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ムチャブリ姫

作者: 水島緑

 俺には好きな人がいる。というより愛してやまない人だ。好き過ぎて嘔吐だってした事がある。

 その人は生まれた時からの幼馴染みで、幼稚園時代から何十、何百(比喩にあらず)と愛の告白をしてきた。だがその全てが失敗だった。これまでの告白前の様子からして嫌われてはいない筈なんだが、毎度毎度色良い返事は貰えない。

 俺自身の容姿や性格に問題があるのかもしれない。しかしそれは友人曰わく問題ないらしい。それならばとこの一年間、一度も告白をせず、我慢に我慢を重ねて翌年の元旦に告白したがこれも駄目だった。

 やはりあれか。

 断られる時のあれに答えていないからか。

 幼稚園の時の告白を断られた際の初めての無茶振りは「○ンパンマンを連れて来て!」だった。ある夏に告白した時には「雪が見たい」だった。その後、雪の写った写真を持っていくと「本物が見たい」と言われた。小学校の頃には「あたしよりも先に大人になったら」だの「二分で給食食べれたらいいよ!」だの。子供だった俺は給食をいかに早く完食するかを考え、時に喉に詰まらせ、自由研究の題材にもした。結局無理だったけど。中学からは慣れた様子で、春先に告白したら、夏になったら。要望通りに夏に告白したら次は秋、次は冬と三年間ループしていた。この時から無茶振りされているとは思っていた。

 そして無告白の一年を挟んで高校二年の春。つまり今。腹を割って話してみようと思い立ったのだ。

 放課後、俺の家。幼馴染みの部活が終わるのを待っている内に、外は暗くなり始めた。

 机を挟んだ向かい側の目の前にはポニーテールの幼馴染み。ああ可愛い。部活で日に焼けた肌が眩しいです。

 緊張のあまり椅子の上で正座した俺はこう切り出した。

「なんで付き合ってくれないの? もしかして俺の事嫌い?」

 返答次第で引き込もりになる可能性があった。もし、もしも嫌いだなんて言われたら……。

「嫌いじゃないよ! そんな訳ない!」

 うつむきがちだった顔を跳ね上げて、焦ったように手をわたわたと動かす幼馴染み。正直、可愛い。

 でも良かった。嫌われてない。

「じゃあどうして付き合ってくれないの?」

「だ、だって……」

 だって?

 好きな人がいるから、とか?

 イヤァァァ! そんなんやだよぉ!

「…………じゃないから」

「え?」

 どこの馬の骨とも知らぬイケメン男と腕を組んで歩いてる幼馴染みを想像していて聞いてなかった。

 どちらからともなく息を呑む。

 運命の一瞬。その答えは……。

「結婚前提じゃなかったから!」

 え? ええっと。

 はい?

 けっこん。ケッコン。結婚?

 あ、そう。

「うえええええええ!」

 なにそれ!? 聞いてない! 今知ったよ!

「じ、じじじゃぁ結婚前提なら、おおおおーけーなの?」

 頬を赤く染めて小さく頷く幼馴染み。

 う、うおおおおお!

 ナニコレ!? ええ? 俺勝ち組!?

 わかんねぇわかんねぇ!

 顔には出さないけど、頭真っ白。手の平には汗べったべた。心なしか、膝も震えてる。

 何かを期待した目を向けてくる幼馴染みに答えるべく、脳を強制労働させる。ぐるぐると猛スピードで回る頭。おまけに手までぷるぷるしてる。

 そうだ、答えはこれだ!

「お、おおお俺と結婚してください!」

「ふぇ?」

「あ」

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