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57:魔族の地位

 一行は冒険者ギルドを出て解散、ファサラ一人連れて宿屋へと戻り、新たに一部屋を借り受けてアグニス、シャルを案内して会話を解禁し、別れまでの時間を与える事にした。

 俺は一人で部屋に戻り、最初に捕まえた猫を実体化させてモフモフとじゃれあった。

 名前を与えたいな、ワイルドキャットか、ワイト?幽霊ぽいな却下、ワイド、ワルド、ワード、イルド。

 うーん、種族名をいじるのはダメだな、食べ物はどうだ? ホイップ、メレンゲ、白玉団子、お餅。

 メスだし可愛らしいので良いな、白玉と名付けよう。


「今日から名前はシラタマな」


「ニャーオ、ゴロゴロ」


「偶にマッタリする時間は貴重だよな」


「そうですにゃ」


「あら、お帰り、もう用事は済んだのか?」


「早めの昼食を済ませて来ただけにゃ、シラタマ、おいしそうだにゃ」


「お? こっちにも白玉団子ってあるの?」


「帝都では見ないにゃ、カスタルに居た時に食べたにゃ」


「彼方で材料買って作るかなぁ、白玉ならもち米の粉か、色々アレンジできそうだ、俺の知ってる白玉ならだけどな」


「マグロさんが料理ですか? 初披露ですね」


「そうなるな、果物と混ぜて変わり種も作れるし、見た目の色も変えれるよ」


「マグロ様、お話し中に申し訳ありませんが、お客様がお見えです」


「来客の予定は無かったよな、要件が何か聞いてるか?」


「いえ、聞いてはいませんが、一度お会いした方です」


「シラタマが居るがまぁ良いだろ、食堂に行こう」


 デカイ猫の供を引き連れて宿に入った直後の食堂で対面する、前に注意された。


「な、なな 何ですかその巨大な猫は、宿にその様な生き物を連れ込まれては困ります!」


「俺の召喚獣だから悪さはしないよ、何かあったら弁済するから便宜を図ってもらえないか」


「そ、それでしたら何とか妥協が・・・・」


 セレスに案内されて対面した。


「お待たせしたな、俺がマグロだ、何用か?」


「以前、オークション会場でエリクサーを求めた者だ、お願いだ、所有されていたら譲ってほしい! もう時間が無いんだ!」


「あの時購入した3本はすでに使用して手持ちに無い、諦めるんだな」


「そ、そんな・・・お嬢様が!」


「仮に持ってたとしても支払えたのか? 確か白金貨2枚ほどだったよな」


「現金ではお支払いは出来ません、ですが、代わりの品を準備させて頂きました」


「と言っても、現物が無いからなどうしようもないんだよな」


「マグロ、ティアなら大抵の治療は可能なのにゃ、容態はどんななのにゃ?」


「魔力欠乏症です、知っての通り、魔力が枯渇すれば体調不良となりますが死には至りません。

 しかし、常時魔力枯渇が続けば次第に体が弱り、いずれ死に至ります。

 MPポーションで延命処置をしておりましたが、医者の見立てでは後1ヶ月もつかどうか、どうかお救い下さい!」


「うーん、俺には治療方法がさっぱり分からんな、ティアはどうだ?」


「ティアにもエリクサー以外での治療法は分からないにゃ」


「そ、そんな!」


「マグロ様、特効薬がありますよ、それも今すぐに渡せる品です」


「普通ので効果がないなら、自作したMPポーション辺りか? あれなら一時的にでも倍近くはMPを回復可能だろうけど」


「違います、マグロ様の血です」


「え?? 俺の血ってMP回復効果なんてあるの?」


