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38:正当な価格でお買い上げ

 それからオークション当日まで一切復興活動には手を貸していない、ひとえに領主の態度が気に入らなかった為だ。


 報告が必要な事と言えば無事に全員がBランクへと昇格し、カードの材質が銀になった。

 それと、報酬としてボス討伐に白金貨百枚、戦闘に参加した六名に、合計白金貨三百枚支払われた。


 もう一つこの地に拠点を作った、二十名規模で宿泊可能な屋敷を買い、テレポーターを設置してライネルとの行き来を瞬間的に可能に。

 結界魔法陣も設置し、悪意ある者を弾く種類だ。

 それと、シェルに頼み移動型テレポーターを一つ追加で作って貰った。


 現在はカエラさんとその護衛達もこちらに呼び寄せて商売の拠点探しの真っ最中だ。

 大暴走直後で混乱してたが、俺たちの拠点となる屋敷は場所を気にせず、広さだけで決められるために苦労はしなかった。

 

 別の話になるが、厚さ二十cmの木材の板と見せかけて内部は十八cmの鉄板入りをカエラさんに全力で殴ってもらった。

 粉々でしたとも、粉々になった事と中身が鉄板だったことも驚愕していた、俺たちが散々魔物を倒した結果、クラン員全員が成長した証だった。



 テレポーターを設置してる時にこっそりライネルへ帰り、地下倉庫で金塊を作り出してがっつり資金を調達した、MP六千消費して約白金貨四百万枚、合わせて白金貨四百三十九万枚ほどが所持金だ。

 戦い詰めだったから良い休養になった、食べ歩きしたり買った拠点でゴロゴロ時間を潰したりな。


 そしてオークション当日で現時刻早朝七時、台座前。

 

「サイラスさん、見学者が大勢集まってますし、お披露目しますか?」


「そうだな、競り参加者にも早めに見て貰う方が良いだろ、出してもらえるか」


 自分で買うので静かに取り出して置いた。

 流石に驚愕しているな、高ランクの冒険者でも全然見ないサイズだからな。


「それで、俺の競り人登録ってどうなってますか?」


「それなら当事者だからな、一番を確保しておいた、これだ」


 と番号札を渡された。


「オークションは一般的なルールですか? それとも一気に値段釣り上げても良いですか?」


「一,一倍から二倍と基本ルールが良いだろうな」


「オークションの手数料とか税金は全体から何割なんです?」


「オークションは此方から無理に頼んだから、此方持ちで無料だ。

 税金は冒険者だから一割と国際条約で決まっている、それ以外には引かれないから買うにしても、売るにしても条件は変わらんよ」


 なるほど、白金貨四千万枚以上準備できるかな? 俺は一割負担で済むが、ラインハルトは全額だ、ま、競り落とせないだろうな。


 そして、八時になりオークション開始である。


『現在ご覧いただいてるドラゴンが今回の大暴走のボスであるブレイズドラゴンです、エルダードラゴンである為、今後得られるか不明で貴重な素材と言えます。

 ご存知の方が多いと思いますが、エルダードラゴン以上の種族は意思疎通が可能であり、人と共存関係との見方からも、今後一切手に入る機会の無い個体と言えます。

 それでは紹介しましょう、今回のブレイズドラゴンの討伐者で今回の功績でBランク冒険者となった怪盗=マグロ=ヴァンティユさんです』


(おいおい、挨拶しろなんて聞いてないぞ、何でこんな事になってるんだ、サイラスさん)

(余興だよ、前に出て一言よろしくな)


 しぶしぶ出て行くマグロだ。


『クラン名【真摯の断罪者】のリーダーで怪盗=マグロだ、確かにこの個体を倒したのは俺だが、この地を守りきれたのは騎士団であり、冒険者であり、それを後ろから支えてくれた住民の力だ。

 厳しい戦いの中、支えてくれた方にお礼を言いたい、有難うございました!』


『ご挨拶ありがとうございました、それではオークションを開始致します、ルールは通常のオークションルールを採用、競り落とされた方は速やかに解体などをして撤去をお願いします。

