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56:猫

 流石に時間が掛かったな、昼近いし食事を済ませて向かう事にした。

 飛ぶ方が早いがテレポーターを選択した、奴隷化してるとは言え、乗せたくなかったのだ。

 そう言えば馬車を確保に行ったつもりだが忘れて来たな、今回こそは回収しないとな。

 移動開始から1時間ほどで帝都の東門に到着した。


「マグロ様と、その一行の方々ですね、ご到着された場合は即ご案内するようにと仰せつかっております、馬車の準備を致しますので少しお待ち下さい」


 こうして4頭引きの馬車2台が手配され元?俺の屋敷へ到着した。


「久しいなツガット、大事ないか?」


「久しいじゃないぞマグロ、突然放り出されててんてこまいだ、事情は聞いたが放り出す必要なかったんじゃないか?」


「遂行が不可能じゃないとは言わないが、対象が俺と一緒に行動していたんだ、俺達も仲間だと思われたら罪人扱いされかねない、これを払拭する為にも完全に切る必要があった。

 俺には常時監視が付いていた、それがシャルだ、離れる口実が必要だったってのもある。

 それと、油断させる為の餌が皇帝の地位だったって事だ」


「なるほどな、身柄確保も完了したんだ、帝位に戻るんだろ?」


「いや、戻らない、一度投げ捨てた者が就いては求心力が低下して統治に支障が出るからな」


「やはり、俺の考えてた返答と内容がまったく同じだな。

 それも想定して統治方法を考えていた、帝政から共和政へと舵をきり、29都市からの代表者から1名選出して帝都を、いや首都だな、この地を任せる事にした」


「なるほどな、俺は今後統治方法に口は出さないが、弱い立場の者達に負担を強いるような事はしてくれるなよ。

 そんな事になったら、また俺が出張る羽目になるからな」


「それは確認済みだ、マグロが冒険者ギルドに渡した白金貨10万枚から残る金額を粗方算出して、赤字になる部分に差額を当てる事にした。

 これで数年で元の水準の税収に到達できる試算だ。

 騎士が壊滅し、貴族も皆無、そちらへの資金が必要ない為に殆どの分野の穴埋めが可能だから赤字にはならんだろうな。

 マグロが支払った賠償金などもそちらで負担しなおせと言われた場合はかなりの舵取りが必要になるがな」


「返金は必要ないさ、ここまで混ぜた責任もあるからな、それを考えれば安いものさ」


「マグロらしい返答だな、安心したぞ」


「ええ、それでこそマグロですね」


「カラミティか、突然放り出して悪かったな、立場に変化はないか? 不都合があれば勤め先には心当たりがあるから斡旋するよ」


「謝罪は不要です、それと斡旋も不要です、29名から選出される方の元で財務面を任される事が決まりました」


「それは何より、それじゃ此方からの報告に移って良いかな?」


「そうだな、マグロが職務放棄するほどの事だったんだ、詳細を聞いておきたいな」


 ファサラを含めて一列に並ばせ、以前の役職と魔族との関わり、役割も含めて説明した。


「なるほどな、その魔族が現在も指揮してるのか判断が出来ないが、戦争当時の奴が単独で急襲して来た場合は壊滅するな」


「いや、しないだろ、28家のお嬢さん方の方がまだレベルは上だろうし、だけど戦闘には無縁だから精々時間稼ぎが関の山だな。

 ライネルにはセルが国王として立つ、彼方は戦闘経験があるから一人と言っても安心だ」


「それでは、マグロへ緊急な連絡手段が必要だな、マグロ達なら対処が可能だろう?」


「可能だな、その為にセルに通信水晶を手配するようにお願いしてる、今なら全力で飛べばここからライネルまで10分も掛からないと思う」


「どれだけ強くなってるんだよ・・・」


「これだけとしか言いようが無いな、最悪の事態を考えて彼女達に戦闘訓練を少ししたらどうだ? いきなりぶっつけ本番は無理だろ」


「心構えの講義から順に教えるのが最良か、時間稼ぎの為には必須だな、それと、帝国から直通の通信水晶を準備して渡すぞ、3日ほど時間を貰えるか?」


「そうだな、受け取っておこう、リスタルからブロッサスの拠点に船で向かうつもりだが、少々間が空くか、時空間魔法書も熟読が必要だし、この際だ、魔法の作成を進めるかなぁ」


