59:解放
変なやり取りがあったが肉は渡して無い、食わず嫌いだろうが嫌な物は嫌なのだ。
その日の夜はティアを抱き枕に、ピクピク痙攣するまで弄ってやった、そして翌日商業ギルドへと向かった。
昨日対応してくれた職員と挨拶を交わし、別室へと案内された。
「お待ちしていました、マグロ殿、他にも調べておきましたので此方へ来て頂きました」
「それは有りがたい、住みやすそうなら定住可能な様に手を加えようと思ってたんだよ」
相談もせずに定住とか言ったが大丈夫かねぇ、後で相談しないとな。
「そうでしたか、かの地独自の植物もあるようで、その辺りにご配慮して頂けたらと思います」
「そこは専門家じゃないから何とも言えないな、手を加える前に調査団を派遣されるのでしたら送迎は可能かと思います。
二日後ですがこちらは向かう目途が立ちました。
その帰還後でしたらご案内する事も不可能ではありませんが」
「そうでしたか、期日がはっきりしないので確定は出来ませんが、調査団を派遣したい所ではありますね。
可能ならサンプルをいくつか手に入れたいと言うのが本音なんですよ」
「でしたら、帰還後に此方に顔を出しますね」
「待つにゃマグロ、北方の例の地は如何するのにゃ」
「放置するつもりだ、そこは話が脱線するから今晩にでも話し合おう。
それで、バルカント諸島の領有権はどうでしたか?」
「お伝えした通りでした、かの地に一番近い、帝国、ストレイル、マンテドールの3国は接舷に難ありと放棄しています」
「それなら勝手に開発して俺たちのクラン領有地としても問題ないな。
後は交通の便を確保するのに接舷可能な様に手を入れて灯台を作って宿を拡充させて、かの地の特産品の販売所を作る程度か」
「開発が可能だと言う前提でお話ししますが、接舷が可能な状態になれば、この3国、もしくは拠点にと考える国がこぞって奪いに来る可能性が有ります」
「それは大丈夫だろうな、帝国を潰したのは俺達だし、俺が仕切ってるとなれば友好関係を築き、少しでも恩恵にあずかろうとして来るだろ。
ストレイルも同様だな、スタンピートの高レベル帯の魔物を殲滅したクランに喧嘩は売らないだろ、それをしたら国が潰れるからな。
一番確立が高そうなのはマンテドールって国か、俺たちのクランの事を全く知らないからな」
「確かにその通りです、マンテドールが短慮な行動に出ない事を祈るのみです」
開発前にマンテドールに向かい、かの地でも確認を先にするのも手だな、確認後に手を出してくれば大義名分も立つし。
「話は変わるが、この地の特産品を買えないかな、各食材を13人前で100日分、香辛料やらの調味料も同様で。
腐らせる心配が無いから生物込みで」
「それでしたら明後日早朝に、船まで運ばせましょう、料金はその時で構いません、納品書もその時に持参致しますのでご確認を」
「それなら荷揚げはしないでくれ、倉庫の確保はしてないからな、マジックバッグに入れさせてもらうよ。
それと金貨10枚を情報料として上乗せしておいてくれ、今回あなたへの謝礼だ」
「荷揚げの件、お伝えしておきます。
謝礼など不要です、調査団をお連れ頂けるのでしたら、此方がお支払いしたいほどです」
「それなら仕方ないですね、灯台の核を作って頂けませんか、1,5mの石材の台座上に永続化し強化した【ライトボール】の光源をお願いしたいのですが、支払いは先ほどの件と同時に支払うと言う事で」
「不動光の灯台ですか、本格的に着手される予定なのですね。
それでは当代きっての職人が居ますので発注しておきます。
仕事の斡旋を頼み、私の株をあげられるのですか、御見それしました。
行かれる際に一つご注意を、中心部の一番大きな島にダンジョンがある様なのです。
誰も魔物討伐を行っていないので魔物があふれてる可能性が有ります」
もしかして、食用可能な魔物を狩る事で維持してるのかもしれないな、確実に戦闘可能な者が居る事が裏付けされたか。