「魔力欠乏症は、自身で魔力を作る事ができなくなる事から発症します、膨大な魔力を誇る龍族の血なら傷病者の血液内に入り込み、その点を治療可能です。

 この方法で完治可能と思いますが、最後の手段としてマグロ様のお傍に居るだけで完治はしませんが、延命ならば可能です」


「半信半疑だが、それに賭けるしかないだろうな、さすがに生臭い血を体調不良状態で飲むのは酷だ、自作のポーションを飲ませてから俺の血を飲ませれば良いだろ。

 しかし、俺の側って、俺は魔力を与えるなんて行為はした事が無いぞ」


「マグロ様のお傍に居るだけで、マグロ様より漏れ出る魔力で回復可能です」


「確かに1時間で十数万は回復するけど循環させてるから漏らしてる感覚は無いんだが、俺のMPってそんなに漏れてる?」


「漏れてるにゃ、かなり濃密にゃ」


「うー、今度からもっと気をつけて漏れない様にしないとな」


「その様な方法は存じませんが、お願いします、お嬢様をお助け下さい、お助け頂けましたら、報酬の品をお渡しいたします。

 失敗致しましたらエリクサーが手に入るまでお嬢様をお傍において下さい、お願い致します」


「傍に置くのはとりあえず置いてだな、飲ませる量なんて分かららないから、恒久の魔法袋に先日採集した鍋を入れておくからセレスに任せるよ」


「任されました、体格を見て量を決める必要がありますので、経験者しか対応は不可能でしょう、私にお任せ下さい」


 セレスに丸投げして昼食を取り、部屋に戻ってシラタマを背もたれにし、シラタマのステータスを確認する。


 シラタマ

 年齢:5

 レベル68

 種族:ワイルドキャット

 職業:ハンター

 状態:良好

 HP:17482

 MP:5847

 STR:2854

 VIT:2447

 DEX:4433

 INT:2040

 LUK:1767

 EXP:28000/69000

 ユニークスキル:限界突破、暗視

 パッシブスキル:敏捷性強化3

 アクティブスキル:牙裂術2、爪斬術3


 猫でハンターって、ネズミ狩りか? 暗視も夜行性の猫らしいな。

 牙を突き立て引き裂き嚙み千切り、爪で剣同様に斬るって意味かな。

 DEXだけなら他の種族と同レベルでも突出してそうだ。

 しかし、暇さえあれば戦闘面の事を考えてしまうな、悪い癖だ、何か趣味を作らないとな、趣味が戦闘になってる気がする。

 しかし、フカフカであったかくて眠くなるな、このまま寝ちゃえ、これもマッタリする醍醐味だろ。


 翌日、俺だけ単独行動をとり、シラタマに乗って出かける、自由気ままに気の向かうまま、シラタマの行きたい方向に行かせる。

 身体能力の高い者しか乗りこなせないな、走り出すさいに体を持って行かれる、鞍を付けるのも手か? 嫌がりそうな気もするが、明日辺り試してみるかな。

 街道を外れ森の中に突入し、魔物を狩り始めるシラタマだった。

 帝都の近くだけあり、あまり獲物が居ない、強くてもオーク止まり。

 一日中駆けずり回りシラタマの食事はオーク肉だ、狩った魔物を食べる、顔の周りと両前足は真っ赤だ。

 夕刻には【クリーン】で全身奇麗にして【ゲート】で直接、暁の宿の部屋へ。

 シラタマは満足したのか部屋の隅へ行き丸まり寝始めた。


「ただいま、そちらはどうだった?」


「本日も確認して来ました、容態は安定しましたが、今現在は魔力が飽和してる状態です、完治したかの判断は通常の状態で安定するかに掛かってます、確認後、改めてお越しになるそうです」


