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47:新たな敵

「それじゃ受け渡し前に報告をよろしく」


「クエスト発注して全員で250名、皇帝だった奴の屋敷には60名で後は30台後半から40台前半の人数で対応した、あの時点では勝敗が決定してなくてな、各チームはその所在地の冒険者ギルドで待機。

 マグロが帝位に就くと宣言してからだが、マグロの発注扱いへ移行して5チームへ作戦開始が言い渡された。

 先方は負けた事など知らないからな、当然戦闘になり取り押さえが難しい者は殺して、その他の戦闘要員は拘束、メイドや執事などの非戦闘員は拘束せずに、各自の家へ帰した。

 あの手の屋敷は隠し部屋や逃走経路も存在するから徹底的に調査させて、書類と金品は押収して、家具や生活用品に服などはそのまま放置だ。

 そして、帝都内の屋敷だが、此方もそのチームごとに行ってもらい、退去させて此方も調査済みだ。

 それで、今現在はその書類の精査中だ、不正があった場合は、当人は居ないからな、それに加担した者達を、マグロの名前で捕まえる手はずになってる」


「さすがだな、俺がぬけてたせいで後手に回ったと思い、さっき慌てた所だよ。

 手筈って事は、何かしら不正をしてると睨んでるのか?」


「そうだ、中枢部があれだけ腐ってたんだ、周りが腐ってても可笑しくないからな」


「一つ、報告が抜けてるな、5名の血縁者はどうした?」


「現在拘束してる、場所はそれぞれの冒険者ギルドの地下牢だ」


「ならこちらへ引渡せ、俺が処刑する」


「マグロ、帝国内の貴族達を生かすと約束しただろ、血縁者と言えど処刑はやりすぎだぞ」


「は? 確かに約束したな、だけどさ、やらかした本人の血縁者を助けるとは言って無いぞ。

 今までの帝国は、そんな甘い対応をしてたのか? 俺達なんて罪を捏造されて殺されかけたんだけどな。

 ついでに言っておくぞ、今回は俺は引かない、庇いだてするなら、罪人を擁護し、匿ったとしてお前でも殺す、さあ選べ」


「落ち着けマグロ、やらかした5人はすでに死んでるんだ、家族まで手に懸ける必要は無いだろう」


 過去の歴史を見れば、罪を犯せば一族郎党皆殺しも普通にあったようだが、この地では違うのかね?

 違っていれば、俺の考えを改める必要があるから、要確認だな。


「そうか、此方では戦犯犯したした者達の家族は無事なのか? 俺の感覚では戦争に加担すれば一族郎党皆殺しが普通だと思っていたよ。

 実際は何方が適用されてる?」


「・・・圧倒的に、後者だな」


「そうか、俺の判断が間違っていて、生かすのが普通ならそれに従おうとも思ったが、それなら止める理由は無いな」


「圧倒的にと言った、生かす道も少なからず例があるんだ、それに習ってくれないかマグロ」


「ふむ、俺は引かないと言っただろ、それじゃガイエン、死んでもらおうか」

 

 ガイエンの腕を掴み部屋の外へ引きずり出す、抵抗するが無駄だ、ついでに受付嬢に言い渡す。

 ツガットは俺の行動を見て即座に出て行った。


「この者は前皇帝の血縁者を匿った罪で今から公開処刑する、明日朝までに取りまきを含めた5家の家族をこの冒険者ギルドの地下牢に移せ」


「早まるなマグロ! 家族に罪は無い! 生かすべきだ!」


「と言う事で、庇っている、そんな訳なので即刻通知しろ」


「そ、そんな! ガイエン様、マグロ様の言う事を聞いて下さい、今なら間に合います!