入札は白金貨のみとします、最低落札価格は1000枚から、それではどうぞ』


『1000枚』

『2000枚』

『3000枚』

『3500枚』

「7000枚」

『1万枚』

「2万枚」

『2万5000枚』

「5万枚」

『5万5000枚』

「11万枚」

『・・・・』


 おーおー睨んでるな、前回と全く同じだ、これで俺の方からも喧嘩を売れたな、買い取ってくれないかな、さくっと終わらせるのに。


『1番様、11万枚、他にございませんか?』


『・・・・』


『1番様、落札おめでとうございます、討伐されたマグロ様が競り落とされました』


『マグロ様、おめでとうございます』


『マグロ様、助けて頂いてありがとうございました』


 お礼の言葉が飛び交う中ずっと睨みつけてる人物が、うんうん成功だ、これで喧嘩売ってくれるだろう。


「マグロ、こちらで税金支払いと所有権の証書を作るぞ」


 バックヤードのオークション管理者などがつめている執務室に案内された。


「マグロには今回落札金額の一割である白金貨一万一千枚支払ってもらう、そのお金は契約により半額は冒険者ギルドへ、半額は領主へと支払われる」


「それでは足りないな」


「何が足りないんだ? ラインハルト殿」


「特別税だ、三割支払ってもらう、白金貨三万三千枚だ」


 ナイスだラインハルト、よく提案してくれた、これで此方も手が出しやすい。


「それは国際「待ってくれサイラスさん、どういう事か言ってみな」」


「言ってるだろ、領主には税金を設定できる権限がある、今回は特別税として二割上乗せし、三割支払ってもらう」


「ほう、それじゃ選択しろ、国際条約を無視して支払わせるならば敵対行為とみなし、俺はストレイルに戦争を仕掛ける、それでも構わんなら支払ってやる。

 それとも国際条約に基づき一割にするかだ。

 無論、戦争となったら、今現在この地にいる軍部からお前の屋敷にいる者達全てを含めて、俺の倒す標的とする、さあ選べ。

 補完するがな、戦争しません、と言って三割を強制したとしても、俺が仕掛けるからな、お前は回避不可能だぞ」


「待てマグロ、今軍部は事後処理してる部隊も含めて一万ほどいるんだぞ、止めろ」


 たったの一万程度で俺に威圧なんて不可能だわ、せめて後百倍は連れて来ないとな。


「サイラスさん、いくらあんたでも邪魔するなよ、こいつの態度にはムカムカしてたんだ、サイラスさんもだろ? 受けてくれるなら喜んで裸踊りしたい位さ」


「・・・・」


「それでどうするよ、ラインハルト、あんたの一言で決まる、払ってほしいなら払う用意があるぞ、無論、支払ったらあんたは俺のクランとの戦争に参加するって事だ」


「俺の国の軍部も含めて戦争だと、面白い、吠え面かくなよボウズ、三割払ってもらおうか」


 ナイスだぞ、これで堂々と命を奪える、後悔先に立たずってな、俺が仕掛けた時点で後悔しようと遅いからな。


「ここでは狭いな、集計する部屋を別に用意してくれないか」


「そうだな、集計担当と監査役に任せて此方で待機することにしよう、ではマグロ、ついて来てくれ」


 別室に案内され三万三千枚枚取り出して渡す、集計に時間が掛かりそうだ。


「表にいるクランメンバーに話して来る、少し席を外すよ」


 メンバーと合流し。


「すまんな、今ここにいる軍部を含めてこの町の領主と戦争する事になった」


「何故ですのにゃ?」


「本来一割の税金を特別税と言って三割要求してきた、それで一割なら普通に取引完了、三割支払うなら俺のクランと戦争だと突きつけたら、ラインハルトは戦争を選んだ、それだけだ」


「馬鹿ですわ、帝国がどうなったのか知らないのですか」


「いや、それ以前にSランクが苦戦する大軍を相手に余裕で倒したことを念頭に入れて無いんじゃ」


「馬鹿を極めてますわね」


「そんな訳でブレイズドラゴンを置いてる傍に居てくれ」


(スラちゃん、俺が支払いは完了した、と言ったらラインハルトに飛びかかり、足から消化してくれるか)

(あれをたべていいの?)

(ああ、頼むよ)

(マグロさまへのあのたいど、しょうかしたくてウズウズしてたんだぁまかせてね!)

