46:調整
昼までまったり過ごして、昼食後に戻って来たシャルから伝言を伝えられた。
「先ずは対等な同盟関係の構築ですわね、これから伝えるのは案ですわ。
内容ですが、軍事面では互いに脅威が発生した場合、騎士などを派遣して互いに協力し合うと言うものですわ。
ですが、加害者であった場合はこの限りではなく、被害者の立場であったら、協力するとの補助的な一文が加わりますわね。
経済面ですが、マグロが皇帝なら支援は不要だろうとの事で、幅を持たせて決める事で柔軟に対応でどうだ、との事ですわ。
次に交易面ですわ、輸出ですが、木材や鉱石類のインゴットは販売時点で5%の関税を掛けるとの事、輸入する品に対しては掛けないとの事ですわ。
次に人の出入りですわ、これまでの通り、入る際のみ身分証の提示のみですわ、輸入品に関してもこの時点で確認するとの事ですわ。
特例として、マグロの家族とその親戚はフリーパスで良い、との事ですわ」
保管すべきことが多数あるが、中でも経済面って、国で貸し借りなど聞いた事無いな、貸し付けて、高額の利子吹っかける算段でもあったのかね?
「この場では返答しかねるが、人の出入りに関しては此方も同じ対応で良さそうだな。
後は協議の上返答する事にしよう、まぁ、官僚と言える人材が財務のみだしな」
「マグロそのものの立場ですが、伯爵の地位は剥奪、対等な立場となるので、隣国の親しい友人の位置でどうだ? だそうですわ」
「了解した、一つ聞きたいんだが、この家はどうなるんだ? テレポーターやらテレポートとか結界魔法陣とか施して、他の人には譲れない状態になってるんだが。
それに、あの倉庫だろ、交易路も中途半端とは言え構築してるし、俺の嫁がライネルで活動するのも変な気がするんだよな」
「フリーパスと言っても家に直接転移されては困るからな、一番頭が痛い問題だ、とおっしゃっていましたわね。
対価を支払い、此方で後は受けても構わんが、今まで労力を考えるとそうも言っておれないからな、主動してた者を交えて話す必要がある、との事でした」
「それが一番だろうな、これも早急に対話が必要な案件か」
「次ですが、領主関連ですわね、場所も決まらずに全員で赴く訳にはいかず、この屋敷にグランゲイルの地理に明るい者を呼び、代表者を交えて統治場所の選定をお願いする、との事でしたわ」
「彼方は話し合う場所すらないからその方が良いな、その話は受ける事にしよう、それに、引っ越し作業もこちらで手伝う必要があるからな、その辺は全面的に協力すると伝えてもらえるか。
それと、今までの領主に一ヶ月以内の退去命令を出してるので少しずれ込む可能性が有る事を忘れず伝えてくれ」
「ええ、わかりましたわ、とりあえずこれだけですね」
「それで、会談の都合はつけて来たか?」
「明日の朝でどうだ? との事でしたわ」
「了解した、それじゃ俺は一度帝都に戻るよ、城じゃなかった、皇宮の建設も早急に手を打ちたいからな」
俺は城城言ってたが正式名称は皇宮なんだろうな、俺が城と言っては示しがつかないか。
「そうでしたわね、焼き尽くして無かったですわね」
「すまないが、カエラに今の家と交易の件を話して、明日の朝にエントランスで会おうと伝えてくれないか」
「そちらもお願いされました」
「いかん! 完全に忘れてた、ロンバルトと防具店に、出来上がったら帝都に送ってくれって頼んでおいてくれ、代金もついでに払っておいてくれ」
「そうでしたわ、防具は半年ほどと言ってましたし、完全に忘れてましたわね、その辺の事情も含めて話してまいりますわ」
俺は一人で宝物庫兼倉庫へ行き全て収納した、屋敷のテレポーターで帝都の暁の宿に戻り、ツガットとカラミティを交えて話し合った。
「今日午前中はライネルで陛下とお会いして、領地を任せられる者を手配して頂くことになった。
現在は先方の家族へ来てくれるように交渉中だ。
で、その人たちなんだが、俺の嫁の実家だ」
「それなら信頼も厚く、お任せするには最高の人材ですね」
