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52:結託

 翌朝、暁の宿から出立して現在位置は、南門から出た場所で前回の戦闘場所だ。


「それじゃ、どの程度のサイズになるか分からないから離れてくれ、完了したら乗ってくれよ、それと俺は話せなくなるからな、注意点を。

 俺は慣れてないから極力速度を落として飛ぶつもりだ、風で体を持って行かれない様にそこは調整するから安心してくれ、後はがっしり鱗にしがみ付いててくれよ。

 何なら頭の角にしがみ付くのが確実かも知れない、そこは各自に任せるよ」


 セレス達に離れて貰い変化する。

 龍化の場合は全魔力量の3割を全身に巡らせ、一気にその魔力を翼に纏わせる、人化の場合は逆だ、翼に3割集中させた後にその魔力を一気に体に巡らせるって手順だ。

 残り7割は何処かって? 体表とのギリギリの位置に溜めておくんだよ。

 覚悟を決め、その順序とその時間を含めて模倣すると龍化が成功した。


「グルァアアアアア! グルルル、グルァ?」


 シャルにはばれただろうな確実に、仕方ないからとりあえず行くか、首を動かして乗る様に則すと乗ってくれた。


「流石マグロ様です、簡単に龍化されましたね、それにこの大きさと言い白銀で奇麗さと言い、さすがとしか言いようがありませんね」


「400mほどはあるかにゃ? 龍語魔法の熟練度が低いと調整がとかいってたにゃ、そうなると最大サイズかにゃ?」


「グルァア」


「しかし、さっぱり言ってる事が分かりませんね、しっかり捕まっておきましょう、そろそろ飛ぶようですよ」

 