(よろしくね!)


 そうして執務室に戻る。


「数え終わりましたか?」


「まだだ、さすがにあの量は時間が掛かるからな」


「そうか、野ざらし状態だからな先に収納してくる」


 こうして収納し、メンバーと会話して時間を潰し、また執務室に戻る。


「集計は完了したから書類作成中だ、此方は完了したから内容を確認して署名と捺印を頼む」


 署名と捺印も済ませて契約完了だ。


「それじゃ証明も受け取った事だし、支払いは完了した」


 スラちゃんが俺から離れてラインハルトに取り付くと、ミスリルさえ溶かす強力さで消化していく。


「ぐわああ、貴様! 戦争はまだ開始してないだろ! それにこのスライムは何だ!」


「お前、とことん馬鹿だな、俺は支払ったら戦争だ、と言ったんだぞ、支払いが完了したんだから即開始だろ、この子は俺の召喚獣だ、ミスリルさえ溶かすからな、堪能しろよ!」


「誰でも良い、俺を助けろ!」


「助けるって事は、こいつの味方って事だ、俺と戦争したいなら助けてやれ、それにな、お前の馬鹿な行動に巻き込んで軍部の者達を殺す訳ないだろ、責任はお前ひとりで取って死んで詫びろ」


 誰も助けない中で引きはがそうと暴れたり、俺を狙ったりとしていたが、息絶えてすべて消化された。


「凄いスライムだな、色も違うがあれだけ暴れられても平気なのか」


「実力ならブレイズドラゴンと一対一で戦ってもこの子が余裕で勝てるからな、戦闘もまともにできないラインハルトだと単なる食料にすぎないよ。

 それじゃ、ラインハルトの屋敷に乗り込んで来るよ、ああ、今税金として支払ってラインハルトに渡った分は回収するわ、サイラス、無関係な人に手を出さない様に見張りに来るか?」


「いや、今回の件を関係各所に通達しなきゃならん、開始早々、十分も掛からず戦争は終結したとな、そっちは戦火が拡大しない様に配慮してくれればいいさ」


「すまないな突然巻き込んで、腹に据えかねたからな。

 一つ聞きたいんだが、奴の屋敷ってラインハルト個人の資産なのか?」


「当然だろ、屋敷の所有者であり、この地の領主であり、この国の五つある都市の代表でもあるな、いや、代表だった、だな」


「なるほどな、本来の戦争なら相手の地位も土地も何もかも奪うところだが、都市の代表とかは要らんから、その屋敷ごともらっておくよ、それじゃスラちゃん行こうか」

 

「マグロ待て、それは本気か、本格的にマズい事態になるぞ」


「本気だよ、だから戦争だと念をおしただろ、それに同意したって事は、地位も資産も何もかもテーブルの上に上げるって事だ。

 これに納得いかずに抗議してくるようなら、俺と戦争状態に突入するって事だ、違うか?」


「わかった、ギルドマスターの五名とオークション関係者の連名で事の詳細と、マグロの行動が正当だった事として公表する」


 翌日からストレイルの有力商家が集まり、新たな領主が選出された、強欲な人材じゃない事を祈るのみだ、建物は無いがな。


 五人とカエラさん達も含めて十二人、合流して今度は領主館の掃討と書類や金品回収だ、場所は直ぐに分かる、北部で中央の一番広く大きい建物だ、急ぐ訳でもなく露店で買い食いしながらのんびり向かった。

 門まで行くとオークション関係者と冒険者ギルドの連名で今回の件が伝わっており、警備の者との戦闘も無く、何故か屋敷内を案内されながら回収できるのはすべて回収した。

 案内終了後、警備の者達は撤収した。


「流石マグロにゃ、戦争に託けて領主館をゲットしたのにゃ」


「そうですわね、戦争と言ってましたのに、何もせず終結してしまいましたし、拍子抜けですわね」


「マグロが配慮したんでしょう、やっと終わった大暴走、その鎮圧の為に尽力された方々を殺めるのはしのびないですから」


「マグロさんですから、それも計画の内だったんでしょうね」


「人的被害を最小限も最小限、馬鹿やらかした本人のみなんだからこれ位は頂くさ。

 カエラさん、今も物件を探してますか?」


「探してます、なかなか場所と広さ的に丁度いい物件が見つからないんですよ」


「それじゃ丁度良い、これを使いませんか? 俺は別口で買ったんで不要なんですよね」


「必要ないのにもらったなんて、さすがマグロさんですね」


「元はセクタルに買う予定だったんだけどね、だけどあそこは一時的な収束地でしょ、だから食料の買い付けならここが良いと思って買ったんだよね、俺達ならテレポーターで馬車ごと移動が可能だから広ささえあればかなりの融通が利くしね」