 戦争の敗者、それも皇帝の家族です、死んで当然では無いですか!」


「中央広場で公開処刑するから、さっき言った事を実行してくれよ」


 ズルズルと引きずり中央広場に連れて行き、罪状を今から公表する、と言う段になって嫁達が駆けつけて来た。


「マグロ、どうしたのにゃ? こんな突然に」


「そうですよ、理由は分かりませんが、処刑しては冒険者ギルドとの確執が一層深まります」


「シェル、確執とか言う前に、理由が分からないのならそちらを聞くべきだろうに、違うか?」


「確かにそうです、お伺いしても?」


「俺の言い分のみを聞いては見誤るだろうな、中立的な立場のツガットが話す方が相応しいだろ、居るんだろ、何があったか説明しろ」


 屋台目当てに来ていた人たちにも説明すべきだろう、丁度良いから聞かせて判断を聞くのも手か。


「わかった、双方の言い分を話そう」


 家族がどうなってるか俺が聞いた下りから詳細に話してくれた。

 戦争としての対応ならばマグロの対応が一般的だとの自身の考えを含めてだった。


「そう言う事だ、罪人の処刑に反対したばかりか、匿って引き渡すのさえ拒んでいる、よって処刑する、以上だ」


 足をめり込ませながら発現しろ【アイアンウォール】 これで逃げられない状態に固定化した。


「マグロさん、お待ち下さい、見逃した前例もあります、命を助け、寛容さをアピールされては如何ですか、その方が冒険者ギルドとの繋がりも深まります」


 シェルまで処刑に反対か、強行するのは簡単だがどうするか、賛成反対の決をとりそれに習うのも手だが。

 生かして放逐すれば後に災いとして発露しそうだんだよな。

 仕方ないか。


「ふぅ、シェルの意見を取り上げて対処する、とはいかないが、決を取る、この結果で俺は動く事にする。

 前皇帝の家族、そしてその取り巻きの家族を生かした方が良いと思う奴は手をあげろ!」


 約半分か、これじゃ判断が下せないな。


「同数に見えるな、嫁達も奇麗に別れてるし、どうやって判断しろと・・・

 ツガット、これまで帝国内での犯罪を裁いてきた経験はあるか?」


「あると言えばあるな、だが、確定してる者達ばかりだぞ、今回の事を帝国の法に照らせと言われても俺には無理だぞ」


「今回の場合は帝国法でも、その内の軍法に当たると思うんだが、その点はどうだ?」


 軍法ってあるんだよな? 断言しておいて無いとか言われたらショックだぞ。


「マグロの言う通り、戦争に起因してるから軍法だな」


「ツガット、軍法に詳しい者を引っ張って来い、そいつに判断してもらう、無理なら今処刑する」


「一人を連れて来ては荷が重いだろう、5名程度を連れて来る必要がある、今から連れ出すにしても時間が掛かる、今日は牢にでも放り込み明日に回したらどうだ?」


「うーん、俺の予定が詰まってるんだよな、それじゃこうしよう、5名以上で奇数の人数にお願いして軍法に掛けてもらう。

 その成否のみ後で良いから俺に伝えてくれ。

 無罪ならそのまま釈放、処刑なら家族ともども引きずり出して俺が処刑する。

 言っておくが、これ以上の譲歩は無理だぞ、それでも押し通すつもりなら、嫁であろうとただでは済ませない」


「マグロさん、ありがとうございます、法による裁きであれば何も申しません」


「マグロ、本当に無罪なら放逐するのかにゃ、徒党を組まれて発起されれば、それ以上に死人が出るにゃ、今の内に決着をつけるべきにゃ」


「わかってるさティア、表面ばかり見て、最悪のケースを考えてないのが居るって事だ、だが、ここで俺が刑を執行するならシェルも首を刎ねる対象だ。

 この場は角が立たない様に穏便に済ませようと思って法に掛けると言った。

 だけどシェル、覚悟しておけよ、無罪放免になり、徒党を組んで発起された時は、たとえお前でも殺す。

 ツガット、すまないが帝都のギルドマスターの職に代理を立てておいてくれ、代金も支払わなきゃならんのにこの様だ。

 笑い話にもらんな」


「宿で俺が受け取っておこう、代理として処理しておく」


「お願いするよ、しかし課題山積なのに、無駄に足引っ張りやがって、イライラするな。

 報酬の支払いに関しても話す必要があったのに台無しときてる」

 