「ふむ、明日の処刑後にライネルへ向かう予定なんだよな、間に合わない様なら報酬はどうでも良いか、こちらの予定の方が重要だしな」


「そう言われると思いまして、ツガット殿にお渡しして貰えるようにお願いしてきました」


「それなら連絡も移動も簡単だな、ありがとうセレス」


「いえ、マグロ様もお食事がまだでしょう、食堂へ行きませんか?」


「そうしよう、シラタマはそのまま寝かせとくか、肉を食べてたから食事も不要だしな」


 翌朝、商業ギルドで馬具店を紹介してもらい向かった、場所は南西地区の奥まった場所、馬を扱う為に中心部では不向きな為にあえて外れた場所を確保したんだろうな。


「いらっしゃいませ、どの様なご用件でしょうか」


「馬じゃないんだが、この子の体格に合う鞍を買いたい、そうだな、出来れば2人乗りの品を見繕ってくれないか? 乗せてくれるか怪しいけど」


「確か、この地のダンジョンの魔物だったはず、お客様は召喚士で?」


「確かに召喚魔法は所持してるが職業は召喚士じゃないよ」


「お客様には申し訳ないのですが、キャット系を馬代わりに使うのは不向きです、手綱を付けず鞍のみでしたら、召喚者の命があれば不可能ではありませんが。

 どうしてもとおっしゃられるならば見繕いはしますが」


「そうだな、13匹居るから13セットお願いするつもりだったが、とりあえず1セットで、数日体験して良ければ追加で買う方向にするかな」


「了解致しました、そちらは店の者へ任せましょう、お客様が召喚魔法を所持なされているのでしたら、馬の代わりになる最高の魔物が存在します。

 足が8本ある馬の姿をした魔物でスレイプニール、魔馬と呼ばれてる種です」


「おー、そんな魔物が居たのか、8本もあれば瞬発力も高そうだし、足も速そうだな。

 その手の魔物販売店とかないのか?」


「あるにはありますが、帝国領ではありません、隣国の軍事国家カラドラスです、軍馬の代わりにスレイプニールの導入を進めてるそうです」


「なるほど、良い事を聞いたな、いずれ購入なり捕らえるなりして仲魔にしたいな」


「購入するにも、そのダンジョンへ入るにも特別な許可が必要との事、実力が無ければ購入は不可能な様です、こちらのキャット系より凶暴だと言う話ですので、その点の確認かと思われます」


「なるほど、飼い主が弱くては抑えられないものな、ご主人、情報を感謝する」


「いえいえ、お仲魔にされた折はお連れ下さい、かの地でスレイプニールに見合う馬車を作るにも許可が必要なようです。

 こちらで作る方がお手間が掛かりませんのでご留意を」


「そうだな、馬車を一台所有してるが調整も必要だろうし、その際はお願いに来るよ」


「はい、あちらも鞍の調整が完了したようです、このままお乗りになって帰られますか?」


「そうだな、この後冒険者ギルドに向かう必要もあるし、装着させたままでお願いするよ」


「それでは手順をお教えしますので此方へお出で下さい」


 今は装着状態の為に外す手順から教えられて実践する、装着も同様。

 次は口頭の説明もないままで脱着させ一通り実践し合格をもらう。

 料金を支払い、セレスが前に、俺が後ろに乗り、皆が先導する後ろをゆっくりと歩き、そのまま冒険者ギルド内へと突入したら怒られた。

 召喚獣は馬車停留所へ待機させよと。

 改めて冒険者ギルド内へと赴きトロイアと会見した。


「よく来てくれましたマグロ殿、これが此方へ直通の通信水晶です、使い方は解りますか?」


「いや、現物見るのも初めてだから解らないよ」


「それでは、通常品で説明しましょう、水晶に浮かび上がる地名がそれぞれの冒険者ギルド所有の通信水晶と繋がっています。

 この地名をタップすると先方に呼び出し音が鳴り、先方の水晶の地名一覧の帝都と言う部分が光ります。

 先方がこれをタップすると会話可能状態になり会話が可能となります。

 止める場合は先ほどの地名をタップすれば切断されます。

 今回渡すのは専用品の為、地名は1つのみ、本来は増やせますが、後からの追加は不可能な状態に加工してあります」


「了解した、これは収納袋に入れては気がつかないな、ポーション用ポーチを改造して入れておくとするよ」


「ではアグニスを連れ出し、中央広場で処刑を慣行しましょう、ファサラ殿は如何しました?」


「別れを惜しむ時間を与えておいた、今は宿屋だ、そう言えば樽の準備をする事を忘れてたな、ここに売ってるか?」


「ん? 血を回収しますか? 確かに素材としても有用ですし、無駄にするより活用しますか、どの程度の量か判りませんが50樽ほど準備しますか?」


「いや、その樽ってどのくらいの量が入る?」


「100kgほどかな」


「なら300樽売ってくれ」


「そんなに必要ですか?」


「血は全体重の1割少々だろ、対象が100m規模なら10%でも300樽ほどは準備しておかないと足りないと思うぞ、確かに、肉にも含まれてるが、水流操作で出るだけ取り出すからな。

 少なく見積もって250樽ほどか?」


「商業ギルドにも声をかけて広場に運び込んでおきます、料金は此方で受け取りましょう、発注した際に此方から支払っておきます」


「それじゃ任せるよ、俺は地に飛ばない様に上空に止めるようにするから、シェルはそれに干渉して樽に入れてくれ、セレスとティアとシャロは詰まった樽に蓋を、俺は順番に収納する」


 冒険者ギルドを退出し、シラタマを連れて宿屋に、アグニス、シャル、ファサラ、ブロッサスを連れ出し、処刑場と化した中央広場へ到着した。

 カロライナは如何したかって? ライネルに置いて来たよ。

 居るわ居るわ、今回の事を公表し、実際に罪を犯した者の最後を確認する為、もしくは祭り気分か?