「それなら一つ手を貸してくれないか、Sクラス冒険者を3組ほど向かわせる予定だったがマグロなら適任だ。

 盗賊の集団が150人程度と大きくなりすぎて手に負えない」


「うーん、俺は地理に疎いからな、案内しれくれるなら向かっても構わない、その代り飛んでいくぞ、龍語魔法の熟練度を上げたいからな」


「それなら俺が案内する、早すぎると地理を知ってても見逃す恐れがあるから手加減してほしいがな」


「その程度の規模なら明日の早朝、堂々と向かうか、上空からの一斉射で片がつくだろ。

 それでだけど、今回の討伐をAクラス昇格試験にできないかな?」


「今は確か、クランを解散してたな、参加者全員で冒険者ギルドへ赴いて調査してみないと判断がつかないな」


「そうか、なら向かおう、そうそう、【真摯の断罪者】のリーダーがシャルなんだよ、強制解体できないか? 可能ならその名前を使って新たにクランを立ち上げたいんだが」


「可能だな、犯罪者となった場合は冒険者ギルドから権利剥奪される、それで自動解散だ。

 その手続きは任せてくれ」


 今回こそは馬車を回収し、暁の宿に部屋を確保、その足で冒険者ギルドへ行き、各種手続きを完遂する。

 出費は金貨50枚、PTから【真摯の断罪者】クランへと格上げ、セレスティーナをリーダーにしておく、ファサラをギルドに加入させてクランへも加入させた。 

 今回は指名クエスト扱いにしてもらいAランクへと上がるのが俺、セレス、ティア、シェル、シャロだ。

 他の者達は全員がBランクへと上がる手はずになっている。


「確か以前に話してたよな、ここのダンジョンにデカイ猫が居るって、今から行くぞ。

 それと可能ならスライムを仲間にするから転移門だっけ? の前まで連れて行ってえさを与えて放置するぞ。

 それで一人監視しててほしい」


「マグロ様、それは私が監視しておきます、他の方々は狩りに赴いて下さい」


「良いのか? シャロ」


「はい、見た目は可愛いそうですが、かなり凶暴との事、防具がボロボロにならない様にお気をつけて」


 シャロにミスリル160kgの塊20個を渡してツガットと別れてダンジョン内へ。

 セレスの案内の元、通路に居たスライムをゲットしながら転移門室へ向かい、シャロと別れてゾロゾロと最下層であるB30へ。

 空間把握で確認すると居るわ居るわ、誰も来ないのだろう、それだけ危険なのか? 一般人にとっては。


「これは可愛すぎて殺せそうにないな・・・しかも全高が2mほどか? 本当にデカイな、それに、全ての個体がサイズ的にほぼ一緒。

 ただ、色んな種類が居るな」


「マグロ様、もしかして召喚獣にしようと考えてませんか?」


「ふふふ・・・あはははは! あそこの毛が短くて真っ白いあれが良いな! ほしい!!!」


「マグロさんの病気が発病しましたか」


「こうなったら止まらないのがマグロクオリティなのにゃ」


「ちょっと待ってろ、無理やり捕まえて来る」


 有言実行、一気に接近して【クリーン】を掛けて攫う。


猫は気まぐれだからなぁ、餌を与えても警戒されたらかなり懐かせるのに時間が掛かる、追いかけると逃げるし、傍に寄ってほしくない時には寄って来る、どうしたものかねぇ。


「さて、どうやったら懐くかね」


 嚙まれたり引掻かれたりするがダメージ0、ワイルドキャットの歯や爪が折れる。

 痛そうなので治療を施し、折れては治療と5度も繰り返すとペロペロと舐めて来た。


「にゃおーん」


「おんや? 懐いたぽい?」


「その様ですね、意外です、餌を与えて懐かせるとばかり思ってました」


「悩んでる間に懐きましたか、これなら手間が掛かりませんね」


 魔力を飽和ギリギリまで与えて召喚獣化させて完了だ。全長4、5m、全高2mほどか(シッポ込み)

 馬代わりに乗るのも良いな、馬は臆病で魔物に襲われた場合はパニックになりかねないが、この猫達なら逆に襲い掛かるほどの根性の持ち主だ。

 Lv2000超えてる俺に攻撃する辺り、鈍感なだけかも?

