45:後悔
ティアとシャロは南門前を突破する必要がある為、南部門前の戦闘中に強引に突破してもらう。
俺とは言えば、火も酸も使えない、可能なら武器も防具も回収して再利用したいからな。
こうなったら使用魔法は制限される、少々焦げるが、使用魔法は決まったも同然だろ。
【ライトニングブラスト】の幅を狭めて距離を確保するように調整し、発動させながら外周をぐるぐる回る簡単なお仕事だ、以前も似たような事をしたな、もちろん威力を下げての話だ。
一番悲惨なのはティアとシャロの相手達だろう、切られて殴られて血はむせ返るほど、ティアに至っては原型留めないほどボロボロだろうなと、考えながらほぼ、手抜き作業も良い所だ。
戦闘そのものは30分足らずで終わり、相対した全員を収納し、武器と防具を全て剥ぎ取っておく、そっちの作業の方が時間が掛かった1時間30分ほどか、トータルで2時間弱。
南門前を回収し、西門を回収し、南の地点に最後に行ったら、他のメンバーが全員集合して、今回やらかした現皇帝が捕らわれていた。
その他は奇麗に全滅だ。
「ほう、此奴だけは生かしてたんだな、おい、最短の元皇帝、貴様らの負けだな、他の所も含めて一人残らず倒させてもらったが、今度は宣言の通り、この国の貴族共を殲滅だ、お前の一言で戦争のテーブルに自動的に乗せられたんだが、何か伝言あるか? ま、どうせ死ぬんだがな」
「・・・・」
「こいつはもう喋らないにゃ、一応生かしてはいるんだがにゃ、どうするマグロ?」
「生かしておく必要性を感じないな、あれだけ大見得貼った挙句にこの様か、それじゃあな」
【エアブラスト】1発でミンチコースだ。
「後はこの地の者達を回収して火葬だな、しかしド派手にやったな、この地が一番悲惨な状態だ」
「攻撃手段が切り裂くか殴り倒すかですわ、それは言わなくていいですわよ」
「そうだな、よく頑張ってくれた、この地の後始末は俺がしとくから、皆は商業ギルドにこの事を伝えてくれ、4時間までは掛からないだろうからな」
この地の者達も回収して剥ぎ取り、今度は街道を少し外れた場所に全員を放出し【フレアバースト】で焼き払った、灰が少し残るのみで、辺り一面焼け野原だな。
皆が待つ商業ギルド本部に行って捕捉する。
「ツガットさん達も一緒に居たか、この地での戦闘の約半数は完了しただろ、もう軍関連の連中は残っていまい」
「1日で16万近い人口の消滅か、馬鹿な皇帝と取り巻きのせいでこの始末、後味が悪いな」
「先方が罠に嵌めて此方を殺そうとしてたんだ、同じ事をお返ししただけさ、卑屈になる必要なんて皆無だぞ」
「分かってはいるんだがな、数だけ見ればどうしようもなくな」
「話を変えるが、アルサス殿、俺たちを売ったな、あれだけの人数が待ち伏せしてたんだ、お前が許可したんだろ、覚悟は宜しいか?」
「それは気になってた点だな、どういう事だ言ってみろアルサス、俺たちはお前を信じて仲介役に任命したんだぞ」
「言い訳などせんよ、彼らの行動に許可を出し、包囲するのに力を貸したのは事実だ」
「良い心がけだ、奴らに加担したのならその命で償え」
「まて、マグロ、無理やり命令されてたのかもしれん、早まるな」
「なら、この件はツガットに任せるよ。
話は変わって聞きたいんだが、この都市の貴族連中が住む区画は何処だ? それと、今回参加してた連中の統治してた町は何処だ? 明日から潰して回るからな」
「それも待てマグロ、本当に貴族連中を根絶やしにするつもりで動くのか」
「今は死んで元皇帝か、奴にも確認しただろ、貴族全員を戦争の対象とすると、帝都の屋敷も含めて、帝国内の貴族の屋敷は全て焼き払い、殲滅する。
こんな腐った連中ばかりの貴族なんて居たら、統治がし難いだろ」
「確かに腐った連中が多い事は認めるが、全員が全員腐ってないはずだ、それに、女子供まで対象に含めるって事だぞ、マグロにそんなもの達を殺させたくはない、考え直せ」
「どうしてもか? 奴らの側に立ち、庇うって事は俺と敵対するって事だ、それでも止めるつもりか?」
「そうだ、無実の者まで命を奪うのは止めろ、何度も言うが、そんな事をマグロにさせたくはない」
