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34:食料事情

 呼び出しを受け、現在地は王宮の中で陛下の御前である、謁見の間では無く会談に使うような応接室だ。


「よく来たなマグロ、新婚なのに急に呼び出して悪かった」


「滅相もありません陛下、何か急用なのでしょうか」


「うむ、我が国と友好関係にあるストレイル内で、我が国に送る物資が狙われている。

 急速に食料事情が悪化してるのだ、力を貸してくれ、我が国の軍部の者が他国で活動するのは不味いのでな」

 

 恐れていた事態が現実化した訳か、早々に手を打たないとライネルそのものが立ちいかなくなるな。

 ライネルが窮地になれば当然俺たちも被害をこうむる。

 直接的な戦闘による戦争ではないが交易路封鎖と言う手段を取られた訳だから、当然俺には戦争に映る、単に戦闘か交易か情報かの違いだけだな。

 売られた喧嘩だろうと戦争だろうと、俺の信念に従い手を下す、率先して受けるべき案件だな。


「冒険者ならば自由に出入りが可能、シャルの婿で信用の点でも問題ない、実力も問題ない為なおさら好都合、と言ったところでしょうか?」


「うはははは! その通りだ、なぜマグロを選んだのか教える手間が省けたわ」


「ライネルの食糧事情が悪化すれば俺たちも無関係ではなく、命に関わりますからね、そのご依頼、お引き受けしますよ陛下」


「そうなるとマグロへの報酬だな、何か無いか?」


 報酬か、それなら例の加工用に此方から提案しようか。


「それならば陛下、一点、素材を所望します」


「素材? マグロはかなり高品質の素材を持っているだろ、あれを超える素材は無いと思うが、具体的には何だ?」


「ファイアードラゴン種の骨をお持ちではありませんか?」


「ん~ 残念ながら今は無いな、軍部の装備生産に回したからな」


「それでは一体倒すご許可を頂けませんか?」


「すまんがそれは無理だな、今年は産卵期、この時期に狩れば個体数の減少に歯止めが掛からなくなるのでな、来年孵化し、三年経てばその個体は自立する、四年待ってくれるなら融通するぞ」