 

 ニャアニャア言ってるがちょっと無視だ、確認したい事がある。


「おし! 1匹ゲット! なぁ、もっとデカイのって居ないの?」


「居るには居ますが、召喚獣にしては扱い的に邪魔では?」


「確かに邪魔かもしれないな」


「マグロさん、邪魔とはどの様な方面での邪魔と言われてるのですか?」


「いや、常時面倒を見る必要があるだろ、そうなると今後の船の移動の際とか飛んで移動とかだと不便かなと」


「マグロさんは召喚獣達を水晶化させて持ち運べる事をご存知無いのですね」


「え? ファサラ、そんな事可能なの?」


「簡単ですよ、キーとなる言葉を与えるだけですから、種族名に結晶化ですね、ワイルドキャット結晶化と触りながら唱えて下さい。

 元に戻す場合は同じく種族名に実体化です、ワイルドキャット実体化ですね」


 試すとあっさり出来た、これなら何匹居ても問題無いな、レベルが上がれば移動速度も上がるし。

 今回の盗賊討伐でレベルが上がるだろう、丁度良かったな。



「大きければ目線が上がり周囲への監視がしやすくなるって思ったんだ、数匹召喚獣化して馬代わりにしたいと思ってな。

 馬は臆病だが、この子なら逆に襲い掛かるほどの胆力があるから、旅にはもってこいだろ」



「確かに馬は襲われた際に手のつけようが無くなる場合があります、この子なら逆に蹴散らしそうですね。

 更に大きい種族の猫でワンダーキャットがボス部屋に居ます、番いですから2匹ですね」


「そう言う事か、先ずはボス部屋に直行、居る位置は把握してるからな、罠だけ注意な」


 普通に移動しては襲われるからな、魔力循環を止めて魔力をダダ漏れ状態にした状態で、ワイルドキャットを担ぎ上げて一気に走り抜けボス部屋へと突入する。


「おし、猫ちゃんは此処で待機な、ふふふ、デカイな全高3m、全長6、5mほどか、それじゃゲットするかな!」


 と言っても行動は地味すぎる、一方的に攻撃受けて治療してあげるだけの簡単な仕事だ。

 ちなみに、見た目はオスが虎柄、メスがヒョウ柄だ、しなやかそうな体が良いな。

 毛が短いタイプだけなので、毛が長いタイプもゲットしたいな。

 結構な個体数が居る中を駆けずり回るには猫3体が居ては邪魔だとクリスタル化して、後は各自の好きな固体を見つけては召喚獣化した、シャロの好みが分からんから適当に1体ゲットだ。

 クラン員13人に各自1体で13体とボス2匹で合計の15体だ。

 B1へ戻る前にドラゴン肉を腹いっぱい食べさせて結晶化し、シャロと合流、渡したミスリルと同数のミスリルスライム化したスライムと契約を済ませて結晶化し宿に帰った。


 夕食を済ませて各自割り当てた部屋へ。

 転移門があるなら時空間魔法にもその手の移動方法があるはずだよなと魔法書を読み漁りその記実を発見し読みふける。

 あっさりと実用化にこぎつけた、と言うより簡単すぎた、行先を思い浮かべて詠唱するのみだ。

 【かの地に赴く我が体を運びし門を換言せよ、ゲート】だ、これで一方通行の転移門が現れるって寸法だ、最長で出現時間は10分、命じれば即消える。

 これって、テレポーターなぞ実用化する前に覚えるべきだったんじゃ? もう遅いけど。

 塗料が有用だったし良いかと割り切るしかないな。


 そして翌日、朝食食べてる際にツガットも合流して彼も食事をとる。


「食べて来なかったんだな」


「ここの食事は美味しいからな、来るついでに食べようとな」


「ツガットさん、盗賊は此処から遠いのですか?」


「そこまで遠くは無いな、一つ町を飛び越した辺りだ、馬車で2日と言った所か、一番騎士の居る場所が首都だが、獲物を狙うなら首都付近が一番狙いやすい、その過程で選んだんだろうな。

