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17:予想の範疇

 エントランスにて合流し、もう一度職員に声をかけようとしただんになると、横合いから見知らぬ男性に声をかけられた。


「八十九番の方だな、エリクサーを一本譲って頂きたい」


「なんだぶしつけに、俺はこれから予定が有るから時間が無いんだが」


「申し訳ないがどうしても必要なんだ、一本譲ってくれ」


「そうだな、何も提示せずお帰り願うのも酷か、では白金貨二枚と金貨二百枚で一本譲ろう」


「な、そんな大金は支払えない」


「すでに俺の所有物だからな、白金貨二枚で手に入れた品だ、利益も無しに譲れるはずないだろ、欲しければ売るよ、だから提示した金を持ってくるんだ」


「くそっ、後悔するなよ!」


「するわけないだろ」


 必要だから譲ってくれって言って来たのだろけど、これは流石にないな。

 せめて今現在支払える金額を提示して、それでも足りないなら減額の交渉とか、残金をどうするか話し合って決めるべきだろうに、今の男性が調達役なら永久に手に入らない気がするな。


 四人で職員の元へ。


「待たせたな、それでは案内よろしく頼む」


「此方です、ご案内いたします」


 地下二階の冷凍倉庫に案内され、ストームドラゴンと対面する、地下の方が断熱効果も上がり無駄な保冷が必要無いんだろうなとズレた考えをしているマグロだった。


「単に五十mと言われたが、これは恐怖心を煽るなぁ、正直、これと相対しろと命令されても逃げる自信があるぞ」


 見た感じは東洋の龍に近い感じ、そこまで細くは無いが、蛇に手足と翼が二対あり、雄の鹿より複雑な形をした角が生えている、全身水色より少しばかり濃い色合いだろうか、全身鱗で覆われているが翼は皮膜で形成されている、こちらは防具の関節部のつなぎ目やマントにうってつけな感じがする。

 それにしてもズタボロだな、特に首元がかなり傷んでる、出血させて弱体化を狙ったのだろう、相手が相手だ、一撃必殺とはいかないよな。


「凄いサイズですね、マグロさん」


「流石マグロにゃ、これを買う財力があるのにゃ」


「近くに寄りたくない程の迫力ですね、マグロ」


「そうでしょうね、初めましてミストルです、高額で落札してもらってありがとう、これで死んだ者へも良い報告が出来るよ」


「冒険者のマグロと言います」


「一言お礼が言いたかったんだよ、君も今から契約などで忙しいだろうから失礼するよ、改めてありがとう」


 握手を交わして別れるとがっしりした如何にも冒険者で、しかも近接職ですと言った風貌の男性から声をかけられた。


「ここ帝都の冒険者ギルドマスターで名はガイエンだ、現物も確認してもらったことだし契約を済ませてしまおう」


 冷凍庫で契約をする訳にもいかず、同じ階層のこんじまりとした部屋に案内され、この部屋で契約を執り行うと言う事で、お金を支払う段になった。


「代金の白金貨一万六千枚です、ご確認ください」


 場所を指定され、取り出すが、袋に入れてない為ざらざらと小山にする、する事も無いので部屋の片隅で確認作業を見守り、職員数人がかりで白金貨百枚単位で巾着に分けて行き確認が終わった頃。


「確認は完了した、それではこの書面を二通作成し割り印を押す、それをそれぞれ一枚ずつ保管する、簡単に言えば販売証明書だな、所有権の証明にもなるって寸法だ。

 では名前と血判を押してもらおうか、俺の名前と血判は押しておいた」


 名前を二枚に書き、準備されたナイフを使い、それぞれに血判を押す。


「これでよろしいですか?」


「これで完了だな、持ち運びはどうする? 期限が過ぎれば延滞料金が発生するが」


「収納袋が有るので心配いりません」


「ほう、この質量を入れられるとは国宝級だな、買うことが出来たのも納得できる」


 帝国を敵に回した感じがあるから聞いておくべきだな、それとお願いもしておかないとな。


「質問して宜しいでしょうか?」


「わかる事で、話しても良い範囲の事なら答えるぞ、それだけの金額を付けてもらったしな」


「騎士団が犯罪を犯した者を捕縛する際の手順はどうなってますか?」


「罪状の告知をして水晶による犯罪の鑑定だな、もしくは都市の出入り口の様に犯罪の鑑定を施し罪歴があれば即連行される、それと罪が確定するほどの証拠があれば一気に踏み込んで拘束し、即連行だな」


