6:初の火種
2016/09/12:行間調整。
硬貨になってる事から高価だろうなMP三十つぎ込んで【ゴールドウォール】 金色に輝く金属塊が一瞬にして目の前にお目見えだ、これは笑いが止まらんな、これだけで一生遊んで暮らせそう。
しかしMP減り過ぎると眩暈がするんだな、とりあえず1本飲んどくか、と飲んでみると正直青臭い、苦みが無いのだけは助かったが、そして回収してみる。
アイテム
金:十三万六千kg
はは・・・目が回りそう、そう言えば材質変えても消費MPに変化無いな、それは兎も角千kg売ってみるか。
【コマンド】
アイテム:金千kg売却。
白金貨五十枚です、売却致しますか?
金貨の一つ上の硬貨だよな、そうなると使える店が限られるわけだし、一部両変え出来ないのかね、そう思うと変化した。
【コマンド】
アイテム:金千kg売却。
白金貨四十九枚、金貨千枚です、売却致しますか?
とりあえず売却。
準備されている武器はと眺めてみる。
ショートソードは有るが、さらに短いのは置いてない、片手剣だけでも結構な種類がある、一番細いのがレイピア、片刃で湾曲したのシャムシールから片刃の直剣と両刃の直剣、片手での両手でも使えるバスタードソード、後も色々と槍から斧から鈍器と様々だ、ただし、刃が潰してある。
刀はない様だな、あれば切れ味が最高なんだけどな、耐久性は直剣の方があるが叩き切るより引き切る方が使いやすいんだけど・・・
近接武器の訓練に来た訳でもないし今日はこれで切り上げよう、これだけの資金があれば奴隷購入も問題なく済むだろう。
そろそろおなかも減ったし、今日はさっさと寝て後の予定は明日にするか。
個室の訓練場を後にし受付嬢の元へ。
「マグロです、訓練はこれで切り上げます、ありがとうございました」
「お疲れ様でした、またのご利用をお待ちします」
宿屋へ寄り道せず戻った。
「お帰りなさいマグロさん、直ぐに食事可能ですよ、どうされます?」
「ではお願いするよ」
夕食も食べ部屋に入り受け取ったお湯で丹念に体を拭き直ぐに寝る、怒涛の一日であった為寝つきが良かった。
翌朝、ポシェットを腰に装着し、肩掛けカバンを持ち、食事を済ませて冒険者ギルドに向かう途中。
昼食もそこらの店で買っておくか大量に、と、腐らないのは便利だなと見える食料品店や露天商から五人前程度ずつ買い込み片っ端に収納して向かうのだった。
冒険者ギルドに入って行くが、扉を潜った直後真正面からぶつかった。
「なんだのこクソガキ、何処を見ていやがる、ああ痛い痛い、こりゃ骨折したな慰謝料よこせ」
はぁ、ここの扉は内開きで内側から開ける者がいると接触し易かったのだ、何時かやるだろうなとは思っていたが僅か2回目でぶつかるとはな。
空間把握を疎かにしていたらこのありさま、失敗だな、やらかしたのは仕方がない、どうやって切り抜けるかな。
「お前の不注意でもあるだろ、俺だけの責任じゃないぞ、それにな、この程度で骨折するほど貧弱なら戦闘になれば即死確実だぞ、悪い事は言わん、直ぐに冒険者を止めろ」
「貴様、喧嘩を売ってるのか!」
「先に売って来たのはお前だろ、この程度も分からん様では頭の方も救い様がないな」
「ここまでコケにしたんだ、覚悟は出来てるんだろ? 決闘だ!」
ほう、決闘があるのか、正々堂々と遣れる環境を相手から提示されるとはな、俺もついてるのか?
俺の魔法で何処まで戦えるのか、それも冒険者相手にどの程度有効なのか検証が出来るのも最高だな。
「貧弱な体で決闘に耐えられるのか? 耐えられるのなら受けてやるぞ」
「ほざいてろ、確実に殺してやるよ、死んで後悔しろ」
「死んだ後で後悔出来るのか? やはり救いようが無いな」
殺す宣言か、転生をお願いする時に座右の銘を決めた、目には目を歯には歯を、これをもじって、悪意には悪意を、善意には善意を、遣られる前に遣れ、だ、早速対象者第一号が現れた訳だ。
(あれってCランクのガランだろ)
(そうだな、だが相手は誰だ? 竜人族か)
(いくらCランクでも相手が不味くないか)
(散々馬鹿やらかしてるが今回は極め付けだな)
(ある意味いい場面に出くわせたぜ、あの新顔の実力を目の前で見れそうだ)
(場合によっては誘うつもりか?)