「・・・・はぁ、仕方ない、ツガットの言う事もあながち間違っていないからな、今回は俺が引く事で収めよう、だが、今度ふざけた貴族共が出てきた場合は、家族ごと根絶やしにするぞ」
「それで良い、マグロならその決断をしてくれると信じていたぞ」
「はぁ、先の事を考えると、倒れたくなるのは気のせいか? 嫁さん全員に手伝ってもらわないと、とてもじゃないが統治機構の構築なんて無理だな、とりあえず、宿を一軒丸々借りるのが先か。
そうだ、ツガット、お前、ギルドマスターを止めて、俺の側近にならないか?」
「馬鹿を言うなよマグロ、そんなたまじゃないさ」
「確かに、ギルドマスターの地位をほいほい放り投げられないか、カエラに泣きついて商業面がどうなってるかも聞かないと事だよなぁ」
「無理に俺たちがねじ込んだも同然だからな、当分は手伝うぞ」
「それ良いな、まぁここじゃなんだ、どっか宿借りて枠組みだけでも決めないとな」
「それよりもやる事があるだろ、タボルスク達を倒して正式に帝位に就く事を宣言するのが先だ」
「やり方が解からん、冒険者ギルド経由で近隣諸国と国内の全都市にその事を通達よろしく、手伝う仕事の第1個目だな。
その前に宿を取ろう、近場の暁の宿で良いだろ、空いてればいいがなぁ」
宣言の通り、暁の宿の空いてる全部屋を借り上げた、お客が帰ったらその都度追加で借り上げる旨も伝えた、これで自動的に宿一軒を借りられるだろ。
明日は我が家に帰って男連中を全員残して嫁さん全員を連れて来るか? まぁ、この宿に入りきるだろ。
「ああ、ツガット、通達に出かけるなら、商業ギルドとか税制面で詳しいのを一人引っ張って来てくれ、宿は借りた一部屋を宛がうから給料も気にせず来い、その分払うからと伝えてな」
「了解した、冒険者ギルドの事なら俺が引き受けるから、そっちはそっちで詳しいのを連れて来るさ」
ツガットが出かけたその後。
「怒涛の一日でしたわね、帝都の皇帝陛下ですか、マグロも偉くなりましたわね」
「ここ数日で、伯爵になり帝位に就いた、世界最速の出世速度ですね」
「シャル、俺って立場的にはどうなるんだ? 帝位に就きながらライネルの伯爵って変じゃないか」
「本来ならユリウス陛下と対等な立場ですものね、ライネルで伯爵と言う事は陛下の下につくと言う事、返上するしか手はないと思いますわよ」
「これでマグロの目的の一つだった世界の漫遊が潰れたのにゃ」
「それだよ! 帝位に就いたって事は、気軽に国を挟んで行動できないって事だぞ。
ツガットのボケ! どうしてくれるんだよ!」
「決めたのはマグロさんですよ、あきらめが肝心ですよ」
「シェルにも見放された・・・・」
ガシッっと抱き寄せられ顔が胸に埋まる。
「どんな状況になろうと、マグロの味方ですよ、その為に居るんです、頼って下さい」
「ありがとうセレス、面倒事は明日からにしよう、呼んで置いてなんだが、今日は夕食食ったら即寝る、セレスお願い」
「お願いされました、マグロ」
今日ぐらいは甘えても良いだろ? 明日から気の休まらない時が来るからな。
翌日の朝食後の食堂。
「マグロ、昨日はどうしたんだ? さっさと寝て。
彼を連れて来たんだぞ、って事でだ、彼は商業ギルドのナンバー2で、カラミティだ」
「怪盗=マグロ=ヴァンティユだ、昨日はすまない、今日からの事を思うと頭痛がしてな、とっとと寝たよ」
「ご紹介にあずかりまして、カラミティです、そうでしたか、突然の帝位に就かれたのです、重圧は計り知れないでしょう、それで、お聞きしたい事とはどの様な事でしょうか?」
「税制面なんだが、これまではどの様な仕組みになってたんだ?」
「収入の面からご説明致します、先ずは国内への輸入と国外への輸出に関しまして大雑把に言いますと、国外から入る際には10%の関税が掛かり、この内の2%は商業ギルドの運営資金へ、残り4%は出国元の国庫へ、残り4%は帝国庫に入ります。
輸出の際にはこの逆になる訳ですが、関税率は変わりません」
「その10%はどうやって計算されてるんだ?」
「輸出する国の価値で判断されてます、輸出するほどですから品が多い場合がほとんどで、輸出先での販売で利益が出る訳です、高い方の基準で関税をかけると交易商人は儲けをだすことが出来ず廃業に追い込まれる為です」