「マグロ、それでしたら代理の者が決まった際にでも私が対応しておきます」


「手間だろうけどお願いするよセレス」


 水魔法の水流操作にミスリル粉末を混ぜで鉄を切断し、ガイエンを解放した後地下牢へ放り込む。

 そして暁の宿でツガットに支払うべき白金貨と金貨をを渡して就寝した。

 翌日、朝食を済ませて直ぐにテレポーターで我が家へ移動した。

 そしてエントランスで合流だ。


「マグロさん、お早うございます」


「おはよう、カエラさんも呼び捨てで良いんだぞ、それと、今回の件はすまないな、帝位に就く事で交易の件もこの家の事も手放す必要がありそうだ。

 アルヴァールもすまないな」


「謝罪は不要ですよ、責任をとり、お受けされたのでしょう。

 それに、あの時点でマグロさんが見放していれば、軽蔑してました。

 良く受けて頂けた、と、思ってますよ、離れたとはいえ、母国が衰退するのを見るのは忍びないです」


「そう言ってもらえると有りがたいな、この家は手放す事になるが、あちらに5棟確保できた。

 住む場所には困らないはずだよ」


「昨日その話をシャルさんから聞きまして、メイド役をされてた他の奥様方は現在、ご両親の元へ説得に行かれてます。

 残った私たちは交易の件と屋敷の件を話し合い、ユリウス陛下に後の事を引き継いで頂く事で一致しました。

 説得に行かれた方も含めて帝都に行く事を了承されてますよ。

 5棟の件もツガットさん経由で、昨夜にうちに聞いてます」


「俺がふがいないばかりに迷惑をかけてしまったな、俺が説明すべき事なのに押し付ける形になってしまったか」


「主人の手の届かない場所を補佐するのは当然ですよ、帝国内の調整で手一杯なのは知ってますからお気になさらず。

 陛下をお待たせする訳には参りませんから、参りましょう」


「助けられてばかりだな、戦闘面でも生活の面でも、皆と出会えてよかったと本気で思ってるよ」


「そのお言葉、皆さんに聞かせておきますよ、さあ、参りましょう」


 カエラと二人で向かうのは初めてだな、何度も来てるが新鮮だ。


「良くぞ来て下さった、マグロ殿にカエラ夫人、詰める必要があるので来ていただいた事感謝する」


「マグロ殿は止めて下さい、まだ戴冠式も済んでませんし、友人なのでしょう、口調を戻しましょうユリウス殿。

 陛下とお呼びするのがしっくり来るんです、以前のままで進めませんか?」


「ここで友人を持ち出すか、では、マグロと呼ばせてもらうぞ、俺の事は陛下ではまずい、ユリウスと呼んでくれ、帝国が下に見られるぞ」


「そうですね、国のトップとは面倒なものです、一般人であればどれほど心安らぐか」


「伯爵になる際も渋ってたものな、心中さっするぞ。

 では、交易路とマグロの家の件だな」


「ユリウス陛下、それは私から話させて頂きます。

 他の方々との話し合いでユリウス陛下に後を引き継いで頂くと全会一致致しました。

 それと合わせまして、ライネルの店舗1棟とセクタルの所有物件2棟も含めましてお引き取り頂きたいのですが」


「承知した、皇帝の所有地が他国に有れば問題になるものな、相応しい者に任せる事としよう。

 正式な引き渡しは移住が完了した後、対価と引き換えで行えば良いかな」


「捕捉しますが、通常のテレポーターが8つ、内訳は移動型が3つで、現在はセクタルのカサンドラさんの邸宅に一つ、カスタルの商家に一つ、帝都の宿に一つです、固定型はセクタルの拠点に一つ、帝都内のサパンにあるカエラの個人宅に1つ、後は3つ魔石の状態です。