 現時点で無理にそろえる必要は無いか、待つべきだな、そうすれば確実に手に入る訳だし。


「そのような理由があったのですね、四年待たせて頂きます」


「そうなると、報酬の話が頓挫するな・・・こうしよう、マグロが今回の件を終わらせて帰ってきたら龍語魔法を教えよう、それでどうだ?」


 龍化を体験してみたかったんだ、シャルに聞くのが怖かったんだよな、何故かって? 聞く事さえ禁忌に触れる事ってあるだろ、それがこの件じゃないかと勘ぐってたんだよな。


「使い方が全く分からない状態でしたのでぜひお願いします、しかし何方が教官に?」


「アグニスだとあの性格では細かく教えるには不向きだな、ファサラ殿に依頼を出しておく」


 確かにアグニスさんは猪突猛進ぽいですからね、じっくり教えてくれる人が理想です。


「ご配慮感謝します陛下、それで、被害の発生してる襲撃地点に偏りとか、特定の商家が狙われてるとかありませんか?」


「ライネルから一番近いのはセクタルだが、このセクタルから我が国へと送られてくる、だが、この区間では襲われていない。

 襲われるのはこのセクタルに向かうマハタルからと、カスタルからだな、それと、一番襲われてるのはセクタルの商人でカサンドラの子飼いの者だ」


「ライネルから戻る際に運ぶ物資は狙われてないのですか?」


「ライネルへ向かう便と比べれば極僅かであるな」


「ふむふむ、そのカサンドラという方もライネルへ来られるのですか?」


「いや、来ないな、彼女はセクタルの領主でもあるのでな、その地から指示してるはずだ」


 頻繁に狙われてる、と言う現状ならカサンドラの近辺に敵対者が紛れ込んでる可能性が高いな、それに襲ってる盗賊へ情報を流してるのが確実に側近に居そうだ。

 一つの都市が食糧難担うほどの被害なら尚更だろう。


「なるほど、彼女の近辺調査も必要そうですね、それで、何処まで釣り上げますか?」


「彼女の指示を漏らしてる者が居るやもしれんが、何処までとは?」


「国の根幹部分に関わってる者が首謀者であっても排除して良いですか? お勧めなのは中途半端に足元を排除ではなく、暗躍などさせない様に頭は確実に潰す、ですが」


 半端に叩いて機能が残ればまた活動開始、なんて事もあるからな、根幹は確実に仕留めないとね。


「そうだな、戦を仕掛けて来たも同然だ、お勧めに乗るとしようか、では、これまでとする」


 一度屋敷に帰り執務室に集合し、カエラさん、セルとカロライナにも依頼内容を説明した。


「俺はストレイルについて何も知らないんだ、町の位置とか教えてくれないか」


「地図が御座いますのでお待ちください」


 待つこと5分程度。


「此方になります、ですが、大きな都市のみで村規模の村落は記載されておりませんのでご注意を」


 セクタルはライネルのほぼ真東で一番近く、マハタルは北方面の中央部で北にある聖王国ブラントに一番近い都市、カスタルは南部の中央部。

 名前の出なかったナノタルはマハタルの真東で海岸線沿い、同じく名前の出なかったリスタルは大陸の最南東端の海岸線沿いだ。


「なるほど、セクタルを拠点に捜索する方が速そうだな、マハタルとカスタル方面の両方に襲撃部隊を配置してるんだろ。

 囮を使って釣るか空間把握を頼りに探すかの二点だな」


「マグロさんの探査範囲なら街道を進むだけで、潜んでる盗賊程度見つけられませんか?」


「今なら半径七kmだし、盗賊ならそこまで離れると獲物狙うにも手間だろうからな、範囲内だとは思うが、そいつら以外の盗賊も対象に入るから片っ端に捕まえる必要がありそうだな。

 ただ、一国に影響が出るほどの被害を与えるとなった場合はそれなりの人数が必要だしな、奪った食料を売り捌く為に商人も加担してそうだし、十人以上の固まってる盗賊のみに絞るか?」


「それが最善手ですわね」


「マグロが受けたからには相手はズタボロになりますね」


「一人残らず殲滅なのにゃ!」


「話は変わりますが、カエラさん達はどうされます? ストレイルに拠点を作るのにいずれ行く必要がありますし、先方に着いたらテレポーターを設置して迎いに来ましょうか?」


「マグロさんのお言葉に甘えさせてください」


「では、到着早々に迎えに来ますから執務室でお待ち頂けますか?」


「護衛の者も含めてお待ちしますね」


「昼食後に出発したいと思ってたが、準備が整い次第すぐに出発するぞ、今回も走るぞ、馬車だと嵩張るからな、留守は任せたぞセルにカロライナ」


 十分程度で準備が完了して出発し、約二時間後のセクタル外壁門一km程度手前でカエラさん達を迎えて、徒歩十分ほどで門まで到達した。

 流石ライネルからの玄関口と言った所か、帝都ほどでは無いが外壁も五m程度とかなり高く、都市の直径も空間把握で何とかすっぽり入る事から六kmはありそうだ。

 騎士団の者達が武器や防具に矢などの消耗品、食料品を台車から荷馬車に積み変えているのが見て取れる中、門番の衛兵に身分証の提示をしたところ。


「冒険者か? それなら直ぐに冒険者ギルドに行ってくれ」


「どうされたんです? そんなに慌てて」


「スタンピートだよ、魔物の大暴走が南部のカスタルって都市に向かってるんだ」


 魔物の大軍が押し寄せて来る現象だったよな? よりによってこのタイミングか、だが、それで壊滅的被害が出ればライネルの事情が更に悪化するな、こちらの対応が最優先事項か。


「なるほど、緊急事態ですか、それで冒険者ギルドはどこですか?」


「直進して左手だ、その建物が三階建てで目立つから直ぐわかるだろう」


「わかりました」


(厄介な事になってるな、これから調査だってのに)

(そうは言ってられませんわ、この国が大打撃を受けてはライネルの食料事情が)

(こっちの対応が最優先事項に置き換わったって事か、カエラさん、一度ライネルへ戻りませんか? 不測の事態の中、動き回るのは得策じゃありませんから)

(そうですね、功を焦るとロクなことがありませんからね)

(では俺たちは討伐に参加して、食糧事情がこれ以上悪化しないように対処しますから、目立たない場所でテレポーターを設置しましょう、かたがついたら迎えに来ますね)

(ご面倒でしょうがお願いします)