 飛ぶ速度も翼への魔力供給の量次第の様だった、あまり込めてはどんな飛び方をするか不安があるからな、最初はハイヒール程度で徐々に上げて行こう。

 着地の際は逆噴射だな。


「グルァアアアア!」


「徐々に飛び始めましたね、中々の安定感です」


「マグロ様の初飛行にお付き合いできるなんて私は幸せです!」


 こうしてライネルへと向かって飛び発ち、サパンとライネルの中間地点で着陸、人化を試してあっさりと成功させた。


「それじゃここら辺りで説明しようか、今回の件をね」


「ライネルの陣営から離れる必要があったっと解釈していいのですよね?」


「そうだ、先のスタンピートで魔族を捕らえて身柄を引き渡しただろ、その魔族とライネルの上層部が結託してる事が判明した。

 決定的だったのは、俺がユリウスの前でウソ泣きしてシャルのみ残っただろ、あの後、あの魔族を交えてユリウスとシャルの3者で対面してた、地下牢じゃなく3Fでな」


「マグロさんはあの魔法防壁を突破して空間把握が使えるのですか? 今の私には不可能です」


「シェルは覚えたてだからな、魔法の実力は俺より上だが熟練度が足りなんだろうな、時期に可能になるさ。

 と、脱線したな、そこは立地も絡んでるんだが、屋敷と王宮は隣同士、距離が開けば俺でも不可能だがあの距離なら問題なく突破できる。

 それを知らないからそんな愚行を犯した」


「スタンピートを画策してた魔族と結託してるのなら要排除対象ですね。

 それでは、帝都とライネル、どちらからかたをつけるつもりですか?」


「帝都だな、シャルだけ突出してLv千二百台だ、残りはLv七百台だった際に、スライムが俺より強いとか言ってたんで、このレベルには到達してないから確実に抑えられる。

 問題はアグニスの長男か、顔も知らないが名前も知らない、まぁ両親共々倒したことをふれて回れば敵対して来るだろ」


「シャル以外には属性魔法も効果がありますよね、シャルはマグロ様かティアが対峙し、残りは私達が押さえましょう」


「そうしよう、シャルは確実として、ファサラも回復魔法を使えるだろう、情報を聞き出すのに一時拘束する予定だが、その点を留意する必要があるな。

 シャルは部位欠損までは治療できない、ファサラはどうかな」


「使わせない方法がありますから心配なさらずに、魔力を流し込み、乱せば良いんです」


「それならその役はシェルにお願いしようかな、さて、後はぶっつけ本番でどうにかなるかな?」


「前衛3名、後衛2名、相手がシャルクラスでも問題無いでしょう」


 粗方の方策を決め、竜化して再度ライネルへと飛び、未熟な振りをして王宮の側を通り越してストレイル方面に通過した。

 緊急出動したライネルの竜騎士団に周りを囲まれ、東門前に着地して人化した。


「ライネルの竜騎士達か、迷惑かけてすまなかったな、なにせ初飛行だったからな、重ねて謝罪するよ」


「慌てましたよ、会った事の無い龍でしたので、攻撃の意思が無い事が分かった為に攻撃へは移行しませんでしたが、今後はもう少し離れた位置で人化して下さい」


 トップは魔族と関係しているがその手下たちはどうなんだろうか。

 それにしても優秀だな、それほど速度は出していなかったとは言え、監視と言い追いつき取り囲む突発した状況への対応力と言い、有能な人材の様だ。


「了解した、それでは失礼するよ」


「それではお気をつけて」


「びっくりしたにゃ! 突然取り囲まれて攻撃受けるのかにゃと」


「まぁまぁ、それじゃ気を取り直して向かおうか」


 そんな事があったが無事に到着して入口だ。


「マグロ殿、ユリウス陛下よりの通達です。

 ライネルへの入国は認めるが、ダンジョンへの侵入及び王宮への接近は禁じるとの事、それと滞在中は我ら騎士団の者が一名、付き従いますのでご了承を」


「了解した、とりあえず宿の確保をしたいので適当な場所へ案内してほしい、そちらの都合の良い場所で構わない。

 それと陛下へお伺いしてほしい件が一点ある、テレポート用の魔石と大型テレポーターの魔法陣をお渡しするので、受け取る方をこちらに寄越してほしいと。

 更に別件だが、カエラさんに付き従ってるアルヴァールさんと連絡を取りたい、彼女には俺の召喚獣が付き従ってるからその食糧と共に返却を希望してると、以上だ」


「了解した、そちらへは別の者を向かわせよう、では宿へ案内するのでついて来てほしい」


 案内され一週間分の料金を支払い、ロンバルトの鍛冶屋に赴いた。


「ロンバルト! 俺だが居るか?」


「ん? マグロか? お前は、帝位に就くから来れないから品を送ってくれ、と伝言を頼んでたよな、なぜここに?」


「色々あってな、放り出してきた、それで今はただの一般人だ、それで、物は出来てるか?」


「なるほど、色々か、その色々が複雑だったんだろ、何にしても元気そうでなによりだ」


「ああ、一時期ストレスでブチ切れてたが、今はこの通りに、その原因も解消されて安定してるよ、この四人のおかげだな、それで頼んでたのはどんな具合だ?」


「一応例の魔石を混ぜたのは出来上がってるぞ、マグロと打ったダガーと比べてだが、魔力は通しやすくなったな、その分脆くなってるかもしれんが、俺では検証不可能だ。

 それで一般的な魔槍や魔剣としての性能だが、魔力を貯め込んだ短時間ならばその属性が乗る様だ、使用者の使用可能な魔法属性に切り替えながら戦闘も可能だろう。

 その点を省けば、頑丈になった劣化ミスリルのハルバードって感じだな」


「ふむ、素材の味を生かした強化品の感じより、欠点が目立つのかな。

 ロンバルトの見立てでだが、単品に魔力を通して切り込むのと、この混ぜ物に魔力を通して切り込むのと、どちらが切れ味が有りそうだ?」


「魔力の通りは確実に混ぜた方が上だからな、そこは持つ者の魔力次第って所か、比べるのは至難の業だな」


「うーん、同じ仕様の単品を作って貰えば一応の検証は可能だよな、お願いできるか?」


「頼まれよう、では五十kgと骨を二十五kgな、それと、今回は白金貨で払ってもらえるか、売れない品を抱えては首が回らなくなるからな」


「俺は何方でも良いよ、いくら払えばいい?」


「素材提供で使用するのは燃料のみか、白金貨二枚って所だな」


「了解した、ではこれを、それでシャルが注文した際にきちんと料金は受け取ったか?