 ツガットが横に来て話しかけて来た。


(では早速始めようと思う、マグロ、準備は良いか?)

(こちらはOKだ、龍化させたのち、苦しまない様に俺が首を刎ねる、そして準備されてる樽へと血を回収する、遺体は回収しライネルで公開する、その後の扱いは不明だ)

(ではその様に、後の扱いはライネルで決めてくれ、そこから先は干渉しない)


『皆、良く集まってくれた、事が事だけにこの地で公開処刑を執り行う、罪名に関しては身柄を捕らえたマグロ殿に説明して頂く、ではマグロ殿』


「この者を捕らえた内の一人で怪盗=マグロだ。

 皆の記憶にも新しく知ってる者が多いかと思う、先月ストレイル内で発生したスタンピートだ。

 偶然居合わせ、終結させた際に首謀者を捕らえた、それが魔族のブロッサスだ。

 この者の口より、陛下より命じられたと口にした為、口を割らせる必要があった。

 その為にライネルの国王へ引渡し、口を割らせる事をお願いした訳だが、親交があり、口を割らせる処か擁護し匿う始末だ。

 とりわけ、国王であったユリウス、並びに血縁者、城に在中してる者達だ。

 罪人を保護した事からスタンピートを引き起こした者と同列とみなし、今回の処刑と相成った。

 一つ釘を刺しておく、魔族だから処刑するのではない、スタンピートを引き起こした罪人だからだ。

 質問がある者は手を上げろ、此方が指名するのでそれを持って発言権を与える事とする」


 数人手を挙げる者達が居る、手前から順番にいくか。


「では、そこの一番近い方」


『先の大戦を思い出してみろ、魔族は等しく罪人だ、魔族だから処刑するのではないとはどういう意味だ?』


「その問いに答える前に確認したい、他の手を挙げた者達で、同じ内容の質問をしたかった者は居るか?」


『俺はそうだ、同じ事を聞きたかった』

 

 他の全員も同じようだ。


「そうか、それなら都合が良い、全員壇上に上がるなり、最前列に来てくれ、離れていては話ずらいからな」


 流石肝が据わってる、壇上に上がって来た、6名だ。


「では対話方式で進めよう、次は俺からの返答だな。

 言葉の通りだ、今回はスタンピートのみの犯罪で処刑すると公開してる、戦争を引き起こしたから罪人だとは考えていない」


『その点がさっぱり分からない、普通の戦争では無く、多国間をまじえる魔族対他の種族だったんだぞ』


「それは当事者から聞いて知っている、それなら魔族が虐げられていた苦境から脱する為に引き起こした事もご存知か?」


『勿論だ、それなら1国のみで止まり、隣国へ更に仕掛ける必要は無いだろう』


「そうだ、その点は同意する、しかし、苦境からの脱出の為との大義名分に関してはどうだ?」


『戦争と言う手段を用いずとも意識改善は可能だ、時間は掛かるが、後者で解決する方がしこりが残らずに解決できる』


「そう、それが最善だが時間だよなネックは、なぜ嫌われてるのか調査し、その対策を練り、それを浸透させる。

 1国内なら一時脱出し、徐々にでも可能かもしれんが、大陸全土が対象だ、10年やそこいらでは不可能だ、今でも魔族と言うだけで毛嫌いされてる、どう思う?」


『確かに期間は必要だろう、今も罪人扱いし毛嫌いしてるのは戦争仕掛けた事情も含まれてる、戦争前と同列には考えられん』


「そうだ、同列に考える事は不可能だ、だが当時、貴方の言う策を施したとして、10年後には解決すると判ってたとする。

 あなたが魔族としてその場に居たら10年もの歳月をただひたすらに耐えられるのか?