 そしてテレポート用が2つ、これは片方の魔石を持ち歩き、距離は確認出来てませんが何処からでも帰還が可能です。

 それと、屋敷裏に馬車も移動可能な大型テレポーターが2つ、うち一つはカスタルの元領主の屋敷敷地内に建築中です、もう一つは魔法陣化して今も持ち歩いてます。

 それと敷地内に交易用倉庫として、穀物用倉庫、冷蔵倉庫、冷凍倉庫を各一棟ずつ建築中です」


「ほう、そこまで構築していたか、マグロが帝位に就かなければ確実に成功していただろうな、それに、食料の値段が少しは安くなってたであろうに、この地に住む者には朗報だな」


「最終的に出立する際には移動型も含めてすべてこの地に置いて行き、所有してる馬車にて帰還予定です。

 テレポーターが屋敷に集中してますので、ユリウス殿が直接管理する事が一番の安全対策かと」

 

「そうするとしよう、そちの心遣い感謝するぞマグロ、それにカエラ夫人、この地が第二の故郷と思い、何時でも遊びに来てくれ、歓迎するぞ」


「窮地に陥ってた際に手を差し伸べて頂いたご厚意にはとても及びません、此方こそ感謝しておりますよユリウス殿」


「うむ、話を変えるが国家間の取り決めも必要となってくる、その辺りは帝国内が落ち着いてからが良かろう、マグロの手が空かないであろうしな」


「何分、腐敗が激しく、信用に足る者がごく少数のみ、後始末も含めてする事が多く、手が足りないと言うのが本音です」


「先ずは交易税のみ決めておけば他は後程でかまうまい」


「そうですね、輸出には5%とお聞きしてます、此方も輸出のみに5%でどうでしょう?」


「ほう、此方へ配慮してくれるか、それは有りがたいな、では双方の輸出のみに5%としよう。

 最終日までには準備しておく。

 それと一つ伝えておくぞ、アグニスが帝国へ赴く事を決意した、準備も済ませ、今はマグロの屋敷に居る事だろう、ファサラ殿も同行するゆえ、かの地で龍語魔法を教わってくれ。

 甥の長男はこの地に残りアグニスの後を継いで団長に就任する事が決まった」


「義父さんが決意されたのは嬉しいのですが、家族を分断させてしまう結果になりましたか・・・・」


「龍族の寿命は長いのでな、そう悲観する事は無いぞ、通常ならとうの昔に独り立ちしてる歳だからな。

 余り長引くとアグニスがここに来かねないからな、これまでとしよう」


「もう一点だけ話しておくべきことがありますので少しお時間を」


「良いぞ、それで話とは?」


「聖王国グランドへの対処です、帝国内に神殿が在るようですが、かの地より派遣された者達を国元に強制退去させ、かの国へ国交断絶、もしくは宣戦布告します」


「ほう、思い切った対策に乗り出すのだな、かの国のトップから二番目の地位にある者が命令してたとは言え、教皇の関与に関する疑いもあるからな」


「それで、ライネルとストレイルの合同チームがあちらでの活動が終わらなければ、帝国としては踏み切れません、その辺りはどうでしょう」


「向かう前から突きつけて構わんぞ、帝国がいち早く察知して即対応を決めた事が公になり、此方から出立する者達へ攻撃すれば、余計に疑われる事態になるからな」


「なるほど、抑止力になるかもしれませんね、時期を見てその様に対処します」


「帝国へ行ってもマグロに救われるか、マグロへは感謝しかないな」

 

 我が家へ戻るとエントランスに嫁達含めて屋敷の者全員と、更には親御さん達にアグニスさんとファサラさんの姿があった。


「ようやく我が主のご帰還か、待ちわびたぞ」


「義父さん、お久しぶりです、と言うほどではありませんが、ご決断くださりありがとうございます」


「なぁに、娘婿の門出に付いて行って安定するまで手を貸すと二人で話し合ったまでよ」


「ええ、久しぶりに腕がなりますわね、3人で冒険してた頃を思い出します」


「ありがとうございます、軍部が壊滅してるのでお二人のお力をお貸しください」


「いかんぞ、皇帝がその態度ではな、威厳をもって振る舞え、最初は難しいだろうからな、俺達で練習してると思って振る舞うんだ、だが、単に威張り散らすのとは訳が違うからな、その辺を履き違えるなよ」