「それはどうかなぁ、確定事項ではないがな、それで、29の都市を割り振り、村が付随してる都市もあるって聞いてるんだが、俺には土地勘が全然無い。
当然来る方にも土地勘が無いから、その際に説明と割り振る手伝いをしてくれる者達を確保してほしい。
それと、その都市都市の冒険者ギルドと商業ギルドから一名ずつ引き抜いて、その方たちの補佐役に当ててくれ、引き抜いても不要だと言われた場合は、帝都で官僚として働いてもらうから、給料面では絶対に損はさせないとも伝えてほしい」
「了解だ、その道の精通した人物を宛がうのは理にかなってるな、その様に手配しよう」
「人材の件はとりあえず以上だな冒険者ギルドはツガットに、商業ギルドはカラミティに任せる。
それと、決める事が多い為後回しになりがちだが、先に決めてしまおう。
冒険者ギルドと被害者への賠償の件だが、全て丸のみして、俺が立て替える形で一括で支払うから、今後とも良好な関係をお願いする、面倒だろうが各人へ渡すのは任せるよ。
そうすると金額は全部で72,000枚だったか、今日の夕方にでも出向いて支払う。
それと農業と漁業と林業の税率だな、農業が廃れば全員飢え死にだ、それに漁業は下手すると死ぬような危険な仕事でもある、木の切り出しは重労働だしな。
これを踏まえて領地10%、帝国庫へ10%で合計20%とする。
それと農業と漁業だが、本年度は税金は取らずに来年以降にしよう。
可能なら、この3職種の道具の購入費用の一部を負担したいな、作業効率も上がればその分税収も増えるし、一度購入すれば、結構な長期間で使えるからな、その点も要検証だな。
いや、今決めてしまうか、5割負担するから購入の際は現物と一緒に領収書を受け取り、商業ギルドで専用の割り印を押して、その際に額面の5割を割り戻す形にしよう、印が押せない品の場合は特殊な塗料でも塗っておけばいいだろ、その素材は任せる、その費用は全額此方持ちだな。
現物と値段が釣り合ってない場合は、販売店に押しかけて要調査するとして、罰則はそいつに全額負担でもさせておけ。
それとこの制度の利用者には、売却する場合は国内登録の商人に売る事を義務付けておけ、それと、買い叩いた者は商人の権利を剥奪し、全財産没収の上で、被害者に全額を分配させろ。
その他の30%で統一されてる方はそのまま維持だな、現時点でも廃れた様子は無いから構わんだろ。
3種の税収が激減、これだと領地運営が危ぶまれるからそっちへは俺が補填する、何か意見はあるか?」
「道具購入の負担金は分かるのですが、食事もままならない様子ではそちらへお金を回す余裕などありません、もう少し検討した方が良くないでしょうか」
そうだ、抜けていたな、50%負担すると言ってもその元手すら危ぶまれる状態か、これを実行しても単に牡丹餅を目の前にぶら下げるだけだな。
「そうだった、買う資金に回せる状態とはとてもじゃないが思えんな、指摘ありがとうカラミティ。
如何するかな、過去に遡って1年分の取り立てた分を返納するのと、各農家へ一定金額をばら撒くのとどちらがやり易い?」
「再度税収分を逆算し返納するとなると、仕事が追い付かずにパンクします、断然一定金額の配布でしょう」
「そうすると金額の設定か、人数で配布すると家族が多い方が有利になり少ない所がやっかむな、1家辺りにすると人数が少ない家庭が得するな。
それじゃこうしよう、選択制だ。
1:5歳以上で人数に対して金貨4枚。
2:1家辺り金貨20枚。
何方か特になる方を本人達に選ばせろ、運び役は冒険者でBランク以上に指名依頼を出せ、村一つに1PTな。
なあツガット、白金貨で俺が支払った場合、金貨に変換しても足りるか?」
「マグロも無茶な事を考えるな、白金貨10000枚渡すから金貨に変えて配布しろと言われても、当然足りないぞ」
「それじゃ追加で質問だ、帝国の人口は総人数で何人だ?」
「正確な数字を出す事は不可能ですが、1100万人~1300万人程度でしょうか」
