暗殺
サスペンスもどきシリーズ、というよりは私的にはサスペンスのつもりです。
駄文ではありますが、最後まで読んでいただけると有り難いです。
あとがきにて、少し解説もどきを載せます。作者が未熟すぎて文章が非常に分かりにくいので……
「うんうん、それで?」
会話に夢中の祐也は気付かない。ひたひたと迫る危険な陰に。
「はははっ!!紗智子は馬鹿だなぁ」
ゆっくりと鍵を差し込み扉を開く彼女は、聞こえてくる笑い声に口角をあげた――馬鹿は祐也だよ。
「まぁ、紗智子もなかなか忙しそうだけど、クリスマスは一緒に過ごせるかな?」
無理に決まってる、今すぐ言ってやりたい言葉を何とか抑え、彼女は足音も立てず廊下を進む。
ビーズの暖簾の隙間から中を覗く彼女に、祐也の横顔が見えた。脚を組み、太ももにエロ本を乗せている。本気で愛されている訳ではないようだった。やっぱりか…彼女は安堵の溜め息を漏らした。
よし。竦む手足に鞭を打って、彼女は暖簾をくぐろうとした。しかし――。
「愛してるよ」
甘い声が直に、彼女の耳を犯した。あぁ、裏切られても裏切られても、この感情が捨てられない。好きだ。祐也が大好きだ。愛してる。
それでも…いや、だからこそ私はやらなければならない。放棄することは出来ない。彼女はジャケットの内ポケットから包丁を取り出し背中に隠し、静かに暖簾に手をかけた。
――ジャラ。
ビーズの擦れる音に反応した祐也が、ついに彼女の姿を捉えた。
「っ!!」
これでもかと言うほどに見開かれた眼は、彼女だけを確かに見つめていた。祐也の視界にはただ1人、私だけが映っている――彼女はそんな優越感に胸を躍らせていた。
「今日は来られないんじゃ?」
祐也は明らかな狼狽の色を見せた。彼女が合い鍵を返しにきたという旨を伝えると、祐也は怪訝そうな顔をする。
「どういうことだ?まさか別れたいだとか?」
「そんなことない。寧ろその逆」
それだけ言うと彼女は祐也に飛び付いた。
「どう、して」
彼女と自分との間に距離を作るモノを、祐也はただ見つめることしかできなかった。そんな裕也を、彼女は恍惚として魅入る。
「裕也の“彼女”は私だけだよ」
そして裕也の腹に突き立てられた包丁を引き抜き、彼女はソレに滴る赤い液を舐めとった。
「祐君、どうしたの!?返事して!!」
悦に入る彼女は不意に聞こえた声に眉根を寄せた。そして素早く辺りに目を配り、邪魔物を見つけると勢い良くそれにも包丁を突き刺す。
「あぁ……」
静寂を取り戻した部屋で、彼女の瞳は再び祐也を映した。
これでやっと私のモノね、彼女は微動だにしなくなった祐也を、愛でるように抱き締めた。
閲覧ありがとうございました。
祐也が、紗智子という女と二股をかけていることに気づいた『彼女』は祐也を殺害して手に入れることを企てます。その手段というのは、祐也が自宅で紗智子と電話しているときに合い鍵を使って忍び込むというものでした。
“安堵の溜め息”とは、紗智子が祐也に本気で愛されている訳ではないと気づいたためです。
ご不明な点ございましたら、教えていただけると有り難いです。