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第2話

「ここは……どこ?」


一番最初に、発した言葉がこれだった。頭はなんだかズキズキしているし、視界は真っ暗だからだ。よくわからないけど、床みたいな平面を手でペタペタ触ってみると、ひんやりと冷たい。一気に、全身に鳥肌がたった。床だけではなく、空気もなんだかひんやりとしていて、少し肌寒い。僕は半袖だった。当たり前だ。今現在、季節は夏だから。でも、ここは夏じゃないんじゃないかっていうほど、空気が冷たい。本当にどこなんだろう……ここは。洞窟……?いやいや、こんな平らな場所は、あるはずがない。


正直言って、怖い。小学6年生の僕だけど、本当に怖い。ここは……どこ……なんだ?


「いっつ……」


急に頭の痛みが増して、僕は体ごとドサッと倒れた。直に頬を平面に当てたので、すごく痛い。頬は大丈夫だろうか……?


 風が吹き始めた。ヒューヒューと音を立てながら、僕の横をまるで風が歩いているように、吹き抜けていった。……寒い。半袖なんか、着てこなければよかった。しかし逆に長袖でも、あの暑くて湿気がすごい日本の夏の中で野球をしていたら……きっと死んでいた。どっちにしろ、死にそうなのだ。


 僕は横になったまま足を自分の体の方へ引き寄せ、頭を手で抱え込むような形でジッとしていた。……頭が痛すぎて、どうにかなりそうだ。ズキズキというより、もはやズキンズキンという、脳の内部に何かが刺さるような痛みに変っていた。……痛い。……そういえば、なんで頭がこんなに痛いんだ?…………わからない。というより、僕はこんな寒いところに来るまで、いったい何をしていた……?………記憶喪失……?いやいや、待て。落ち着くんだ。きっと時間が経てば、何か思い出すだろう。


「うっ……」


 僕は呻き声を静かに洩らすと、意識を失った。風は吹き続いていた。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


「ん……」


誰かに揺さぶられているので目を開けてみると、視界が開け、真っ暗だったさっきとは違い、少しだけ明るかった。このときは、母親に起こされたのだと思った。あれは夢で、きっと朝になったんだろうと。しかし、少年の微かな安心は、瞬く間に消え去った。


 目の前に、鬼がいたのだ。鬼……?……たしかにそうだ。鬼だ。目は僕の拳ぐらいの大きさで、眉毛は人差し指くらいの長さだった。髪の毛は天然パーマなのか違うのか、とにかくクルクルしていて、外巻きである。眉毛と同じく、毛のボリュームがすごかった。耳には金色のピアスをしていて、なかなか似合っている。オシャレ……なのか?驚いて言葉を発することができなかったけれど、鬼の姿をまじまじと見ることはできた。……なぜ逃げないかって……?大きな金棒を持っているくせに、乱暴1つしないからだ。


 鬼は僕が起きたのを確認すると、僕の方にニッコリと大きな口を真横に結び、笑った。なかなか良い奴である。外見は怖そうに見えるけど、心は優しそうだ。


 そう僕が確信したとき、いきなり大きな罵声が飛んできた。


「こらぁぁ!!何をトロトロしている!!早くそいつをこっちに連れて来いぃぃ!!!」


僕の体と鬼の身体は、同時にビクッとした。今度はいったい……だ……誰……なんだ……?


 目をこらして遠くを見ると、誰かがぽつんと置かれた椅子に座っている。鬼をちらりと横目で見ると、僕でもわかるぐらい、明らかに震えている。鬼が怯えているのだ。さっきの言葉は、鬼に向かって投げかけられたものだと知った。


 鬼はいきなり僕の腕を掴むと、椅子に座っている誰かのもとに行ってくれという風に、グイグイと引っ張った。痛い、痛いって。


 僕は仕方なく立ち上がると、ノロノロとそちらに向かって歩き出した。あまりにも、鬼が不憫(ふびん)でならなかったからだ。あと、誰かわからないあの人に、助けてもらえるかもしれない。という少しの期待があった。鬼はというと僕の横について、ペースを合わせて一緒に歩いてきた。だんだんあの人に近づくたびに、体の震えが大きくなってきたのは、鬼の方であった。


 もう誰と会っても、僕はたぶん驚かない。だって鬼に遭遇したのだから。


 その余裕が打ち砕かれるのは、すぐ先のことであった。




とうとう、僕の登場です。パパの過去に突入しました。そしていきなりの鬼……!本当にいきなりすぎますね……(笑)楽しんでいただけると、光栄です。感想もできたら……!いただけると嬉しいですね。

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