〜ハートレスラブ無しコメディ〜 【女医 四之腹佐乃 哀の病院日誌】
【女医 四之腹佐乃 哀の病院日誌】 #8 マイコプラズマ子ちゃん来院 〜患者の名前が覚えられないの
【マイコプラズマ子ちゃん来院】
診察室に女の子が佐乃を訪ねてきた。
苦見は、あの先生に会いたいなんて珍しいな、と内心思った。
「さのせんせー、この前は治してくれてありがと!」
だが、佐乃はSAPIOを読んでいた手を止め、目をパチクリさせて固まっていた。
この頃になると苦見は少し佐乃の性格を把握し始めていた。
「佐乃先生〜、まさか大事な患者さんの顔名前、忘れちゃったなんて
ことないですよね」
「そ、そんなことはないゾ!」
チャチャ入れる苦見に顔を真っ赤にして言い返してはみたが、
やはり名前が出てこない。
必死になって記憶を辿っても女の子のことが思い出せない。
ええい、と佐乃は医学全書を引っ張り出しすごい勢いでページをめくった。
ページにはあちこち赤ペンで症例名が塗りつぶされている。
あっ、とめくる手が止まった。
「キミは、マイコプラズマ子ちゃん! マイコプラズマ肺炎だった子」
「うん! せんせー、ありがと」
苦見はまさか、と思った。
「先生って、患者のお子さん症例名でしか覚えられないの?」
ちなみに、佐乃の目標は全症例制覇であった。