「マグロさん、必要ないから、と言ってますが、本当に良いのですか?」


「ここなら馬車用のテレポーターを設置するにはもってこいでしょ、商売では距離という概念が撤廃されますし、最適な場所だと思いますよ、まぁ、テレポーターは利用させてもらいますけどね」


「何度も申し訳ありませんが、お言葉に甘えさせていただきます」


「そうなると、そろそろ馬車の購入も必要になってきますね、まぁ、後一週間ほどもすれば発注してた箱馬車が完成しますから。

 馬は差し上げられませんが、馬車本体は差し上げますよ、ついでにカエラさんの馬車も特注品を発注しますか、素材は余ってますし」


「マグロ、お忘れですか? 帝都襲撃の際に二十台からなる輸送隊を全て回収しました、荷運びに提供されては如何ですか?」


「それだ! すっかり忘れてたよ、運んでた品ごと入れてたんだっけ、これなら農地を巡回して買い付けも楽だねぇ。

 カエラさん、荷馬車二十台、馬が居ませんが提供しますよ、荷物ごと」


「あの短期間でその様な事もされてたのですか、しかし二十台ですか、お話は嬉しいのですが、交易路の構築までお預かりして頂いてても宜しいでしょうか。

 賠償金のお話も出ていましたので、そちらからお支払いしたいのですが」


「必要になったら言って下されば即お渡しするとして、代金は不要ですよ、叩く必要があった敵部隊を叩いた際についでに頂いた無料の品ですし。

 其方は良いのですが、屋根付きの馬車は必要でしょう、どうされます?」


「素材は何を使ってるんですか?」


「外がミスリルで内張りが木だったかな? 金属なので軽量化の魔法陣込みですね、完成に合わせて一緒に行きましょうか、ついでにその時に発注しましょう。

 それに、俺達って馬車を長距離で使いませんからね、完成するまで使ってもらっても構いませんが」


「そこまで甘える訳にはいきません、一緒に向かった際に発注致します」


「とりあえず、大型のテレポーターが設置可能な建物があるかどうか見て回り、無ければ大工に発注するとして、一時的に小さい方のテレポーターの移動型でも置いておきますか。

 そう言えば、ライネルでの商店は確保されたんですよね?」


「ええ、大通りに面した商店を無事購入しました」


「資金は大丈夫ですか? それと、この屋敷とその店舗とテレポーターで連結させますかね」


「資金は一割も減っていません、テレポーターですが、直接の搬入先はマグロさんの所有地内ですから、大型のテレポーターで事足りますよ」


「言われてみればそうですね、大半の品はマジックバッグを大量に買う事で輸送も簡単ですし、後は買い付け先の選定ですか。

 ライネルの品を此方へ運んで売り捌くのも良いですね、鍛冶屋へ素材を下ろすだけで利益が出そうですね」


「そのアイデアを頂きます、とりあえず、求められてる素材の調査からですね」


 大型テレポーターを設置可能な建物が無かった為、大工に発注して小型の移動型テレポーターを設置、この屋敷にも結界魔法陣を設置した。

 俺が何度も来るかどうかわからない為、大型テレポーターの魔法陣1つをカエラさんに渡しておいた。

 

 余談であるが、務めていた者達は当然首になる為、下手をすれば路頭に迷う事になる。

 ラインハルトの独断でとばっちりを受ける訳だが、それでは余りにも不憫だと言う事で、一人当たり金貨十枚を渡して次の仕事先を見つけるまでの資金としてもらう。

 まぁ、元々俺の金じゃなくてラインハルトの屋敷に有ったお金だけどね。

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