10:襲撃
食事を済ませて昼食を受け取り、無限収納袋に放り込むと西門へ向かう。
「セレス、例の奴らの反応が町には無い、襲撃の可能性が高まったから注意してくれ、噛み破るつもりで填めたから襲撃してくれると嬉しいのだが」
「マグロは魔法主体なのですよね」
「そうだよ、まだ範囲魔法は作っていないから単体攻撃用のみになる、だが多重起動するから大丈夫だ、どっしり構えてくれれば良い」
近くに行くと業者の方が叫んでいた。
「帝都への馬車になります、銀貨五十枚です、ご乗車の方はいらっしゃいませんか」
「待ってくれ、二人だよろしく頼む」
「金貨一枚になります、そろそろ時間ですので乗り込んでください」
金貨一枚取り出して渡す。
「ではこれを、よろしくお願いする」
ギリギリだったか、早めに出て来たつもりがもう少しで予定が狂うところだった。
自分達を含めて全員で七名乗り込み出発した。
休息地点に到着し、昼の食事が済み、出発してしばらくした頃。
マップに例の五人らしき赤い点が表示された、町一つをテレポーターで移動して逆走して来たんだろうな、俺が仕掛ける側なら同じ手を使うだろう。
(前方三kmほど先だが左奥に三名、右側手前に二名。
前後から、それも斜めに挟み込むつもりらしい、だが相手が武器を抜く前に絶対に仕掛けるな、業者と客に相手が仕掛けて来た事を証明してもらう為にな。
それと躊躇せず殺せよ、でないと此方が死ぬ事になるぞ)
(マグロ、私は何方を狙いましょうか?)
(そうだな、前方は馬車や馬で射線が取り難そうだから後方を頼めるか、俺は両方を直線的に狙える位置を確保する、俺と相手の射線上に入らない様に気を付けてくれ、相手が何か言って来てもスルーしてくれ、俺が対応する)
(はい、近すぎる場合は弓だと不利ですので魔法を使用します)
そうこう調整してる間に挟み込まれる中間地点に到着した直後、相手は武器を抜き放ち馬車の通り道を塞ぐ。
『そこの馬車止まれ! 御者は客を全員置いて行け、そうすれば助けてやる!』
即下りて位置を取りつつ対抗して叫ぶ、同時に魔法を展開する、通常時の倍の圧縮率にして起動し待機【エアアロー】×五十。
「盗賊が何言ってやがる、通すと見せかけ横合いに来たら馬を殺し、足を奪って後はなぶり殺しにするつもりだろ!」
『俺たちの狙いは貴様だけだ、他の連中は助けてやるさ、他の奴らはさっさと行け!』
「何をほざいてる盗賊が! 素手の相手に殺す気満々で武器を振り上げてる状態で説得力あるわけないだろ!」
『問答無用だ! 遣るぞ!』
「結局皆殺しにする気じゃねえか!」
それを皮切りに走り込んでくる五人に対し待機していた魔法を発動する、前方に三十発、後方に二十発、見えない攻撃に回避出来るはずもなく全弾命中。
後方は更に哀れだ、セレスは弓術の【ソニックショット】と水魔法の【アシッドブラスト】をそれぞれに当て、あっさりと決着がついた。
「グァアアアアッ」
(お見事ですマグロ、可哀そうな位過剰攻撃でしたね)
(セレスも容赦ないな、だが、それでいいんだよ)
「これで少しはこの街道も安全になるだろう」
「そこの冒険者の方、助かったよ、あなたが居なかったらどうなっていた事か」
「後始末は如何すれば?」
「倒した相手の資産は倒した方の資産となりますが、騎士団へ報告義務が生じます、懸賞金付きの盗賊の場合は恩賞が出る場合が有りますよ」
こいつらの資産もセットにして丸投げするか、そうすれば先日の件と結びつける証拠が残らないからな。
「それはそれで面倒だな、おーい俺は資産放棄するから後始末までするって人は居ないか? 複数居たら揉めない様に頭割りしてくれ!」
同乗していた五人が傍に寄って来る。
「あんた太っ腹だな、それなら俺たちに任せてくれ、一つのPTだから揉める事も無いしな、事情聴取まできっちり終わらせるからさ」