「なるほど、一掃しないと宿泊地には出来ませんか、手間ですが今回行った際に処理しておきます」
「話は以上かにゃ? それなら少しの間この部屋を使わせてほしいにゃ」
「では私はこれで席を外しますのでお使い下さい、終わりましたら受付の方に伝えて頂ければ幸いです」
こうして担当官は席を外した。
「定住したらマグロとの子作りに励むにゃ、この件は置いておいてだにゃ、魔族の事は放置と決めたのかにゃ」
「そうだ、ずっと疑問に思ってたんだ、ティアがLv800オーバーで陛下と呼ばれる存在だとしたら、手下にスタンピートを引き起こす様に命令するか?」
「それは微妙だにゃ、相当に捻くれた家を出たくない体質でも、手下を使うより自身で動いた方が確実なのにゃ。
それににゃ、ストレイルの様な多数の領地運営者による合議制の国を狙うのが疑問にゃ、ティアなら王国か帝国を狙うにゃ。
頭を潰せば乗っ取るのは容易いにゃ」
「さすがティア、的を射抜いた答えだ。
俺でもそうする、それが出来ない状況だとしたらどうだ? 魔族を束ねる存在がカラドボルグから代替わりしてるんじゃないかと思ってるんだよ」
「ブロッサスが半端に答えた事も疑問でしたが、代替わりし、スタンピートを利用しなければ領地の獲得すら不可能ならば辻褄は合いますね」
「魔族も二分化して強権派が事を引き起こしたとするなら、強硬策に反対した者達も居るはずだよな、その筆頭がカラドボルグなら俺達が手を出す必要は無いのかなと」
「マグロ様、確かにそうですが、仮定に仮定を重ねた考えです、派閥が二分化したと仮定しても、かの地にどちらか居るでしょうし、向かう方が良くありませんか?」
「答える前にファサラ、一つ訪ねたい、当時、龍族を奴隷化したと答えてたよな、何名ほどだ?」
「私が合流した後でしたら5名が奴隷化されてます、それ以前が分かりませんので5名以上だとお考え下さい」
「その主は誰がなった?」
「カラドボルグです」
「では、今現在でだが、その奴隷になった者達が解放されたとか情報なり、奴隷になった者達が解放されて会ったりしたとか無いか?」
「彼らと別れた後ですが、解放されたとの情報も、会った事もありません」
「なら、今現在進行形でカラドボルグの手の内に居る確率が高いな。
それならカラドボルグがストレイルを奪い取る算段を付けたとして、その5名を投入したらどの程度で落とせる?」
「ライネルから飛翔したと仮定すれば、報告まで12時間掛かりません」
「やっぱりな、ブロッサスを使う必要さえない、カラドボルグの陣営は動く気は無いと思って良いだろ」
「確認した方がメリットが多くありませんか?」
「確かにセレスのいう通りだ、メリットの方が多い、最低でも状況の把握は出来るだろうな」
「それでは向かった方が」
「なあセレス、確かに俺が一枚絡んでる事は認める。
だけどさ、俺が動く必要があるか? 500年以上前の事が絡んでるんだぞ、それ以前に俺は転生者だ。
事の決着に俺が出張る必要って本当にあるのか?」
「それは微妙ですね、本来ならこの地に住んでる者達が解決すべき案件。
マグロ様もその一員となられた事は確かですが、だからと言い、全て押し付けるのは筋違いだと思います」
「帝国、ライネル、ストレイルは俺との連絡が可能な訳だ。
特にライネルは当事者と言って良い立場で、俺が聞きだした情報も全て握ってる。
俺じゃなく、ライネル主導で解決すべき案件だと思ってる、龍族が奴隷化されてる事実もあるからな」
「なるほどなのにゃ、余程の事があれば連絡が来るにゃ、マグロが出張らなければ対処できない案件なら出向くにゃ、そうでないなら当事者に任せるにゃ、そう言う事にゃ?」
「そう言う事だな、仮に魔族が再度戦争を仕掛けた場合だが、その場合は出向いて意思の確認が必要だろうな」
「どう言う事にゃ?」