「半数が農家だと仮定して最大人数が650万人、各家庭3名としてざっと217万家庭、金貨にして4340万枚、白金貨にして43400枚か、金はあるから配布してもらおうか、準備するから待ってろ」
白金貨を5万枚売却→金貨5000万枚→一つのマジックバッグに収納と言う手順を踏んでツガットに渡した。
「中に金貨を5000万枚入れておいた、ざっと白金貨で5万枚な、適当な金額で指名依頼を出して受けさせろ、そして受け取った家庭の代表者に受け取った旨の署名をもらえ、後の細かい調整は任せるよ」
「各冒険者ギルドに頼んで村長宅を訪ねて概ねの金貨を割り出す、それで発注して事を進める、と言う手順にする、時間は掛かるが一ヶ月以内には完了するだろう、そちらは任せておけ」
「それでしたら、俄然農地の活気が上がりましょう、税金の収入が一時的には減りますが、やる気が上がれば収量も増え、少しの損益で済むと考えられますが、商業ギルドへの支払いは税収分から天引きさせますか?」
「その方が手間が掛からず良いだろうな、購入量などは領主に上げて把握するようにするか、全て帝都に上げて管理するかはカラミティに任せるよ。
他にもアイデアはあるが、折を見て実行しよう、一気に導入しては混乱するだろ」
「徐々に浸透させながら改革するほうが望ましいでしょう」
「それじゃそうするか、話は変わるが、税制も一新して、貴族連中の対応もしてと、がらりと中身の総入れ替えをするんだが。
俺はこの帝国グランゲイルの名前を変えようと思ってる、はっきり言って腐りきってた名前を使いたくないってのが本音だ。
なんて言うんだ? 継承の義? 戴冠式? で発表するのが良いのか?」
「継承は本来であれば現皇帝から皇子へと引き継がれますが、死んで居ませんし、今回はこの式典は不要ですね。
国内外へとアピールする式典が戴冠式ですね。
今回は後者で、各国の主要な人物たちも招き、式典での挨拶の中で発表されれば宜しいかと。
しかし、皇宮があの有様ではどうしたものか」
「それも問題だ、早急に図面を起こしてもらいたいんだが可能かな?」
「確か、商業ギルドの永久保管庫に収められてたと思いましたが、それを探してみましょう、それを元に現代風に調整すれば問題ないでしょう、ですが、図面が完成したとて、20-30年ほどは完成しないと思います、とてもではありませんが戴冠式には間に合わないかと」
「普通ならそうだろうな、まぁ、皇宮製作には俺が直接出向いて大枠は作るから良いよ、それに関連してなんだけど、水回りってどうなってるんだ? 出すのは魔石で出せるが、処理は如何してるんだ?」
「え? マグロが皇宮を製作するんですか? まぁ、今は置いておきましょう。
大雑把に言えば、下水管を通し、処理場とも言える貯水場へ流し込み、永久的なクリーン魔法陣を通して奇麗にし、川へ流します、皇宮は単独で一つ使ってると認識して下さい」
「現地調査して調整しながら考えるか、もしくはぶっつけ本番で作るかだな。
では次に、ライネルと同盟を結ぶ、これも後でつめるとして、近隣諸国との関係はどんな感じだったんだ?」
「それは私の方が詳しいかもしれませんね、先ず、土地柄隣接してる国家間ですが、南東方面で隣接するストレイルとは交易では良好な関係ですが、同盟までは結んでおりません。
次に、北東方面で隣接する聖王国グランドですが、宗教国家との一面もあり、我が国にも神殿が幾つか建てられております、交易も行ってますがこちらも同盟は結んでおりません。
次に、西方面で隣接する王国エリュードとは戦火が絶えず、現在も小競り合いが続いております。
次に、北方面で隣接する、軍事国家のカラドラスですが、交易のみで此方も同盟は結んでおりません。
これまでですが、竜人族の国家ライネルとは、ごく少量のみの交易で同盟は結んでおりません」
「ふむ、敵対が1国、中立が残り全部か。
現時点でエリュードとの国境線には騎士たちがほぼ0の状態だよな、皇帝が代替わりした訳だが、挨拶に大使か使者か判らないが、人を派遣する、もしくはこの際に攻め落とす為に軍を派遣する、どちらだと思う?」