「間違った態度であればご指摘お願するよ、では、アグニスには軍部統括を任せる、ファサラは何が得意なんだ?」


「まだまだだな要精進と言ったところか、戦闘面での技術や魔法の練度はシャルの上位と思ってくれればいい、人に教える分野では、俺より優秀だ、教官にはもってこいだろう」


「なるほど、ではファサラには俺の龍語魔法の師匠に、それと軍部ではアグニスの副官として補佐と教育面を主として活動してもらう」


「そういえば陛下よりお願いされてましたね、落ち着いた頃にでも第一段階を始めましょうね」


「よろしくお願いします、先ず細かに決める前に話しておかなければならない。

 俺の決断で帝国皇帝の座に就く事になった、突然の事で戸惑ってるだろう。

 この点は俺が全面的に悪い事は承知してる、申し訳ない。

 だが、ここで投げ出すわけにはいかない、お願いだ、帝都で一緒に生活して支えてほしい。

 安定するまで忙しい日々が続くと予想できる、俺には皆の力が必要だ、ついて来てくれ」


「その件だが、皆が皆話し出しては収集がつかないからな、俺が代表して伝える事になっている。

 では伝えるぞ。

 帝国を立て直す為に立ち上がっ事を誇りに思う、我らが全面的に協力し、後ろで支えるとここに誓う。

 短い決意表明だが、すべての思いを込めたつもりだ、受け取ってくれ。

 それと我が娘以外のお嬢さん方が親御さんを説得してくれてな、全員赴く事になったぞ」


「この言葉を不適切だと指摘しないで下さいね。

 皆と出会えた事、神に感謝したい気持ちだ、これからもよろしくお願いします!」


「はいはい、マグロは泣き虫さんだにゃ、ティアも感謝してるにゃ!」


「戦闘方面の指示を出してる際は決断力があって頼もしく感じますが、こういう一面を拝見すると支えなきゃって思いますわね」


「それで、俺たち二人が先行して帝都へ向かう、住む場所はあるか? 無ければ宿でも借りるが」


「相手から奪った屋敷が5軒あるからその一つを使ってくれ、俺も位置を知らないから別の者に案内させる。

 その内の1軒は俺の家族で使うから一番大きいのを確保するつもりだ、30人以上の大所帯だからな。

 そういう訳で、後3組なら先行させても問題ないんだが、領地に関しては今現在も以前の領主が領主館に住んでる為に案内は不可能だ」


「首だ、即出て行け、は無理だからな、当分の余裕は与えるべきだな、それに合わせて案内すれば良かろう。

 それと、その3軒は俺に貸してくれ、最低限の家財道具を準備した上で、持ち回り的に実際に住んでもらうのも手だろ、生活習慣が違うだろうからな」


「それは良いですね、考えが至りませんでした」


「次の件だ、騎士を募集して、訓練場所や装備品、宿泊施設はどうなってる?」


「訓練場所や宿泊施設はまだ未確認だ。

 装備品は倒した者達から剥ぎ取ってる、変形してる品もある為、全ては使えないが10万セット以上はあると思う、基本的に防具はフルプレート装備で、武器は鋼鉄製片手剣とカイトシールドがセット、他には長槍やロングボウ、魔法使い用の杖は僅かで1000本までは無いな」