 路地裏にてカエラさん達を送り、冒険者ギルドを見つけて入って行く。


『今回のスタンピートはカスタルとリスタル間でリスタル寄りのダンジョンから溢れてると連絡があった。

 ダンジョンからはリスタルが近いがカスタルを目指している、到着予定時間は明後日の夕刻だ。

 Cランク以上の者はクエスト依頼を受けて、準備が整い次第順次カスタルへ救援に向かってくれ、国家規模での脅威な為、国からの要請を受け、強制依頼となる。

 対象者は速やかに行動に移してくれ、北西側の外壁門から入れるてはずになっている』


『敵のランクはどの程度なんだ?』


『中級者、上級者用のダンジョンだが、最下層に至っては最上級だ、どの階層の魔物かの情報は無い』


 周りから色々な声が混ざりはっきりとは聞こえない。

 敵の強さ関係なく俺たちも参加だな、故意に目立ちたくはないがそんな事言ってる場合でもないからな。


「ギルドランク関係なく受けられるか? それと、先方とはテレポーターで繋がってるはずだろ、使えないか」


『緊急事態だから無論受けてくれるのなら歓迎する、現在はAランクとSランクの者が優先で、後は避難専用に使ってる。

 悪いが、対象者以外は他の手段で向かってくれ、馬車で向かった場合は通常で五日掛かるので迅速に行動してくれ』


「なら俺のPT全員で参加だ、手続きをお願いする」


『順番に並んでくれ、順次受け付ける、それとカスタルに到着した者はギルドマスターが指定した指揮官が居るはずだからその者に従ってくれ、PTメンバーと離れて活動するかもしれない事も考慮しててくれ』


 参加登録を済ませて冒険者ギルドの脇。


「屋台で食事を済ませて、ついでに食料調達して雑貨屋でロープとポーションを確保、盗賊が居ればその場で決めよう、それじゃ迅速に行動しますかね」


「その方が良いにゃ、余裕ある行動を、にゃ」


 食事を済ませて食料を買い込んだりして準備を済ませ、街道沿いに走ってると盗賊の集団らしき赤い点がマップの端に映り込んだ。


「皆ストップだ、十人未満の盗賊を三組放置してきたが、三十人規模の盗賊を発見した、例の対象かもしれないがどうする?」


「私たちの速度なら少しの寄り道程度は教養量の範囲だと思いますよ」


 聞いてはみたもののどうするかな、叩くのは簡単なのだが、利点と欠点を上げながら話してみるか


「叩くのは簡単なのだが、スタンピートでその間、手が付けられないよな、倒された事が発覚した場合に逃げられないだろうか?」


「マグロさんの言う事も納得できますが、カスタルには首謀者の一味が居るはずですよね、セクタルへ逃げる際に接触されたら盗賊共々逃亡されるかもしれませんよ」


「冒険者でも無ければ、今回のスタンピートでカスタルの首謀者の一味は逃げ出す確率が高いか、それなら盗賊の集団を捕まえて洗いざらい情報を吐かせるのも手だな」


「それでは止めはささずに拘束する方向で動きますか?」


「そうしよう、手足を砕いて逃げられない様にして、ロープで拘束するぞ、後はその場で流れに乗る形にしよう」


 マグロの先導で盗賊達までの距離、約200m地点に到着した、森の中だから相手には気づかれていない。


「洞窟のようだな、取り決めの通りよろしくな、では活動開始だ」


 マグロが先頭をきり一気に詰める、手足に一発ずつ【エアアロー】×四、撃ち込んで走り込む、罠は無いようだ、音で気がつかれた。


『敵襲だ! 応戦しろ!』

 

 切り込んで来られてもスローに見える、手加減するのがこれほど面倒とは、魔法を使うまでも無く、槍で軽く手足を折り、ロープで拘束して制圧完了する。

 全員死なない程度に止血して集める。


「セレス、入って右手の一番突き当りに隠し扉が設置してある、中身を根こそぎ取って来てくれないか」

 