「わかりかねます、完全な敵だと考えてるのであれば後者、軍に緊張感を持たせるためにあえて仕掛けてる場合は前者かもしれません」
「なるほど、考えるだけ無駄だな。
ツガット、俺が帝位に就いた事は近隣諸国に通達してるんだよな?」
「昨日の決断の時点から10分程度後に、通達は完了済みだ」
「この場合は戴冠式を行うとした場合は、此方から案内状を送るのが通例か? それとも先方から問い合わせが通例か?」
「此方から招待するのが通例となってますね、大々的に公表の場となりますので、来られる方々をもてなす訳です、もてなしてくれとは言えませんから」
「言われてみればそうだな、では聖王国のみ外して今言った国々へ招待状を送る事にしよう」
「聖王国のみ外せば敵対しますと言ってるようなもんだぞ、呼ぶべきだ」
「そう言えば話してなかったな、アレハンドロ=トランストって枢機卿を知ってるか?」
「何度か神殿建設の際に来られた事がありますね」
「わかってる分でだが、此奴の依頼でストレイル内での交易路が狙われてな、ライネル内の食糧事情が悪化したんだよ、それで陛下直々に依頼されて、現在はほぼ駆逐した。
で、その証拠の書状やら署名やらが20通以上見つかってな、ストレイル内で活動してた上層部の口を割って、完全に裏が取れてるんだよ」
「なるほどな、それで、呼ばないとすればどう対処するんだ?」
「今現在だが、ライネルとストレイルの共同で正式な使者が送られる事になってる、これに足並みを揃えて正式に敵対国家として発表したい所だな。
本来なら帝都の件が無ければ俺が使者として行く手筈だたんだよ、そうすればあちらの軍部丸ごと潰してきたんだけどなぁ」
「では発表前には監視団を結成して国境付近の監視を強化したうえで、神殿に居る者達を追い出したのちに発表でどうでしょう、ライネルとの足並みもそろえる必要がありますので協議が必要ですが」
「それでいこう、対外関係はそんな感じか、後は軍部がある程度揃って訓練も行きわたるまでの交易路などの安全確保だな」
「そこは冒険者に頑張ってもらうほかあるまいな」
「そうだなぁ、交易商の発注するクエストの3割ほどを負担する方向で進める事も考えてたが、それだと交易商のみの恩恵になって不満が増すだろうからな。
要は安全度が上がればいいんだよな。
提案だが、地上部の魔物討伐は3割増し、ダンジョン討伐には2割増し、交易で護衛として冒険者を雇った場合は3割を国が負担、雇われた方には3割増しの金銭を国が支払う、通達から実際に開始されるまでどの程度の日数が掛かる?」
「準備と言ってもクエストボードに張り付ける書類の再編集だからな、今から通達して明日から適応だと現場が混乱するから、明後日からなら問題無く運用が可能だぞ」
「国単位での話だから分からないかもしれないが、今現在の依頼料と先ほど言った交易商側の3割を1年通して支払った場合は、総額いくらほどになる?」
「分からないかもしれないがって、分かる訳が無いだろ」
「ざっくばらんで構わん、それじゃ白金貨10万枚渡しておけば1年分足りると思うか?」
「それは盛り過ぎだろ、余裕で足りる上に余るわ!」
「それじゃ明後日から適用な、そっちも金貨で支払わないと代金を支払えそうにないか、それと現在受けてる者で移動中の者達も居るだろ、明後日から支払う分も上乗せしてやれ。
それでだな、デカデカと書いて貼り付けろ、これより1年間は軍部の者達の減少により冒険者の皆様にご負担をお掛けしますが、その分見返りを準備させて頂きますので、どうかよろしくお願いいたします、とな。
ああ、まった、全部の分野で3割増しにしろ、下手にあれは3割増しになって無いって事になったら、受ける奴が居なくなるからな。
可能なら他の国へも情報を流せ、他の国からも引っ張ってこい!」
「むちゃくちゃな事するなマグロは、下手な事すると敵対国が増えるぞ」
「未来の敵より今現在の対処の方が先だろ、敵対した国が在っても構わん、俺が潰すから安心して通達しろ・・・・敵対?