 方角はここからほぼ真北だ」


「ふむ、飛んで数分か、俺って龍化は試したけど、最大の攻撃方法のブレスってまだ使った事が無いんだよな、試して良いか?」


「マグロさん、絶対に駄目です、マグロさんのブレスだと地形が変わります」


「と言う事らしい、マグロ、今回は足で後は他の方に任せては?」


「そうだな、今回も遠距離からの攻撃にしておくか、攻撃者はファサラな、戦闘方法を確かめておきたい。

 上空で龍化するんで、フライで飛べる人は運ぶのをお願いするよ」


 暁の宿前から【フライ】で飛び上がり、一旦【フライ】を止めて龍化し、改めて高度を維持する。

 後はセレスとシェルのピストン輸送で全員が乗る。


「しかし、龍族とは聞いてたがこのサイズはでかすぎだろ、踏んだ感じだと硬度も恐ろしく高そうだし」


「それはそうにゃ、ティアの全力で無傷なのにゃ」


「ちなみに、ティアさんはマグロさんと同レベルですよ」


「なるほど、龍族って硬いんだな同レベルの者からの全力で無傷か」


「グルァアアアア!」


「移動開始するようですよ、重心を下げておいて下さい、落ちますよ」


 徐々に速度を上げていき、あっさりと対象が空間把握内に映り込み、距離10m高度30mほどでホバリングを開始する。


「今回は私が手を下させて頂きます【ファイアレイン】」


 雨の様に炎の矢を降らせ、地上部の者達をあっさりと倒し、地下部の者達を倒す為に飛び降りて洞窟内へと突入した。

 後はマップで敵対マーカーが消えて行くのを眺めるだけだ。

 敵対者が0になった時点で降下して人化し合流する。


「マグロさん、作戦完了しました、彼らが貯め込んだ品が洞窟内の一室に保管されてます、此方です」


「奪っても仕方ないんだがなぁ、しかし、襲われた人は生き残って無いのか生存者0だな」


「それだけ凶悪だったんだ、それでSランク冒険者の出番と考えてた訳だ」


「セレス、ティア、シェル、シャロ、ごっそり回収して来てくれ、俺は盗賊を一まとめにして焼き払っておくよ」


 152人の遺体を焼き払い、セレスから盗賊達の遺産を受け取り、飛んで戻るのも手間だと早速【ゲート】を発動し、帝都の西門前に移動する、門が片方しか残って無い為にイメージが一番簡単な為だ。


「新しい移動魔法を覚えられたのですね」


「昨日の転移門から魔法書に書かれてないかと探してみてな、簡単そうだったから丸暗記してみた。

 話は後にして、今は報告を済ませよう」


 ツガットの証言の元、報告が完了しそれぞれAクラスとBクラスへと昇格した。


「戻るのは待ってくれマグロ、後任に就いたトロイア殿が話があるそうだ、時間を貰えないか?」


「後任が決まったのだな、それなら挨拶も必要だ、では行こう」


 指名依頼に参加した全員でゾロゾロとギルドマスタールームへと案内されて入る。


「俺は一般人の怪盗=マグロだ、就任おめでとうトロイア殿」


「一般人などとんでもない、ご活躍はかねがね聞き及んでおりました、よろしくお願いしますマグロ殿と同じクラン員の方々」


「それで話とは?」


「聞きたい事が数点ありますがまずは一つ目、帝位には戻らないとお伺いしましたが、本当でしょうか?」


「ああ、戻らない、で、次は?」


「なるほど、本当の様ですね、理由も聞いていますし本人から直接確認をさせて頂きたかったのです。

 次です、そこのファサラ殿はどの様にあつかうつもりです?」


「当分は俺の奴隷だな、最短で10年と考えてくれ、戦争当時、彼女の立場では手伝わないとの選択肢が無かった事が判明してる、そこの信憑性はライネルの国王に就く者から聞いてくれ。

 それで今回の件だ、我が子を助ける為に戦闘行為に及んだが、大抵の人なら当然の行為だ命を奪うほどでは無い、それはライネルの国王も同様の判断だ」


 卵を産んでもらう事は確定してる、死んで後を追う事をさせない為にも奴隷化した状態で産卵期が来るまでの間、強制的に産ませない様にするために10年間は必要だと考えていた。


