アイとマイの日常
「マイ、ご主人様は?」
「アイ、知らなかったの? また、何処かへ出かけちゃったよ」
お人形の様に可愛らしい少女が二人は目を合わせ、深い溜息を付くと見事に同じ言葉を紡ぐ。
「「ご主人様の気まぐれは困りものだね」」
桜色をした髪と瞳はぱっちり二重のアイとマイ。
アイはボブの髪にこれまた桜色のブラウスとスカートを着て、マイはくるくるとした巻き髪をツインテールにして、桜色のワンピースを着ている。
透き通る色白の肌のお人形のように整った少女達は、困ったような顔をするとまたも同じ言葉を紡いだ。
「「ご主人様が帰ってくるまでお仕事していよう」」
この二人は二人で一人。
どちかも欠けてなはいけない。
そんな二人の何気ない日常。
◆◆◆
「アイ、2階のお掃除終わった?」
「マイは1階のお掃除終わったの?」
質問に質問で返すアイとアイの質問に口を閉ざすマイ。
どうやら、どちらもまだ、終わっていないらしい。
お仕事をしようと言いだしたのはお昼の1時ごろで、二人もやる気満々だった。
だが、15分もすれば、集中力は途切れ、一人で遊び呆けて1時間が過ぎてしまったのだ。
流石にヤバいと思った二人が、向こうはどうしているのだろう、と思った画故の行動がこれである。
「質問してるのはマイなんだよ。アイ答えてよ」
「それよりアイの問いにマイが答えてよ」
どちらも譲ろうとしない二人はどうしても終わってない事を言いたくないらしい。
不服そうな顔をする二人が、向かい合っている姿はまるで鏡の中の自分を見ているように、同じ動きをする。
多分、それが気に食わないんだろう。
「もういい、知らない。アイは他のお仕事してくる」
アイはくるりと後ろを向き、歩いて行く。
「マイだってもう知らないもん。他のお仕事するんだから邪魔しないでね」
マイのその言葉にピタリと止まったアイは振り向き、口を尖らせる。
「邪魔するのはマイでしょ」
「それはアイでしょ」
また、言い合いになる二人は仲がいいのか悪いのか分からない。
「違うもん、それはマイだもん」
「マイじゃない。アイだもん」
この言い合いは何処まで続くのだろうか。
それから、二人で言い合いをしている間に、空が赤くなっていた。
「もう、アイの所為で夕方じゃない!」
「それはマイの所為でしょ!」
未だに終わらない言い合いはもう、果てしなく続く筈だった。
でも、二人は其処で口を噤んで少し俯く。
暫くの沈黙後、二人はふっと顔を上げ、同じ行動を示した。
「「ごめんなさい!」」
言った瞬間に二人は驚いて固まる
でも、それは一瞬で、すぐに可笑しそうに笑った。
「今からでも一緒にお掃除しちゃおうよ!」
「うん、一緒だったら、何でも出来るよね」
にこにこと嬉しそうに笑った二人は一緒に掃除道具を持つ。
「「やるぞー!」」
何時間掛かっても独りで出来なかった掃除を二人は終えて、リビングで座り込んでいた。
「疲れたねー」
「でも、楽しかったねー」
達成感でいっぱいの2人の耳に玄関の扉が開く音がする。
「「ご主人様だ!」」
そう言った二人は玄関の方へ駆けて行った。
◆◆◆
アイとマイは二人で一人
その意とは
一人じゃ出来なくても二人なら出来る。
そんな二人は今日も何の変哲もない瞬間を過ごす。
アイとマイの日常、如何でしたでしょうか?
ちょっとした仕掛けをしたのですが、気付く人はいるのか?と疑問に思うほど、分かりづらいですね(白目
と言っても、分かっても分からなくても大丈夫なので、気付いた人はラッキー程度です。
知りたい人は聞いて下さいませ(笑
それでは皆さん、また会いましょう
HANASAKI RIYU