(当然だろ、俺達は命を懸けて活動してるんだ、戦力の拡充は死活問題だからな)
(なるほど、内容次第だな)
以前から馬鹿な事を繰り返してる事が窺える、俺を殺す宣言した事で、ここで終止符を討たれることになるな。
遠慮なく遣ってやるよ。
受付嬢がカウンターから飛び出して来る、昨日の猫族の方だ。
「何事なの? 説明しなさい」
「このガラン様に喧嘩売って来たのさ、今から決闘だ!」
「登録に来たらこの馬鹿に絡まれて喧嘩売られたから、今から決闘するのさ」
(あの竜人族、今から登録って・・・)
(Gランクにもなって無い素人が決闘受けるって頭大丈夫なのか?)
(無謀すぎるな)
「わかったわ、ギルドが立ち会います、まず貴方の名前は?」
「マグロだよ、登録に来たんだ」
(は?)
(何あの名前・・・)
(魚の名前を付けられたのかよ、哀れだな)
(ド新人と言い名前と言い、何とも言い様が無いな)
「わかりました、マグロさんね、先ずはお互いに要求を述べなさい」
「ガラン様の治療代として全財産を要求する」
「お前は殺す宣言したんだ、要求は貴様の命だ」
(ブフォッ)
(おいおいぶしつけだな)
「俺は構わんぜ」
「無論俺も構わん」
さすが馬鹿を極めてるな、あっさり乗りやがった、俺が手加減して勝った場合でも死亡確定だな、そんな事しないけどな。
「両者認めてるから止める事も出来ないか、ではルールを決めましょう、一般的なルールは一対一、武器は所持している品ならば種類問わず、魔法使用制限無し、アイテム使用禁止、勝敗条件は敗北宣言、気絶して戦闘続行不可能な状態になった場合です。
今回は正式な決闘ですので相手を死なせた場合でも勝者へ罰則は一切ありません、もし死亡した場合は勝者がその資産を受け継ぎます、変更希望な点はありますか?」
「無い」
「あるな、お互い殺す気だ、死亡を持って決着に変えろ、棄権しようと気絶しようと試合続行だ」
「貴様の方からその様な提案があるとは思わんかったぞ、なら俺もそれに乗る、これで堂々と殺れるからな」
「ガランが認めた事で決着条件を死亡時に変更します」
これで良い、相手が耐えられる耐性があれば別だろうが、こいつの魔力量は大したことが無い、この点からも低めだろ。
「では大規模訓練場へ行きます、付いて来てください」
そこはPT単位で五~六チームが同時に訓練出来るほどの広さだった、個室練習場と同じ階層だがこれほどの広さだから地上部もあれほど広かったんだな。
「準備を整え、両者印のある所定の位置につきなさい」
十mほど離れて対峙する様線が引かれてあった、そこに立ち両者が向かい合う。
「両者、準備はよろしいですか?」
準備と言っても俺は魔法戦闘だし素手だからな、何の準備も必要無い、相手は両手で剣を構えているからそれほど速度は速くないだろう、重量級の武器だしな。
「俺は完了だ」
「此方も問題ない」
「それでは始め!」
ガランは武器を振りかぶり一気に間合いを詰めるべく走り込む、マグロはバックステップで距離を取る行動する際【ストーンアロー】の二発を脛目掛けて放つ。
ガランは回避を考えず距離を詰めた為に足にまともに受け転倒する。
「ウゲッ、貴様ー!」
(種族と素手から体術か徒手空拳辺りかと思ったら意外だな)
(今無詠唱だったぞ)
(まともに受けてたな、あれだと移動が絶望的だな)
さて追加だ、【ストーンウォール】×4、ガランの周りを完全に囲み、【ストファボール】を投げ込んだ。
「ぎゃぁああああああああ、助けてくれ!」
と言いながら石壁によじ登ろうとしている所に追い打ちをかける、同じく【ストファボール】を顕わになった顔面めがけて発動する。
顔に着弾し後方に押されて下に落下「グッ!」と短い悲鳴を上げたがそれまでだった。
(勝負あったな)
「そこまで! 勝者マグロ」
(あれは確実に死んだな)
(新人以前の問題だけど、強い上に容赦無いな、ま、手心加えた所で殺さなきゃ決着が付かないからな)
(それよりあれは何の魔法だ? 見た事も聞いた事もないぞ)
(焼けてた事から火の魔法だが、何かを混ぜ込んで持続力を上げてるな)
(それなら土魔法だろ、と言う事は火と土の複合魔法って事か?)