「自立の為に引き起こした戦争なら介入する気は無いって事だよ、俺も同様の事をしてるしな、自身を守る為に戦争をした。
なのに、お前はダメだとは言えないだろ。
と言うのは建前だな、本音を言えばこの件から手を引きたい、こんな思いはうんざりだからな」
「確かに・・・・」
「さてと、論点はもう無いかな? 無ければ食材じゃなくて出来合いを買い込んだり食べたりするかな」
「マグロ様、もう一点、どうしてかの地に拠点を?」
「引き籠ってた方が面倒事に巻き込まれないかなと思ってな、島なら入場制限を設ければその手の奴は入れないし、旅をするとしても他者の目を気にせず帰れる場所があるって良いだろ。
自分ではマッタリ過ごしたいと思いつつも、どうにも体が疼くようで、じっとしてられないんだけどな」
「わかりました、受付にお礼を伝えて買い物に出かけましょう」
「何でもかんでも、相談も無く独断で決めてしまって悪いな、もちろんマグロの件は忘れてないぞ、捕らわれてる者達を解放したらもう一度ここに来るからな、その時に聞こう。
時期があるかもしれないからずれ込むかもしれないけどな」
近くに例のダンジョンがあるから、ちらっと覗こうかとも考えてはいたが、そちらへは行かずにマッタリ過ごした。
翌日の昼からライネルへと【ゲート】で向かい鍛冶屋で単独素材の武器を受け取り、防具屋でストームドラゴン素材で作成したスケイルメイル1セットを受け取り、王宮ではブロッサスを引き取った。
さらに翌日、乗り込む船に向かうとすでに品を積んだ荷馬車が4台待機していた。
目録と商品を確認しながら収納し、すべてが終わると代金を支払い船に乗り込んだ。
灯台の光源は1週間程度かかるそうだ。
「お客様でしたよね、途中で下船しバルカント諸島へと向かうと言われていたのは」
大っぴらに宣伝したつもりは無かったんだがな、何処から情報を仕入れたのやら、口の軽いのが混ざってるな。
「ええそうですが、それが何か?」
「私も連れて行って頂けないでしょうか、お礼は致します」
「要望をお聞きしたな? どう思う?」
俺の判断では連れて行かないと即決する事案だが、セレスに聞いてみる。
「マグロ様、連れて行くことは不可能です、この方の命の保証は出来かねますよ、それに、帰りはどうなされるのか、むしろ死にに行くのか確かめたいほどです」
「と、言う事だ、お断りするよ」
「命の保証などいりません、当然自己責任です、お願いします」
「そんな事言われてもな、連れて行った奴が死にましたじゃ、寝覚めが悪いだろ、断る、それでも行きたきゃ自力で行け」
「はぁ、仕方がありません、そうします、失礼いたしました」
こうして別れたが何だったのか、何をしに行くのか聞けば断り難くなるからあえて聞かなかったが聞いたがよかったか?
無事に出港し、俺たちの食事事情はと言えば、船上では保存食が当たり前なのでそれは食べずに持ち込んだ完成品を食べていた。
ブロッサスのみは部屋へ缶詰にし、後は各々好きな事をする。
襲われる前に片っ端に魔物を倒して時間を潰したり、竿を借りて釣り糸を垂らしたり、俺は【フライ】の魔法の特訓したり水中戦闘を体験したりとしていたが、船は風任せで順調とはいかず、7日後にバルカント諸島が望める海域へと到達した。
水中戦闘に大量の魚をゲットしておいた、1種に対し1匹ずつ鑑定し毒持ちだった場合は同じ種類の魚は全て焼き払ったので食べられるとは思うが全部無毒の魚だ。
「お世話になりました、では、我々14名はここで下船します」
「15名では? あちらの方も向かうとおっしゃっていましたが」
「彼は彼、私達とは別です、連れて行くように依頼されましたがお断りしました、命の保証が出来かねますから、お断りする事で諦めないかと」
「確かに、帰りの保証が無い為に片道切符同然、自殺に等しいですからね」
「それでは失礼します、良い船旅を!
