33:結婚
翌朝、食事後食堂にて。
「セル、カロライナ、メイドが五人減り、住まう者が増えたからな、その分も含めてメイドさんを募集したいと思ってるんだけど、どうかな? 五名+αで」
「お気遣いありがとうございますマグロ様、では七名募集したいと思いますが、如何でしょう」
「人数増えた分が二名で良いのか? もう少し増やしても良いと思うが」
「はい、五名も含めまして七名で良いと思います」
「ではそうしよう、俺には当てが無いから二人に頼むよ」
「お任せください」
「話は変わるが、今日は魔道具店、服屋、武器屋とその後にシャルの実家に行こうと思う、時期的に武器も出来上がってるからな。
シャル、突然お伺いしても大丈夫かな?」
「母さんが居るはずだから大丈夫ですわよ」
「それなら全員で行こう、顔会わせも必要だからな、セル、先ぶれで窺う旨を伝えてくれないか」
「承りました、行ってまいります」
魔道具屋で聖銀製の杖、風属性の暴風竜スカイロッドを四本、特注品の暴風竜エクスストームロッド一本を受け取り、シャル、ティア、シェルへ渡してウロボロスロッドと雷鳴の杖を回収し服屋さんへ。
服屋では謁見用の礼服と結婚式用の婚礼服を受け取り武器屋さんへ。
「ロンバルト、注文してた突撃槍を受け取りに来たが居るか?」
「・・・・・」
「加減しろと言っておいて、やっぱり駄目じゃないか、ロンバルトォーーーー! 受け取りに来たぞ!」
「ウルセー! いい加減にしろよマグロ!」
「普通に最初呼んだだろ! 聞こえない様だから叫んだんじゃないか、それじゃ気がつくまで待ってろって?」
「すまん、打ってたから聞こえなかったんだ、謝るよ」
「良いんだ、そんな気にする事じゃないからな、ロンバルトは売り子さんを雇わないのか?」
「うーん、半端な知識でお客に武器を売らせたくないんだよ、だから俺が応対してる」
「なるほどな、それなら雇えないな、それで三本はできてるかな?」
「できてるぞ、五,五mあるから持って来れないんだ、ちょっとついて来てくれ」
鍛冶場横の倉庫に横倒しでパレットの上に置かれていた。
「見事な品だな、一本だけ黄色味がかってるのがオリハルコン製か、素材違いだけど全部同じ名前なんだな」
鑑定
暴風竜突撃魔槍
製作者:ロンバルト
品質:最高品質
素材:オリハルコン・聖銀:聖銀:ミスリル【全てにストームドラゴン骨】
注釈:魔力を流すと貫通力アップ
「ドラゴンの骨を混ぜて風属性付きの魔槍になってるからな、魔力を通せば貫通力が増すぞ」
「ほうほう、これなら結納の品にしても格が有って、もってこいだな」
「勿体ないほどだな、オリハルコン製は家宝だろう」
「それで、通常の槍と弓とダガーとかの目途はついたか?」
「全部一緒に渡すとした場合は3週間前後だろうな、先にどれを作ったが良いか、要望があれば先渡しにできるぞ、どうする?」
「今の所、困ってはいないから纏めてで良いよ」
「わかった、気が変わったら言ってくれ、中途半端に打ってる最中だとずれ込むだろうが、融通は利くからな」
「それじゃ残りをお願いする、宜しくな」
鍛冶屋を後にし、食堂で昼食をすませてシャルの案内の元、馬車で向かってその屋敷が見えた頃。
「あそこが我が家ですわ」
「王宮にも近いし、規模も大きさもうちと同程度だね、シャルが姪って事は、陛下の親戚なのか?」
「父が陛下の弟なのですわ、他の国の地位で言うと近衛騎士団長でしょうか、正式名は竜騎士団長ですわね」
「竜騎士って言うほどだから空中戦専門だよね、飛んでる所を見た事無いけど、活動はどんな感じなの?」
「ライネルの北部外壁から北に行った所が基地ですわ、訓練もそちらですから普段は見ませんわね」
と玄関前に到着し馬車を下りる。
なるほどな、町の上を飛び回る訳にもいかないか、それなら地上部隊と別の場所に拠点を置くのは理に適っているな。
「シャル様、お帰りなさいませ、連絡は受けております、それでは皆様もご一緒に、此方です」
執事だろうか、貫禄のある少々老けたご老人が先導し、一つの部屋の扉をノックする。
「お嬢様方がお越しになりました」
「案内御苦労、入ってくれ」