「それだけの数があれば体に合うのも有るだろ、無ければ発注すれば良いしな、とりあえず全部渡してくれ」


「かなり多いですが大丈夫ですか?」


「国宝クラスのマジックバッグを持参してるから入るさ」


「では、此方に向けて開けて下さい、直接入れ込みますから」


 向けられたバックに向かって、自動解体で表面の汚れや焼き付いた血や肉を剥がし終わったのを順次流し込むように入れる。


「以上だ、確認を」


 剣を一振り出して確かめている。


「あまり良い品とは言えんな、ライネルで配給されてる品に比べ、一段は下だな。

 ま、使用には耐えるだろ」


「万単位となれば質より量になりがちでしょうからね」


「口調がバラバラだな、まあ慣れるまでの辛抱か」


「辞めませんかこれ、どうもしっくりこない処か、話し難いですよ」


「不器用な面がありますからね、マグロは、そこがかわいらしい所でもあるんですけどね」


「はぁ、好きにしろ、ぶっつけ本番に賭けるしかないな」


「・・・話を変えるが、セルにヨハンナ達は如何する? 残るなら責任とるつもりがあるから、これから死ぬまで遊んで暮らせる金額を支払うぞ」


 この時マグロは忘れていた、老化しなくなった事を、どれだけ支払うつもりだったのやら。


「付いて行きますぞマグロ様、昨日話を聞いてから男のみで話し合い、結論は出ている」


「そうか、有りがたい事だな。

 うーん、最終日に馬車で移動してもらう事も検討してたが、早めに来てもらおうかな、あちらに大型テレポーターを設置すれば一気に移動可能だしな。

 5軒の屋敷への移動を歩きでは時間が掛かるなと思ってたところだし」


「それでしたら本日中に向かいましょう」


「ちょっと待てマグロ、あちらでの活動資金をくれ、早めに渡してくれないと自腹になるからな」


「そうでした、各家庭それぞれに白金貨一袋を渡しておきますので、税収が上がるまでの繋ぎにして下さい、足りなければ言ってください、追加でお渡しします。

 捕捉ですが、商業ギルドと冒険者ギルドより一名ずつ引き抜く事にしてます、補佐に附いて頂きますので、分からない事があれば彼らに聞いて下さい。

 それと同じく、治めて頂く都市に関してですが、地理に詳しい者を連れて来ますので、その者主動で決めていくことになります、こちらも改めてお知らせしますのでお待ちください。