 払えてないなら今支払うぞ」


「配送料金も含めて貰ってるよ、では取って来るから待っててくれ」


 受け取った品は特注のアダマンタイト製のハルバードとメテオブレイカーだ。


「さすがロンバルトだ、見事な品だな、切って良し突いて良し叩いて良しか。

 それとお願いがあるんだが、シャルには渡さず俺に渡してくれ、いずれ理由は分かるさ」


「腕には自信があるからな。

 シャルでは無くマグロが出資してると知ってるからな、それは了解した、それと今の注文の分もだが1週間程度で完成するだろ、その頃に来てくれ。

 それで、これからは自由の身なんだろ、何か予定はあるか?」


「予定は一応あるな、エリュードで穴埋めと、その後は魚のマグロを探そうかとな、マグロって何処の漁港に揚げられるか知らないか?」


「穴埋め? まあ良い、マグロだが俺も見た事が無いからな、とりあえずナノタルかリスタルで聞いてはどうだ? あの都市は漁業に力を入れてるから知ってる者が居ると思うぞ」


「やっぱりその手しかないか、それじゃまた一週間後位に来るよ、それじゃまたな」


 次は防具店、二日か三日で一セット出来上がる様だ、俺が直接出向くから、代理人だと言われようと渡すなと言明しておいた。

 その際に取りに来た者の名前を控えるようにとも。


「さて、何をするかな、そこの騎士さん、何かイベント的な事は無いか?」


「はあ、特にこれと言って特別な催し物は有りませんが」


「そうなると本当に暇だな、服でも買いに行くか、そろそろ別の服も着たいと思ってたからな」


「早速向かいましょう! マグロ様のコーディネイトはお任せを!」


「何時になく気合いが入ってるにゃ」


「失敗な展開か?」


「そんな事ありませんよね、騎士さん」


「はあ、話を振られても困るのですが」


「それじゃ昼飯食って夕刻まで居座るつもりの覚悟で行くとするか」


「それに付き合う騎士の仕事も大変だにゃぁ」


「まぁ、上からの命令ですので、拒否権は俺に有りませんから」


「奮発するから、一番高い店に案内してくれ、昼食抜きにはならないから安心しろ」


 こして食事を済ませて、服屋では着せ替え人形になり、後は宿に戻って夕食を済ませて寝た。

 落ち着くなぁ、馬鹿な帝国の貴族の相手もしなくて良いし、こうやって嫁に抱きついて寝るのは何日ぶりか・・・

 そして翌日早朝、カエラさん達が訪ねて来た。


「おはようございますマグロさん、突然如何されたのですか?」


「アグニスと衝突してな、全てを奴に任せて飛び出したまでだよ」


「左様でしたか、細かい経緯は聞かない方が良いのでしょうか」


「そうだなぁ、騎士が張り付いてるからな、ほら彼だ、この話はライネル外でした方が良いだろう。

 それに、この件は俺の話を聞くのみでは信憑性に欠けるだろ、この手の話は双方の言い分を聞かない事には判断がつかないからな」


「そうですか、喧嘩の仲裁ではありませんが、双方に言い分がある事は確かですからね」


「それでなんだが、彼女にスラちゃんと食料を返してもらう為に呼んだわけだ」


「そうですね、ではスラちゃんの食料はこのマジックバッグに、お世話になりました」


「そこの騎士の方、テレポーターの件はお伝えしたか? 陛下は何と仰っていた?」


「は、カエラ様が兼任する様にと話されました、それと、屋敷の買取や交易路の買取、その構築へ対しての報酬ですが、カエラ様へお預けされております」


「なるほど、了解した、その買取やら報酬に関しては、俺の意思は介入できないのか?」


「アグニス様への対応の件で激怒されております、交渉には応じないとの事、お与えになられた品と金品が全てでございます」