それじゃ行くぞ、全員俺の背中に乗れ、一気に中心部へ向かうぞ!」
【フライ】で上空に飛翔し、龍化した状態で船の右舷へ、高度を海面すれすれに維持しつつ左の翼を船に接弦、歩いて乗り込めるようにした。
翼を羽ばたかずとも飛べる龍語魔法の賜物だな。
「龍族の方でしたか! なるほど、飛んで行くとはお聞きしていましたが納得しました、それではお気をつけて!」
「お世話になったのにゃ!」
ドサクサに紛れて例の男性が乗ろうとしたがシェルが足止めをし、シェル以外の全員が背中の中央付近に乗った事で少し上昇して離脱した所にシェルが【フライ】で合流する。
「グルァアアアア!」
船の周りを2周して目的地向けて飛び去った。
目視可能とは言っても結構な距離がある、泳いで渡るなんて行為は不可能だろう。
先ず東部の島が空間把握内に入ったが正確なサイズが測れない結構大きな島だ、中心部に入るとやっと全体が空間把握可能に、この事から直径15kmから16km程度ありそうだ。
当然全ての島が空間把握可能とはならないが上空からの眺めで位置は確認できる、諸島としての形は、横に長めのひし形に近い、中央の島から見れば北方に2島、西に3島、南方に1島、東方に3島だ。
そして中央の島の上空に到達しその中心部が空間把握内に入ると赤いマーカーの反応がある、敵対していた者の奴隷なら敵対となってるのは当然だろう。
流石に1kmほどに接近すると相手も気がつき行動を起こすが、飛ぶ速さに対して対処するには時間が足りない、攻撃を受ける前に急接近し一気に降り立つ。
その場は鬱蒼とした森の中でぽっかりと切り開かれた平野、その中心に木造の二階建てが建てられておりそこを拠点としていたようだ。
『敵だ! 敵が来たぞ! お言いつけ通りに対応するぞ!』
シャロは例の作戦の通りにブロッサスを連れて飛び降り、その者の目の前でブロッサスの首を刎ねた。
「私たちは敵ではありません!、見ての通りこの者からあなた方を解放に来ました、攻撃はお止めください!」
「龍族・・・魔族と敵対してた龍族? 奴隷として捕らわれていた龍族? 魔族に協力していた龍族?」
「そのどれらでもありません、全員をこの場に集めて下さい、状況のご説明を致します」
全ての者達を呼ぶ為、二階建ての屋敷へと相対していた大半の者が向かう中、俺は人化し、全員が地に降り立った。
「おし、シャロが目の前で首を刎ねたからな、敵だった赤いマーカーも無くなり青へと変わったよ。
命令から解放されたのは確実だな」
「その様ですね、これで敵対する事は無くなったので安心しました」
「予定の通りに進める事が出来ましたね、後は完全に開放する事と彼らの処遇ですね」
こうして待つ事20分ほど、少し説明でもしてたのだろう、21人、集まるのに時間がかかった。
「とりあえず、此方から説明しない事には分からないからな、手短に説明するよ。
今目の前にある遺体だがブロッサスだ」
こうしてもろもろの説明をし、助けに来た事を伝えた。
「お助け頂きありがとうございます! 我々は此処で使い潰され死ぬものと諦めていました、本当に感謝します!」
「本当に感謝します!」
「まぁまぁ、今は今後の事を話し合おう、今のままでは完全に奴隷から解放されたとは言えないから、此方の方、カエラにあなた達を完全に開放してらう。
その後の身の振り方は各自考えてほしいが放り投げるような事はしない、先ずは行先を決めてもらう。
今居る地がバルカント諸島、北方がストレイルで北西方面が帝国でその2国間にライネルで南方がマンデドールだな。
北方の帝国、ライネル、ストレイルなら仕事の斡旋も可能だがマンテドールには行った事が無いのでな、此方面へ行きたいのならリスタルで船を手配する。
他の国へ行きたいのなら馬車とかの手配なら可能だとは思うが直接連れて行くのは不可能だと考えてほしい」