「なるほどな、では何処で関税を掛けてるんだ?」
「国境すぐ隣の町にある商業ギルドが窓口です、品と量を確認し、その品に対して関税を掛けられ、払い込みの証書が発行されます。
それを持たずに越境する事は不可能です」
「ん? ライネルとストレイル間ではその様な事が一切無かった気がしたが?」
「それはですわね、ライネル側は輸出の時点のみで関税を掛け、輸入する品の関税は0なのですわ、ですので、関税の証書はダンジョン横の精錬所や木材加工場が発行してるのですわ」
「へぇ、食料品は関税0であの値段だったのか、って話が反れたな、それじゃ、互いの国で支払いが偏った場合は、少なかった方へ均等になる様に支払ってる訳か」
「そうなります、そして国内の交易ですが、現在は20%です、商業ギルドへ5%、帝国庫へ15%となっております」
「ん? それって、町を跨ぐごとに関税と同様な事が起こるのか?」
「いえ、交易商は購入と販売の差で儲けをだしますが、その純利益から20%を支払います、買い取りの際も販売の際も証書の発行の義務が生じますので、誤魔化しがきかない様になっております」
「ふむ、それでは、小売りと鍛冶屋とか、商店を併設してるのはどうなんだ?」
「此方も交易と同じく、純利益から20%となっております、収める比率も同じです、ですがこちらは、その土地の管理してる領主が独自に税率を設定し、上乗せしてます」
「それって、土地次第で30%であったり50%とかもあり得るって話か?」
「左様です」
「トップが頭の可笑しい連中だったら、下の者が餓死すらあり得るって事か」
「最悪はそうなります」
「現時点では、俺が決め放題なんだよな? 他の都市も含めて」
「マグロ様の場合は、各地の管理をする者達を決めておられない状態ですので、任せる者に強制して命令する事も不可能ではないかと」
「では、今までの最低%と最高%はどんな感じだ?」
「最低が30%、最高が50%です」
「なるほど、統一規格が必要そうだな、同じ帝国内で格差を作る訳にはいかんだろ。
それと一時産業の者達の税率はどうだ? 具体的には、農業や林業や漁業に携わる者達だな」
「農業がその50%の者達です、収益量の50%を取り立てられ、その土地の領主へ20%、帝国庫へ30%です」
「これだからボケ共は! 本当にクズしか居ないのか! ツガット! 即刻税金面を見直すまで、取り立て禁止と全土に通達しろ! そして現在の領主は全員クビだ!
一か月以内に退去しろと命じておけ! 違反したり、従わない場合は家族ごと滅するとも伝えろ!」
マグロは激怒した、マグロが走って移動する際は、町から町への街道が通っているがそこは通らない。
ショートカットでなるべく直線に走るからだ。
その際に農村地帯の直ぐ傍を通る事も当然ある。
そこで見た者達は顔が暗く、体型は太っている者はおらず、痩せている者達が多い、食生活が厳しいのだろうと予想はしていたが、収穫量の50%も税として取り上げられてるのが原因だと判った為だ。
「落ち着くにゃ、今からはマグロが決めるんだにゃ、今から幸福にしてあげれば良いのにゃ」
「そうだぞマグロ、その通達は任せておけ、冒険者ギルドに対して監督するように伝えておくから、それで税金取り立て禁止は分かるが、その期間分は税金0で通すって事で良いんだな?」
「すまないな、興奮してしまって。
商業ギルドの分のみで帝国庫と領主へ納める分は取り立てなくて良い、この期間の証書にはその旨記載するように、いや、これだと集計時に混乱するな。
それじゃこうしよう、その期間の分の商業ギルドの収入は俺が補間するから完全0にする様に通達を」
「了解した、今日は今からだと半端に交易が始まってて損する奴とか出るからな、明日から適用するように伝えよう」
「補完だが、他国への輸入や輸出はそのままだからな」
「了解した、そっちは触れない方が良いだろ、他国との繋がりがあやふやになるからな」
「では続きですが、林業は30%、漁業は40%となっております」
「林業の場合は領主が10%と20%乗せてると考えて良いんだな?」