ちょっと待て、肝心な事を忘れてたぞ忙しすぎて、今言った冒険者ギルドの件は一日伸ばせ、今から行く所がある、ツガット、案内しろ」
「如何したんだ? 急に案内しろって何をし忘れてたんだ?」
「あのバカ皇帝とその取り巻きが4人ほど居ただろ、そいつらの家に案内しろ、財産全て没収だ」
「ああ、その事か、それならマグロが戦闘してる間に手を打っておいたぞ、高ランク冒険者を50人単位で5組結成して送り込んでおいた」
「それはナイス判断だな、と、言えなくもないが、さすがに無人じゃないだろ、死人が出ないよな? もちろん冒険者側にだが」
「今から行くからマグロも一緒に払い込みに行けば良いだろ、その報告も纏めて受ければ良いさ、この時間だからな、とっくにケリはついてるぞ」
「それならあちらで報告を聞くだけか、後は軍部を荒くまとめる必要があるが、手が足りてない現状は、頭の中で整理するのが仕事だしな、一緒に行くか。
それじゃカラミティ、図面の方お願いするよ、明日は朝からライネルへ行く必要があるから、どうだろ、たぶん昼過ぎには戻ると思うけど、遅ければ夕方以降かな。
それと、当面の資金な、金貨の方はカラミティの生活費、白金貨の方は出費が必要な場合に使ってくれ、もっと必要な場合は早めに連絡をな」
金貨袋2個と白金貨袋2個を手渡す。
「ありがとうございます、50%負担の件を頼む際に初期費用として渡す必要がありましたので、この内一袋は其方へ回します。
もう一点ですが、引き抜く際にも当面の対価として支払いますので、そちらもこの資金より捻出します。 図面の方は、明日中に報告できると思いますので、夕食時にでも報告に上がります」
此方はこれで切り上げ、ツガットと冒険者ギルドに向かう。
夕刻間近だという事で混雑してる、横から割り込むのは反感を買う為おっさんと一緒に並ぶ、並びたくないが。
そして俺たちの番がやってきた。
「マグロとツガットが来たとガイエン殿に取次を頼む」
「へ、陛下、ご案内します、此方へどうぞ」
(なぁ、俺って怖がられてる?)
(皇帝が突然来たんだ、驚愕するのが普通だろ、って俺もそろそろマグロ皇帝陛下とお呼びしないとな)
(止めろ! 俺は先日まで一般人だったんだ、そんなこと言われたら鳥肌が立ってしょうがないよ)
(マグロは変わってるな、普通の奴なら威張り散らして評価が下がるんだがな)
「此方です陛下」
「案内ありがとう」
(随分と下手な皇帝だなぁ)
(良いんだよ、これが俺の素なんだからさ)
「よく来てくれた、怪盗=マグロ=ヴァンティユ皇帝陛下にツガット殿」
「お前までその役職名付けて呼ぶのかよ、うんざりだな」
「いや、普通はタメ口で話そうものなら、物理的に首が飛ぶんだぞ」
「慣れる事だな、マグロ陛下」
「今現時刻を持って、皇帝の座を退位致します、さようなら」
「待てマグロ! 俺が悪かった、謝るから早まるな!」
「ふむ、では普通に話をしろ、タメ口でな! 何、外国の連中が居ない場なら問題ない、それに、いちゃもん付けてきたら排除するから問題ない」
「とんだ陛下だなマグロは」
「この辺でこの件は終わりにしてだな、俺がトップになるんで、賠償やらは俺に回って来るって事だ。
それで全額支払いに来たって訳だ。
この件のみじゃないけどな」
「あのバカ元皇帝がマグロの様に決断してたら奴も生きてたんだがな。
それじゃ、この場所では数えられんから場所を移して職員多数で数えるよ」
「まった、その件のみじゃないと言っただろ、ツガット、説明頼む」
「こんな時だけ、俺に振るのな、それじゃ変わって説明するわ」
交易商から依頼料の負担、冒険者へ報酬の割り増し、これを1年間継続する事を皇帝の名で大々的に発表、それに合わせてこの事を諸外国の冒険者ギルドへ情報を流す事、資金として白金貨10万枚分の金貨をを預ける事などを伝えた。