 買い物に行けば町中で罵声を浴びせられ、人目に付かない場所へ行っては暴行を受け、物を持ってた場合は奪い取られ、職には付けず働き口は無い。

 憂さ晴らししようものなら捕らえられて死ぬか奴隷に落ちて毎日暴力をうけるか、どうだ?」


『わからないが、不可能な気がするな、食事もままならず、数ヶ月ももたずに死ぬ気がする』


「と言う事だ、貴方の言う方法が最高の対策だろう、その間耐えられるかが問題だがな。

 だから、一時でも早く解決するには戦争と言う手段しか無かった」


『マグロさんとの会話で、なぜ戦争になったのかは理解したが、そのせいで魔族は罪人扱いだ、この点は如何なのだ?』


「確かに魔族は500年ほど前に戦争を仕掛けた、一つ聞きたい。

 その大戦以降今日まで、魔族が戦争を仕掛けた事実はあるか?」


『語り部ほどの知識が無い為に断言は出来ないが、それ以降は無かったはずだ』


「なるほどな、それじゃ、大戦後の他の種族へと目を向けてくれ。

 先日も帝国はエリュードより越境され戦争に突入した、狙われたのはサラヴァスだ。

 貴方の言い分だと戦争仕掛けた種族は罪人だ、エリュードに住まう者達全てが罪人か、それとも人族が罪人か、どちらだ?」


『罪人じゃないだろう、あちらは国王の判断でサラヴァスの地を求めての戦争だ』


「では追加で質問するが、土地を求めての戦争なら罪人では無いが、自身の尊厳や自由を勝ち取る為の戦争は罪人、この区別はどうやって判断してるんだ?」


『それは、難しい問題だな』


「変な返答だな、あんたが口にして答えた問だろうに、線引きしてる線があるはずだろ、それで判らないって、単に周りが犯罪者扱いしてるから、俺もそれに習ってるって事なのか?」


『・・・・・』


「なぁ、俺が前二者の皇帝を殺した事や、皇宮を焼き払ったり、皇帝になるだので世間を賑わせた事は知ってるか?」


『勿論知ってる、今知らない者は居ない程だ』


「二代前の皇帝は俺の所有品を狙って、罪を偽造して擦り付け、殺そうとして来た、返り討ちにしたけどな。

 エリュードの国王は土地を奪う目的で戦争を仕掛けて無罪、これがまかり通るなら、二代前の皇帝がやらかした、俺を殺そうとした事も無罪か?」


『・・・・・』


「なぜ答えない? 無罪の者と犯罪者との線引きが可能だから言って来たんだろ、ほら、答えろ」


『・・・無罪です』


「それじゃ、俺は無罪の皇帝を手にした罪人って事か、答えろ」


『・・・・・』


「あのな、一度口にした言葉は取り消せんぞ、ここに居る大多数が聞いてるんだからな、さっさと答えろ」


『・・有罪です』


「馬鹿な事を言うな、お前の言う事は穿ちすぎている、二代前の皇帝が無罪でマグロ様が有罪だと! 罪を捏造した二代前の皇帝が犯罪者でマグロ様が無罪だろ!」


「そうだ! 貴様の言う事は地位さえ高ければ何をしても無罪と言ってるんだぞ」


「これまで魔族が罪人だと思っていたがマグロ様の答弁を聞いて確信した! 魔族は被害者だ!」


「その通りだ! 魔族が罪人なら、この地に住みし者達は全て罪人だ! 国の根幹をなすもの達の判断でどれだけ戦争をしてる! 魔族の比じゃないぞ!」


「そうだ! 魔族はただの一度だけ、国や帝国はどうだ! 数え切れんほど戦争をしてるぞ!」


「この事を流布しよう! 魔族は被害者だ! 皆聞け! この場に居合わせ、魔族が被害者だとの考えに至った者で流布するぞ!」


「・・・・「流布するぞ、流布するぞ」・・・・」


 何でこんな事に、誘導するつもりは無かったんだがなぁ、ま、俺の嫌な方面へ流れた訳では無いから良いのだが、これがどんな影響を出すのか考えたら頭が痛いな。

 魔族が接触して来るような気がする・・・・。


「流石マグロだ、魔族の地位が回復したかもしれんな」


「いや、こんな流れになるとはな、予想してなかった、俺が思うに、またトラブルを抱えた気がするな」


「良い方向のトラブルだろ、戦争で死人が出る訳でもなし、気楽にいこう」

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