「お助け頂いたのにお礼もせず離れる訳には参りません、お手元に置き、お礼をする機会を頂きたい」
「えーと」
「ダークエルフの種族の方ですね、自由の身になれるのです、ご自身の幸せの為の選択をして下さい、きっとマグロ様もそう言うはずです」
「その通りだな、お礼など考えなくて良い、これからの事を考えて選択してほしい、まあ、色々な事を体験して身の振り方を考えるのも手だな」
「俺は冒険者になりたい! 良い様に使われて魔物を倒してたが、今後は自分の為に剣を振りたい!」
「私はメイドさんかな、確かに使われてましたが、この仕事が好きなんです」
「国を選べと言いましたが、今現在の事情を知らなければ選べないでしょう、北方の3国のみですが帝国から説明しましょう」
シェルに任せて現在置かれてる事情を説明してもらった。
冒険者を職業に選んだ者は帝国に、同じく冒険者を選んだ者も気心が知れた仲、PTを組んで活動するそうだ。
誰もライネルは選ぼうとしなかった、ブロッサスと組んでた辺り、仲間が残ってる事を危惧したのだろう、俺が彼らの立場なら選ばないからな。
こうして20名が帝国とストレイルへと散る決意をする中で、先ほどのダークエルフの女性のみが頑なにお礼をするのだと決意を示していた。
仕方ないか、まぁ、肌の色が褐色で俺のクランには居ないタイプだ、俺のクランに入れば異色だが、あの重力に逆らって存在を主張する胸はすごいな、見た目も好みだし。
しかし、良いのかな、この地に定住するつもりだが、嫌な思い出を抱えてるだろうにその点が心配だ。
「うーん、あまりお勧めしたくないけどな、この地に手を入れて定住しようかと考えてたんだが・・・」
「それでしたら、地理にも、この辺りの生態系など知り尽くしてますのでお傍において下さい。
申し遅れましたが私、アマリアと言います、よろしくお願いします」
「俺は怪盗=マグロ、マグロと呼んでくれ、敬称は不要だ。
アマリア、それで聞きたいのだが、この地に他の魔族って来ていたか? ブロッサスの仲間と言う意味で」
「いえ、訪れてはいません、龍族も同様です、ブロッサスが向かっていました、しかし、どの様に連絡を受けていたのかは不明です」
通信水晶だろうな、片手でつかめるサイズだし、隠そうと思えばいくらでも手があるからな。
「うーん、それだと手掛かりになりそうな品をブロッサスが持ち帰っていなかったら皆無か。
それじゃもう一つ、この地にダンジョンがあるって聞いてたんだが、あるのか?」
「屋敷内に入口が存在します、他の者が訪れた際に利用されない様に隠ぺいする意図があったのかも知れません」
帝都と同じ事をしてるな、この地に冒険者を呼び込むのも手か? まぁ、何にせよ後回しだな。
「なるほどな、いずれにせよ、ブロッサスの仲間が来てレベリングに利用してないのなら安心か」
「ブロッサスは、私たちをダンジョンに入れる事で経験値を得ていました。
それに、下層部の魔物を上層部に連れて行き、どの様にすれば効率良く、支配下に置かれていない魔物を誘導できるのか実験をしていました」
「なるほど、スタンピートの実験もしていたのか、後で屋敷の調査でもするか。
とりあえず今後の予定だが、全員を解放した後、帝国の都に【ゲート】で移動した後、魔道具店に行く。
そこで各自にマジックバッグを購入し、服やら防具を買い付けよう、武器はライネルで買い付ける。
メイド志望だからと言っても、護身用の武器程度は持っていないとな。
帝都に取って返し一泊したのち、この地に再度戻って来る、各自荷物整理をしてこの地で数泊。
気持ちの整理をつけたのち、各地へと案内して仕事を紹介可能な者に引き合わせる。
予定と言っても本当に予定だ、帝国で数泊してそちらの習慣に慣れる必要がある場合はそっちで数日生活をしよう。
斡旋を依頼する相手だが、帝国では冒険者ギルドマスターを退職した者だな、ストレイルでは、一都市の都市長だな。