「なるほどな、冒険者の活動を活性化させて、軍部の居ない穴を少しでも埋めるつもりか」
「ああ、それとは別件だが、今までの領主は全員首で退出するようにふれただろ、その後釜にライネル出身の者を当てるんだが、なにせ文化も違えば法律面も違う場合がある。
それで冒険者ギルドと商業ギルドから各地域、1名ずつ引き抜いて補佐に当てるように頼んだんだが、俺にも一人当ててくれ、出来れば交流のあったキャロルが良いんだが、ダメだったらツガットを引き抜く、どうだ?」
「貴様も年貢の納め時だなツガット、陛下直々のご使命だ、断らんよな? 無理に皇帝の座を薦めたのだし」
「マグロと同じく俺にも責任持てって事か? しかし言っただろキャロルが先約だ、俺が説得する」
「何時になく真剣だな、そんなに嫌か?」
「嫌じゃないんだが、これまでのイメージが悪すぎてな、どうしても踏ん切りがつかないんだ」
「皇帝がこのマグロだぞ、堅苦しくて息抜きできない立場になりようが無いと思うがな」
「無理にお願いする事はしないと誓う、ダメだった場合は俺が補佐する、これで良いんだろ。
だた、断られた場合でも直ぐにとはいかないぞ、後任を決めて引継ぎを完了させた後だ。
この間の短期間なら断られたとしてもキャロルがついてくれるだろうさ」
「これで財政面と国内の冒険者ギルドとの橋渡し役は決まりだな、後は対外的は外交官候補と軍事面か、しかし、人手が足りないな、単なる張りぼてな皇帝だな、城無いし」
「マグロが焼き尽くしたんだろ、諦めろ」
「こんな事なら焼かなきゃよかったよ」
「後悔先に立たずって言葉がぴったりな状況だな」
「ああ、頭が痛い問題だな」
「では次だ、領主達だが素直に出て行くと思うか?」
「今回の戦闘を脅威と考えれば出て行く、もしくは継続させてくれと交渉に来る、もしくは出て行くが新たな職か対価を請求といったところか。
現時点では名ばかりの皇帝で実績も何も無い、無視して継続する者も居るだろうな。
もしくは、知らない者の下に就くぐらいなら自身が皇帝の座にとの考えを持つ者が居るかもしれないか? 望み薄そうだが」
「前者なら貴族の地位位は残してやっても良いか? 後者なら国家反逆罪が適用だよな?
もして帝の座にとの考えの持ち主が現れたら、そいつに任せても大丈夫か要検証だな」
「前者としてもあまりに酷い場合は剥奪して放逐した方が良さそうだがな、下手に残すとしこりが残るぞ。 後者は国家反逆罪が適用され全員が斬首で財産没収だな。
先の戦争でマグロが勝者として皇帝の地位を宣言した時点で、権力全てを手にしてる訳だ、その命令に背く訳だから後者の件は確定だ。
嫌ならば皇帝の座に俺が就くと宣言する者が出てくるかねぇ、そこまで気合いの入ったのは軒並み破れて死んでるからな」
「なるほどな、少しずれるが、現在の税収を止めてるんだ、本来であれば今度の税を納めるのは何時なんだ?」
「1週間後だな、今は止めているが、それまでの税金は収集されてるからな、その分は支払われるぞ」
「その点を説明してくれ、昨日の時点で止めたが、正確にはどうなる?」
「今日が月の末日なのは説明が不要だと思うが、月初めから月末までの税金が1週間後に納められる、この期間は提出用の書類の準備と帝都への配送の時間として当てられている。
領主への支払いも1週間後だな、担当地な為に早くも可能だろうが帝国へ納めるより先には渡せんからな」
今日が月末だったのか、一ヶ月が何日で、何ヶ月で1年か、現在は何月何日か、さっぱり判らん、気にした事が無かったから聞いてないしな。
さすがにこの場で聞くのは不味いよな、適当に流して後で聞くか?