「そうです」
「・・・・ああ、イライラするな、ちょっ殺って来るか」
スルーされた。
「お聞きしたい事は以上ですか?」
「どの様な方面に何割ずつ使ってたのか、なんて判らないよな?」
「割合は分かりませんが、使用してた方面でしたら分かりますが」
「それは頼もしい、いっそ俺に雇われてほしい位だな、だが、マスターが相手に譲歩してたから次期マスターは貴殿だろうし、引き抜くのは無理かなぁ」
「いえ、お望みとあらば即止めて来ますが、農業を営む者達へ手を差し伸べる姿を見ると、この方に仕えたいと感じ入りました、是非雇って頂きたい」
「言ってみるものだね、それじゃカラミティは今日から財務のトップな、有能な者達が居ればどんどん連れて来てくれ、商業ギルドが潰れない程度ね」
「了解しましたマグロ様」
「さっきも思ってたけど、様って呼ばれるのはむずがゆくてダメだな、呼び捨てで頼むよ、俺の片腕になるんだから気にするなよ」
「はぁ、それを鵜呑みにして皇帝との謁見の場でタメ口をきき、首を撥ねられたものが居ましたが」
「マグロはそんな事しませんわよ、タメ口の方が話しやすいと公言してますわ、数日前まで一般人でしたから」
「全くだよな、何で俺が帝位に就かにゃならんのだか」
「伯爵にと叙勲された際も嫌そうにしてましたものね」
「はぁ、左様ですか。
では、元の話に戻りますが、貴族への給金に当たる毎年の支払いですね、これは位によって増減してたようです。
後は道の整備や交通の安全性を高める為に騎士を派遣し魔物の討伐、盗賊達の取り締まり、騎士達への給金や装備品の拡充。
砦などへ派遣すれば食料品や消耗品の購入や配達、常駐する騎士たちの衣食住も必要でしょうか。
抱える官僚たちへの給金なども必要ですね、まだ抜けがあるかもしれませんが、この様な所でしょうか」
「多岐にわたるな、分かっていたが、0ベースで構築する必要があるから、大変というレベルじゃないな、それに、現存する貴族連中をどうするか。
俺としては全員役職を解いて一般人へ降格だがな」
「マグロの目線では貴族は害悪ですからね、これだけの不祥事を見せつけられては当然の評価とも言えますが」
「うーん、一般人目線で良い貴族ってのを判別して、領地運営に加えるべきか、だが、外面だけ良い奴ってのも居るからな、誰か良さそうな人材は居ないか? 貴族でこいつは真面だって言う人材が」
「マグロ様の、いえ、マグロの先ほど激怒した、農家への50%の税の時点で、先ほどまでの領主達に適合者は居ません」
「下手に高い位の貴族より、低い位の貴族の方が真面かもしれないな。
帝都を入れて都市は30か?」
「商業ギルドや冒険者ギルドの所在地と言う意味では30で合ってますね、その近辺に村落と言える農村が点在してる場所が複数ありますので合って無いとも言えますが」
「ふむ、とりあえず帝都は俺たちが居るから不要として、代官をつけるにしても29名必要なのか、嫁達を方々に散らす訳にもいかんからなぁ。
この時点で前途多難だな」
「ライネルから貴族の次男などをスカウトしては?」
「それも考えはしたが、他所の国から貴族を引き抜いて来るなんて前代未聞じゃないか?」
「ユリウス陛下でしたら、近隣に有力な同盟国が出来ると喜んで、手を差し伸べてくれると思いますわよ」
「結局泣きつくしか手はないって事かね、この国の貴族ときたらクズ揃いのせいで! ああああ、イライラする! ティア、何か案はないか? 静かだし、何か考えてるんだろ?」
「ティアがマグロの立場なら、真っ先にユリウス陛下と謁見して相談するにゃ、帝位の事も伝える必要があるのにゃ、ダメ元で頼んでみるのにゃ」
「うじうじ悩んでも解決はしないか、報告も含めて行ってみよう、カラミティはどうする?」
「正式に退職してまいります、それと数人心当たりが居ますので、引き抜いて来ます」
「では其方は其方でお願いする、給金も決めなきゃならないが、取りあえずカラミティの給金は一月金貨100枚以上は確定な」
「ご配慮感謝します、マグロ」
一度部屋に戻り、移動型テレポーターを宿に置いて帝都のテレポーターを使い、サパンに居るカエラ達と合流してカエラ宅からテレポーターで我が家へと帰る。