俺に借りがある者達ばかりだから安心してくれ、俺への連絡が必要な事態になれば、その者に頼めば連絡は可能だ。
では、カエラさん、彼らの解放を頼むよ」
俺は遺体を回収して周囲を眺める。
「しかし、この地の気温は高いな、周囲が海だからか湿気も多そうだし、武具が痛みそうだな」
「気候は年中変動がありません、使用後の手入れは欠かせません、一度、この事で防具をダメにした奴隷が殺された事があります」
地球で言う赤道直下地帯って事かな、それなら独自の果物とか実ってそうだ。
「防具程度で命まで取るのか、器の小さい男だな。
気候が一定なら独自の植物もありそうだ、探索が楽しみだな」
「食料調達であちこちに自生してる果物を収穫に出かけていました、後程ご案内します」
「それは楽しみだな、果物とかケーキとか甘いのが好きなんだよな」
「マグロさん、皆さんの解放が完了しました」
「ありがとうカエラさん、出発前に聞いておきたい事がある」
魔法の使用の有無、弓を使う者、【クリーン】魔法の使える者を聞き出す。
【ゲート】魔法を使い、帝都の東門前に34人の大所帯で移動した。
21人は身分証明を持っていないので犯罪経歴を調べられ、仮証明書を発行してもらった。
まずはマジックバッグが必要なので真っ先に魔道具店へ。
マジックバッグを21袋購入して各自へ配布、ポーション用ポシェットを21個購入し、上級ポーションもあわせて購入、魔法使用者はHP用を5本、MP用10本、万能薬5本、不使用者はMP用を外してHP用に振り分けた、この時点で各自へ金貨一袋も渡しておいた。
クリーン魔法取得用スクロールも購入し、その場で覚えさせ、次に向かうのは服屋さんだ。
俺はタオルを210本注文して各自に配布、後はそれぞれ選んでもらう、俺にコーディネイトは不可能だからな。
カエラさんを捕まえて確認事項を聞いてみた。
「なぁカエラさん、俺達は冒険者ギルドや商人ギルドに加入してるから身分証明書を所持してる事になってるよね。
だけど、他の多数の人たちは加入していない一般の人、どうやって正式な証明書を発行してもらってるの?」
「現地出産の場合は違ってきますが、今回の場合は身元引受人と行政府に向かい発行してもらいます、伝が無ければ無理な方法ですね。
帝国は今現在、立て直しの真っ最中です、ライネルかストレイルで発行してもらう方が望ましいでしょう」
それなら、ライネルを警戒してる彼らだとストレイルで発行する、と言う一手のみだな。
「なるほど、それなら各国で1泊ずつするのも手ですね、一応、行先は決めてますが、雰囲気を感じ取り、それで変更する人も居るでしょうし」
「それは良いですね、武器を買いにライネルに行かれるのでしたら、今日はライネルに一泊し、順次回りましょう」
服を購入したら結構な時間だ、そこらの食堂に押しかけ、食後に各国で1泊しようと持ち掛けたら賛同されたのでその様に。
食堂を後にし、防具店へ、以前購入したワイバーン製のフルセットを注文したがさすがに数が足りない、
本日中に他の店舗からかき集めておくから明日以降に来てくれと頼まれた。
次は武器屋だ、防具屋の中からライネルの鍛冶屋へ【ゲート】で繋ぎ直接乗り込んだ。
今後の予定はこうだ、明日早々にストレイルへ向かい登録、その足で宿屋を確保して観光の為に一時解散、翌朝に帝都へ転移して防具店へと言う流れで良いだろう、この地に長居は不要そうだしな。
ブロッサスの遺体を渡す必要があるが、彼らの解放後で良いだろうか。
「ちわーす、ロンバルト、ご在宅かー?」
「居るぞマグロ、今回は大所帯だな、ゾロゾロとどうしたんだ?」
「魔族の件は聞いてるだろ?」
「聞いてるぞ、マグロ主動で解決したとな」
「その魔族に捕らわれていた者達だ、今回助ける事が出来てな、冒険者志望してる者も居るんで、その武器と護身用の武器を購入にな」