(複合魔法か、使える奴が居たんだな、俺達の仲間に誘うか?)
(馬鹿言うな、確かに強いがあの性格だ、とばっちり受けかねん)
「マグロさん、ついて来てください」
「ガランの資産を頂けるんですよね、しかしあの状態だと身に着けてるのは全滅でしょ、必要無いですから処分してください」
焼けた上に溶岩に漬け込んだ状態だからな、あれじゃお金持ってても取れないだろ。
「回収可能かもしれないですから其方は気にしなくて良いですよ」
資産集計担当者に頼んだ後、受付嬢が先導し2Fの小さな会議室に入って行く。
「そちらにお座りください、回収可能か分かりませんが現在ガランの資産を集計してますのでお待ちください」
「登録に来ただけで巻き込まれたのですが、登録できますか?」
「それは待ちなさい、登録もしてない人が決闘して相手を殺害なんて前代未聞よ、いえ、冒険者ギルド創設以来初めてでしょうね」
「相手は俺を殺す宣言をしていた、だから俺も殺す宣言をし実行した、やられたらやり返す、これが俺の信念だ、何か問題でもあるか?」
「問題は無いけど問題よ、今後トラブルに遭い、力で強引に解決する前に時間があれば極力相談に来なさい、私はキャロルよ、絶対よマグロさん」
「わかったよ、キャロルさん、時間があれば、だね」
トラブルに合ったら相談か、そんな事受けて良いのかね、ギルド職員って。
自らトラブルを抱え込むような事は極力避けるべきだろうに、だけど好きだな、この性格って。
「冒険者登録に来たのだったわね、本来は受付で済ませるのがルールだけど仕方ないでしょうね、この場で登録しましょう」
「お願いします」
やっと本来の目的が果たせそうだな、物凄く脱線した気がするが。
「まず税金ですが冒険者になると、直接支払いは無くなります、これは達成料金に税金を抜いた金額が提示されている為です、素材販売した場合も冒険者ギルド側で徴収後の金額をお渡しします」
手間が省けるのは良いな、忘れて国に捕まるなんて事になったら目も当てられないからな。
「わかりました、税金支払いの手間が省けるのは良いですね」
「冒険者はランクで分けられています、ランクですがGから開始しFEDCBASと上がっていきます、依頼をこなすとポイントが割り振られます、一定以上ポイントが溜まるとランクが上昇します、このポイントは開示していません。
また、魔物討伐した際にそれぞれの部位を提出する事でもポイントが貯まります。
AランクとSランクに上がる際のみ試験がありますのでご了承下さい。
また、登録時の一度のみ飛び級制度を希望者の方にご利用頂けます、ギルド職員立ち合いの元、一対一の摸擬戦です。
これは実力のある方が低ランクの依頼をする等の無駄を省く為の制度ですのでご利用ください。
ランクが決定致しますと、そのランク上下一まで仕事を受ける事が出来ます、CだとDCBといった感じです、依頼を失敗致しますと罰金が課せられます、達成料の十%になります。
場合によってはランクダウンしますのでご注意ください、ここまででご質問ありますか」
「飛び級制度のお相手とは? それとなれるランクは? それと俺は魔法職だが魔法戦闘になるのか? 手加減出来ずに殺しそうな気がするんだが」
「Bランク以上の方に依頼を出しまして、その方との対戦となります、ランクですが対戦された方と立ち会たギルド職員で協議し、最高でBランクとなります。
得意な戦闘方法に合わせて募集するので問題ありません、他にご質問ありますか」
「ありません」
「それでは次に、指名依頼についてですが掲示板の依頼と違い、指名され受けるか受けないかの判断を迫られます、当然受けなくても罰則はありません、不可能だと思われたら躊躇なく断って下さい。
失敗致しますと報酬金額の二十%が罰金となります、ご質問ありますか」
「ありません」
「次に強制依頼についてです、国家間の衝突では発動しませんが、対魔物で国の存亡が関わる場合に国から依頼され、その脅威度を冒険者ギルドが判断して発行するかしないかを決めます。
その際の冒険者ランクは脅威度が増すほど低ランク化しますので断言できません。
強制依頼が発行され、これに参加せずに逃げた場合、ギルド員の永久資格停止処分となります、ご質問はありますか」
「それって、具体的に何ですか?」
