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×月○日
-朝-
弓道場へと顔を出すと、今日もあいつは凛とした姿で弓を引いていた。
俺の気配に気付いたあいつが弓を下ろすのを確認すると、今日の分を投げ渡す。
あいつは両手でペットボトルを握ると、小さくうなり声を上げた。
思わず笑い声を上げる俺に対し、この時期は手が冷えるんだと抗議をするあいつ。
湯気が立ち上るペットボトルに口を付けるあいつを眺めながら、俺はこの時間がずっと続けばいいのにと願った。
-昼-
楽しそうに笑い会うふたりを眺めながら、俺は静かに箸を進める。
時折、あいつがこちらに目線を向ける。
俺がそれが気まずくて箸を置いて立ち上がると、逃げるように購買へと駆け出していった。
-夜-
あいつの声が聞こえてきたので、窓から見下ろしてみる。
家の前で、彼氏と何かを話し込んでいるあいつ。
俺は乱暴にカーテンを閉めると、目を開いたまま横になった。
俺の日常が消えていく。
俺と彼女の、ふたりの『いつも』が失われていく。
どうにかしないと。
どうにかしないと。
気付けば、空が明るくなっていた。