「そっちは任せておいて」


「さて、お前たちのリーダーはどいつだ?」


『・・・・』


「まぁ、俺には洗いざらい喋ってくれる一人生かしていれば良いだけだからな、喋りたくなったら言ってくれ【ストファボール】」


 なるべく威力があり迫力がある魔法を選択した、溶岩が降りかかってくるからな、効果は抜群だ。


「ふむ、それじゃ次だな」


『待ってくれ! 話すから助けてくれ!』


『貴様、裏切るつもりか!』


『無理やり使われた挙句に殺されてたまるか!』


【エアアロー】 裏切者呼ばわりした一人の意識を刈りとった。


「それじゃ話してもらおうか、何を目的として活動してた?」


『セクタルのトップに仕えてる奴からの依頼で襲って、食料関係を奪っていた』


「それは領主のカサンドラに仕えてる奴って事か?」


『そうだ、カサンドラの側近だ』


ちょっと填めてみるか。


「マハタル方面に居た連中もそいつの差し金か?」


『そうだ、その言い方だと向こうの連中は喋らずに全滅した様だな』


 ビンゴか。


「カサンドラを裏切ってるそいつの名前も含めて経路順に役割と名前を話してもらおうか」


『側近の名前はクラトル、クラトル本人か他の誰かは分からないが通信水晶を使い、カスタル支部の者に知らせていた。

 受けていた者の名はサルラス、だが、この一人だけだとは限らない、俺が知らないだけかもしれないからな。

 そしてサルラス本人か内情を知ってる手下か、単なる部下かは分らないが、冒険者PT、リーダーの名はロドリゲス、他に五名いるが名前は知らない、全員が男だ。

 ロドリゲスのPTが襲う日時を書いた指令書を俺達へ渡し、手に入れた金はそいつに渡していた』


「その冒険者はどの様にして依頼を受けてたんだ?」


『長年の知り合いらしく、ギルドを通さず直接依頼してた様だ』


「そいつは黒に近い灰色って感じだな、捕まえる必要があるな、で、クラトルは誰からかその指示を出す様に命令受けてたのか?」


『そこまではわからない、俺たちは下っ端だからな』


「奪った品は売り払ってたんだろ? 買い取ってた商人とその資金は何処へ流してた?」


『卸先の商人は領収書があるからそれを見てくれ、それ以上は分からない、ロドリゲスのPTを捕まえてくれ』


「その商人も一味なのか?」


『わからない、売る相手を指定してたのはクラトルだ』


 襲う前段階から話を通してスムーズに買い取れる体制を作っていたのか、その商人、黒だろうな。


「ロドリゲスがその資金を渡す相手は分からないって事か?」


『そうだ、基本、俺たちは手紙を受け取り通過する日時を把握して襲い、それをカスタルで売却していた』


「それで、お前たちが襲ってた者達はどうなってたんだ?」


『口封じだよ』


「って事はお前も手を出してたんだよな」


『そうだ、仕方なかったんだよ!』


「さっき言ってたな、無理やり言う事をきかされたと、手段は何だ?」


「襟の長い服を着てるから見えないだろうが、俺は奴隷だ、幸い、あんたの魔法で死んだ奴が主だから話すことが出来るんだ、本来なら一言も話せないんだがな」


「確かに奴隷なら主次第で無理やりか。

 シャル、ストレイルの法で裁いた場合、この場合の罪はどうなるんだ?」


「本来なら主より先に奴隷が死にますわ、ですからその辺はうやむやですが、彼が奴隷であれば、罪は全て主の責任ですわね」


 他の者と別にしてカエラさんに判断してもらおうか、それで奴隷だった場合は無罪放免だな、これだけ情報を聞き出せれば放逐しても問題ない。

 支度金を少し渡せば良いだろ、資金0では何をするか分からないからな。


「なら、彼女に確かめて貰えばすぐわかるな、その手の専門家だし、それじゃこの場は完全に回復させて、確認がとれるまで拘束させてもらおうか、良いか?」


「彼女って人が誰かは分からないが、確認作業をしてもらえるのなら助かる、ありがとう、拘束は当然だな、確認完了するまで大人しくしてるよ」


「マグロ、ありましたよ、指令書と売却先の領収書ですね、買い取った商店の印もあるから卸先も探しやすいはずです」


「売却先の商人は何人も居るのか?」


「一人のみだ、その人にのみ売っていた」


「商人なら商人ギルドに登録してるはずだ、それに、税金の計算の為にも帳簿があるはず、金の流れを確認するのも手だな。

 それで? 他の連中は何か言う事あるか?」


『貴様程度が動こうと解決する訳無いだろ、諦めてとっとと消えるんだな』



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