「それなら任せるよ、面倒ごとを任せてしまって悪いな」
「なんのなんの、こいつらの資産を貰えるなら安いものさ」
決闘騒ぎで殺した相手のPTがマグロを狙った事件だと発覚する事無く闇に葬られたのだった。
トラブルはこの一件のみで魔物との戦闘すらなく三日目夕刻に帝都に到着した、被害に合ったのはお尻のみである。
「お世話になりました」
「卸者さん、商業ギルドの近くでお勧めの宿ってありますか?」
「それならここからまっすぐに西へ行って中央大通りから南へ、左手に暁の宿って所がお勧めだよ」
「ありがとうございます、お世話になりました」
「セレス、宿屋を確保して食事したら冒険者ギルドに行ってくるよ、カエラさんから地図も貰ってるから直ぐに行けるしな。
連絡が可能ならキャロルに連絡入れてくるよ、馬車での移動で体があっちこち痛いだろ、部屋で休んでてくれ」
「それでしたらマグロが休んでいて下さい、私が行ってきます」
「何かトラブルになった場合にはセレス一人では判断が出来ない場合が有るだろ? と言っても常識の足りない俺にはセレスにきて貰った方が良いか、二人で行こう」
「はい!」
暁の宿で唯一空いていたダブルルームを確保し、食事を済ませて冒険者ギルドに向かった。
「夕食時だけあってギルドを酒場代わりに使ってる冒険者が多数居るな」
「報告もすませてそのまま食事までってところですね」
(俺もあんな美女を侍らせたいな)
(あんな上玉、ほいほい居るもんじゃないさ、羨ましい限りだな)
そうだろうな、と思いながらスルーして受付へ辿り着く。
「すまないが、サパンの町の冒険者ギルド受付嬢のキャロルに伝言を頼みたい、連絡手段が何かないか?」
「手紙が一般的ですが、即時通達可能な通信水晶を使った伝達が可能です、サパンの町宛でしたら前者だと銀貨3枚、通信ですと金貨1枚の手数料を頂きます、どうされますか?」
心配させてるから手早く知らせた方が良いだろう、通信水晶一択だな。
金貨一枚取り出して渡しお願いする。
「それでは先方に、マグロだ、此方の用事は滞り無く終わった、オークションもだが装備品を調達して、一息ついたらお土産買って戻るよ、楽しみにしててくれ、以上をお願いする」
「代金と通信内容は確かに受けました、先方の居場所次第ですが明日の午前中までには完了致します」
「ありがとう、よろしく頼む、それと別件だがここ帝都には、ダンジョンがあると聞いているが場所を教えて貰えないだろうか」
「それでしたら、ここ冒険者ギルドがダンジョンへの入り口にもなっておりますのでご利用ください」
「それは最高な環境だな、ダンジョンから出れば即買い取って貰えるとは至れり尽くせりだ、時間が出来次第改めて来るよ、それでは失礼する」
暁の宿へ戻りセレスと明日以降の予定を決める事にした。
「開催日が明々後日、明日と明後日で粗方の相場を確認したい、武器や防具と魔法道具、後は書物に滅多に手に入らないであろう薬品辺りか、セレスは今後活動する上で必須な物って何かあるか?」
「そうですね、金銭的な問題は無い訳ですし、拠点でしょうか」
「拠点かぁ、それは長期滞在すると決めた場所じゃないとな、その件は後回しにしよう、オークションだが、出品目録が手に入れば良いのだが」
「明日確認に行きましょう」
「そうだな、幸い地図が有るから迷う心配も無いし、武器屋、防具屋、魔道具店、商業ギルド、魔法書販売してる店、この位かな?」
「行くべき場所が増えた場合でも、明後日もありますし大丈夫でしょう」
「そうと決まればそろそろ寝ようか」
興奮はしてるが前回の様に固まる事なく、裸のセレスを抱き枕に寝るのだった。
※:地理そのものはスキルとマップで把握してますが、店舗情報は無いので地図頼りとなってます。




