○月○日
-朝-
鋭い破裂音が鳴り響く弓道場に顔を出すと、あいつは今日もひとりで弓を引いていた。
俺に気付いたあいつが弓を下ろすのを確認すると、俺はいつものようにペットボトルを投げ渡す。
あいつは中身を口に含んでから感謝の意を表すと、「あんたも毎朝暇人ね」と呆れながら片付けを始めた。
俺の話に声を上げて笑うあいつ。俺たちは昇降口へと入ると、下駄箱で分かれる。
-昼-
屋上の扉を開けると、今日もあいつがシートを広げて座っていた。俺が靴を脱いで向かい合わせに座ると、あいつは楽しそうに弁当箱を広げ始める。
「今日は何が良いんだ?」
俺はあいつにリクエストを聞くと、食後の運動とばかりに購買へと駆けていく。
弁当を分けてもらう代わりに、デザートと食後の飲み物を調達する。それが俺とあいつとの約束だった。
-夜-
特に部活動をしていない俺は、今日も図書館でのんびりと過ごす。
その日の課題を終えて、適当な本をぱらぱらと捲り、頃合いを見計らって校門へと向かう。
「本当に暇人ね」
そう言って笑うあいつを確認すると、俺たちは連れ添って歩き出す。あいつが扉の向こうへと消えていくのを見届けると、俺も自宅のドアを開けた。
暫くすると携帯電話が震えだす。
開けてみると一通のメールが入っていた。
送り主はあいつ。内容を見ると、「いつもアリガト(^_^)」と書かれていた。
俺はそれを確認すると、夕食の準備を始めた。
これが俺の日常だった。
物心が付いた時から一緒にいたあいつとの、変わりのない日々、いつもの光景だった。