「ふむ、まぁ、踏み倒される事を考えれば温情のある対応をされた方だろう、陛下に感謝の言葉を俺の代わりに伝えてくれ」


「は、承りました」


「それでカエラさん、帝国での賠償金は受け取ったか?」


「ツガット殿がサパンの自宅に来られた際に受け取ってます」


「なるほど、帝都に居なかった時か、それでは売却代金を見せて頂けますか?」


「白金貨15枚です、それと一冊の書を預かっております、サファラさんから習う暇が無かったであろう、これを読め、との言伝を受けてます」


 用心するべきかな? 永久に人化が不可能な変化方法が混ざってたりな、それも踏まえて尋問すべきかな?


「なるほど、白金貨は必要ない、カエラさんの交易路構築代金として其方は受け取ってくれ、俺は其方の書物のみで良い。

 それじゃ此方の受け渡しをしよう、宿の中には出せるスペースが無いからな。

 騎士殿、20m四方が確保された広場なりに案内してくれ、1辺が12mほどあるからな、お願いする」


「了解しました、先行しますので此方へ」


 付いて行きながら俺たちの前でセレス達に会話してもらい、俺とカエラさんは後方で話し合う。


(カエラさん、ユリウスを信用するな、実力に差が有るから大丈夫だとは思うが人質にされかねない、一時的に身を隠すんだ)

(どう言う事ですかマグロさん)

(俺とアグニスが衝突して俺が全部投げた事になってるよな、ああなる様に一部仕込んだからな、それで確信した事がある)

(それで、その確信とは?)

(それは今は伏せておこう、だが、ストレイルがスタンピートで壊滅しそになった件に深く関わってる)

(例の魔族と結託してるのですか?)

(ははは、直接的な理由を話してはダメですね、ばれましたか、俺が龍化して王宮の側をワザと飛んだのは疑念があった為です、この行動で繋がってる事がはっきり分かりました)

(では、何処か第三国で落ち合いましょう、帝国はダメですねアグニス達が居ます、ストレイルの北方も聖王国へ行く者達が集結してるはず、リスタルでどうでしょう)

(うーん、距離を開ければ安全とも言えませんからね、彼らは飛べますから。

 それより灯台下暗しとも言います、近場の方が良いかもしれません)

(でしたら、一番発見されやすいサパンには逃げないだろうと、その発想の逆を突き、サパンに隠れましょう)

(では、この地で俺のPTに全員を入れて下さい、PT名は【討伐者】です、その後にテレポーターを複数跨いで冒険者ギルドに潜伏しておいてください、キャロルなら察してくれるでしょう)

(わかりました、どの程度の期間で来られる予定ですか?)

(今日、帝都に向かい、その足でライネルの決着も済ませます、早くて明日、遅くて明後日でしょうか、俺についてくれてるスラちゃんを2体渡しておきますので、脅威がせまれば排除してもらってください。

 一体はアルヴァールさんに戻しておいて下さい、彼女は強くなってませんから)

(お返ししたのに宜しいのですか?)

(返してもらう為と騎士に説明しましたからね、実際に引き上げる場面を見てもらっただけですよ、彼も監視が役目なので情報を上に上げるはずですから)


 後ろでコソコソ相談も済ませてスラちゃんとマジックバッグを預け、広場ではテレポーターの受け渡しも終わりその場で別れる。

 俺たちはライネルの西門から出立し、竜化した後エリュードの首都とへと飛び立った。


 そして、約2時間後に到着し、都市内部へと侵入し元王宮まで赴いた。

 うーん、衛兵らしきのは居るが、フルプレートを着た騎士らしき人影が皆無だな、遷都でもしたか?