入室する。
「よく来たな、アグニス=ヴァンティユだ、そこに居るシャルの父親だ」
髪を短髪に切りそろえ、顔も厳ついが体はゴリラかというほど鍛え上げている、今は立っている為そのウザさと言ったらこの上ない、二m程度ありそうだ。
「父様、お久しぶりです、此方、怪盗=マグロさん、そして同じく妻になります、セレスティーナ、ティルア、シェルアスですわ」
「お初にお目に掛かります、冒険者で怪盗=マグロと言います、このたびはお嬢様のシャルさんとの結婚をお許し頂きたく思い、訪問させて頂きました」
右手を左胸に添え、左手は腰に回して頭を下げる、貴族の挨拶の仕方らしい。
「ふむ、なるほどな、陛下とシャルからも話は聞いている、だが、実力の無い者にシャルは渡せん、俺と摸擬戦してもらおうか」
「お止め下さい父様、本来の姿にもどり、全力で戦っても負けますわよ、いえ、死にますわ」
「おいおい、転生して一ヶ月にもならない者に負ける訳無いだろ」
「マグロはLv7百オーバーですわよ、鑑定して構いませんから、摸擬戦は取り下げて下さいまし」
「そこまで言うなら鑑定するぞ」
鑑定
怪盗=マグロ
年齢:16歳
Lv:705
種族:竜人族(特殊)
職業:ウィザード
状態:良好
HP:277297
MP:200481
STR:52860
VIT:44392
DEX:38401(350)
INT:46798(350)
LUK:31705
・
・
・
・
「・・・・、わかった、取り下げる、実力は十分だ、結婚を認めよう」
「さすがお父様ですわ! ありがとうございます」
「アグニス様、お認め頂きありがとうございます、つきましては結納の品を持参しております、此方にお出しして宜しいでしょうか?」
「娘婿になるんだ、様は必要ない、それでは見せて貰おうか」
我が家の食卓並みに広い部屋だったのでその場で出した。
「それでは義父さん、此方になります」
「ほう、これは中々の品だな、気に入った、この一本は家宝とし、俺が使おう」
「義父さん、それで式などは如何しましょう、此方の習慣を知らないのでご教授願いたいのですが、それと日取りなどの取り決めを」
「何だかこそばゆい呼ばれ方だな、だが俺だけでは決められんな、ちょっと待っててくれ」
部屋を出て戻って来た際には一人の女性を伴っていた。
シャルより結構背が低いか、俺よりも低いが、背の高さは百七十cmと言った所か、顔は目じりが下がっており何とも優しそうな感じだ、奇麗と言うより可愛いな、体つきもふっくらしておりガッチガチに鍛えてる感じはしない、その分という訳ではないが胸が半端じゃなく大きい、確実にセレスより大きいな、根のやり場に困るが目が引き付けられる。
人妻をここまで観察しても良いのかね、と思うマグロだった。
「ファサラ=ヴァンティユよ、貴方がシャルのいい人なのね」
「お初にお目に掛かります、冒険者の怪盗=マグロです、この度はお嬢様との結婚をお許し頂きたくお伺い致しております」
「それに関しては俺が認めた、この三本の槍が結納の品だ、一本は俺が使わせてもらう。
それでなんだが、マグロは此方の習慣を完全には把握していない、我が家主導で進めた方が良いと思うがどうだろうか?」
「そうですね、それが宜しいでしょう」
「それなら二日後だな、マグロの邸宅で行う、陛下への連絡は俺がしておこう、ファサラ、マグロの邸宅へ赴き手伝ってやってくれないか」
何言ってる! どれだけ準備が忙しいか考えてないのか? 料理準備するのも大量に作る必要があるからそれなりの調理器具もだが、何より食材も買い込まなければならないし、下準備も当然必要。
食器や食卓に椅子も全然足りない。
先方への案内状とか出さないといけないし、こんな急では先方に迷惑が掛かるだろ、これはマジで最悪な展開に。
「ちょっと待って下さい、義父さん、それは準備期間が短すぎるのでは」
「明日でも良いんだがマグロ達の準備が間に合わんだろ、そこは配慮してるぞ」
むちゃくちゃな事言ってると思うんだけど、こっちの常識かのか?? しかし、猶予を考えた上で明後日ってひどくないか、もうどうにでもなれ!