「水晶はどの部隊でも確実に持ち歩く品なのですか?」


「騎士団は一個小隊が十一名なのだが、この人数が最小の単位で常にこの人数だ、その小隊長が持つ事が義務付けられている」


「ふむふむ、それと貴族様方への侮辱罪は分かりますが、騎士団員に対しては発生しますか?」


「貴族家の次男や三男が入隊している事が多々あるが、入隊した時点で騎士団員と肩書が変わり、これが優先されるから発生しないな、もしかして想定してるのか?」


「ええ、帝国の宰相閣下がドラゴン落札に参加されていました、入札した際に睨まれましたので、確実に帝国に対して横やり入れた形になりました。

 もしかしたら大きな商会などには手を回して出来レースだったのかもしれません」


「なるほどな、可能性はあるか」


「この場合は冒険者ギルドとして、どの様な立ち位置になりますか?」


「難しいな、基本的に国相手でも対等な位置づけになっているが、帝国からの圧力では無視はできないからな」


「その言い回しなら、仮にですが俺達が一方的に命を狙われた場合、冒険者ギルドは静観に徹すると言う事ですか?」


「その様な対応にならざるを得んだろう、仮にだがその際にマグロ達を保護した場合、冒険者ギルドが帝国と事を構える事になりかねん、それでは無関係の者達を強制的に巻き込んでしまうからな」


「無実だと分かっていても加入している冒険者を保護するつもりは無いと言う事ですか?」


「言い方は悪いが結果的にはそうなる」


「うーん、ちょっと整理するか。

 加入する事のメリットはPTを組む事での経験値の均一化。

 何処の国でも入れるフリーパス的な身分証。

 素材を取得した後何処の国でも売却可能なシステムの利用。

 税金支払いの簡素化。

 仕事はランク化されていて実力に見合ったものを選べる事って処か。

 デメリットは仕事を受ける際にランクによる縛りを受ける事。

 スタンピートなどの脅威の際に強制的に国からこき使われる事。

 国と対等と言いながらも対等では無く国から目を付けられた場合、ギルドは見放し冒険者を切り捨てる事。

 下手をするとギルドの対面を保つ為に冒険者に負担を強いらせる可能性があると、こんなところかな?

どうかなガイエン殿」


「良くも悪くもマグロは頭が切れるな、最後の二点は今回の事も含んでるのなら可能性としては有り得ると言っておこうか」


「それじゃついでにもう一つ、経験値の均一化なんて特殊な手段を用いる必要がある、その手段を冒険者ギルドは知っている訳だ、各個人でその仕組みを利用してPTを組む事は可能ですか?」


「・・・・・・」


 図星か、顔つきが険しくなっていやがる。


「なるほど、可能だけど他言できませんって事か。

 脱線しましたが話を戻します、この後サパンにテレポーターで移動し、何かと手伝って頂いた冒険者ギルド職員のキャロルと話をして彼女を連れ出そうと考えてます」


「それは止めておいた方が良いな、気が付いてると思われるから短期決戦で一気に大軍を使ってくるかもしれん、今晩はここに泊まり、明日馬車で戻るのが相手を警戒させない手だろうな」


「それでしたら何かあった場合はキャロルを保護して頂けませんか、俺の経歴を探ると確実に彼女に辿り着きます、捕まったら拷問をしてでも情報を得ようと動く可能性が有りますので」


「動きを察知したら保護すると誓おう、だが帝国が動いた場合は確実に一個小隊以上の数が向かうが対処できるか? 無理なら一気に帝国外に移動しないとまずいからな」


「百人や二百人来られても対処法はあります」


「それなら帝国の動きに合わせて対処したが良い、動くとも決まっていないからな」


「色々なご助言有難うございます、有事の際はキャロルをよろしくお願いします」


「此方は任せてくれ、気をつけてな」


「有難うございます、それでは失礼します」


 ドラゴンを回収し、冒険者ギルドに向かい、二人を加入させてPTへ参加させ、暁の宿へ向かった。


「すまない、オークションは終わったが部屋は空いてないか?」


「大部屋が空いてございます」


「ではそこに移る、4人だ」


 支払いを済ませ部屋に案内される、流石大部屋、ベッド8つにソファーやテーブルも人数分きちんとある、長期滞在用にタンスも常備されているようだ。


「全行程抜けも無く済んだな」


「そうですにゃ」


「宰相閣下が睨んでたので例の件が現実味を帯びてきた、それで全員防具を装着したまま、直ぐに武器を取れる位置に置き寝る事とする。

 その場で指示を出すので各自勝手な行動は控える様に、以上、食事をして寝ようか」


 一階に降り食事を済ませて全員にクリーンを掛ける、セレスに抱き着き寝るがいつもの感触を堪能できないのが残念なのである、その夜・・・


「起きろ、お客さんだぞ」


 モゾモゾと動き出し、少し時間が掛かったが三人とも起床した。


「最悪の事態が現実になったのですね」


「相手がわからないから最悪かは不明だな、ざっと五十五名で宿を隙間なく囲んでる。

 戦闘態勢に入ってるらしく武器も抜いてるな、踏み込まれても厄介なうえに巻き込んでしまうからな。

 ここは俺に任せてもらうぞ、幸いな事に魔力量の高い者は混ざっていない、魔法抵抗は低いだろう」


「壁ごと撃ち抜くおつもりですか?」


「そこは大丈夫だ、神からアドバイスを貰っているからな、魔法は想像力だと、曲射だ、上空からの頭を打ち抜く、少し静かにしてくれ」


 壁越しに外へ魔力を通し、宿の外に魔法を展開、上昇した後方向を変えて建物に当たらない様に当てる、通常より5倍強化【エアアロー】×五十五、発射!