あかん、本気で倒れたい、誰か助けてくれと叫びたい心境だな・・・
「お早いお帰りでマグロ様、帝都の件は終結できたのですか?」
「その事で陛下にご相談がある、至急、取次を頼む」
「了解しましたマグロ様」
「謁見にはカエラさんも来てくれ、その方が説明の手間が省けるからな」
「マグロ、どうしたんですか?」
「また厄介ごとを背負う事になった、帝位に就くことになってな、その報告と相談の為だ」
「どんどん話がスケールアップしますね、流石マグロです」
「褒められても嬉しくないのは俺の根性が曲ってるからなのかな?」
「本当ならいじる所なんだけどにゃ、心情がどん底なのが分かりきってるからにゃ、言う気にもなれないにゃ」
「とうとうティアに同情されるレベルなのか、ちょっと来いティア、その耳、触らせてくれ」
そうしてさわさわモミモミしてると落ち着くんだよな、ピクピクたまに動くのもまた良い感じなんだよ。
そうやって癒しの時間を満喫する。
「マグロ様、直ぐにお会いするとの事、陛下がお待ちになっております」
「良かった! 切羽詰まってたんだよね、では行こうかみんな」
こうして王宮へ。
「マグロ、無事でなによりだ、と言うのも変か、相談とは何事だ?」
「急な謁見にも関わらずありがとうございます陛下。
先方は我らの命を狙い、会談の場を100名以上の騎士達で囲い込み、冒険者を人質としてまして、会談は破談致しました。
強引に騎士たちを退け、逆に帝位に就いた者とその取り巻きを人質に取り、人質交換で助け出しました。
その後にその皇帝を排除したのですが・・・」
「如何したんだ? 今回も歯切れが悪いな、勝って万事解決とはいかなかったのか」
「その場に居た者達から懇願され、その話を受け入れたのですが、今回、帝国の皇帝の座に就くことになりました」
「うはははは! それが悩みか、かの地に知り合いが居なくて人員不足にでも悩んでるのか?」
「その通りです、ドレもこれも腐った連中ばかりで現在の貴族達は当てにできません、農民達から搾取してる始末です。
それで、領地を管理する手が足りないんです」
「ライネルの貴族も飽和気味だからな、いっそ連れて行くか? そなたに付いて行けば即領地持ちだ、喜んで向かうだろう」
「宜しいのですか? ユリウス陛下の家臣を連れ出す事になってしまいますが」
「問題ない、先ほども言ったように飽和気味でな、この地は山間部でこれ以上の切り開きは無理だ。
よって、土地を与える事が出来ない事を負い目にも思っててな、そこをマグロが解決してくれる、と言う訳だ」
「左様でしたか、感謝します陛下。
商業ギルドや冒険者ギルドの所在地が帝都も含めて30あります、帝都は外すとして、最大で29の領地をお任せしたいのですが、如何でしょうか」
「なるほどな、それならマグロの嫁になった者達の家族へまずは話を持って行こう。
相手次第だがこれで29名だな」
「お待ちください陛下、シャルのご両親も対象なのですか?」
「無論対象だぞ、何か問題でもあるか?」
「いえ、陛下とはご兄弟だったはず、それに、義父さんは軍部の責任者だったはず、役職に穴が空きますし、離れ離れになる可能性があるのですが宜しいのですか?」
「隣国だ、移動ならば龍化すれば1日も掛からんし、用事があればすぐに会えるからな、何も問題ない、それに、壊滅してるだろ、そんな時は経験者が必要だ、そう言う事だな」
「へ、へいが、ありがどうございまずっ」
「あらあら、泣いちゃったわ、かなりこの件でまいってた様子ですものね」
「これで、ライネルの属国が出来上がったのにゃ」
「ティア、あまり突っ込まないの、ですが、これで隣国が同盟国って心強いはずですわ、マグロにとっては一番の心の支えかもしれませんわね」
「マグロの様子では話は当分できまい、後はシャルと話すゆえ、他の者は下がってマグロを頼んだぞ」
俺は担がれるように我が家へと帰り、嫁達に慰めてもらうのだった。
情けないなんて思わないでくれよ、手の施しようが無い時に手を差し伸べられるってものすごく嬉しいんだからな、と思ったマグロだった。