 以上ですが、大型テレポーターを設置した後、迎えに来ますからアグニスさんとファサラさんは馬車でお待ちを」


 各家庭に一袋ずつ資金を渡し、俺とPTメンバーはテレポーターで移動。

 外で通行の邪魔にならない様に向きを考えて設置した後、迎えに行き、馬車ごと帝都に迎えた。


 だがこの時点でトラブルが発生していた。

 それは到着早々にカラミティに呼び止められたのだが、何分、待たせている為に報告を少しの間待ってもらっていた。


「あの馬車は素晴らしいな、あれなら皇帝が乗っても遜色がない。

 この街並み、ライネルとは随分建物も雰囲気も違うものだ、此方は木材建築が中心なのだな、冒険してた頃が懐かしい」


「お父様、この地で金銭面の責任者へと役職を受けた者から緊急の報告があると言ってますの、帝都の観光や屋敷の案内はこの者からの報告を受けた後にして下さいませ」


「そうであったか、では、どちらで報告を行うのだ?」


「では、ヨハンナ、馬車をこの宿に預けてから中へ来てくれ。

 では、この宿の中で話しましょう」


 現在、すべての客がチェックアウトをしており、全室俺が借りてる状態だ。

 部屋で話すのも面倒なので、食堂で話す事になった。


「彼はカラミティ、この地の元商業ギルドマスターの副官で、現在は帝都の資金面での責任者です。

 そして此方が、俺の義父でシャルの実父であるアグニス=ヴァンティユ、就いてもらう役職は帝国の軍部のトップ。

 そして、隣の女性はアグニスさんの奥さんで、ファサラ=ヴァンティユさん、役職は軍部の副官をお願いしてる、そして、魔法面での俺の師匠になる女性だ」


 挨拶も互いに軽く済ませ、本題に入る。


「敵対国家であったエリュード王国の騎士たちが越境し、此方に向かってるとの事です。

 砦があるのですが、騎士たちが不在の為に占領され、更に、一番近い都市、サラヴァスへ向かってるとの事。

 手を打たねば町にも民への被害も懸念されます」


「規模と到着予定時刻は分かるか?」


「砦に在留してる者の数は不明、移動中の部隊は約3000、すでにかなりの距離に接近され、何事もなければ後4時間ほどで、町の門へ到達するかと」


「そうか、その町までの移動手段はテレポーターで繋がってるよな?」


「現在、民の退避に使用していますが、向かう場合は此方を優先させる手筈となっております」


「可能なら相手の目的も把握したい所だな、帝都まで落とすつもりなら、此方も首都まで潰しに行って問題ないだろうしな」


「いえマグロ、すでに越境されてるので戦争状態です、攻め込むのに大義名分など必要ありません」


「うーん、帝国も平定の真っただ中だしな、かの国を落としても手が回らんし、どうするかねぇ」


「それなら国境外まで押し返し、可能ならその部隊を全滅させておけば良いだろ、そこまで打撃を加えれば、早々と再度の攻撃には移れんだろうからな。

 到着早々に戦闘勃発とは、来た甲斐があったな、ではマグロ、案内しろ。

 久しぶりの実戦だからな、マグロ達は見学な、俺とファサラでケリをつけるぞ」


「何だか、マグロが増えた感じですわね」


「全く同じ感じですね、荒いですがあっさりと戦闘方面の指揮も済ませてしまいましたし」


(シャル、この場で俺が別のと言うか、俺が出るから見学しろって言ったらどうなる?)

(敵を倒す競争になりますわね、敵が哀れですわ、単なる的だなんて)

(そうか、それならお任せしよう、どんな戦い方をするのか興味があるしな)

(いえ、参考にはなりませんわよきっと)


「おいマグロ、さっさと行くぞ、案内しろ」


「待って下さい、ここから西へは行った事が無いんです。

 カラミティ、案内よろしく!」


 こうして、二人しか戦闘に参加しないと決まったが、二人と俺のPTに案内人のカラミティで向かった。

 テレポーターを複数跨いでサラヴァスへ到着すると、テレポーターの利用者が長蛇の列を作り。

 馬車で他の町へ向かう者達でごった返していた。


「カラミティ、西門から街道沿いを西に向かえば奴らと当たるか?」


「当たります、1本道ですので迷う事はないかと」


「それじゃ、作戦開始といきますか」


「何を言ってるんだマグロ、お前の出番は無いぞ、それじゃファサラ、例の対応で速攻と行くぞ」


「分かってますよアグニス、久々ですね、アグニスを乗せるのも、それでは行ってきますね」


「乗せるってアグニスさんを? 普通は逆じゃ?」


「見てればわかりますわよ」


 ファサラさんが龍化しブレイズドラゴンの上位種、フレアドラゴン化する、例の俺たちが倒したブレイズドラゴンなど足元にも及ばない程にデカイ、優に120mは超えている。

 アグニスさんが龍に乗り、俺が結納品として納めた聖銀とオリハルコン製の突撃槍を構えて飛び出した。

 そこからはあっという間に小さくなっていき、此処まで爆音が聞こえてくる。

 上空から一方的に攻撃してるんだろうなぁ、それに槍の長さが5,5mって短過ぎね? 100mは必要だろと思いつつ待つのだった、暇なんだよな単に待つのって。

 以前よりかなり大きさが増してるとシャルから教わり、待つ事30分程度、離れるのが早いなら戻るのも早い。

 小さい点にしか見えなかったが1分も経たずに着地して人化する。


「久しぶりに堪能したぞ! ファサラとこうして行動するのも何十年振りかね、実に楽しい時間だった!」


「ファサラさんが龍化出来る事は知ってましたが、実際に見るとすごい迫力でしたね、それとアグニスさん。

 その槍、短すぎないですか?」


「そうだな、普通の竜種であれば丁度良いサイズなんだが、100mほどの槍が欲しい所だな」


「作れませんよそんなサイズ」


「今回は最大での龍化でしたが、小さくも可能です、さすがにその長さの槍は不要ですよ」


「大きさの調整が可能なんですか?」


「そこは龍語魔法の熟練度次第と言ったところですね」


「なるほど、下手だと大きさが一定にしか龍化出来ないんですね、それで、砦は吹き飛びましたか?」


「きちんと威力は調整したぞ、全員が蒸し焼きだ、こんがりとな」


「ある意味ジワジワ焼き殺しですね、俺なら一瞬で灰になる方が痛みも無く其方が良いですね」

 

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