「湯気ばかりで良く見えませんね、微かに水面が見える程度でしょうか」


「これは温泉になるかもしれないな、ある意味ここの名物が出来たかもしれない」


「温泉ってのは何なのにゃ?」


「自然に湧き出したお湯を利用して風呂にする事だよ、魔石で出すお湯と違って、色んな成分を含んでいてな、皮膚関係の病気に対する治療にも適する可能性が有るんだ」


「それでは当初の予定を変えて、完全に塞がず、利用可能な形状へ加工を?」


「そうだな、今は深すぎて利用不可能だから、石材を大量に投入して水面を上昇させ、人が入れる深さまで調整しよう」


 利用するのは地域住民だし、本当は排水設備も必要だが、その程度は利用者に設備投資させるのが良いだろ。


 【ストーンウォール】×百を外周に沿って移動しながらドボンドボンと大量に投入し、このままの大きさの石材のみだと隙間だらけで深みにはまりかねない。

 今度は石材を回収して角の無い玉砂利サイズで投入開始。

 結構な時間が掛かったが完成した、仕上げに範囲拡大した【クリーン】で汚水を浄化して最終的な完成だ。

 作業しながら簡単な昼食は済ませた、無詠唱は最高だな、手は必要なく口で詠唱すら必要ない為に食事が可能だ。


「完成しましたね、砕いた石を投入しても中々溜まりませんので心配しましたが」


「下の部分が荒くて隙間だらけだからな、その部分が埋まらないと見た目的には変化しないって寸法だ。

 それじゃ戻りに帝都に寄ってシャル、アグニス、ファサラを拘束するぞ。

 帝都に入る口実を作る為に放置してきた馬車を引き上げるか、あれは発注しても一ヶ月かかるからな。

 家だの土地だのは必要ないがあれだけは回収しよう。

 場合によっては後日調整に来て、何年か手伝う必要があるかもしれないな」


「資金は与えたのでありますが、手が足りない状態ですから、数年は手伝う必要があるかもしれませんね、その位ならば援助の範囲としては適切でしょうか?」


「ま、そこは後日話し合おう、それじゃシャルは主に俺とティアが、アグニスとファサラはセレスとシャロが、シェルは外野が手を出して来たら排除を頼むよ。

 これは同時に相対した場合だ、後は臨機応変にな」


「今度は腕がなるにゃ! これまでは差が有り過ぎて楽しめなかったのにゃ低いと言ってもLv千二百を超えてる者が相手は初なのにゃ」


 そして場所は変わり帝都の南門。


「お待ちください、マグロとその一味にはお帰り願う様に指示を受けております」


「ん? まぁ此方の要望さえ受けてくれるなら入らんでも構わんが、俺の屋敷が5棟、それと馬車があるだろ、その点はどうなった、返してほしいんだがな」


「アグニス様よりその点の説明する様言いつかっております。

 では、お言葉を伝えます、帝国運営の為、逃げ出したマグロ達の資産は我らが接収する、よって、この点を後日蒸し返されようとこれを断行する。

 以上です」


「なるほど、そちらの言葉は理解した、だが俺は納得していない、現帝国法に照らし合わせれば確実に窃盗だからな、その辺の解釈はどうなってるんだ?」


「皇帝の権限により接収するとの事です、それ以上の事は、我々は聞いておりません」


「セレス、これって、俺達が最初に敵対した皇帝の手法とまったく同じだよな、まぁ、命を狙ってないって点だけが違うが」


「マグロ様の言う通りです、自身の権限を使って力を振りかざして力ずくで奪い取る、マグロ様の行動理念では、要排除対象ですね」


「と言う事だ、俺は盗賊から自身の財産を奪い返す為に踏み込む、死にたくないならそこを退け、通すなら見逃してやる」


「マグロが反乱だ! 全軍を集結させろ!」


 【エアブラスト】でミンチにした。


「うし、俺の資産を盗んだ盗賊確定だ、これを支援し、邪魔する奴も同罪だ、取り返しに行くぞ!」