「はぁ、此方の常識なのだと思って従います、よろしくおねがいします」
(マグロが納得しちゃったのにゃ)
(恐ろしい展開ですわね)
(シャル、お前の父だろ、ちょっと余裕を持てとか説得しろよ)
(嫌ですわよ、父に意見しようものなら、逆に明日が結婚式になりかねませんわ)
(どんな思考してるんだ? これは仕方ないとして明後日開催しか、何か手が無いのか?)
(マグロ、諦めるのにゃ)
(ご愁傷様です、マグロさん)
(ご愁傷様とか言ってるけど、シェルも被害者なんだぞ、準備がどれだけ大変か考えてみろよ)
「マグロ聞いてるか? この三本の槍は持って行け、婚儀の際に結納の品を飾る習慣があるからな、迎える側の誠意がどの程度なのか知らしめる為だ、誇って良いぞ、確実に家宝クラスだ」
ファサラさんを連れ、屋敷に戻るとそこからは戦争だ。
足りない品の買い出しに、料理の仕込みに、婚礼服を実際に着ての細部調整に、各種テーブルに装飾品の飾りつけと、散々な目に遭いながらも当日を迎えた。
はっきり言おう、本番よりキツイ、絶対キツイ、寝る暇が無いじゃないか!
この件でとばっちりを受けた者達がいる、それは、新たに加わった女性七名だ、この件では募集人数に対して応募者が五倍ほどになったらしい、職場環境や待遇が最高だと巷で評判、そんな事もありセルは颯爽と昼には連れて来たらしい。
原因は確実にアグニスさんだ、シャルに聞いたところ、ダラダラするのが嫌いらしい、予定があればさっさと済ませるタイプで決めたら一直線との事だった。
当日は神官による式が終わり、陛下による挨拶があり立食パーティーだ、貴族階級の方達から御礼の言葉を貰う、マグロにとっては嫁さん自慢大会であったが、相手の事なんて覚えていない、へばりきってるからな。
終了後は皆ぐったり、翌日は全員に休息を言いつけ、食事も全員で外食だった。
一応初夜は済ませたぞ、俺の要望をごり押しして相手はセレスのみだけどな、例の避妊薬を俺が飲み事を行った。
一言いうと暖かい、安心できる暖かさだった。
異種族間で子供が生まれたらどうなるんだろうな、特に種族が、表示が竜人族だろ、それとハイエルフだ、耳の尖った見た目竜人族で竜化可能な種族にでもなるのかな、後で聞いてみたい。
結婚により名前が変わった。
怪盗=マグロ=ヴァンティユ:頼み込んで婿扱いにしてもらった、怪盗=シャル=ヴァンティユなんて なってほしくなかったからだ。
シャル=ヴァンティユ、彼女はそのままだ。
カイトウ=セレスティーナ
カイトウ=ティルア
カイトウ=シェルアス
となった、冒険者ギルドカードは更新しない、そのままだ。
追加された七名も後日、クランへ加入させた。
四日後、陛下より呼び出しがあり王宮へと赴くことになった。
この二日間にはテレポート用魔法陣をどんどん増やした、テレポート用を二つにテレポーター用を五つ増やして七つに、その内二つは持ち運べるように鉄板に魔法陣を作って持ち歩く。
残り五つも含めて行先が決まれば羊皮紙に書き、貼り付ける予定だ。
そして本屋敷裏の二棟も扉や屋根が完成し、馬車でも転移可能な巨大なテレポーターを設置する。
一つの魔法陣に大魔石六個を使い、外には十cmの厚さの鉄板に各魔石が入れ替わらない様に設置され、食堂の椅子で検査する。
魔石の位置が入れ替わり、ねじれながら転移したら死にそうだから慎重だ。
外から魔力を注ぎ込み、全体に満遍なく通す方法と、片側から偏らせて通す方法を試した。
全体の方法では発動もスムーズだったが、片側から通す方法だと手前は飽和するが反応せず、反対側が一定レベルに魔力が込められると発動した、これなら安全だな。
後は向きを考えないとな、建物に設置した入口側と同じく外の鉄板の魔法陣にも同じ側に印を付ける。
鉄板側から移動を行う際には印側から乗り上げて魔法陣に突入させると、建物側へ転移した際には前に進めば外に出られる計算だ。
もう一つの建物側も完成させ、鉄板魔法陣は無限収納袋に入れて持ち歩いた。