「魔物が集団行動をとり、町や村、住人が住んでる場所を襲う場合ですね、一般的に大暴走、もしくはスタンピートと呼ばれています、ご質問はありますか」
うーん、厄介だな、実力が低い時に巻き込まれでもしたら強制的に参加したうえで死亡か、やたらとランクを上げない方が安全かもしれないな、ま、レベルの上がり具合と要相談と言ったところか。
「ありません」
「次にPT制度です、後衛や回復職の方は止めを刺す機会が少なくなり、前衛と実力の差が広がります、これを回避するためにPTを組みますと経験が当分配になります、質問ありますか」
「PT組んだ場合のランクの上がり方と、受けられる依頼のランクを教えて下さい」
「分配されずそのまま全員にポイントが加算されます、受けられる仕事のランクですが、トップの方から見て同ランク+下2つになります、極端な例ですとGとSが組んだ場合にはBASとなります、他にご質問ありますか」
無茶な受け方になるのか、パワーレベリングならぬパワーランクアップと言ったところか? 組む際は気をつけないとな。
俺の加護はかなり有利だな、常時三倍は兎も角として、人数で配分されないのはかなり良い、十人で組めば一割になる、当然成長速度の時間が十倍に跳ね上がる、この不利な点が無くなるのはかなりのアドバンテージだな。
「ありません」
「冒険者ギルドとしての立ち位置ですが、冒険者間のトラブルには干渉しません、ただし、片方に明確な犯罪行為等が発覚した場合には介入致します。
冒険者間で決闘に発展した場合ギルド職員立ち合いの元、お互いの要求を出し、互いに納得した場合、ギルド練習場にて決闘して頂きます、負けた方には勝った方の要求が強制執行されます。
もし決闘によりお相手が死亡された場合でも勝者は責任を問われません、また、死亡された方の資産および資金や装備品等も勝者の所有品となります。
すでに決闘は経験済みですね、ご質問ございますか」
「冒険者間はと言いましたよね、他の場合はどうなるんですか?」
「貴族の方も一般の方も含めまして決闘となりましたら行政が仲介役となります、この場合は騎士が立ち会います、そして本人だけでなく代理をたてる事も許可されています、相手が弱いからと受けずに、相手が誰なのか見極めたうえで受けないと大変な事になります、ご質問ございますか?」
「ありません」
「登録費用として銀貨二枚頂きます、それと仮許可証を頂きます、宜しければこの書面に必要事項をお願いします、それとPT申請もするならこちらもお願いします、飛び級制度はご利用致しますか?」
書き終わり、仮登録証と銀貨二枚と共に渡す。
「不備は無いようですね、確かに預かりました」
面倒ごとはご免だ、普通に登録しよう。
「利用しません、それとPTですが知り合いがいませんし、信頼できるかの見極めなどは情報が無いので無理です。
それで門番の方から助言を貰い奴隷購入を考えてます、ギルドから見て信頼できる方を紹介して頂けませんか?」
「あれだけ注目されたら仕方のない選択でしょうね、カエラ商店、店主の名前もカエラよ、店舗は冒険者ギルドの真向かい、道挟んで反対側よ」
「紹介ついでに武器屋と防具屋を紹介してくれないかな、初心者用を販売してる場所じゃなくて、品質の良いのを扱ってる場所が良いな」
「中央広場から西に行ったら左手に武器屋、雑貨屋、防具屋と並んでるから直ぐに分かるわよ、さて、最後の仕上げね、このカードに血を一滴垂らして頂戴、それで完了よ」
彼女は優秀だな、決闘の立ち合いといい、今回の登録と言い淀みも無くスラスラ説明する辺り、冒険者ギルドにはいい人材がそろっていそうだ。
「ありがとう、助かるよ」
渡された短剣で指に切り付けた所でコンコンとノックが鳴る。
「はい、どうぞ」
「申し訳ありません、水魔法の使い手に冷却をして頂きストーンウォールを外したのですが、石化しており資産をはぎ取る事は不可能だと判断しました」
「ありがとう、後の説明などは引き受けます」
「失礼します」
「指摘されていた通りですか、それなら諦めて頂きます。
それとギルドカード、無くすと再発行に金貨1枚掛かります、くれぐれも無くさない様に注意してくださいね」
「有難う、説明分かりやすかったよ、それじゃまた」
「あまり、トラブル起こさないでよ」
あまりなのか、少々なら良いのかな、冒険者ギルドを出て奴隷商に向かうのだった。