「やはりそうなりますか、ではマグロ様、住んでた屋敷に参りましょう」


 邪魔する奴は無詠唱の【エアブラスト】でミンチにしてずんずん突き進み、元我が家へ戻って来た。

 大した数じゃないな、居ても50人程度か、現在進行形で試験の真っ最中だろうし、当然だな。

 そこへシャルが現れた。


「マグロ、何用です、この地を私たちに託して出たのではありませんか」


「へえ、そっちが素のお前なんだな、土地と家は要らんから、馬無しの馬車を返してもらいに来たまでだ」


「返すつもりはない、お引き取り願う」


「流石ストレイルを潰そうとしてた魔族を保護してる連中だ、言う事が違うな」


「何の事だマグロ、適当な事を言うな!」


「そう言えばお前には嘘を言ってたな、この場で訂正しておくよ、俺の空間把握は個人の特定も可能でな、お前の事も監視してたんだぞ。

 わざとお前には単独行動がしやすい様にお使いを頼んでたからな。

 ブロッケンを捕まえた後に、お前がちょくちょく出向いて会ってた事は知ってるからな。

 そうそう、俺の屋敷をあの地にしたのは失敗だな、あの距離なら結界なぞ貫通して調べる事は容易だぞ」


「ブロッケンではない! ブロッサス様だ! それに嘘ばかり並べたとして誰も信じぬわ!」


「マグロ様の言葉に引っかかるなんて、本当に救いようのない馬鹿ですね、ボロが出ていますよ」


「おい、シャル、下手な事言うとお前でも命を落とすぞ、お前も一応、殺すリストに入ってるからな。

 お前がユリウスとブロッケンを交えて3Fで会ってたのを知ってるんだぞ。

 なぜ犯罪者が3Fでのうのうとユリウスと会ってるんだろうな?」


「くくくっ、あはははは! 死ねマグロ!」


 槍を振りかざし、突貫してくるシャルの手足に向けて無詠唱で魔法を撃ち込む【ノヴァバレット】×四


「どうした? 接近位したらどうだ? それじゃ俺に一発当てる事すら無理だな」


「グフっ、き、貴様ー」


「いじめは良くないにゃ、ティアに任せるにゃ!」


 まともに手足の動かないフラフラのシャルに一気に接近しながら、槍で応戦されるもメテオブレイカーで槍を跳ね上げ、横振りの一撃を与えて吹き飛ばす。

 かなりの速度で吹き飛ぶシャルを追い越し、大上段に構えた所に吹き飛んで来るシャルごと地面に亀裂を生じさせる一撃を放つ。

 この一撃で気絶したのだろう、ピクリとも動かない。

 ティアに担がれて来たシャルの衣服も含めて装備品と持ち物をすべて回収した。

 あちこち骨折してるな、生きてる様だからとりあえず動けない様に処置するか。


「ティアよくやった、死なない程度に回復してくれ、骨折は直さなくて良い、それと、手足の腱を切断しておけ、暴れられては面倒だ」


 普通の短剣では切断は不可能とみて、シャロがストームブレイクダガーで切断し、繋げない様にティアが止血してるとアグニスとファサラが来た。


『シャル! どうした! ・・・・貴様、マグロ! シャルをどうした!』


『私の娘をどうしたんですか!』


「ん? お前ら、ストレイルを潰そうとしたブロッケンを保護してるだろ、その先導してる連中を遣りに来たのさ、これで意味が分かるだろ?」


『ブロッサス様だ! 貴様! シャルを、俺の娘を殺したな!』


「その言葉で十分だ、親子そろって馬鹿ばかりだな、ストレイルの人々の殲滅を図った実行犯に対して、様を付けて呼ぶとはな、俺も一味ですって看板背負ってるようなもんだぞ」


『そんな事はどうでも良い! 敵は取らせてもらうぞ!』


 一気に龍化してブレスの態勢にアグニス夫婦は行動をとる。

 それは隙だらけだって、口に魔法を撃ち込んで下さいと言ってる様なもんだぞ、だけどそれはしない、即死するだろうからな。


 アグニスにはティアが下からメテオブレイカーで顎を跳ね上げ、ファサラは俺が新作のハルバードで同じく顎を跳ね上げる。

 

