光に行く事になり【ゲート】で移動、宿を取って数個の集団となり解散した。
俺とティアのみは漁港組合へと赴いた、そして1Fの受付嬢へと話しかける。
「すまない、魚のマグロを食したいと思っていて探してるのだが、この漁港に水揚げされないだろうか?」
「申し訳ありません、マグロは北方の寒い地域のみに生息する海洋性の魔物です、ストレイルへも輸入されますが年間5体程度、運がよければ手に入るかもしれませんが幸いな事に、今回のオークションに1体出品される事になっています。
通常より割高になると思いますが、お急ぎでしたらご参加しては如何でしょうか?
開催日は6日後、会場はナノタルの商業ギルドとなっております」
魚と聞いていたが魔物かよ、しかし、この世界って魔物が良く食べられてるな、魔物も資源とかカイエル様が言ってたっけ。
「それは幸先が良いにゃ。
一つ聞きたいにゃ、奴隷から武器なども出品されるのかにゃ?」
「今回は年4回の内、秋開催の総合オークションですのであらゆる分野からの出品となっております」
「それは良い事を教えて頂いたな、その手のオークションは何処かで公表してるのですか?」
「リスタルでは漁港組合、冒険者ギルド、商業ギルドで公表しておりますが、競り人への事前登録や出品目録などのお買い求めであれば現地のみでしか手に入りません。
早めに行きませんと宿の確保も難しいので余裕を持って行かれた方がよろしいと思います」
「なるほどなるほど、一つお礼がしたい、マジックバッグをお持ちか?」
「持っていますが何を?」
「此方へ口を開けて向けてくれ」
でっかい蛇2匹と頭3個の犬2匹の肉を入れておいた。
「例のスタンピートの魔物だよ、蛇と犬な、結構大きいから食べ応えがあるだろう、それじゃ世話になったな」
待合席があったので飲み物2杯を注文して話し合った。
「どうするかな、今日の内に移動して現地視察しとくか? だが、競り人登録するにも何人参加するか今晩にでも聞いて明日が良さそうな気もするが」
「明日が良いにゃ、それに彼らも参加させるかにゃ?」
「どうかなぁ、金貨100枚ずつ渡したからな、それ以上に与えて良いのかね。
与えるで思い出したが、50年間雇うと話して29家とツガットやカラミティには渡したが、嫁を雇うって言うのも変だから渡してなかったけど、帝国の一件で俺達一人当たり白金貨2万枚請求してたんだが俺が負担する事になってたんだよな、前回渡したのも入れても金貨数百枚程度しか持ってないだろ、渡しとこうか?」
「オークションは皆と相談するにゃ。
お金は必要ないにゃ、マグロと別行動の時はセレスが一括して支払ってるにゃ、帝都のオークションの時のお金だと言ってたにゃ」
「そう言えば渡したっきりだったな、それなら各自持ってた方が良いだろ、いざ買いたいのが見つかった際に側に居なかったらそれも手間だろ」
「確かににゃ、それなら受け取っておくにゃ」
白金貨15000枚と白金貨5000枚分の金貨5000000枚をマジックバッグに入れてあげた、
もちろんバラだ、巾着に入れると手間なんだよな、ずた袋にでも入れて渡すかね、重いけど持てるだろ。
漁港近くだけあって海の幸を使った屋台も結構出店している、その場で食べたり土産に買ったりして早めに宿へと戻った。
そうするとセレナと一緒に出掛けたグループが帰っており声を掛けられた、何か焦っているようだ。
「申し訳ありませんマグロ様、アマリアさんと逸れてしまいました、逸れた際には宿屋で待ち合わせるように伝えてたのですが、1時間ほど待っていますが戻ってきません」
探知すると人通りのない場所で誰かと一緒に居るようだ、相手は一人だな、攫われたのか?
「場所なら特定できた、誰かと居るようだが他には誰も居ないな、何かされているのか昔の知った人が居て話し合ってるのか、如何だろうな、上空から向かって少し探りを入れ、問題がある様なら助け出そう、二人とも来るか?」
「役目は全うします付いて行かせて下さい」
「ティアも行くにゃ」
「それなら上空から行こう、ティアはお姫様抱っこで良いか?」
他の者は宿屋の部屋に待機させ3人で飛んで向かう、その場に到着するも直ぐには声を掛けずに上空から聞き耳を立てる。
「・・・と言う事だ、この金を持って行け、1ヶ月程度なら暮らせるはずだ、私はもうしばらく行動を共にしてあのクランに入れるように模索する」
「レベルの話に乗って警戒されてるんだろう、例えアマリアでも警戒され過ぎては今後近付き憎くなるぞ」
「確かにそうだが、特注品の弓を此方に譲ると譲歩はもらっている、これを断る方向で潜り込めないかもう少し粘ってみるさ、これが失敗しても弓は手に入るだろう、それを売ればこの地で活動してる同志程度なら1年や2年程度の活動資金にはなるさ」
こいつら、話の内容的に俺の敵らしいなどうするかね、とっ捕まえて拷問でもするか。
(ティア、奴らが別れたらあの男の方に投げるから死なない様に拘束してくれるか?)
(空中の姿勢制御には自信があるにゃ、任せるにゃ)
「陛下への連絡はアマリアに頼めるか? あまり頻繁に通信水晶の連絡を入れては怪しまれるからな」
「此方はスキルで連絡が取れるからこの件の報告は私に任せてくれ」
「それじゃ、怪しまれない様に早く戻れよ、気をつけてな」
別れて5mほど離れた際に上空からポトッとティアを落とし、俺はアマリアを後ろから拘束、胸を鷲づかみににて痣が出来るほど握りしめる。
「グアアアア、何者だ!」
「何者も何も無いさ、俺だよ俺、マグロだよ、しかし馬鹿な真似したな、お前らの企みが筒抜けになったぞ」
「何の話ですか、全く分かりません」
「セレス、ティア、何処で尋問するのが良いかね?」
「マグロ様、ここでは人が来た際に不都合が出ます、島に行くべきでは?」
「そうだな、ティア、そいつも連れて島に行こう【ゲート】」
5名で島に引越しが完了、さてと始めますか。
「それじゃティア、そっちの尋問は任せるよ、くれぐれも殺さないようにな」
「わかってるにゃ、マグロこそ殺さない様に手加減するにゃ」
「それじゃ陛下について話してもらおうか、痛い目にあって無理やり聞き出されるのと、痛い目を見ずに話すのと、どっちが良いよ?」
「何の事か判りません、その様な事はお止めください」
「おし、拷問決定、頑張れよ、根性見せるだけ長引くからな」
こうして拷問開始、足の甲を握り潰し、脹脛を握りつぶし、膝を握りつぶし、太ももを握りつぶしとする予定だったが足の甲を握りつぶした際に事態は急変した。