「なるほどな、先日引き取りに来たと思ったらあっさりと助け出したり、フットワークが軽いな。
それで、今回は出来合いか? 発注か?」
「さすがに21人分の武器を発注してたら受け取りが一ヶ月後とか先になるから、その選択肢は無いな。
販売可能な品の中で最高ランクの武器を、と言う事でどうだろう。
各自から聞いて見合ったのを売ってくれ、メイドさん志望の者も居るんで、そちらにはショードソードかダガー辺りをね」
「了解した、職員総出で、個人の要望に合う品を見繕って行こうか、ただ、弓は余りないぞ」
「弓の使用者は2人だし、何とかなるだろうけど、これと比べてくれないか」
雷鳴の弓を取り出して見せる。
「良い品だな、二人なら一張は買う必要があるな、後は矢筒と矢か」
「それじゃ弓は本人に選んでもらうとして、矢筒2セットと今ある中で一番良い矢を1000本ほど売ってくれ、いや、矢は必要ないか、ザラザラ取り出せるしな」
「弓に矢筒2セットは解るが、矢がザラザラと取り出せるって何の事だ?」
「そうだな、倉庫を借りて良いか? セレスもちょっと付いて来てくれ」
倉庫に案内され、セレスから無限の矢筒を受け取り【フライ】を使い、上空でホバリングしながら矢筒を逆さまに、あっさりと小山が出来上がった、それもアダマンタイト製の矢が。
セレスに矢筒を渡す間もロンバルトは声も出さずにプルプルと震えている、仕方ないな、此方から声をかけるか。
「倒れるなよロンバルト、大丈夫か?」
「大丈夫、じゃねえよ! マグロ、これなんだ! こんな事あっさり出来てたまるか!」
「と言われてもな、出来る物は出来るし、種明かしをするなら、あの矢筒は神器でな、使用する素材と連結させれば素材が尽きるまで無制限に取り出せるって寸法だよ。
セレスが弓を使うから最高のアイテムだろ」
「神器って、マグロ、本当に何者なんだか、以前にシャルに聞いた際には答えをはぐらかされたからな」
「別に教えても減るもんじゃないけど、言いふらされたら事だしな、聞かない方がロンバルトも変な争いに巻き込まれないだろ」
「それなら知らぬが仏だな、よく見ればロングボウに最適なサイズか、普通の弓で何とか使える程度、ショートボウではサイズが合わないな。
しかもこの重さだ、相当な剛弓でないと、発射した途端に失速して役に立たんな」
「それは問題だな、ショートボウの作成依頼は取り消すよ、途中まで作ってるならロンバルトが売り払ってくれ、手数料も返さなくて良いからさ。
それで、ロンバルトから見て、さっきの弓で扱えるか?」
「必要ないって、勿体ないぞ、それなら買わずにそれを与えたらどうだ?
雷鳴の弓だが、こちらは使用に問題ないぞ」
「うーん、もう一人の方は受け取りに来れないだろうから雷鳴の弓をそちらに渡して、ショートボウをアマリアに使わせるか、改めて作って貰うか選んでもらうかな。
1000本分ほど渡しておけば相当な事が無い限り足りるだろ」
「弓は分かったがどれだけ倒す気だ、こんな大量に必要ないと思うぞ
それに材質がこれなら何度も利用可能、不要だと思うけどな」
「マジックバッグを持ってるから邪魔にならないし、矢が切れましたじゃ話にならないからな、多いに越した事はないよ。
それで、ショートボウはどれ位で出来上がるんだ?」
「後は弦を張って微調整するだけだからな、明日中には出来上がるぞ、受け取りに来るなら明後日以降が確実だな」
「なるほど、勿体ないはずだな、改めてまた来るよ」
ザックリと回収し、100本を束ねて取り出し、以前買って置いた紐で束ねた。
これに時間が掛かったおかげか、購入する武器の選定も終わっていた。
雷鳴の弓とアダマンタイト製の矢を1000本渡し、アマリアの方は実際に扱ってから決めるそうだ。
支払いを済ませて宿に向かった。