「今施してる罪人と同様の奴隷化を施して話を聞きだしたと聞いています、確認は不要です。

 次に、処刑は何処の地で行いますか?」


「ユリウスのみはライネル以外の選択肢は無い、ブロッサスは情報を引き出し切れてないから除外。

 基本的には全員がライネルだが、1名なら帝都でも執行する事をライネルの国王へも告げている。

 帝国側の交渉次第だな」


「そうか、それなら話が早い、信憑性を高める為にこの地で公開処刑を行いたい。

 それもファサラ殿には悪いが、貴方のご家族を対象としたい」


「ダメだ、貴方の要望では此方は受けかねる、俺は帝国側と言った、貴方の立場をお忘れか?」


「すまないマグロ、今のは俺の落ち度だ、28家の総意でな、できれば一人でも良いからこの地でと要望が上がってる、彼らは忙しく交渉の為の時間が取れない、そこでギルドに交渉役を任されている」


「なるほど、現在トロイア殿は帝国の正式な外交官と言う立場ですか、それなば問題無い。

 では改めて具体的に言ってくれ、ファサラには恨まれるだろうけど、俺にもセル殿にも処刑しないとの選択肢以外は無い」


「そうか、マグロの決意見事だ、此方の要望はアグニスだ。

 ユリウス一番の側近、この者が一番望ましい」


「了解した、それで時期は?」


「今日と明日で通達、明後日の昼に執行でどうだ?」


「了解した、それでは此方から聞いておきたい、ライネルでの処刑にも誰か寄越すか?」


「帝国からの代表と言う事か、この場で返答は出来ない、処刑当日の返答で構わないか?」


「ではその様に、移動に関しては此方で準備と言うか、連れて行くから問題ない、当日移動でも十分だからその辺は留意しておいてくれ」


「それは有りがたいです、これが最後の質問、今回の件で魔族が暗躍してる事が実証されました、魔族全てを排除対象と考えていますか?」


「そう言えば正確な事を伝えて無かったな。

 結論から言えば考えていないだ。

 今回はストレイルでのスタンピートが発端だ。

 首謀者と擁護してた者達を捕らえたに過ぎないし、関わりの無い者を捕らえるつもりもない」


「結論は分かりました、理由を聞かせて頂いても?」


「そうだな、魔族を毛嫌いしてる様な人が大半な訳だし、俺の考えを話しておくべきかな。

 500年ほど前、当時の戦争に参加していたファサラから聞いて、自分達の尊厳やら自由やらを取り戻す為の行為だった事を知った。

 短期間で魔族の地位向上を目指すならこれ以外の手はないと思ってる、この行為で死者が多数出るのは明白、だから賛成も反対もしない。

 多数の国へ侵攻した時点で決定的な失敗を犯してるけどな。

 自身が魔族に生まれていたらと置き換えて考えてみてくれ、魔族と言うだけで疎まれ忌み嫌われ迫害を受ける。

 当人には何の罪もない、たまたま魔族に生まれた、それだけだ、それだけでなぜこの様な扱われ方をされなければいけない?

 仮に俺が魔族だったらどうだろうな、セレスを買い解放し、ティアやシェルを買い解放し、俺が魔族だから側に居たくないと逃げ出すか、魔族だがマグロはマグロだと思って接しているか、どうだろうな?

 そういう訳で、魔族だからと特別な目線で見るつもりはもうとう無い。

 大戦を引き起こしたのが魔族だからと考えてる人も居るだろうけど、反論しておくぞ。

 四六時中戦争してた帝国とエリュードはどうなる? 魔族の比じゃないぞ。

 それでも魔族は迫害対象だと言うなら、帝国の民やエリュードの民も同じく迫害対象だよな」


「・・・・」


「まぁ、考え方は人それぞれ、間違ってる事も正しい事も含まれてる。

 俺の考えはこうだ、と言うだけで、他の人の考えが間違ってるって事でもない。

 世間一般では忌み嫌われてるから自分も嫌いだ、とは考えてほしくは無いな、自身の目で確かめて自身で結論を出すんだな。

 説教じみた返答になったが以上だ、トロイア殿、これで良いか?」


「耳の痛い話でしたが、全ての生きる者達に聞かせたい言葉です、マグロ殿には近いうちに紹介したい人物がいます、その際は会ってもらえますか?」


「会うのは良いけど、時間が取れるか今すぐ返事は無理だぞ」


「連絡の取りずらい場所に住んでるので、結構先になるとは思います、その際はお願いします」


 魔族は嫌われて当然と言う風潮で暮らしてたから、悩みもするだろうな。

 自身に置き換えて考える事が出来ればこの悩みも解決するだろう、今は大いに悩めば良い。

 相談があれば相談してくれればいい、何時も側に居るからな。

 

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