『グフォッ』


「唯でさえ弱いのに、体がでかくて良い的だな、人化しないとそのままボコボコにするぞ!」


 死なない様に手足とシッポを斬り飛ばして収納すると人化した。

 両手両足が無い状態だな、一応止血して装備品を剥ぎ取り、ファサラの方は服も剥ぎ取った。


「セル! 見てただろ、出て来い!」


「流石マグロ様、私のスキルでも隠れきれませんか」


「お前にも嫌疑があるぞ、ただ、お前を監視してる限りでは、此奴らとの接触は無さそうだったが、如何だろうな、俺が居る間は屋敷から一歩も出ないと決めてたのかもしれんしな」


「確かに陛下より命じられ、マグロ様の執事として接していた身、情報を流してたと疑われるのも致し方ないと思いますが、その様な事はしておりません」


「その確認は無理だな、でだ、此奴らが魔族と共謀してたのは知ってたか?」


「知っていましたとも、そもそも陛下と魔族の繋がりを知った際にその点を陛下へと申し上げ、お止したのですが私の言葉は届かず。

 それまでの功績ゆえに命を長らえ、陛下に監視されていたのです」


「まぁ、辻褄は当てるな、それはシャルか?」


「いいえ、シャルはマグロ様専属です、私を監視していたのはカロライナです、彼女の立場ならばどこに向かっても不振がられない、との付けられた肩書でした」


「他のメイドとして雇われた者や、その家族は如何なんだ?」


「其方は通常の雇われた者達です、当初、彼女達の待遇の悪さから、マグロ様への不満を累積させ、マグロ様への忠誠心を下げる事で情報を入手しやすくする手筈でしたが。

 マグロ様がお気づきになり、改善させた事でこの点が潰えました」


「ライネルの騎士達はどうなんだ? 牢番してるのは皆この事をしってる事だろうが、他の者はどうなんだ?」


「城に常駐してる者達は知ってるはずです、竜騎士達はどうでしょう、トップがアグニスであった為、少しずつ引き込まれてるかもしれません」


「うーん、俺の判断だけでは見誤りそうだな、どう思う?」


「辻褄は合ってると思います、しかし、本当かどうかの確信は持てません、幸い三名を確保出来ましたので、この者達から言を取ってはどうでしょう?」


「それじゃこうしよう、セルの話が本当だとの前提で、事を進める。

 カロライナは要排除だとして元メイド達はそのまま放置、ライネルの方は強襲してユリウスとブロッサスの身柄を確保すれば完了するからな。

 セル、ライネルのトップにならないか? 良識ある人材が就かないとライネルもここ同様に破綻するぞ。

 後は聞き出してセルが黒だった場合だが、分かってるよな?」


「確かに、この事を知ってる者がトップになり、収めませんとマグロ様の立ち位置が悪くなりますか。

 黒だった場合は当然のご処置と言えましょう」


「いや、俺の事は気にしないで良いぞ、セル自身とライネルの事を考えて行動してくれれば良い」


「私もライネルの事を思い進言しましたがこのありさま、私でマグロ様の力になれましょうか」


「なれるさ、その気概があればな、城は戦闘で少々痛むだろうけど、俺の元邸宅は無傷で残るから、そちらを城代わりに使っても良いし、その間に修繕すれば良いからな。

 建てる事はしないが資金は任せてくれ、白金貨十万でも二十万でも用意するさ」


「では参りましょう、終止符を討ちに」


「待った、龍族ってライネルにあと何名居る?」


「ここに居る者とユリウスを除けばアグニスの長男である、クリニスのみです」


「そいつも要排除かもしれないな、顔を知らないから捕獲は任せるかもしれない、考えておいてくれ。

 先にこの地のカロライナを遣るか、どうするかな、人質とかライネルへ知らせを送られても面倒だからな」


「そう思うなら排除してしまいましょう」


「そうだな、カロライナも動けない様にして確保するとして、ライネルでは全部確保したら鑑定持ちをギルドに来てもらう様に依頼して確実に繋がりがある事の証明とするかな」


「決まったのなら、さっさと行くにゃ」


「シェルにシャロ、この3人を見張っておいてくれ、無詠唱で魔法発動が可能な事を念頭に入れておいてくれよ」

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