第7話 『好きだけじゃ、足りんと…?』
土曜の朝。
みらいは目覚ましより先に目が覚めた。
嫌な予感がした。
スマホを手に取る。
通知、通知、通知、通知。
「……なに?」
Xを開く。
トレンドに、自分の名前。
#星乃みらい
心臓がドクンと鳴る。
タップする。
そこに並ぶのは――
《急に売れすぎ》
《ルカの踏み台》
《実力ないのにバズっただけ》
《ゴリ押し新人》
手が震える。
さらに。
まとめサイトの記事。
【天音ルカ、新人を過剰プッシュで炎上?】
「……炎上?」
息が浅くなる。
コメント欄。
《ルカの株下がった》
《新人いらん》
《コラボ寒かった》
胸がギュッと締めつけられる。
「……うちのせい?」
涙がこぼれそうになる。
ばってん止まらん。
スクロール。
スクロール。
スクロール。
中には、味方もおる。
《嫉妬やろ》
《普通に良かった》
《努力見てないくせに》
でも、否定の声の方が強く感じる。
「……好きだけじゃ、足りんと?」
ベッドに座り込む。
昨日まで夢みたいな景色やったのに。
今日は、冷たい。
夜。
配信時間。
配信ボタンの前で、止まる。
同接、きっと増える。
でも。
“叩かれるために見る人もおる”
怖い。
ほんとに怖い。
でも――
「逃げんって決めたやん」
カチッ。
LIVE
「こんみらーい」
声が少し小さい。
同接:1,200
「……」
一気に増えた。
コメント欄は速い。
《炎上してるけど大丈夫?》
《気にすんな》
《正直どう思ってる?》
喉が渇く。
逃げたい。
でも、今日は逃げん。
「正直に言うね」
コメントが少し静まる。
「怖か」
本音。
「昨日まで応援してくれた人も、
今日には嫌いになるかもしれんって思うと」
指先が震える。
「でもね」
深呼吸。
「うちは、ルカさんの踏み台になるつもりも、
利用されたつもりもなか」
まっすぐ言う。
「声かけてもらって、全力でやっただけ」
コメント欄が流れる。
《それでいい》
《堂々として》
《みらいは悪くない》
ばってん、荒れコメントも混ざる。
《泣き芸?》
《被害者ムーブ》
胸が痛い。
涙がこぼれる。
「……うち、強くなりたかって言ったやん」
声が震える。
「でもまだ、強くなか」
同接:1,450
「増えとるし……」
泣きながら笑う。
「うち、バズりたいわけやない」
少し間。
「ちゃんと、続けたいだけ」
コメント欄がゆっくり流れる。
《最初から見てるよ》
《消えんで》
《ここが好き》
初日からおるリスナーの名前。
見慣れたアイコン。
それを見た瞬間、胸があったかくなる。
「……ありがと」
「嫌いになる人がおっても、
好きでいてくれる人が一人でもおるなら」
涙を拭く。
「うちは続けるけん」
コメント爆速。
《ついてく》
《推す》
《一生見る》
同接:1,820
数字が、味方に見える夜。
配信終了。
OFF
登録者数:8,940
増えとる。
炎上しても、増えとる。
「……これが現実なんやね」
怖い世界。
でも、ゼロやない。
スマホが震える。
天音ルカからのDM。
『ごめんね、巻き込んで。
でも、みらいちゃんは間違ってないよ。』
みらいは画面を見つめる。
「……うち、逃げんよ」
窓の外。
夜空に星。
小さな星。
ばってん、消えとらん。
むしろ――
少しだけ、強く光っとる。