「そうか、税金を納めるのは商業ギルドからと冒険者ギルドからだよな、今は領主不在だから、俺の指示があるまで、今現在プールされてる金はそのまま支払わずに、俺が指示した事へのみにできるか? ・・・
ああああ、失敗したな、税金でやっと思い出した、領主達で現在も居座ってる奴に追加命令だ、残ってる税金持ち出したら命は無いと思え、個人資産のみ持って出ろと伝えてくれないか」
「両ギルドの溜まってる税金はその様に扱う様に通達しておく。
領主が扱う税金として、その辺の区別をきちんとしてる貴族がはたして居るか・・・通達はしておこう」
「金回りはこんな所か。
次だが、貴族連中の首を取るなと言って俺も承認した事で首はつながってるよな。
それも踏まえてだが、俺が就任前の役職と貴族の地位を全て剥奪したいと言ったらどうする?」
「確認したいが、無職にして一般人に落としたいって事なら、反対しないぞ、あれはあくまで命を助けてくれって事だ。
それに、近い将来に騎士や官僚などの募集も始めるんだろ? それなら有能だと思ってる連中ならこぞって応募にやって来るさ、その時に篩いに掛ければ良い」
「ではそうしよう、脱線したが、すべての貴族へ通達は可能か? 帝国と言う位だから多すぎて大変な気がするが」
「無理だな、本来なら一人一人に対して書状をしたため、正規の騎士なり文官なりが伝える事だからな」
「名前も知らない相手に書状をしたためるなんて行為は無理だぞ、他に手は無いかな」
「うーん、その辺りの厳重に保管されてる名簿やらが燃えてしまって無いからな、それを依頼されても全ての貴族の把握はしてないからな」
「戴冠式に呼ばなければ事態を把握するかね? ま、呼ぶ手段が無いんだが、お前らの事は知りませんよと」
「かなり強引で力技な気がするが、補間として各門にその旨を書いて張り出すか?」
「その案は良いな、各門にデカデカと俺の名前で張り出してくれ、現在の貴族の地位を剥奪の上、職も剥奪する。
近い将来、騎士と官僚らの募集をするのでそちらへ応募するように、能力次第で取り立てる事を宣言する、この募集は地位など関係無く幅広く行う事とする、で良いだろ。
それと、俺の現在の所在地を帝都の商業ギルド本部側の暁の宿だと広めてくれないか。
引越ししたらその都度お願いすると思うけど」
「ではその様に手配しておく」
「とりあえず現時点で可能な事はこれで完了かな? 何か他にあるか? ツガット」
「そうだな、皇宮の建築だが、かなり長い年月が必要だ、仮の皇宮を買うなり建てるなりした方が良くないか?」
「ふむ、それもそうだな、例の5人組だが、奴らは帝都に屋敷は持ってなかったのか?」
「持ってたぞ、結構大きい屋敷に庭付きだ、それを使うか? それに付随する報告があるんだがそっちは纏めて話すぞ」
「冒険者を雇って送り込んだ件だな、そっちはそれで良いとして、そうだな、その屋敷5棟もおれが受け取って良いんだよな?」
「あの戦闘で勝利した時点で所有権が移るからな、元々が個人宅だったからマグロ個人のだぞ、だが、先ほどの件にも付随するが、各都市に派遣した先の物件は、先の皇帝が貸し与えてた領主館だからな、マグロのじゃなく、帝位に就いたマグロのだ」
「ややこしい説明だな、個人資産と皇帝の資産と別だって事だろ?」
「そう言う事だ、それじゃマグロの件は終わったな? 此方からも報告と押収した品の引き渡しがあるのでな」