(グフッ)(ガハッ)


 いろんな叫び声が混ざる声が響く、射ち漏らしが無くて何よりだ、これだけ派手遣ると相手も何か仕掛けてくるだろうな、ま、俺達が殺した証拠は何一つ出ないが。


「五十五名の死亡をもって終了だ、朝までまだ時間はあるから寝るぞ、朝に誰か来るかもしれないが、対応は俺がするからみだりに話さない様に、いざとなったら強行突破するからそのつもりで」


「わかったわ」「わかった」「わかったにゃ」


 そして朝を迎えた頃、かなり強めのノックが響く。

 やっぱり来たか、それも他の部屋には行かずに俺達の部屋だけピンポイントで、そうなると商業ギルドからも情報を受け取っている事が予想できるな、もしかすると紹介したカエラさんにも被害が・・・


(騎士団の者だ、話があるので開けてもらいたい)


「身支度済ませますのでお待ちください」


 目配せしてマントを羽織りドアを開ける。


「お早うございます、何事でしょうか?」


「貴殿らには殺人の疑いが掛かっている」


「殺人? 人が死んだのですか?」


「そうだ、この宿の周囲で五十五名亡くなった」


「宿の周囲で? それも五十五名もですか!」


「そうだ、それで事情聴取に協力して頂きたい」


「協力はしますが、宿屋に入って以降は宿屋から出ていませんから、そこは宿屋の方にお聞きになって下さい、私達の所に来たと言う事は容疑者なのでしょう?」


「そう言う事だ」


「確かに私達は遠距離で攻撃する手段を持ち合わせていますが、周りにおられる方全員を宿の中から倒す事は不可能です、宿屋を爆散させるか壁ごと撃ち抜くしか方法がありません。

 宿の壁に穴が開いてたりするのでしょうか?」


「確かに貴殿の言うとうりだな、宿に損傷も無く角度から考えて不可能だな、どうしたものか」


「水晶での犯罪証明を4名ともしましょう、お持ちですか?」


「それが最善手か、では4名ともご協力を」


 無論相手が敵対し武器を構えていたので罪歴は付くはずもなく無罪だった。


「これで証明出来ましたね。

 そもそも殺された方々の身分はどの様な方だったのでしょうか?」


「服装は皮鎧だったが武器は騎士に正式採用されている武器だった、この事から騎士団に所属している者で間違いあるまい」


「と言う事は五十五名だった事から五個小隊で動いてた訳ですか」


「その様に考えるのが妥当であろうな」


「私達は商業ギルドで品を受け取ったた後、冒険者ギルドに立ち寄りこの宿に入りました、そして今皆様がこの部屋へと来ておられる事から五十五名は夜間に殺された訳ですよね」


「そうだ」


「そもそもその五十五名は何の為にこの宿を取り囲んでいたのでしょうね、それも夜間にですから、人目についたら不味い事でも企んでいたのでしょう、五つの小隊を纏めておられる方は何方です? 作戦目的を聞く必要がありますね。

 まあ、確実に言える事はこの宿に宿泊している者をターゲットにしていた事は確実ですね、そう思いませんか?」


「・・・・・・」


「聞かれても分かりませんか、ま、死亡された方がどこの所属か調べれば何を企てての行動なのかはっきりするでしょう。

 この事件を調べておられるのでしたらその事を調べて頂けませんかね?」


「・・・・・・」


 ここの部分を追及しても答えれないか、疑問点を追及してやれば帝国の上層部が悪だくみを画策している事に気が付くだろ、とりあえずはそれで満足しとくか。


「ふむ、断言できませんか、それで、ここにお泊りの他の方にも事情徴収を?」


「いや、我らは貴殿のみの事情聴収しか聞いておらぬ」


「それは変ですね、なぜピンポイントに我らのみでしょうか? 宿泊している方全員が容疑者のはずですがご指示された方はどなたで?」


「それは答えることが出来ん、ただ、そう聞かれれば不信な点が多いな、倒す方法が無い相手に対しての事情徴収か・・・・攻撃が不可能な点と水晶による検査で犯罪経歴が無い事で無罪である、と報告させて頂く」


 騎士達が撤収し、会話がが聞こえない距離に行った事を確認すると話し合った。


「第一関門は突破、と言ったところか、また何か仕掛けてくるだろうな、俺たちだけを事情聴取対象にしてたことからある程度は調べてるだろうからな」


「相手の動き次第で対処療法するしかありませんね」


「一瞬で55人を倒すマグロ相手に何人連れて来るかにゃ」


「頼むからティアは攻撃に加わるなよ、何だか言葉を聞いてると突っ込みそうで怖いんだよな」


「コソコソするのは得意なのにゃ、後ろに回り込んでボコボコも可能なのにゃ」


「マグロさんを困らせちゃだめですよティア」


「わかったのにゃ」


「魔法で対処するから無防備に突っ込むなよ、そんな行動されたら下手すると巻き込むからな」


 事情徴収も終わり、食事を済ませ帝都を出るべく馬車に乗り込み街道を進んで行った。

 案の定と言うべきか、俺達がテレポーターを利用しようとすると調整に入る為数時間使用できないと通達を受けた。

 ある意味予想の範囲内だな。

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